魔法少女と偽りのヒーロー   作:カオスロイドR

11 / 30
前々話のあとがきと前話の前置きで前話が小学生編の最後と書きましたが追加したいエピソードができたので今回を小学生編の最後とします。


第10話 譲れない信念

【一真サイド】

 

 

マミさんが俺たちの仲間になり穢れのたまった銀の魔女のグリーフシードをキュゥべえに処理させてから数日後。

 

俺と杏子ちゃん、そしてマミさんは一緒に魔女や使い魔と戦いながらも休日の時は三人で色んな所にも出かけたり遊んだりしながら日々を過ごしている。

 

ただし、遊んでいるだけじゃない。日課のトレーニングや模擬戦闘はもちろんの事、市の図書館に足を運び戦闘の幅を広げる為に戦術や戦略の本を読んだり魔女や使い魔を効率よく捜索する方法を編み出すなどの研究を重ねながら。

 

マミさんも銀の魔女との戦いでリボンだけでは力不足だと実感し、リボンに変わる武器を求め、俺や杏子ちゃんは近、中距離専門なので遠距離をカバーできるようにすると言って銃火器の歴史の本や大型銃の本を読んで勉強してたりした。

 

リボンで銃を生成する事を思い付いたが現在の銃は構造が複雑で魔法では再現が難しいと判断し、比較的に簡単な構造の中世のマスケット銃を採用することにした。

 

俺は魔法少女の魔法は専門外なのでそこの所の特訓は杏子ちゃんに任せて、俺は特訓後の飲み物を用意したりと雑用の部分でサポートにまわっている。

 

実用的な部分も手伝いたいがこればかりはしょうがない。

 

杏子ちゃんの厳しい特訓とそれに付いていったマミさん。その甲斐あってついにリボンからマスケット銃を生成する事に成功した。

 

あとはこれを実戦レベルまで使えるようにさらなる特訓をするだけだ。

 

実戦への特訓なら俺も手伝える。

 

え?マミさん?うん、これからは俺も手伝えるよって言ったらすごく泣きそうな顔してたよ。

 

今までの杏子ちゃんが幻影で相手を惑わしながら前に出て俺が赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)でサポートしドラゴンショットで援護したり背後などの死角を守り合う形のフォーメーション

からマスケット銃を使うマミさんが仲間に入り遠距離支援も入りフォーメーションの形は強固な物になった。

 

前の戦いで左腕を代価にして左腕がドラゴンの腕になってしまったが週に一回、定期的に杏子ちゃんのソウルジェムでドラゴンの魔力を吸収してもらっている。

 

ドライグが言うにはその位の頻度で十分らしい。

 

マミさんや他のソウルジェムだと拒絶反応が出るかもしれないとの事だ。

 

だから吸収に関しては杏子ちゃんにお願いしている。

 

これは長い間、俺と一緒にいた事でドラゴンの魔力に慣れていったと話している。

 

一生か・・・人の左腕を失った事には後悔はないけど成人しても杏子ちゃんに迷惑をかける事に申し訳なく思う。

 

「アタシらの助ける為に戦ったアンタがつまんねえ事を気にしてんじゃねえ!」

 

謝ったら怒られた。

 

杏子ちゃんには本当に感謝している。

 

彼女が居なかったら俺は両親やみんなの元に戻れなくなっていたからな・・・

 

 

そして今日は、風見野の杏子ちゃんの家に集まって作戦会議と学校の宿題と予習復習をすることになりみんなで杏子ちゃんの部屋に集まっていた。

 

「佐倉さん寝てるわね・・・」

 

「そうですね」

 

座布団を出してもらい、俺とマミさんは向かい合ってそれぞれの宿題を済ませている俺のすぐ横で杏子ちゃんは両手を枕にして寝ている。

 

まあ、あと数日で俺と杏子ちゃんも小学校を卒業する春になって暖かくなり過ごしやすい時期だから仕方ないことかもしれないな。

 

俺も気を抜いたら寝そうだし。

 

「ん?」

 

ふと視線を感じてドアの方を見るとモモちゃんがドアの陰からこっちを見ていた。

 

「どうしたの?モモちゃん」

 

「あら、こんにちは」

 

「かずまおにいちゃーん、マミおねーちゃん・・・モモ、ここにきてもいい?」

 

どういうこと?

