俺たちは今、緊急にはぐれ悪魔討伐を依頼されたため廃工場にいる。
「ここか。みんな、油断するなよ」
俺はイッセーと祐斗、小猫にそう言う。
イッセーと小猫は返事をして気を引きしめているが、祐斗だけがぼーっとしている。
イッセーの家でアルバムを見せてもらってからずっとこの調子だ。何かあったのか?
すると、工場の奥から目標のはぐれ悪魔が出てきた。
「げひゃひゃひゃひゃっ!」
なんとも下品笑い方だ・・・・・。
聞いてて不愉快になってくるな。早く倒してその口を閉じさせよう。
「イッセー、お前は倍加を溜めておけ。行くぞ、二人とも!」
「おう!」
「はい」
「.....」
俺の言葉を聞いた二人は返事をするが、祐斗がいまだに上の空だ。
「祐斗、聞いてるか?」
「あっ、うん、聞いてるよ」
内心で『絶対聞いてなかっただろ....』と呟くが、今はそれどころじゃない。
はぐれ悪魔が俺の方に突っ込んできて鋭い爪で薙いでくる。
なかなか速い攻撃だが、取り乱さず冷静に避ける。
「おらぁッ!」
小猫の方に向かって蹴り飛ばす。
「えい」
小猫に向かって吹き飛んでいったはぐれ悪魔を何とも馬鹿げた力で殴り飛ばす。
「祐斗、決めろ!」
俺が合図を出すが、祐斗は立ち尽くしている。
体勢を立て直したはぐれ悪魔がチャンスと思ったのか、祐斗に向かって粘液のようなものを飛ばしてきた。
「っ!?」
祐斗は迫り来る攻撃に気付くが、恐らく回避は間に合わない。
「くそっ!」
俺は即座に雷輝龍の籠手を装着し、祐斗の前に雷のバリアを張る。
ぎりぎり防ぐことができたが、今のは危なかった・・・・!
ったく、本当にどうしたんだよ。らしくないぞ?
「ボケッとするな、イケメン!」
イッセーが祐斗に叫ぶ。
動かさせるように裕斗が剣を抜き、はぐれ悪魔の胴体を一刀両断する。
━━━が、下に落ちているパイプに躓いてしまう。
まだ生命力が残っていたはぐれ悪魔が、身動きの取れない裕斗に襲いかかる。
「させません」
間一髪のところで小猫がはぐれ悪魔を押さえつけ、上空に投げ飛ばす。
「イッセー、ぶちかませ!」
「おっしゃー!いくぜ!ドラゴンショット!!」
『Explosion!』
倍加を解放したイッセーの強烈な赤い魔力弾が、はぐれ悪魔を飲み込み消滅させた。
「相変わらず倍加をしたらすごい力だな。倍加をしたら」
「倍加を強調すんな!」
だって、事実ですもの。
仕方ないだろ?
イッセーを弄って遊んでいると部長達が近づいてくる。
「あらあら、私達の出番がありませんでしたわね」
「皆がそれだけ成長したってことね」
「皆さん、お怪我はありませんか?」
残念がる朱乃先輩、嬉しそうに微笑む部長、不安がるアーシア。
それにしても、最近本当に裕斗の様子がおかしい。
いつもなら爽やかに攻撃を避けて相手を倒していたはずなのに。
俺が考えていると、パァン!と、ビンタをする音が響く。
「少しは目が覚めたかしら? ひとつ間違っていれば誰かが危なかったのよ?」
「すみませんでした。調子が悪かっただけです。今日はこれで失礼します」
淡々と述べて部長に一礼し、この場を去ろうとする裕斗。
「おい、待てよ木場!」
「裕斗!」
俺とイッセーが裕斗の様子が元へ急いでかけつける。
「どうしたんだよお前、まじで変だぞ?」
「君たちには関係のないことだ」
突っぱねるようなその言葉に俺はむっとしてしまう。
「関係なくはないだろ。友達を心配して何がいけなんだ」
「友達か・・・・・。二人とも、僕はね、基本的なことを忘れていたよ、ぼくが復習のために生きているってことを」
祐斗は爽やかとは真逆の黒い笑みを浮かべて、言う。
「復讐?」
復讐・・・・。
俺達みたいに普通に育った環境だと、恐らく無縁な言葉だろう。
しかし、祐斗は射殺すような鋭い目付きではっきりと言った。
裕斗・・・・。なんでそんな怖い顔をしてるんだよ・・・・。
「聖剣エクスカリバー。それを破壊することが僕の生きる意味だ」
その言葉を残して、裕斗は1人この場からいなくなった。
▽
俺達は今、オカルト研究部の部室で部長から裕斗について教えてもらっていた。
聖剣とは、悪魔にとって害にしかならない。
触れれば身を焦がし、斬られれば即消滅してしまう危険性がある。
正に悪魔特化の武器ってわけだ。
でも、その聖剣を扱える人間は限りなく少ない。そこで教会側が『ならば人工的に作ってしまえばいい』という結論に至ったんだ。
所謂、人体実験だろう。
そこの被験者なったのが裕斗を含めた少年少女達だ。
俺はそれを聞いて驚愕した。
本当に教会の人間かよ・・・・。
自分を信仰してくれている者達が、そんなおぞましいことを平然としているのに、神様は何とも思わないのか?
