アーシアが悪魔になってから一週間後
ピリリリリリッ!
安眠を阻害する目覚ましの音が俺の意識を覚醒させる。俺はベッドの上でゆっくりと瞼を開く。すぐ横から大人しい寝息が聞こえてきたため、顔だけそちらを向けて見てみると、そこには天使のような寝顔をしたアーシアがすやすやと眠っていた。
一言だけ言わせてほしい。
何故こうなった?
話は昨日に遡る。
アーシアは悪魔になってから一応の寝泊まりは部室で行っていた。 まさかあの教会で生活させる訳にもいかないしな。なんと部室にはシャワー室と寝室があるので、とりあえずはそこで生活していたのだ。
しかし部長が、いつまでもここで寝泊まりをさせる訳にもいかないとのことで、部屋に空きがあるイッセーかアパートで独り暮らしをしている俺の2択の選択をアーシアには強いたのだ。
男の家よりも女子同士の小猫や朱乃先輩の家の方がいいのでは?と思ったのだが、色々と事情があるらしい。ちなみに最近知ったことだが、部長はイッセーの家に居候しているらしい。 イッセーふざけんな。
それで、アーシアがほぼ即答で俺の方を選んだのだが、さすがに年頃の男女が二人っきりで生活するのはどうかと疑問に思い、返事を渋ってしまう。
俺の反応を見たアーシアが涙目になってしまったんだ。俺はアーシアの悲しそうな顔を見て、ほとんど反射的にOKした。あれはいかん。泣かせるなんてことはさせたくない。
それに、俺としてはアーシアをイッセーと一緒にさせたくなかった。 純情な乙女が野獣に汚されるのは見ていられない。
結果的にアーシアと二人っきりで同棲。やばいぞこれ。落ち着け俺。
………まあ、そんなこんなでこの状況である。
━━とりあえず
「飯でも作るか」
あー、昨日買い物してないから冷蔵庫の中身全然ないな。簡単な物しか作れないけど、仕方ないか。
「うし、完成っと」
俺は朝食をぱぱっと作る。
料理を皿に盛り付けている時に、眠たそうに瞼を擦りながらリビングに入ってくるアーシア。
「シューヤさん、おはようございます」
「おはよう、アーシア。朝ごはん作っといたから食べよっか」
最後の品をテーブルに置いてそう言った。
「す、すみませんシューヤさん!任せっきりにしてしまって」
「じゃあ、次から手伝ってもらうよ。さあ、早く食べないと遅刻するぞ?」
俺たちは椅子に座り、手を合わせて朝食を食べ始めた。
▽
「そろそろ貴方達に使い魔を持たせてもいいかもしれないわね」
悪魔の仕事が終わった俺は魔方陣から転移して、部長に報告した時にそう言われた。
「使い魔なんているんですか?」
「ええ、いるわよ。私の使い魔はこれよ」
部長の側に出てきたのは、赤い色が特徴的な蝙蝠だ。俺は部長の使い魔を興味津々に見る。
へえ、これが使い魔か……結構可愛いんだな。てっきりザ・化け物みたいなのが出てくるかと思ってた。
次に見せてくれるのは副部長の朱乃先輩だ。同じく魔方陣を出現させる。
「私のはこの子ですわ」
出てきたのは手のひらサイズの小さな鬼だった。なんとも可愛らしい。
すげえ、鬼もいるのか。あー、でもおれ自身も悪魔だからいてもおかしくないか。
「シロです」
朱乃先輩の次は小猫だ。出現させたのは名前の通りに白猫だった。うん、毛並みが綺麗で可愛い。
そして最後に祐斗が出そうとするが
「おまえのはいいや」
イッセーがすぱっと拒絶する。
おいイッセー、祐斗が可哀想じゃないか。
俺とアーシアは見てみたかったので見せてもらったが、祐斗の使い魔は小鳥だった。こっちも可愛いね。
なんか可愛いしか言ってないような気がするけど、まあ気にしない。
部長たちはみんな小動物を使い魔にしてるのか。俺はどうせならでかくて強いやつを使い魔にしたい。
俺は新しいおもちゃを買ってもらう子供のようにわくわくしてしまう。もちろん顔には出さないように、あくまでも心の中でなのだが。 朱乃先輩の入れてくれたお茶を飲んでから出発することになり、俺達はソファーで寛いでいる。
すると不意にドアがノックされる
ん?俺たち意外にここに来るなんて珍しいな。
悪魔関係か?
