魔法少女と偽りのヒーロー   作:カオスロイドR

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おいしい絶望の作り方

希望という名の養分をたくさん含んだ上質な土

幸せという名のみずと不幸という名のストレス

ただしどっちも与えすぎたらだめ

おいしくなくなるから。

バランスよくね




※食堂で晩飯を食べてたら思い浮かんだのを書いただけなので特に本編とは関係はないです。


第28話 タイム・リミット(前編)

【一真サイド】

 

失敗した!

 

お菓子の魔女シャルロッテの孵化する日。

 

つまり原作でマミさんが亡くなる日を前もってほむらさんから聞いていて分かっていたのに。

 

孵化するまで時間がなかったとはいえ焦って説得が粗暴になってしまい怒ったマミさんに頬をぶたれ、早乙女先生に居残り説教されてしまった…。

 

その後待っていてくれた杏子ちゃんと合流してマミにひどい事をした件で杏子ちゃんにも叱られたけどそれ所じゃない。

 

ほむらさんが先に向かってくれたが原作通りに進むならほむらさんもマミさんの説得に失敗して怒ったマミさんに魔法で拘束されてしまう。

 

その後まどかさん達にいい所を見せたと油断したマミさんがぬいぐるみ形態からイモ虫形態に変化したシャルロッテに頭から噛みつかれる最悪の展開だ。

 

なんとかしてそれだけは防がなければ!

 

それとシャルロッテが孵化したらマミさんを始末すると宣戦布告した上条もこのまま黙って見ている筈がない。

 

時間がない急がないと。

 

それなのに・・・くそ!

 

「お前の相手をしている暇なんてないのに!」

 

俺とこれからマミさんに起きる悲劇を知らない杏子ちゃんはシャルロッテが孵化する見滝原病院に急いでいたがシャルロッテとは違う魔女と遭遇してしまい結界の中で戦闘になってしまっていた。

 

相手は大きなスカートと両手が巨大な剣、首にフワフワな白いマフラーを巻いた魔女と二股のナイフに変化する使い魔。

 

魔女の指示でナイフに形を変えた使い魔が次々飛んできて襲ってくる。

 

「これじゃあ奴に近づけねえ!」

 

俺は鎧を装着し、杏子ちゃんも変身して結界内になった巨大なサイコロのような置物の陰に隠れナイフをやり過ごす。

 

そしてさらに魔女の身体から冷気が発せられ、周囲が寒さで凍っていく。

 

「寒みいい」

 

俺は鎧のおかげで寒くないが袖のない魔法少女衣装の杏子ちゃんが両手を組んで寒さに耐えている。

 

とろあえず無いよりマシだろうと俺の長袖の制服を寒さにふるえる杏子ちゃんに投げ渡す。

 

「わるいな、た、助かる」

 

受け取りよっぼど寒かったのかすぐさま杏子ちゃんが制服を羽織る。

 

さて問題はこの状況だ。

 

遠距離攻撃の(すべ)のない杏子ちゃんの変わりにドラゴンショットで応戦するが使い魔達が身を挺して盾となるから魔女に攻撃が届かない。

 

距離を詰めた杏子ちゃんも槍を多節棍にして魔女を狙ったが使い魔に防がれてしまい逆にナイフ使い魔に襲撃されて何とか持ち前のスピードで傷を負いながらも逃げ切り危ない所だった。

 

傷はすぐ俺のリライブ光線で回復させたから致命傷じゃない。

 

しかし状況は最悪だ。

 

長期戦はこっちが圧倒的に不利だ。

 

このままじゃ寒さで体力と体温を奪われてこっちが先に参ってしまう。

 

そのうえ時間がないのに使い魔達は減る気配はなくどんどん増えていく。

 

「ど、どうすんだよ一真」

 

白い息を吐きながら俺にこの状況を打破する方法を尋ねる杏子ちゃん。

 

さてどうするか、鎧の防御を当てにして痛み覚悟で突撃するか?