そして俺が一番腹にたったのが、裕斗達が上手く聖剣に適合しなくて全員が殺処分することになったということだ。
裕斗は奇跡的に逃げ出すことができたが、他の全員は1人残らず殺されたそうだ・・・・・。
これが裕斗の抱え込んでいるもの。
それなら聖剣に恨みを持ってもおかしくない━━━持って当たり前だ。
だけど、全部1人で抱え込まなくてもいいじゃないか。
俺が、仲間がいるんだから・・・・・。
「木場・・・・」
イッセーが悲しそうな顔をする。イッセーだけじゃない、俺達全員が悲しい。
▽
次の日、更に厄介なことが起きた。
なんと聖剣使いがこのオカルト研究部の部室に訪問してきたのだ。
初めは攻め込んできたのかと思い構えてしまったが、部長から制止させられてしまった。
「会談を受けてくれて感謝する。私はゼノヴィア」
「私は紫藤イリナよ」
二人が自己紹介をしてくる。
青色の髪に前髪に緑のメッシュが入ってる方がゼノヴィアで茶髪にツインテールなのが紫藤イリナだ。
「それで、教会関係者が何の用かしら?」
「元々行方不明だった一本を除く6本のエクスカリバーは教会の3つの派閥が保管していましたが、その内3本が堕天使の手によって奪われました」
おいおい、半分盗まれてんじゃないか!
イリナが話した後に今度はゼノヴィアが
「私たちが持っているのは残ったエクスカリバーの内、破壊の聖剣《エクスカリバー・デストラクション》」
「私が持つ、この擬態の聖剣《エクスカリバー・ミミック》の2本だけ」
そう言って、ゼノヴィア達が聖剣を見せてきた。
破壊の聖剣は刀身がとてもでかい。名前の通り、破壊力がすごそうだ。
イリナの持つ擬態の聖剣は腕に紐状にして結んでるため、本来の形状がわからない。・・・・いや、擬態だから形は自在なのか。
「で、どうしてほしいわけ?」
部長は聖剣を見た後に本題に入る。
「今回の件は我々と堕天使の問題だ。この街にいる悪魔どもに要らぬ介入をさせるのは面倒なのでな」
「随分な物言いね。私たちが堕天使と組んで聖剣をどうにかするとでも?」
部長が少し語気を強めて言う。
「悪魔にとって聖剣は厄介だろう?堕天使と利害が一致するじゃないか」
「私は堕天使と手を組むことはないわ。グレモリーの名に懸けて、魔王の顔に泥を塗るようなことはしない」
すると、ゼノヴィアがふっと笑む。
「それが聞けて安心した。今のは本部の意向でね、魔王の妹がそこまでバカだとは思ってないさ」
「そう、なら私たちも教会側には協力しないということでいいのね?」
ゼノヴィアは首を縦に振る。
「無論。この街で起こることに一切の介入を約束してくれればいい」
「了解したわ」
会談が終わり二人が部室から出ていこうとするときに、ふとアーシアを見る。
「もしやと思ったが、アーシア・アルジェントか?」
「は、はい」
突然ゼノヴィアがアーシアに話しかけてくる。
「まさかこんな地で魔女に会うとはな」
その言葉にアーシアは酷く怯えてしまう。
こいつ、今何て言った・・・・・?