 

「おかーさんがおべんきょーのじゃましたらだめだからはいちゃだめっていわれたから」

 

ああ、そういう事か。ここに来たけどお母さんに注意されたから来づらかったんだな。

 

マミさんの方を見ると笑顔でうなづく

 

「いいよ、おいで」

 

そう言うと嬉しそうに入ってくるモモちゃん

 

最近戦いばかりだから癒されるな・・・

 

眠っている杏子ちゃんの横にちょこんと座るモモちゃん

 

「おねえーちゃん、さいきんいつもねてるの」

 

モモちゃん杏子ちゃんの頭を撫でると『ん、んん~」っと煩わしそうにゆっくりとモモちゃんの手を払う

 

「だからかずまおにいーちゃん、マミおねえーちゃんおべんきょうおわったらあそんでー?」

 

「ああ、いいよ。あと少しで終わるからもうちょっと待ってね」

 

「ええ、いいわよ」

 

頭を撫でるとくすぐったそうに笑うモモちゃん

 

その後、速攻で予習復習を片付けて俺とマミさんはモモちゃんと遊ぶことにした。

 

 

しばらくしてマミさんがモモちゃんの案内でお花摘みに行って、部屋に俺と寝ている杏子ちゃんだけ残される。

 

「(しかし、まったく起きないな。最近の杏子ちゃん夜は寝てないのか?)」

 

「一真君、ちょっと」

 

そんな事を考えていると俺を呼ぶ声がしてそっちを見ると杏子ちゃんのお父さんが手招きしていた。

 

杏子ちゃんのお父さんはあの殴り合い事件以降、立ち直り家族を養う為に牧師の道を捨てて再就職の道を選んだ。

 

最初は牧師をやめる事に反対していたがお父さんの意志は固く杏子ちゃん達も折れて今では応援している。

 

なんだろう?呼ばれて杏子ちゃんのお父さんの方に行く。

 

「一真君、魔女退治は放課後だけでなく深夜もやっているのかい?さすがにそれは親として止めなければならないのだが?」

 

魔女退治に関しては杏子ちゃんの家族は無茶だけは絶対にしないという条件で容認している。

 

「深夜に魔女退治?いやしてませんよ。さすがに放課後と休日だけで深夜は寝ています。」

 

寝耳に水だ。どういうことだ?

 

「そうなのか?実は杏子が夜中に家を抜け出してどこかに行ってるようなのでもしかしたら一真君達と魔女退治に向かっているのかと思ったがどうやら違うようだね。」

 

そうか。だからここ最近の杏子ちゃんは生活サークルが逆転して昼間はよく寝ているのか。

 

「一真君、こんな事を親として頼むのは心苦しいが杏子が夜中にどこでなにをしているのか調べてもらえないだろうか?親の私では魔女関係では喋ってくれないだろうし」

 

「分かりました。俺も気になりますしほっておくわけにもいかないので調べてみます。」

 

「すまない君にばかり頼りきってしまって親として情けないかぎりだ。」

 

そんな事ありませんよと否定して杏子ちゃんの夜間外出の実態を調べる為に毎日出かけるとの事で杏子ちゃんのお父さんからうちの親に外泊する事連絡してもらい一度家に戻って準備する。

 

「一応、こいつを持っていくか・・・」

 

家に帰った俺は外泊する準備した後、押入れの屋根裏に隠していた箱から右手だけの黒の革製グローブを出して鞄に入れる。

 

家を出ようとすると母さんがニヤニヤしてた。なにを想像してるんだか・・・・

 