 

いやあのナイフになる使い魔達の大量の数相手じゃ鎧の強度はどこまでもつか・・・

 

それにいまだ破壊力未知数の魔女の剣状の両手。

 

あれもどうにかしないと

 

強靭な剛腕を振るう龍帝(ストロングパワーフォーム)で鎧の強度と防御を上げられるがあれは筋肉が膨れて力が増す分スピードが失われる。

 

さっきから一定の距離を開ける素早い魔女に攻撃が当たるかどうか怪しいものだ・・・。

 

だがこのままなにもしないわけにはいかない。

 

早くしないとシャルロッテが孵化してしまう。

 

時間がない。

 

こうなったら疲労を覚悟で新フォームで一気に勝負をつけさせてもらう。

 

「杏子ちゃん危ないからそこから顔を出さないでね」

 

「お、おい」

 

俺は物陰から出てきて魔女や使い魔達の前に立ち塞がる。

 

魔女が右手の剣を向けると二股ナイフの使い魔達が俺に目掛けて飛んでくる。

 

「ふうう…はああ!!」

 

両手を頭の前でクロスして左右に振り下ろすと俺の全身が赤い光を放ち鎧の一部がはじけ飛ぶ。

 

「うわ!」

 

杏子ちゃんがまぶしくて右腕で目をガードする。

 

ごめん杏子ちゃん。

 

今は気にする事はできない。

 

せめて鎧の破片は杏子ちゃんの当たらないようにするから。

 

はじけ飛んだ鎧の一部が使い魔をはじき墜とす。

 

光が収まると鎧の二の腕と足の太股部分の装甲が無くなり赤い筋肉が露出し空気を切り裂くような鋭角な兜と肩アーマーに変化してさらに背中の龍翼も一段と大きくなっていた。

 

「一真の姿が変わった。それってまた新しいフォームか?」

 

「そう、これが奇跡の大空を舞う龍帝(ミラクルスカイフォーム)だ!」

 

左手甲からメビュームブレードを出して魔女にものすごい速度で向かって行く。

 

「は、速ええアタシ以上のスピードじゃねえか・・・」

 

そのスピードに唖然とする杏子ちゃん。

 

使い魔達を掻い潜ってどんどん魔女に近づいていく。

 

すれ違って置いていかれた使い魔達も慌てて引き返すが追いつけない。

 

魔女の前に来て、魔女が刃状の腕を振り下ろすが刃は当たらず空を斬る。

 

「一真が消えた!・・・いや違う速すぎて見えないんだ」

 

「はああああっ!!!」

 

消えたり現れたり目にも止まらぬ速度で動き回り魔女をメビュームブレードで何度も斬り掛かり次々と魔女の身体に切り傷が増える。

 

「か、一真の姿が全然見えねえ・・・なんか魔女が一人で勝手に切り刻まれてるように見える・・・」

 

戻ってきた使い魔達がキョロキョロと俺を探してその場に立ち止まり隙だらけになった所を次々真っ二つにしていく。

 

やがてすべての使い魔が消滅して一匹もいないと確認する。

 

これでいける。

 

とどめを刺そうとしたその時。

 

急に寒さを感じ始めた。

 

「これは・・・しまった!」

 

魔女の身体から再び冷気を放たれ動きが封じられそうになる。

 

奇跡の大空を舞う龍帝(ミラクルスカイフォーム)はスピードを上げる為に装甲を削っているので防御力が低下している。

 

その為今戦っている魔女の冷気を使った全体攻撃には非常に弱い。

 

ここのままじゃ凍ってしまう。

 

「させるか!」

 

「え!杏子ちゃん!?」

 

「お前があんだけ派手に動いてくれて気を引いてくれたからな、後ろに回り込むのが楽勝だったよ」

 

いつの間にか魔女の背後に移動していた杏子ちゃんがひし形のチェーンで魔女を縛り上げる。

 

魔女が急にビクッと体を硬直させたと思ったら急に首だけ左右に振り何かを探し始めた。

 

「どうしたんだ魔女の様子がおかしい?」

 

「一真、そいつはお前が見えていないやるなら今だ」

 

親指を立ててウインクする杏子ちゃん。

 

