「秋夜、アーシア、私も後で行くからな」
「おう。また学校でな」
「ティアさん、待ってますね!」
さあ、今日は授業参観だ。 俺はともかく、ティア姉はアーシアの事を実の娘……妹か? まあ、そのくらい大切に思ってるからすごい張り切っているのだ。
この授業参観、正確には公開授業だが。 親御さん達が来るのは当然いいが、中等部の学生さんとその親御さんも見学をしてもいいという、中々フリーダムなスタイルだ。
教室に着くなりイッセー含む変態三人組が俺のところにくる。
「なんか失礼なことを言われた気がするけど……。 秋夜の両親、今年は来れるのか?」
「いんや、今年も来れないってさ。 でも義理の姉さんが来てくれるよ」
「へー、お前に姉ちゃんがいたなんて知らなかったわ」
うん、ドラゴンだけどな。
「結構最近の話だからな」
それからこいつらはいつも通りにエロエロトークに花を咲かせ始める。 俺にはアーシアという大事な人がいるからそんなものには興味は━━無くはないが、無いに等しい。
「秋夜」
此方に近づいてきたのはゼノヴィアだ。 こいつは転校してきてから直ぐに人気者になったよな。 かなり美人だし、運動神経も抜群。 男女共に好かれている。
「どうしたんだ、ゼノヴィア?」
突然ゼノヴィアが頭を下げてくる。
「昨日はあんな事をしてすまなかった」
ん? あ、ああ、昨日のことというのは子作り云々の話か。
「ま、まあ気にするなよ。 俺も戸惑ったけど反省はしてるんだろ?」
「とても反省したよ。 たしかに、これが無ければ大変だからね」
そう言ってスカートのポケットから取り出したのは小さい袋に入った物だった。
気のせいかな。 俺の見間違いじゃなければ、ゼノヴィアが持ってる物って━━
「このコン◯ームを使用しなきゃいけないんだったな」
「待て待て待てぇぇい!! 何つーもん学校に持ってきてるんだよ!早くしまえ!!」
俺は急いでしまわせる。
はあ、はあ……。 こ、こいつ、何も反省してないじゃないか! なんでコン◯ームなんだよ! 危うくこの教室にいる全員に変態扱いされるとこだったわ!
「?これは使わずにするのか?」
「しねえよ! いいか?もう一度言うけど、俺にはアーシアがいるんだ。 だからそう言うのは出来ないんだよ」
何度言えばいいのやら。 こいつの大胆さが最近怖くなってきたぞ。
「なるほど、理解した。ならばアーシアも一緒ならいいんだな?」
「お前は一体何を理解したらそうなるんだよ」
俺の言葉が聞こえなかったのかわざとなのか、ゼノヴィアはアーシアのところへ行き、何かを話している。
おい、あいつ何を話しているんだ? 絶対変なことだよな。 ……あ。 アーシアの顔から煙が出てる。
「うむ、アーシアはいいらしいぞ」
「俺が良くねえよ! というか、アーシアに変な事を吹き込むな!」
「変なことではない。 性交は大事なことだよ」
ああ、もう無理……。 こいつには何をいっても通用しないらしい。
その後も、俺とゼノヴィアの漫才じみた会話は授業参観開始まで続いた。
▽
ゾロゾロと親御さん達が教室に入ってくる。 しかし、ある途中から周囲がざわつき始める。
なんでこんなにざわつくんだ?
俺は後ろを振り返ってみるとそこには、腰まである美しい青い髪、完璧と言っていいほど整った顔、そして誰もが見とれるほどのプロポーション。
俺はその姿に見覚えがある。というか、ありまくる。
そう、この超絶青髪美人は五大龍王の一角、『天魔の業龍《カオス・カルマ・ドラゴン》』━━ティアマット、通称ティア姉だ。
すごい注目されてるじゃないか。さすがは自慢の奥さんだな、クローゼ。
『(ふっ、当たり前だ。ティアマットは世界一美しいからな)』
それは聞き捨てならないな。たしかにティア姉は美人だけど、一番はアーシアに決まってる。
『(いや、ティアマットだ)』
アーシアだ!
『(ティアマット!)』
アーシア!
