プールでの騒動が終わり、俺とイッセーは校庭へと歩いている。
「……ああ、まだ腹が痛ぇ」
「一体何したらそんなにボロボロになるんだよ…」
「いろいろあったのさ、いろいろね」
イッセーが呆れた表情で俺に言ってくる。
ゼノヴィアから襲われそうになって、それをアーシアと小猫に見つかってお仕置きされましたー。 なんて、口が裂けてもイッセーには言えない。
それから暫くイッセーの自慢話(日焼け止めクリームの件)をしてきたんだが、正直なんとリアクションすればいいのかわからん。 でも、イッセーがにやけながら話してるからいいか。
丁度、校門を出ようとしたときだった。 俺の視界に銀髪の凄まじいイケメンがいた。それはもう絵画の一場面と勘違いしてしまいそうなほどに。
彼の銀髪は、グレイフィアさんと比べて濃い銀色だ。見てて吸い込まれそうな錯覚をしてしまう。
それにしても、なんだろうこの感じ……。 以前何処かで会ったことがあるような気がする。
ふと、彼が俺達に気づいたのか、透き通るような蒼い目で此方に視線を向け、微笑みながら話しかけてくる。
「やあ、いい学校だね」
「えっと、…まあね」
イッセーがぎこちない笑顔で返事をする。
ああ、この声でようやくわかった。それに、隠しているようだけど膨大な魔力が感じ取れる。
そう、こいつの正体は━━
「俺の名はヴァーリ。 白龍皇━━『白い龍《バニッシング・ドラゴン》』だ」
「やっぱり白龍皇か。 通りで見に覚えのある気配のはずだ」
俺の発言に白龍皇が感心した様子を見せる。 イッセーは未だに頭が追い付いてないのか混乱ぎみだな。
「ほう、気づいていたのか。 それに、日があまり経っていないにも関わらず以前より強くなってるな」
「安心しろ、お前とは絶対戦わないから」
誰がお前みたいな戦闘狂と戦うもんかよ。 こいつの神器━━『白龍皇の光翼』は、10秒毎に触れた相手の力を半減させて自分の糧とするんだろ? んな無茶苦茶なやつと戦ったら死ぬっての。
「簡単には引き下がれないな。 ……そうだな、ここで兵藤一誠に魔術的なものを━━」
その瞬間、俺は『雷輝龍の籠手』を出し、ヴァーリの顎で寸止めする。 首もとを見てみると更に2本の剣が突き立てられていた。 その剣は聖魔剣と、聖剣デュランダルだ。
「お前に敵意が無いのは分かるが……あまり舐めたことすると潰すぞ?」
前言撤回。 今からでも勝負してやろうか、この野郎。
「何をするつもりかわからないけど、冗談が過ぎるんじゃないかな?」
「ここで赤龍帝との決戦を始めさせるわけにはいかないな、白龍皇」
俺に続き、裕斗とゼノヴィアもドスの効いた声音でヴァーリに威圧をかける。 ━━が、ヴァーリは少しも動じない。
「やめておいた方がいい、手が震えているじゃないか。
だが、誇っていい。相手との実力差が分かるのは強い証拠だ。俺の君たちには決定的な力の差がある。……君は別だがね」
俺に挑戦的な笑みを見せてくるヴァーリ。
上から目線で腹が立つけど、こいつの力は本物だ。認めざるを得ない。
「如月秋夜、兵藤一誠、君たちはこの世界で自分は何番目に強いと思う?」
突然の問いかけに俺とイッセーは一瞬止まってしまう。
は? 突然何を言い出すんだこいつは。 何番目に強いかなんて考えたこともない。 俺にはティア姉という最強がいるからか、自分があんまり強いと思えないな。
「さあな、興味がない」
「もう少し興味を持って欲しいんだが……。まだ禁手に至ってない兵藤一誠はランクに示すのが難しいが、如月秋夜、君は3桁━━八百から六百の間だろう」
つまり何が言いたいんだ。 自分が最強とでも言いたいのか?