そうか、杏子ちゃんが拘束魔法で魔女の動きを封じて幻惑魔法で魔女の視界に俺を映らなくしてくれたんだ。

 

よしこれならいける。

 

「プロモーションキング!」

 

王の駒(キング・ピース)の力で発する熱が全身に凍り付いてできた氷を吹き飛ばす。

 

『Boost!』

 

さらにメビュームブレードに倍加の力を掛けてブレードの刃が赤くひとまわり大きくなる。

 

「これで・・・どうだ!」

 

動きを封じられた魔女に向かって突撃して腹部を赤いメビュームブレードが突き破った。

 

断末魔の叫びさえ上げず魔女は最後まで無言のまま消滅した。

 

悲鳴なしか、元々無口な魔法少女だったのかそれとも声が出せなかったのか・・・

 

倒した魔女の事を考えながら俺は奇跡の大空を舞う龍帝(ミラクルスカイフォーム)を解き元の赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)に戻る。

 

削った装甲が元に戻った為か体が少し重いな。

 

けどどうやらこっちの奇跡の大空を舞う龍帝(ミラクルスカイフォーム)強靭な剛腕を振るう龍帝(ストロングパワーフォーム)と違いそんなには体力を消耗しないようだ。

 

あれからも毎日鍛えてたおかげかな。

 

よかったこれならシャルロッテとまだ戦える。

 

「やったな一真!お、グリーフシードだ」

 

「ああ、お疲れさ・・・杏子ちゃん危ない!」

 

「え?うわあ!」

 

魔女がいなくなり地面を覆っていた氷も解けて結界も消滅し俺の足元に落ちているグリーフシードを拾おうとした杏子ちゃんを押し倒して庇い杏子ちゃんの立っていた場所にボーリングの玉サイズの水晶玉のような球体が飛んできて地面に直撃して穴を開けた。

 

「今のは一体!?」

 

もし杏子ちゃんがあそこに立っていたら無事ではすまなかったぞ。

 

「きゃ、きゃ、きゃずま!え?え?」

 

突然押し倒された杏子ちゃんが真っ赤な顔で混乱している。

 

無理もない命を狙われたんだから。

 

だが妙だ、周囲に結界は発生していない。

 

魔女じゃないのかじゃあ一体・・・まさか!

 

すばやく起き上がって混乱する杏子ちゃんを立たせて水晶玉の飛んできた方角を確認する。

 

「な、なんだこれ!」

 

後ろで杏子ちゃんが水晶玉が落ちてえぐられた地面を見て驚いている。

 

「誰だ!?」

 

水晶玉が飛んできた方向には浮遊するの五つの水晶玉を従えた白い帽子と純白のドレスを着た少女がこちらを見つめていた。

 

飛んできた水晶玉と浮遊してるのは同じ水晶玉。

 

じゃあこの子がさっきの攻撃を!?

 

結界が発生していないって事はこの子は魔女じゃなく魔法少女か。

 

一瞬例の魔法少女襲撃犯を連想したが証言は黒い魔法少女、だがこの子はどうみても服の色は白だし違うのか?

 

「なぜ俺達を攻撃した、目的はこのグリーフシードか?」

 

先ほど倒した魔女のグリーフシードを掲げて尋ねるが目の前の純白の魔法少女はなにも答えない。

 

「おい、こら何とか言えよ!」

 

自分が狙われたのを理解した杏子ちゃんが怒鳴る。

 

「黙ってないでいいかげんに!」

 

白い魔法少女の態度に業を煮やした杏子ちゃんが槍を振りかぶって突っ込んで行こうとした瞬間。

 

浮遊していた五つの水晶玉が杏子ちゃんに襲ってきた。

 

「危ない!」

 

素早く杏子ちゃんの前に割り込んで右腕を上に左腕を下にして垂直に構えて発生するプリズム状の光が相手の攻撃を防ぐウルトラマンガイアさんの『ウルトラバリヤー』を張って飛来してきた水晶玉を防ぐ。

 

けど水晶玉の数は増えて次々ウルトラバリアーを削っていく。

 