そして杏子ちゃんに気づかれないようにあらかじめ開けてもらっていた杏子ちゃんのお父さんの部屋の窓から部屋に入り隠れて夜まで待った。

 

 

 

深夜、杏子ちゃんのお父さんの言う通りに家族が寝静まったのを見計らった杏子ちゃんが自分お部屋の窓から外に抜け出した。

 

どこに行くんだろう。

 

気付かれず見失わないギリギリの距離を保ちながらた杏子ちゃんの後を尾行している。

 

万が一気づかれて撒かれてもドライグが杏子ちゃんの魔力を感知できるから問題はないとけど。

 

数時間ほど歩いただろうか。

 

見覚えのある場所で杏子ちゃんは足を止めた。

 

「ここは杏子ちゃんと前までトレーニングをしていた場所?」

 

そうここはかつて俺と杏子ちゃんがトレーニングをしていた山の中だった。

 

前までは人目に触れにくい鍛錬所に使っていたがマミさんの事故現場から近いといことで思い出すと辛いだろうからと今は使っていない。

 

杏子ちゃんは魔法少女に変身すると走り込みを初め、木の枝に飛び乗ったり槍を振ったりとトレーニングを始める。

 

そうか、いつも夜に家を抜け出してここでトレーニングしてたんだ。

 

ややオーバーワーク気味な気がするが・・・

 

でもなんで一人で?確かにここはマミさんにとって思い出したくない場所に近いがだからって俺達に黙って一人でやる事はない。

 

場所を変えれば済む事だ。

 

時間も態々こんな深夜にやらなくてもいい事なのに。

 

しばらくして訓練に一段落して息を整える杏子ちゃんに声を掛ける。

 

「こんな夜中に特訓かい?」

 

「一真、なんでここに?」

 

いない筈の俺の存在に驚いた杏子ちゃんがこちらを振り返る。

 

「おじさんが心配してたよ」

 

「親父め・・・余計な事を・・・」

 

杏子ちゃんの顔が歪む。別に隠す必要ないだろうに

 

「とりあえず帰ろうよ。杏子ちゃんのお父さんには俺も一緒に謝るからさ。ね?」

 

何も言わない杏子ちゃん。

 

よく見ると何か考えているようだ。

 

やがて無言の杏子ちゃんが口を開く。

 

「・・・・一真、お前はもう戦うな!」

 

え?どういうこと?

 

「迷惑なんだよ。これはアタシら魔法少女と魔女との戦いなのに関係ない奴がしゃしゃり出てこられるのは」

 

杏子ちゃん、一体なにを?

 

「口で言っても分からねえなら実力で手も足も使えねぐらいに潰してやる。」

 

俺にめがけて勢いよく突き付けられた槍を赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)で受け止める。

 

「ぐっ!重い。」

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)ごしで受けた槍の衝撃は重く腕に痺れがきた。

 

「ほう、今回は寸止めしなかったのにうまく受け止めたな。それとも前のはただ反応出来なかっただけか?」

 

今の本気だった。

 

避けなかったら確実に槍が体に当たり骨が折れていた。

 

こっちも本気で戦わなければ再起不能にされる。

 

冗談じゃない。俺はまだこんな所で立ち止まるわけにはいかないんだ。

 

「・・・杏子ちゃん、俺が勝ったらちゃんと訳を話してもらうよ」

 

「いいぜ、お前が勝ったらちゃんと話してやる!」

 

何度も突いてくる槍を赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)で受け流したり防御する

 

「どうした?前に着た赤い鎧は付けないのか?」

 

槍を連続で突きながら杏子ちゃんが話しかけてくる。

 

「あいにく、今の俺じゃ代価を払ってあれ一回が限界なんだよ」

 

「・・・・そうか、そりゃ残念だったな」

 

それは本当の事だ。堕天使のアザゼル先生が開発した腕輪があれば代価なしで禁手化(バランス・ブレイク)できるがそんな便利ないアイテムは俺はもっていない。

 

だから次に禁手化(バランス・ブレイク)するとしたらまた代価で身体の一部分を払うか自分の力で禁手(バランス・ブレイカー)に至るしかないのだ。

 

正直よほどの事がない限り前者はお断りだ。なら後者しかない。

 

でも今の俺に悔しいがその力はまだない。

 

ならば今できる手札で勝負するのみ!