朱乃先輩が代表してドアを開ける。中に入ってきたのは、この駒王学園でもオカ研と同じくらい有名な生徒会メンバーの人達だった。
生徒会の皆さんの先頭にいるのは生徒会長の 支取蒼那先輩だ。
眼鏡を掛けていて、真面目という言葉がとても似合う人だと思う。
支取会長が部長に話しかける
「リアス、彼らが以前言っていた?」
「ええ、戦車の如月秋夜と兵士の兵藤一誠、僧侶のアーシア・アルジェントよ。貴方達、挨拶しなさい」
部長に促された俺達はソファーから立ち上がり、会長と向き合って姿勢を正す。
「はじめまして、戦車の如月秋夜です。よろしくお願いします」
「はじめまして。リアス・グレモリー様の眷属、兵藤一誠です」
「は、はじめまして。僧侶のアーシア・アルジェントともうします」
「はじめまして。学園では支取蒼那と名乗っていますが、本名はソーナ・シトリーです。リアスと同じ上級悪魔でシトリー家の次期当主でもあります」
会長も次期当主だったのか。ていうか、会長の本名がソーナ・シトリーって………もうちょっと凝った偽名はなかったのかな。
俺は苦笑いをして支取会長を見ていると、隣に立っている男子にすごい睨まれてしまった。
え、何?俺なんかしたっけ?
大して怖くもなかったので取り敢えずスルーしておくことにしよう。
「それで、何か用事でもあるのかしら?」
「ええ、こちらも新しい眷属を紹介しようと思いましてね」
会長がそう言って横に出してきたのは、さっき俺を睨んできた男だった。
「はじめまして。ソーナ・シトリー様の兵士の匙元士郎です。よろしくお願いします」
匙元士朗か。一応名前を覚えておこう。
「俺と同じ兵士か、よろしくな!」
イッセーが笑顔で握手を求めるが、匙は鼻で笑う。
「俺としては、変態三人組の1人と同じ兵士なんて、プライドが傷つくんだけどな」
あ、イッセーの笑顔が凍った。
確かにイッセーはスケベの塊だけど初対面でそれはなくないか?
俺の匙元士朗への評価はただいま急降下中だ。さすがに初対面であの対応はあり得ない。俺達だったからよかったものの、下手したら会長の評価も下げられることになってたぞ。
「サジ、やめなさい。...すみません私の眷属が迷惑をかけてしまって」
「なっ!なんでこんなやつに謝るんですか!?」
「どう考えても貴方が悪いからでしょう。それに、兵藤君を下に見ているようですが、彼は兵士の駒を8つも消費したのですよ?貴方では手も足もでません」
匙元士朗はその事実に目が飛び出るほど驚いていた。
聞けば彼の駒の消費量は4つだそうだな。イッセーを格下と思い込んでるから恥をかくことになる。自業自得だ。
その後も、部長たちは悪魔のことについて話をして生徒会との顔合わせが終了した。
▽
俺は今、使い魔を得るために使い魔の森というところに来ている。
周りを見回してもあるのは埋め尽くされるほどの大量の木々。自然豊かで気持ちが良い━━━なんて、思えるほど今の俺に余裕はない。なぜなら
迷子だから。
………おかしいな。ついさっきまで皆と一緒にいたはずなんだけど、気づいたら俺だけ独りぼっちになってるじゃん。
思い出すんだ俺、何故こうなったのかを。
ええっと、確か、この森の案内人のザドゥージさんの先導で進んでたんだよな。歩いている途中で、イメージをぶち壊すようなムキムキのウンディーネが泉から出てきたり、服を溶かすスライムをイッセーが使い魔にしようとしたり。
まあ、そのスライムはアーシアの服を溶かそうとしたから雷で蒸発させたけど。
んで、それからも暫く歩いていたら奇妙な形の植物を見つけたんだ。それが気になって近くまで行って観察してたら皆がいなくなってたわけ。
あれ?これ自業自得じゃね? 匙のことを言えたもんじゃないな、ははっ……。
はあ。
とにかく進むか。
それからいくら進んでも同じような景色ばかり広がってくる。そろそろうんざりしてきそうだ。
そういえば、さっきから動物らしき鳴き声が頻繁に聞こえてくるんだが、本当に動物なんだよな?血の気が盛んな怪物でしたー、なんて洒落にならないぞ。
かれこれ一時間以上歩いただろうか。足だけでなく全身に疲労が溜まってきため、俺は丁度近くにあった川辺で休憩することにした。
「あー、ひんやりして気持ちいい」
俺はパンパンになった足を川の中に沈める。冷えた温度が疲れた足を癒すようで非常に気持ちいい。ついでに顔も洗って気分をリフレッシュ。
「よし、そろそろ再開するか」
20分程休み、大分疲労がマシになる。俺は立ち上って体を伸ばし、部長たちを探しに行こうとした。
━━━その時
ドゴォォォンッ!!
「っ!? な、なんだ!?」
突如、まるで隕石のような速度で何かが俺の前方に落下してきた。大量の土煙が舞い上がり、その正体が何なのかわからない。
次第に土煙が晴れていき、その姿が明らかとなる。そこに落ちてきたのは俺の何倍もの大きさの生物。
青い鱗に包まれた強靭そうな巨体。あらゆるものを噛み砕きそうな牙。見た者を震えあがらせるほどの眼光と鋭く伸びた鉤爪。そして、羽ばたくだけで突風が起きる翼。
こいつって、もしかしなくてもドラゴン………?