このままじゃバリアが持たない。

 

そして無情にも今までより一際大きい水晶玉が放たれてバリアがガラスの様に粉々に破壊され破られてしまった。

 

「うわあああ!」

 

バリアが壊れた事で衝撃でふっ飛ばされ倒れる。

 

「一真大丈夫か!?」

 

「こ、これぐらいなんともないよ」

 

杏子ちゃんが駆け寄ってきて倒れた俺を起こそうとしてくれる。

 

「よかった・・・てめえ!」

 

怒りの表情の杏子ちゃんが斬り掛かろうとするが白い魔法少女の周りを新たに召喚された大小様々な大きさの無数の水晶玉がこちらを向いており警戒して立ち止まる杏子ちゃん。

 

「・・・三十秒後、携帯電話に電話が掛かってくる」

 

「え?」

 

初めて喋る白い少女。

 

「オラクルレイ・・・」

 

どういう意味か尋ねようとする前にすべての水晶玉の先端に魔力で作られた刃が現れて次々襲ってくる。

 

あの数はバリアでも防ぎきれない。

 

あれが当たれば杏子ちゃんのソウルジェムが・・・

 

そんな事になったら杏子ちゃんの命が!

 

俺は杏子ちゃんに覆いかぶさり背中で魔力刃を受ける覚悟をして魔力刃の水晶玉が地面を削り砂煙を巻き上げた。

 

「ぐ・・・ぐあ・・・」

 

「か、一真!」

 

背中に大小さまざまな石の破片が跳んできて背中に当たる。

 

だがなぜか水晶玉自体は直接俺に当たっていない。

 

ど、どういうことだ?

 

数十分後、浮遊していた水晶玉がすべてなくなり砂煙だけが覆う。

 

「・・・赤い鎧の戦士・・・いずれ自分のやっている愚かさに気づいて貴方は後悔して絶望するでしょう、御機嫌よう」

 

そう言い残してその場から消える白い魔法少女。

 

数秒後、俺は龍翼を展開し羽ばたかせて風を起こし砂煙を吹き飛ばした。

 

「き、杏子ちゃん大丈夫?」

 

「な、なんとかな・・・あれアイツは?」

 

見ると白い魔法少女の姿はどこにもなかった。

 

逃げる為の威嚇だったのか?

 

だがもしあの攻撃が直撃していたら…

 

「くそ!なんなんだ!アイツ!」

 

杏子ちゃんが右手を握りしめ左手で受け止めパチンッと音がして悔しがる。

 

「グリーフシードは手元にあるし・・・あの魔法少女は一体なにが目的で・・・」

 

ピッピッピッピッピッピ・・・

 

「まさか!」

 

考え込む俺のポケットから電子音が鳴って響く。

 

それは俺の子供用の携帯電話だ。

 

「三十秒後、携帯電話が鳴る」

 

俺は最後に言ったあの白い魔法少女が言った言葉を思い出す。

 

この事を言っていたのか。

 

杏子ちゃんも驚いた顔をしている。

 

なおも鳴り響く携帯電話。

 

俺は恐る恐る通話ボタンを押し、耳に付ける。

 

「もしもし・・・」

 

「もしもし一真君?助けて!!」

 

電話からまどかさんの焦った声がする。

 

電話を掛けてきた相手はまどかさんだった。

 

だがその口調はいつもと違い焦っているように聞こえる。

 

まさかもう孵化が始まろうとしているのか。

 

「落ち着いてまどかさん」

 

なんとか冷静さを保ちながら答える。

 

「見滝原病院で魔女が生まれそうなグリーフシードをみつけたの!今さやかちゃんが見張ってるんだけどいつ生まれるか。私はマミさんを呼んでくるから一真君も早く来て!」

 

くっ!やっぱり原作通りシャルロッテは病院に現れてまどかさん達が巻き込まれてしまっている。

 

なんでだ?上条が入院していなければ病院に近づかないと思ったのに。

 

「分かった!俺もすぐに向かう。まどかさんはマミさんを呼んだら近づかな・・・」

 

突然電話が切れた。

 