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)からメビュームブレードを出して斬り掛かる。

 

杏子ちゃん相手に生半可な攻撃は通用しない。

 

本気でやらないとこっちが負ける。

 

「やるじゃないか、一真!これならどうだ!」

 

俺から離れ距離を取った杏子ちゃんの槍から鎖が出てきて多節棍になり襲い掛かってくる。

 

正直あれはやっかいだ。

 

リーチが長い分懐に入れば楽だがそうはさせてくれない。

 

ドラゴンショットで多節棍ごとぶッ飛ばす手もあるがメビュームブレードだけじゃ魔力を溜める暇もない。

 

ならば多節棍の槍を右手からアグルブレードを出して回転させて盾にして防御に徹する。

 

「ほらほら、どしたどした守ってばかりじゃアタシは倒せないよ」

 

何度も多節棍で伸ばした槍の先端が襲ってくるが防御してる間に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)に魔力を溜める

 

「させねえよ!」

 

地面を利用して槍の軌道を変えて顔の方に切っ先が迫ってきたので思わず赤龍帝の籠手《ブーステッド・ギア》でガードしてしまう。

 

『Reset』

 

しまった倍加が解除された。

 

単調な攻撃はワザと隙を見せて油断させる為か。

 

「ほらほら次はどうすんだい?」

 

「くっ!プロモーションキング!」

 

プロモーションキングを発動して服が駒王学園の制服に変わり、強化した腕力で多節棍の槍を払いのけて、ジャンプして木々の枝を伝って森の方に逃げ込む。

 

あのリーチの長い上に仕込まれている鎖でさらに長く不規則に動く槍を相手にこの広い空間はこちらが不利だ。

 

ならば狭い空間に誘い込んでそこで決める。

 

「逃げんな!ちゃんと戦え!!」

 

杏子ちゃんは槍を元にもどして追いかけて来ている。

 

「相手にして分かるけどやっぱりすごいな」

 

『ああ、魔法少女の力のおかげもあるがそれ以上に天賦の才って奴がある』

 

枝と枝を飛びながら改めて杏子ちゃんの戦闘力を考える。

 

一緒に戦ってきたけどここまで強いと自信なくすな・・・

 

『自信を持て、確かに佐倉杏子は天賦の才があるかもしれんがお前はそれ以上に積み重ねた努力があるだろう』

 

おっと自信喪失してる場合じゃないな。

 

ここで負けるわけにはいかないんだから。

 

 

 

~杏子サイド~

 

一真の奴、禁手化(バランス・ブレイク)って奴ができないから切り札のプロモーションキングをついに使いやがった。

 

アタシの多節棍を封じる為に枝がある狭い森に入ったようだが墓穴を掘ったな。

 

この月明かりも届かない暗闇の森じゃアタシを見つけにくいだろう。

 

アタシは暗闇でも魔力を使えば昼間の様に夜目が効く。

 

例えお前の妙な能力で夜目が効いたとしてもアタシには幻術とスピードがある。

 

目で追えたとしても体は反応できない。

 

プロモーションキングを使わない限り。

 

一真、お前の弱点はまさにそれだ。

 

特殊な能力があってもプロモーションキングを封じられればちょっと強いだけのただのガキなんだよ。

 

たしかプロモーションキングと倍加は併用出来ねえって言った筈だ。

 

このまま見失わずに五分後のプロモーションキングが切れた時仕留める!