そう、見た目がゲームなどで出てくるドラゴンそのものだ。画面越しで見るだけならかっこいいで済むが、生ドラゴンはまずい。非常に不味い。
え、やばくね?こんなのに襲われたらひとたまりもないんですけど!? 死んだフリ?死んだフリすればいいの?
脳内で盛大にパニックを引き起こしていると目の前のドラゴンがその大きな口を開いて話しかけてきた。
「そのオーラ、クローゼか?」
俺はドラゴンが言語を話せることに驚く。
こいつ、クローゼのこと知ってるのか?
ドラゴンの問いかけにクローゼは神器を通して答える。
『久しいな、ティアマットよ』
「は?クローゼの知り合い?」
クローゼはうむ、と言う。その後、俺は人生のなかでトップレベルにランクインするほどの衝撃的な事実を聞くことになる。
『ああ、俺の妻だ』
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
「は?」
クローゼの妻発言にこのドラゴンは頬を赤らめ、体をくねくねさせながら言う。
「妻だなんて、恥ずかしいな...///」
いやいやいやいやっ!?
ちょっと待って!? クローゼお前奥さんいたの!?
しかもお前メスだったのかよ!! 厳ついのにくねくねするんじゃねえ! 恐怖でしかないわ!!
『相変わらず凛々しく、美しいなティアマット。主よ、俺達はこれでも封印されるまではなかなかイチャラブだったんだぞ?』
お前からイチャラブなんて言葉を聞く日が来るなんて思いもしなかったよ俺は………。 いや、もうなんでもいいや。
俺は半ば投げやりになってクローゼの奥さん━━━ティアマットさんだっけか?に、話しかけてみる。
「ええっと、ティアマットさん、それで何のご用で?」
「なに、久しぶりのオーラを感じたので来てみたのだ。ああ、後私には敬語は要らないぞ。それに、クローゼはお前のことを気に入ってるそうだから私のことをお姉さんかお姉ちゃんと呼んでもいいぞ?」
なにをどうしたらその呼び方になるんだよ。
「いや、いい」
俺はほぼ脊髄反射並の速さで即答する。
「ならお義母さんの方がいいか?」
「尚更嫌だわ!」
「むぅ、そうか」
なんでそんなにガッカリしてんだよ。そんなにも俺に姉として呼ばれたいのか。
ティアマットは無言で黙りこんでしまう。顔からは表情が全然読み取れないが、身体中から負のオーラが滲み出ている。
………く、なんだこの罪悪感は。まるで俺がいじめっ子みたいな立場になってるじゃないか。
「まあ、気が向いたらそう呼ぶよ………」
「そうかそうか!是非呼んでくれ!」
俺はとうとう折れてしまい、ため息をついて一応のOKをだす。ティアマットはそれを聞いて心底嬉しそうだ。
よ、喜んでもらえたなら良いんだけどな。
『なあ、ティアマット。良ければ主の使い魔にならないか?」
「はい?」
クローゼが予期せぬタイミングでとんでもないことをいってくる。
ちょっと待て!? 確かに俺はでかくて強そうな使い魔が欲しいとは言ったけど、これはボスレベルだろうが!!
「ああ、いいぞ。そうすればいつでも二人に会えるしな!」
ティアマットの拒否に期待していたのだが、それは儚く散っていく。
『そう言うわけだ主よ、ティアマットと契約してくれ』
俺に拒否権はないんですか、そうですか。
てか、これ絶対クローゼ本人の願望だよな?
『・・・・・・』
あ、おい!黙りこむんじゃねえよ!
結局、ティアマットと使い魔の契約を結ぶことになってしまった。後からクローゼから聞いたことなんだけど、実はティアマットがドラゴンの中でもトップクラスの力を持つ五大龍王の一角なんだそうだ。
さすがに信じることが出来なかった俺は、実際に本人に確かめて見たところ、いたって平然と頷かれた。
マジですか。
龍王ですか。
それが………使い魔ですか………。
使い魔契約をしたあと、無事に皆と合流出来たけど、案の定この事を話したら声を上げて驚かれた。
そりゃ驚くわな。 俺だってまだ驚いてるもの。
因みにアーシアは子供の蒼雷龍《スプライト・ドラゴン》と契約を出来たそうだ。心の綺麗な者にしかなつかないドラゴンらしい。そのドラゴンと契約できるなんてさすがアーシア!
それとイッセーなんだが、契約は出来なかったそうだ。あいつはスライムと契約するつもりだったんだろうけど、危険分子は取り除いとかなきゃな。
まあなんにせよ、俺に新しい仲間が増えました!
ティアマットを使い魔にしたかったのでこうなりました。色々ひどい内容ですが、許してください。
最後まで読んで頂き有難うございます。
これからも応援よろしくお願いします。