クローゼと『美しさ決定戦』をしていると、松田と元浜が俺に質問を投げ掛けてくる。
「お、おい! あの青髪の人、すげえ美人じゃないか?」
「お前、あの人だれの親か知ってるか?」
イッセーはティア姉のことを知っているからこっちを見て苦笑いをしている。
「知ってるも何も、あれが俺の姉さんだよ」
「「「「はあ!?」」」」
俺たちの話を聞いていたのか、クラスの皆が驚きの声をあげる。皆から質問攻めにされそうになったとき、英語の先生がタイミング良く教室に入ってくる。
「お前らー。はやく席につけー」
ナイスタイミングだ先生!
今俺たちの手元には紙粘土がある。はて、何に使うんだ?
「いいですか?今渡した紙粘土で自分の好きなものを作ってください。 人、動物、何でもいいです。ありのままの表現をしてください。そういう英会話もあります」
いやねえよ。 紙粘土で何を伝えろってんだ。うちの先生は適当すぎやしないか?
仕方ない、今日はティア姉が来てるし授業は授業だ。 とはいっても、何を作ればいいんだろうか。
ふと、後ろをチラッと見てみると、ティア姉が笑顔で手をちいさく振っている。
そうだなー。 折角だから、ドラゴン姿のティア姉を作るか。
それから俺は黙々とドラゴン作りに専念した。 作ってみると意外と細かいところまで追及しちゃうもんだ。ついつい時間を忘れてしまったよ。
改めてこの『ティア姉(ドラゴン)像』を見てみたが、そっくりすぎてやばいな。 自分で言うのもなんだけど、本当に瓜二つだ。
「お、おい。イッセーに秋夜……」
突然元浜に名前を呼ばれてそちらを向いてみると、俺とイッセーの周りに皆が集まっていた。
なに、どうしたみんな? 俺らがどうかしたのか?
「秋夜のドラゴン、五千円で買わせてくれ!」
「俺はイッセーのリアス先輩のを六千円!」
『七千!」『八千!」と、続々と俺たちの作品に値段が付けられていく。 いや、誰も売るなんて一言も言ってないんだけど。
それから粘土作りから一転、イッセー作『リアス先輩像』と俺作『ドラゴン(ティア姉)像』のオークションになってしまった。
結局、授業でもあるので買うのは禁止になってしまうが。
▽
昼休み
「すごい良くできてるわね……」
「あらあら、二人ともお上手ですわ」
俺とイッセー、アーシアで自動販売機に向かってる途中に部長と朱乃先輩に出会う。
「私も作って貰おうかしら、もちろんおさわりありですわ」
「まじですか!?」
朱乃先輩の妖艶な笑みでイッセーに迫る。
「ダメよ」
部長がイッセーの頬を引っ張る。
それにしても、二大お姉さまに好かれるなんてやるなイッセー。 もうハーレムの夢が叶ったんじゃないのか?
アーシアが俺の服の裾を軽く引っ張る。
「……シュ、シューヤさんになら私もいいですよ?」
・・・・・・。
「え?」
ちょ、え、え?
「私、シューヤさんになら何をされても受け入れます!」
「ぶふっ!? な、な、何言ってるんだアーシア!」
顔を真っ赤に染めたアーシアが俺に言う。
待って待って!? 突然何てことを言い出すんだこの女神は!! まあ、俺だって、その……アーシアと、そういうことはいずれしたいけど……。
「……私じゃ、だめですか?」
若干涙目+上目遣いのダブルアタックが俺を襲いかかってくるが、こればかりはさすがに許容できない。
「ア、アーシア……。 俺もそう言ってもらえて嬉しい。 けど、もうちょっと我慢してくれないか? その、心の準備というものが……」
おいぃ!? なんでちゃんと『まだ早い!』って言えないんだこの俺は!!
「は、はい! 私はいつまでも待ちます!」
「ふふふ、本当に熱々ね。 でも、他の娘も黙ってはいないと思うけど……」
「あらあら、私も二人を見習わなくてはいけませんわね」
「くそー! なんで秋夜ばっかり!!」
イッセー。 お前は部長と朱乃先輩の気持ちに気づいていないのか? さすがに二人が可哀想になってくるぞ。
「ところで部長、魔王様はいらっしゃったんですか?」
俺の質問に部長が額に手を当ててため息をつく。
「ええ。お父様と一緒にね」
魔王様とその親か……。 非常に見てみたい。
「あれ、部長に皆」
そこへ裕斗が現れる。
「あら、裕斗。お茶?」
部長の問いに首を振り、廊下の先を指差す。
「いえ、何やら魔女っ子が撮影会をしているらしくて、ちょっと見に行こうかと」
『魔女っ子』━━その言葉に一瞬体が震えてしまう。
ま、まさか。 ミルたんじゃないだろうな……?