 

 

アタシの父親は教会で牧師をしている。

 

でも誰も親父の話を聞いてはくれない。

 

親父は当たり前で正しい事を言ってるだけなのに教会本部が教えていないただそれだけの理由で

 

誰も話を聞いてくれずどんどん信者が離れていった。

 

うなだれ落ち込みながら親父は精一杯がんばっている。

 

おふくろもそんな親父を支えて生活している。

 

だがアタシたち家族は近所で腫れ者扱いされる毎日

 

友達もどんどんアタシから離れて行った。

 

さびしそうにしている妹のモモと遊びに行こうとしたら門の横からこちらを見ている男子と目が合った。

 

最初はアタシと妹は親父の事で学校でいじめる奴らが来たと警戒してモモがアタシの背にすぐ隠れた。

 

でも話してみるとそんな事ないとすぐ分かった。

 

アタシもモモは心の底から笑えたと思う。

 

進級してからアイツは変わらずアタシに構ってくれた。

 

でも相変わらずアタシやモモをいじめる奴もいたが

 

「おまえら、俺のダチとその妹に何してくれてんだ?」

 

アイツが一睨みするとアタシ達をいじめる奴らは蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。

 

どうしてアタシたちを助けてくれるのかと?

 

そしたらあいつはこう返した。

 

「友達だからね」

 

まるで青臭い青春ドラマみたいだ。

 

でもそんなアイツの気持ちが嬉しかった。

 

そして事件は起こった。

 

小学三年生の時あいつはアタシをいじめる男子数人からアタシを庇って額に怪我をした。

 

今でもうっすら傷跡が残っている。

 

その事を一真に謝ったら

 

『俺は男だし傷が残っても大した事ないよ。それより杏子ちゃんが怪我して傷が残った方が大変だって』

 

そう言って笑っていた。

 

後日、一真の怪我の事でアイツの両親に謝りに家に行ったら

 

『まあ事情は一真の担任の先生から聞いたし、佐倉さんは悪くないよ』

 

『そうそう悪いのは杏子ちゃんを苛めてた奴らなんだから。かず君の怪我だって女の子を守ってできた名誉の負傷って奴よ。さすが私と真司の子ね。杏子ちゃんこんな事にめげずにこれからもかず君と仲良くしてあげて」

 

一真のお父さんとお母さんも一切アタシを攻めずに餃子パーティーまで開きお土産の餃子まで貰った。

 

本当にいい家族だ。

 

文句を言われても仕方ないのに。

 

今まで家族以外でこんな優しい言葉を掛けてくれた人達はいなかった。

 

魔法少女になった時も不思議な力を持ったアイツは一緒に魔女と戦おうと言ってくれた。

 

そんなアイツの言葉が嬉しかった。

 

いや甘えてしまっていた。

 

その結果、一真は人間の左腕を無くしてしまった。

 

一真はいい奴だ。アタシや他人の為に自分が傷つく事も顧みずに闘う。

 

魔法少女だと親父にバレて罵倒された時も一真が庇ってくれた。

 

一真がいなかったら親父は壊れて、アタシの家族はバラバラになっていただろう。

 

それを一真は傷つき親父と殴り合いしてまでも止めて説得してくれた。

 

嬉しかった。怒鳴る親父が怖くて何も言えなかったアタシを助けてくれた一真があの時、本当のヒーローに見えた。

 

そんな一真だからこそこれ以上アタシなんかの為に傷ついていい筈がない。

 

アタシが魔法少女になったのは家族の為にと自分で蒔いた種だ。

 

だからアタシが自分でやらなければならない事であって一真を巻き込んでいい筈がない。

 

一真は言っても聞かない奴だと分かっていた。

 

だから実力行使に出る。

 

さっきも言った通りに両腕、両足を潰してでも

 

人間の左腕を失い次は命を失うかもしれない・・・

 

そんなの、アタシが許さない

 

だから戦いながらそんな哀しい顔するなよ決心が鈍りそうじゃないか

 

一真に嫌われてもいい・・・

 

生きていて欲しいから・・・

 