俺も言葉の意味を理解したときに、二人に訂正してもらおうとした。
だが、そのせいでせっかくの会談を潰してしまうと思い、ぐっと堪える。
「あー、貴方が魔女になったという元聖女さん? 堕天使や悪魔を癒す力を持ったために追放されたとは聞いていたけど、悪魔になっていたとはねー」
「しかし聖女と呼ばれていたものが悪魔になるとはな。堕ちれば落ちるものだ。まだ我らの神を信じているのか?」
ゼノヴィアの質問にイリナは首を傾げる。
「ゼノヴィア、彼女は悪魔になったのよ?信仰心なんて━━━」
「いや、罪の意識を感じながら信仰心を忘れられないものがいる。その子にはそういう匂いが感じられる」
アーシアは俯き、今にも泣きそうになりながらも答える。
「す、捨てきれないだけです・・・・。ずっと、信じてきたのですから・・・・・」
すると、ゼノヴィアが聖剣を抜きながらアーシアにいう。
「ならば私たちに斬られるといい。私たちの神が救いの手を差し伸べてくれるはずだ」
━━━その一言で、俺の中で何かが切れた。
「おい」
俺は低く、ドスの効いた声で二人に全力の殺気を込めてそう言った。
「「っ!?」」
二人は冷や汗を流しながら俺の方を向いて驚愕する。
「おまえら、黙って聞いていれば好き勝手言いやがって」
「秋夜、止めなさい!」
俺はアーシアの前に庇うように立って聖剣使い二人を睨むと、部長が慌てて止める。
「部長すみません。でも俺、アーシアが貶されるのを黙って見ていられるほど大人じゃないんですよ」
「シューヤさん・・・・・」
アーシアはひどく怯えた様子で俺の手を握る。
ごめんな、アーシア。こんな怖い思いさせて。
部長が何と言おうとこれだけは見過ごせないんだ。
「お前らにアーシアの何がわかる?それに魔女だとも言ったな。訂正しろ」
「そ、それは出来ない、悪魔を癒してしまうのがいけないんだ」
ゼノヴィアは震えながらも俺の目を見て言う。
「勝手に聖女と祭り上げておいて、悪魔1人を癒しただけで魔女扱いか・・・・。アーシアはそのせいで一人ぼっちだったんだよ、お前らにその気持ちがわかるのか?」
「聖女は神からの愛のみで生きていける・・・・。愛情や友情を求めるなど、はなから聖女の資格など無かったのだ」
ゼノヴィアはこれが当たり前だと言わんばかりの調子で話す。
俺には到底理解できないがな。
「神からの愛か・・・・。神のくせしてアーシア1人幸せに出来ないなんてたかが知れてるな」
「なんだと?我らの神を侮辱するのか?」
俺の発言にゼノヴィアは眉を寄せる。
「ああ、何度でも侮辱してやるよ。お前らの神なんか知ったことか。それにな、今後アーシアを魔女と呼んでみろ。━━━お前らを必ず潰すッ!」
俺の言葉を聞いたゼノヴィアは震えを止めて目付きを鋭くする。
「ほう?一介の悪魔が大口を叩くな」
「そっちこそ、聖剣持ってるだけの狂信者が図に乗るなよ?」
ゼノヴィアの上から目線の言葉に再び苛立ちが復活する。
いつでも神器を展開できるように準備し、ゼノヴィアも聖剣に手をかける。
まさに一触即発になるその時、扉の方から言葉がかけられる。
「僕も混ぜてもらってもいいかな?」
裕斗が壁にもたれ掛かりながらそう言う。
ゼノヴィアが聖剣に手をかけたまま不審そうにして裕斗に問いかける。
「君は誰だ?」
「君たちの先輩だよ、失敗作だけどね」
祐斗は口元を吊り上げて、魔剣を手に生成した。
アーシア「シューヤさん.... 私なんかのために」
秋夜「私なんかじゃない、アーシアだからやったんだよ」
アーシア「シューヤさん....」
秋夜「アーシア....」
シューヤ・アーシア「イチャイチャ❤」
イッセー「くそー!!!」