向こうが切ったのか分からないが最悪な事になったぞ。

 

このまま原作通りに進んだらマミさんの命が危ない。

 

「おい一真、まどかたちになにがあったんだよ?」

 

「・・・まどかさんとさやかさんが見滝原病院に今にも魔女が生まれそうなグリーフシードを見つけて、まどかさんはマミさんを呼びにさやかさんはグリーフシードを見張っているらしい」

 

「はあ!?あのバカさやか何考えてんだ!」

 

「時間がない、急ごう杏子ちゃん!」

 

「けどここから見滝原病院までまだけっこうあるぞ」

 

確かにここから病院までかなり離れている。

 

まだ戦いは控えてるだがやるしかない。

 

両手を頭の前でクロスして左右に振り下ろし再び奇跡の大空を舞う龍帝(ミラクルスカイフォーム)に変身する。

 

「杏子ちゃん、ちょっとごめんね」

 

「え?ええ?お、おい!」

 

杏子ちゃんを両腕に抱えて横抱きする。

 

別名お姫様抱っこって奴だ。

 

「時間がない。文句なら終わってから聞くから」

 

「え?ええ?う、うわああああ!!!!」

 

龍翼を広げて飛翔すると一高速の為に一筋の光の線になって俺達は見滝原病院に向かった。

 

「お、なんだ、あの赤い光?・・・よしうまく撮れたぞ。帰って編集長に記事にできないか聞いてみるか」

 

しかしこの時誰かに俺達の写真に撮られたのに気づいていなかった・・・

 

 

 

 

 

 

~~マミサイド~~

 

「マミさんここです!」

 

「ええ!」

 

何も話してくれない自分勝手な一真君が無理やり話を聞かせようとした乱暴な態度に腹を立てて思わず叩いてしまい落ち込んでたけど魔女が現れたなら落ち込んでなんかいられない。

 

落ち込む気持ちを切り替えてソウルジェムを掲げて結界を開く。

 

《キュゥべえ、グリーフシードの状況を教えて》

 

《大丈夫すぐに孵化する様子はないよ》

 

結界の中にいるキュゥべえにテレパシーで連絡をとる。

 

私たち魔法少女はキュゥべえを介してキュゥべえや他の魔法少女、魔法少女の素質を持った子と離れた場所でも連絡を取り合えるが離れすぎていると連絡できない。

 

だが幸いにも結界外からでも連絡はとれた。

 

《急がなくていいからなるべく静かに来てくれるかい?迂闊に大きな魔力を使って刺激する方がマズイからなるべくならここに来るまで変身しないでほしい》

 

《オーケー分かったわ》

 

鹿目さんと一緒に魔女の結界に跳び込んだ。

 

「まったく無茶しすぎ・・・って言いたいけど今回は二人に感謝しないとおかげでこれなら魔女を逃さずに・・・誰!?」

 

結界の最深部に向かう道中、目の前に暁美さんが立つ塞がる様に物陰から現れた。

 

「ほむらちゃん・・・」

 

「またあなたなの?暁美さん」

 

「今回の魔女にはあなたじゃ勝てない、だから今日の獲物は私が狩る。もちろん二人の安全は保証するわ」

 

この先に孵化しようとする魔女がいて近くには美樹さんとキュゥべえが待ってる。

 

こんな所でグズグズなんかしてられないのに・・・

 

「・・・どういう意味かしら?私じゃ勝てないって?」

 

なぜ私が魔女に戦って負けると断言できるか分からないけどキュゥべえを襲った事実がある。

 

そもそも生まれてもいない魔女に私が勝てないとどうして暁美さんに分かるのか?

 

「そのままの意味よ、それにあなたは魔女より恐ろしく強い城戸一真の宿敵である白龍皇に命を狙われてる。狙いはまどかと美樹さやかの契約を防ぐ事。あなたが二人の契約を諦めれば狙われることはない」

 

一真君のライバルである白龍皇が私を狙っている?

 

白龍皇は一真君との決着をつけるのが目的なのにどうして私を?