左腕を失ってまでも戦い続けようとする一真を止められるなら。

 

そう決めたんだ。

 

自分で決めた事なのに・・・・

 

なんでこんな辛いんだろう・・・・

 

 

 

「一発ぐらい当たれよ」

 

「うるせえ!そんなひょろひょろ弾なんかに当たるかってんだ」

 

一真の奴、逃げながら光線技で攻撃してくるが避けながら追っていく。

 

逃げ続けた一真が着地する。それと同時に一真の服が元に戻る。

 

「しまった時間が・・・!」

 

ついにプロモーションキングが解けたな。

 

「鬼ごっこは終わりだ。倍加する暇も与えねえ貰った!!」

 

「・・・・いや俺の勝ちだ」

 

一真が右腕を上から下に振ると木の枝を切りながら無数の細い紐がアタシの周りから何かが出てきて縛りつけ、槍を手放してしまう。

 

これはワイヤーだ。

 

しかも見えづらい極細の!

 

よく見ると一真の右手のグローブからアタシを縛るワイヤーと繋がっている数本のワイヤーが出て伸びている。

 

「い、いつの間にこんなワイヤーを!」

 

「プロモーションキングで逃げながら戦っている時さ、言っておくけど魔法少女の力でも切れないよ。あらかじめ倍加で強度を上げてあるから」

 

「なっ!プロモーションキングとの併用はできないって」

 

事故の時、併用した一真はほとんど体力を失い立ってるのもやっとだった筈。

 

「それはあくまでも自分に対してだ。物を倍加するギフトなら問題なく使える。そして・・・杏子ちゃんの槍は内部に鎖を仕込んでいる分普通の槍より脆い」

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の人差し指を一本をグローブから伸びているワイヤーに付け赤い魔力を流されるとアタシの槍は粉砕されてしまった。

 

「森に逃げ込んだのは槍を封じる為じゃなくてワイヤーでアタシの動きを止める為か?」

 

「普段の冷静な杏子ちゃんなら見破れてたかもしれないけどね」

 

「バカみたいな演技してアタシを挑発したのも森に誘い込む為じゃなくてワイヤーから注意を逸らす為か」

 

「そういう事、俺が前の戦いを反省もせずに五分間しか使えないプロモーションキングに頼りきってなんの対抗策を考えていなかったと本気で思ったの?」

 

一真、やっぱりお前は強いよ。能力の強さだけじゃなくて頭も切れる。

 

なによりお前に背中を預けて一緒に戦えれたらどれだけ心強いか改めて実感する。

 

でもそれはもう許されない。

 

「杏子ちゃん俺の勝ちだ。なんでこんな事をしたのかちゃんと話してくれ」

 

「まだだ!まだ終わってねえ!」

 

ここでアタシが負けたら一真はまた魔女との戦いに出ちまう。

 

力を込めて無理やりワイヤーを切ってやる

 

ワイヤーが肌に食い込んで切れて血が出てきて痛てえが気にしねえ。

 

「なっ!き、杏子ちゃんやめろ!無理に引き千切ろうとしたら骨ごと腕が切断される!」

 

珍しく一真の奴、焦ってんな。

 

普段すました顔したお前がそんな焦った顔を久しぶりに見たぞ。

 

でも構うもんか!一真に勝ってお前を止められるくらいなら腕くれぇ!

 

アタシも一真の事文句言えねえな、こりゃ。

 

「くっ!」

 

一真が慌てて譲渡していた力を解除してワイヤーを緩めて解く。

 

ブチブチ

 

譲渡していた力がなくなり緩んだワイヤーが魔法少女になっているアタシの腕力で取れていく。

 

そして全部のワイヤーが取れて開放されたアタシは下に落ちる。

 

無理やりワイヤーを切ろうとした事で切り傷ができながらも着地して手元に落ちてた槍の残骸を拾い一真の腹を思いっきり突いた。

 

「グッ!」

 