「この世界は強い者が多い。 『紅髪の魔王』と呼ばれるサーゼクス・ルシファーでさえトップ10内に入らない」
あの魔王様でも一桁に入れないのかよ。 他にどんな化け物がいるってんだ。
ヴァーリが人差し指を立てる。
「たが一位は決まっている。━━不動の存在が」
「誰のことだ?」
イッセーの問いにヴァーリは肩をすくめる。
「いずれわかる。━━ただ、俺じゃない。 兵藤一誠と如月秋夜は貴重な存在だ、十分に育てた方がいい。リアス・グレモリー」
ヴァーリの視線の先には、部長に朱乃先輩、小猫、アーシアがいた。
「白龍皇、何のつもりかしら? 貴方が堕天使と関係を持っているのなら必要以上の接触は━━」
「『二天龍』と称されたドラゴン。過去、関わったものはろくな生き方をしない。 貴方はどうなるんだろうな?」
「っ!」
言葉を詰まらせてしまう部長。
『二天龍』か、いろいろと面倒だこと……。
「今日は戦いにきたわけじゃない。アザゼルの付き添いで来ていてね、ただの退屈しのぎだよ。 それじゃあ、会談で会おう」
そう言ってヴァーリは踵をかえし、この場を立ち去る。
俺は神器を解除して、息を深く吐く。
はあ。 ほんと、変な奴に目をつけられたな。 イッセーは宿命だと思うけど、俺もいずれは戦うときが来るのだろうか。 もしそうなって、負ける気は毛頭ないけど。
▽
「ほう、白龍皇について知りたいのか」
「ああ。といっても、基本的な戦闘スタイルとかだけでもいいんだ」
俺は家に帰って、ティア姉から白龍皇について教えてもらおうとしている。 因みに現在は夜の12時を越えているため、アーシアは既にお休みタイムだ。寝顔もちょっと拝見させていただきました。 ご馳走さまです。
「私も詳しくはないが、白龍皇の能力は触れなければ半減はできない。つまり、触れられずに叩きのめせばいい」
「さらっと言うけどさ。それって難易度高すぎね?」
あいつ相手にそんな芸当ができるのはそれこそティア姉くらいだろうが。
「なに、秋夜ならできるさ。 何せ私の弟なんだからな! わたしの!」
「そんなに自分を強調せんでもいいわ。 でもまあ、その、ありがとう…。 内容はどうであれ、なんか落ち着いたよ」
俺の言葉が嬉しかったのか、ティア姉は満面の笑みを浮かべている。
ほんと、龍王には見えないよなー。 修行になればおっかないけど……。
『ふむ、実にいいアドバイスだったぞ。ティアマット』
「そ、そうか? それなら安心だ」
ああ、出たよ。 この夫婦のイチャつきタイム。
時々、というか、家に居るときはほぼ毎日こんな調子だ。 嫌というわけではないんだけど、この見せつけてくる感じがちょっとイラッときてしまうのは内緒だ。
よし。 アーシアと一緒に寝て癒されよう。うん、そうしよう。
アーシアの隣に入るとすぐに腕に抱きついてきた。これ起きてるんじゃね? と思ったが、可愛いから特に気にしない。
とりあえず白龍皇との戦闘の方針は、『相手に触れられないようにしよう』に決定。
あれ? でも俺が攻撃するときにあいつに触っちゃうけど、まさかそれもアウトなのか? もしそうだったらいよいよ詰みじゃん……。
俺は頭のなかでずっと対策を練った。ふと、時計を見てみると気づいたら後一時間で修行スタートの時間となっていた。
これ、明日の授業参観寝るな。
ヴァーリ「ふふ、君と早く戦いたいよ」
秋夜「嫌だ」
ヴァーリ「え?」
秋夜「え?」
ヴァーリ「どうしても戦ってくれないのか?」
秋夜「当たり前だ」
ヴァーリ「なら君の女を━━」
秋夜「てめえぇぇぇ!! 表に出ろやゴラァァァ!!」
ヴァーリ「(うん、チョロいな)」