 

「白龍皇ってあの白い鎧の人がマミさんを・・・」

 

鹿目さんが驚いているが私を引き下がらせる為の出まかせかもしれない。

 

「だから手を退けと?そもそも私が狙われているのをなんであなたが知ってるの?それを信用すると思って?」

 

魔力を感知して魔女が孵化しないか心配だが地面に手を置き魔法を発動させると暁美さんの足元から鍵付きチェーンが編み込まれたリボンが出て暁美さんを縛り上げる。

 

目的を教えず信頼もできない暁美さんの作り話をこれ以上聞く筋合いはない。

 

「しまっ・・・!?ば、バカ!こんな事やってる場合じゃ・・・!」

 

「大人しくしていたら帰りに解放してあげる。怪我させるつもりはないけどあんまり暴れたら保証しかねるわ」

 

暁美さんが暴れて拘束魔法を解こうとするが私の魔法はそう簡単には解けないわよ。

 

なにしろ模擬戦で赤龍帝の鎧を纏った一真君が力を込めても切れなかったんだから。

 

暁美さんが後ろで叫んでいるけど魔女が生まれる近くで美樹さん達が待っているのに聞く暇ない。

 

「くっ巴マミ、城戸一真の思いをムダにする気!!」

 

一真君の名前が出て思わず足を止めてしまう。

 

「確かに彼はやりすぎたしまった事は私も認めるわ・・・けどそれはすべて白龍皇からあなたを護る為だったの」

 

「・・・・・・・」

 

「マミさん・・・」

 

鹿目さんが心配そうに声をかける。

 

私だって一真君に対して思う所はある。

 

あなたより付き合いは長いんだもの。

 

城戸一真君。

 

年下だけど頼りになる男の子。

 

初めて会ったのは私がまだ魔法少女として新米だった頃

 

私は魔女に囚われた子供を助けようとしたが力不足で助けることができず自分の命惜しさに逃げようとした時。

 

彼は魔女の部屋の扉を突き破って現れた。

 

最初見た時なんで魔法少女でもない男の子がこんな所にと思った。

 

でも彼は普通の男の子とは違い魔女と戦える力を持っていて子供を助ける為に懸命に魔女と戦い。

 

魔女を倒す為に自分の左腕を犠牲にして私が倒せなかった魔女を倒してくれた。

 

彼がいなかったら私は子供を見殺しにして今でも後悔し続けてたかもしれない。

 

魔女を倒した一真は逃げようとした私を攻めずに一緒に戦おうって誘ってくれた。

 

一緒に戦ってくれる仲間ができて私はもう一人ぼっちじゃ無くなったんだと嬉しかった。

 

その後、魔女や使い魔と戦いの日々は続いたけど辛くはなかった。

 

一緒に笑ったり魔法の特訓したり魔女と戦う作戦を考えたり遊びに出かけたり勉強を教えてあげたり食事を一緒に摂ったり魔法少女になって初めて心の底から楽しい時間を過ごせたから。

 

……でも一真君の隣には佐倉さんがいた。

 

暁美さんと初めて会ったあの日、一真君は今日みたいに珍しく焦っていたわね。

 

訳を尋ねても彼は結局何も話してくれなかった。

 

どうして仲間なのになんで相談してくれないの?

 

私の中で彼に対する不信感が生まれたのはこの時だったと思う。

 

そして巻き込まれた鹿目さんと美樹さんを助けた時、美樹さんから他の魔法少女を襲撃する黒い魔法少女の存在を知り、黒い魔法少女服を着た暁美さんがキュゥべえを襲ったと聞かされ私は暁美さんにマスケット銃を向けた。

 

キュゥべえは魔法少女という希望を振りまく私の友達だ。

 

そんなキュゥべえをグリーフシード独占という私利私欲の為に襲った暁美さんが許せなかった。

 

でも一真君はマスケット銃の銃口前に立ち身を挺して暁美さんを庇った。

 

どうして暁美さんを庇うの?