「油断したな一真。お前の最大の弱点はその甘さだ。アタシに勝つつもりならワイヤーを解かずに本気で来るべきだったんだよ。」

 

一真が腹を抑え額に汗を流している。

 

「これでアタシの勝ちだ」

 

新しい槍を出して振り下ろそうとした時一真の顔が過る。

 

嫌だ・・・

 

振り下ろしたくない・・・

 

躊躇して動揺したアタシの隙を見つけ、腹の痛みを我慢したフラつきながら一真が飛びかかり押し倒されてしまった。

 

 

 

【一真サイド】

 

お、お腹痛い・・・

 

杏子ちゃんが動きを止めたからよかったもののあのまま振り下ろされてたら完全に俺の負けだった。

 

さて押し倒したのはいいけどここからどうやって杏子ちゃんを説得すべきか。

 

「なん・・・で・・・」

 

ん?

 

「なんで・・・なんでアタシの言う事聞いてくれないんだよ。アタシはもうお前が戦って傷付いて欲しくないだけなのに・・・」

 

杏子ちゃん?

 

「三年生の時も親父の時もそして今回もアタシやみんなを庇って傷付いて無理をしてそんなお前を止めたかっただけなのに・・・なんでだよバカヤロウ・・・」

 

そうか、だから杏子ちゃんは俺に戦うなと言ったり俺を戦わせないようにする為に腕や足を潰そうとしたのか・・・

 

自分が悪者になる事を分かっていながらも信念を通そうとしたのか。

 

なら俺も自分の信念を話そう。

 

「俺が自分でそう決めた事だから。杏子ちゃんが家族を思って魔法少女になったように幼馴染の杏子ちゃんが傷つくのをただ黙って見ていたくなんかない。ただ左腕を失くした事で杏子ちゃんを追い込んでしまった事は悪かったと思っている。

ごめん、でも戦う事はやめない。杏子ちゃんやみんなが傷つくのを見たくないから。」

 

俺も転生して最初はただ魔法少女達を守れたらいいなとしか思ってなかったけど杏子ちゃんやマミさん達に触れ。守り通したいって信念に変わった。

 

絶対に不幸になんかにさせない。

 

本気で助けたいと。

 

でなきゃ腕を犠牲にしてまで助けようなんてしない。

 

これだけは何があっても譲れない。

 

「一真・・・」

 

「一緒に強くなろう。お互いが傷つかない様に守り合えるように」

 

立ち上がれるようにと手を差し伸べてる。

 

「(幼馴染の為か・・・今はまだそれでいいや・・・)」

 

杏子ちゃんから憑き物が取れたように穏やかな顔になったのが気になり聞いてみる。

 

「どうかしたの?」

 

「うるせーなんでもねえそれより約束しろ。絶対に魔女に殺されないって!そしたらまた一緒に戦うことを許してやる!」

 

「分かった約束するよ」

 

その返事を聞いて俺の手を取り立ちあがった朝日に照らされた杏子ちゃんの笑顔は本当に美しかった。

 

そしてその後、二人仲良く朝帰りした杏子ちゃんと一緒に杏子ちゃんの両親にきっちりお説教されるのだった。

 

 

~オマケ~

 

その日の放課後の集まり佐倉家にて

 

「グーグーグー」

 

「スゥ・・・スゥ・・・スゥ・・・」

 

「かずまおにーちゃんもきょーこおねえちゃんもお昼寝してる・・・」

 

「・・・・・・・なんで今日は佐倉さんだけじゃなくて城戸君も寝てるの?」

 

気持ちよさそうに眠る二人を見て訳が分からずモモちゃんとマミさんの疑問は尽きることはなかったのだった。

 




本当は前回で小学生編を終わらせるつもりでしたが一真君の左腕を失くした事に対しての杏子の葛藤があった方がいいんじゃないと弟がアドバイスしてくれたので急遽追加しました。


次回から小学校を卒業した一真君達の新しい中学校生活が始まります。
お楽しみに
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。