 

一真君は暁美さんが襲撃犯じゃないと言って佐倉さんも暁美さんは信用できないが背中預けて一緒に戦ってる相棒の一真君の言葉なら信じると・・・。

 

その言葉を聞いた時あの二人の間に入り込む余地はないと悟った。

 

そっか私って一真君の事が・・・

 

でももうなにかも遅いの・・・

 

私から彼の差し伸べる手を振り払ったから。

 

彼に助けられる資格なんてもうない。

 

「・・・・行きましょう鹿目さん」

 

「は、はい!」

 

「ま、待ちなさい!今度の魔女は・・・これまでとは訳が違う!!」

 

後ろで叫んでいる暁美さんを無視して先を急いだ。

 

「あ、あのマミさん」

 

「何?」

 

鹿目さんに後ろから声をかけられ振り返る。

 

「その、私なりに願いというか色々考えて見たんです・・・考えが甘いって怒られるかもしれないんですが歩きながらでいいんで聞いてもらえますか?」

 

「もちろんよ、でも歩きながらなんかじゃなくてちゃんと止まるから聞かせて」

 

私は足を止めて体を鹿目さんの方に向けた。

 

キュゥべえの気配はだいぶ近くなっている。

 

この距離なら万が一に孵化が始まったと連絡がきても魔法少女になれば十分間に合うと判断したからだ。

 

それになにより決心したような鹿目さんの目を見て無下になんかできない。

 

「・・・わたし、引っ込み思案でさやかちゃんや杏子ちゃんみたいにみんなを引っ張れる明るい性格じゃなく、かといって成績優秀な仁美ちゃんやバイオリンの上手い上条君のように得意な教科や自慢できる才能とかも何もなくて、誰かの為に戦える一真君と違い役に立てないまま毎日を過ごしていく自分がずっと嫌だったんです・・・」

 

鹿目さん…

 

「でも誰かを助ける為に戦っているマミさんや一真君を見て、それと同じことが自分にも出来るかもしれないって知った時何よりもそれが嬉しくて、だからわたし魔法少女になれればそれで願いが叶っちゃうです」

 

鹿目さんが笑顔を向ける。

 

その笑顔が今の私には眩しかった。

 

「こんな私でも役に立てるんだよって胸を張って生きていける事が一番の願いなんです」

 

すごいわね鹿目さん。

 

そこまで考えられるなんて。

 

それに比べて私は・・・

 

「あ、ご、ごめんなさい。ダ、ダメですよねこんな甘い心構えで魔法少女になっちゃ・・・」

 

攻められるわけないじゃない。

 

佐倉さんに嫉妬して自分だけの仲間を作ろうとしている私が・・・

 

「私、鹿目さんが憧れるほどのものじゃないわよ・・・」

 

「ホントは一真君と佐倉さんの仲が羨ましくてあなた達を誘ったの・・・」

 

私の弱音と本心を聞いて鹿目さんはどう思うだろう。

 

きっと軽蔑するでしょうね。

 

でも鹿目さんの笑顔を見たら私の卑しい本心を隠し通せなかった。

 

「がんばってカッコつけて先輩をしてるけど一真君や佐倉さんから離れて独りに戻ってからは後悔して泣いてばかり・・・」

 

だんだん鹿目さんをまともに見れなくなって視線をそらそうと俯いていく。

 

軽蔑しただろうな。

 

頼りになる先輩の正体がこんな情けない先輩だったんだから。

 

「そんなことないです!マミさんはもう独りじゃないですよ」

 

力強い鹿目さんの声。

 

その声は軽蔑なんかじゃなかった。

 

鹿目さんの予想外の対応に思わず顔を上げる。

 

「わたしじゃあ頼りないかもしれなけど…それでもマミさんの傍にいます。わたしも一緒に戦ってもいいですか?」

 

受け入れて…くれるの?

 

私の弱さを…?

 

こんな私を?

 

「・・・あ、あはは・・・わたし・・・ちゃんと先輩らしくしてなきゃいけないのに・・・やっぱダメだな私・・・・」

 

思わず涙がこぼれ慌てて拭う。

 

「でも、ありがとう・・・魔法少女コンビ結成だね!」

 

鹿目さんは私の弱音を聞いてもなお魔法少女になって私と一緒に戦ってると言ってくれた。

 

こんなにも心が晴れ渡ったのは小学生の時に一人で戦ってた時に一真君と佐倉さんに出会った以来かな

 

一真君と佐倉さんの二人には悪いけど私にも私だけの仲間ができた。

 

これで・・・戦える。

 

心が軽くなった、もう何も怖くない。

 

 

 

 

使い魔を倒しながら最深部の部屋に入ると大きなケーキやキャンディなどのお菓子が部屋全体に辺り一面に散りばめられていた。

 

よっぽどお菓子が好きな魔女なのね。

 

魔女じゃなかったら気が合いそうだったのに。

 

おっとそれより早く美樹さん達とグリーフシードをみつけないと。

 

小さなグリーフシードを探すより美樹さん達のいる近くに卵はある筈だから二人を見つけた方が早い筈。

 

えっと美樹さんとキュゥべえを探す・・・。

 

「うう・・・マミさん早く来て・・・」

 

いた!

 

小さな声がしてそちらの方を見ると大きなドーナツの物陰に隠れてたキュゥべえと怯える美樹さん。

 

そして今にも魔女が誕生しそうな真っ黒なグリーフシードを見つけた。

 

「おまたせ」

 

「マミさん!」

 

急いで美樹さんの方に駆け寄ると美樹さんの不安そうな顔から嬉しそうな表情に変わる。

 

「もう無茶をして・・・」

 

「ご、ごめんなさい・・・でも・・・」

 

「分かってる、あとは任せて」

 

怖いのに未来の後輩が勇気を出してここまで頑張ってくれたんだ。

 

あとは先輩の私に任せなさい。

 

《来るよ》

 

グリーフシードが孵化してお菓子の箱から白い生クリームがあふれ出して椅子の上にちょこんと座るピンク色のぬいぐるみのような魔女が誕生した。

 

ちょっとかわいいけど魔女は魔女。

 

放っておいたら人に危害を加える。

 

だから遠慮なんかしないわよ。

 

「せっかく生まれたばかりで悪いけど・・・」

 

野球のバットのようにマスケット銃で振りかぶり。

 

「一気に決めさせて…もらうわよ!」

 

生まれたばかりの魔女をマスケット銃で打ち上げ巨大なマスケット銃を召喚する。

 

これでとどめよ。

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

決まった。

 

そう思った時、煙の中から人影が見える。

 

・・・違うさっきの魔女じゃない!?

 

煙がゆっくりと晴れていくそこには…

 

「そんな!」

 

「アイツは!」

 

背後で鹿目さんが驚き美樹さんの怒った声する。

 

いつのまに結界内に入ってきたの!

 

いえ、それよりなんで魔女を庇ったの!?

 

タイム・リミット(時間切れ)だ巴マミ、お前の命運も魔法少女としての戦いも今日この日を持って終わる」

 

暁美さんが言ってたのは本当だったの・・・。

 

私達の前に逃げようと必死にもがいて暴れる魔女を左手でしっかり捕まえ右手で私のティロ・フィナーレを防いだ魔方陣を形成している白い鎧を身に纏った白龍皇が大きな翼を広げて空に浮かんでいた。




14話のあとがきでも書きましたがマミさんが食べられるあの有名なシーンは上条さんがそげぶしました(爆)

なぜ上条が魔女を助けたのかは次々回で明かされます。

今回の一真と杏子の前に現れた魔女は以前の斧を持った一つ目魔女と同様『魔法少女まどか☆マギカ ~The different story~』に出てきた幻惑の使えなくなった杏子が苦戦した魔女を出しました。
漫画で苦戦した借りを使えなかった幻惑で返してリベンジできたかな。

そして一真君の新しいフォームその名は「奇跡の大空を舞う龍帝(ミラクルスカイフォーム)

パワー強化もあるならスピード強化もお約束だからね。

そしてついに姿を現したスピンオフ作品おりこ☆マギカのラスボス兼主人公の今後の活躍は?

次回を楽しみに待ってくれたら嬉しいです。
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