初対面の印象が最悪だったため、トラウマになってしまったのだ。
しかし、その場に行ってみると、いたのはかなりの美少女で心底安心した。それに、あの衣装は『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』だったはず。
こんなマニアックな事を覚えてしまったことにまたまた自分自身を哀れに思えてしまう。
「オラオラ!天下の往来で撮影たーいいご身分だぜ!」
廊下から現れたのは我が心の友━━匙だ。その後ろにも生徒会メンバーがいる。
おお、さすがは心の友だ。 群がっている野次馬を蜘蛛の子を散らすようになくなっていくぞ。
「あなたも親御さんですか? そんな格好されたら困りますよ」
「えー、だって、これが私の正装なんだもん☆」
匙の注意も可愛くポージングしながら流すコスプレ美女。
匙が頭を悩ませているが、部長を見て頭を下げる。
「これはリアス部長。丁度良かった。いま魔王様と先輩のお父さんを案内していたところなんですよ」
匙の視線の先には生徒会長━━ソーナ・シトリー会長が紅髪の男性二人を連れていた。
「何事ですか?サジ、問題は簡潔に解決にしなさいといつも言って━━」
会長がコスプレ美女を見るなり、言葉を止める。
「ソーナちゃん見つけた☆」
そう言って会長に抱きつくコスプレ美女。
え?真面目な会長がこの人と知り合いなの? 意外すぎるんだけど。
「ああ、セラフォルーか。君もここへ来ていたんだな」
魔王様がコスプレ美女に話しかける。
せらふぉるー? セラフォルー……? んん? いやいや、まさかな。
「あの御方は現四大魔王の1人、セラフォルー・レヴィアタン様よ」
部長……それまじですか? いや、俺もまさかとは思いましたよ。でも、ねえ?
イッセーなんか雄叫びの如く叫んでいたからな。 これは俺も驚いた。 驚きすぎて逆に落ち着いたわ。
「あら、リアスちゃん☆おひさ〜☆ 元気でしたか?」
「は、はい、おかげさまで。今日はソーナの授業参観で?」
「うん☆ソーナちゃんったらひどいんだよ。今日のこと黙ってたんだから! もう!お姉ちゃん、ショックで天界に攻めこもうとしたんだから☆」
シャレにならんから止めてくれ、魔王様よ。 この場に魔王様が二人もいるから、失礼ながら名前で呼ばせてもらおう。
「イッセー、秋夜。ご挨拶なさい」
「は、はじめまして、兵藤一誠です。リアス・グレモリー様の『兵士』をしています! よ、よろしくお願いします」
「はじめまして、レヴィアタン様。リアス・グレモリー様の『戦車』の如月秋夜です」
「はじめまして☆私、魔王セラフォルー・レヴィアタンです☆『レヴィアたん』って呼んでね☆」
『レヴィアたん』て……。そんな呼び方できるわけないでしょうが。
「ねえ、サーゼクスちゃん。この子達が噂のドライグ君とクローゼ君?」
サーゼクス様を『ちゃん』付け……。 それにクローゼにも『君』付けかよ。
『(ふっ、俺も嘗められたものだな……)』
お、落ち着けって。これもコミュニケーションのひとつなんだよ、たぶん。
「そう、彼らが赤龍帝━兵藤一誠くんと創雷師━如月秋夜くんだ」
「なるほどね☆ ねえ創雷師ちゃん」
「はい、なんで━━っ!?」
俺が言い切る前に体に物凄い圧力がかけられる。あまりの力の大きさに呼吸は乱れ、体も動かせなくなってしまう。辛うじて頭は動かせたので周囲を見渡しても、皆は至って普通。つまり、俺だけに向けられている。
な、なんだよ…………これ……! 体が……動かない……!?
「うん。コカビエルを倒したっていうのは本当そうだね☆」
レヴィアタン様の言葉とともに圧力が無くなる。
「……ぐっ、はあ、はあ……」
「お、おい、どうしたんだよ秋夜!」
「大丈夫だよ、赤龍帝ちゃん☆ ちょっと試しただけだから」
こ、この人……。おちゃらけてるけど、やっぱり魔王だな……。
さっきの力だけでも余裕でコカビエルを越えてるじゃないか。それに、ピンポイントで俺だけに力をかけるなんて……。 これからは見かけだけで判断するのには気を付けよう。
「やめないか、セラフォルー。 すまないね、秋夜くん」
「い、いえ、俺は大丈夫です……」
「君強いんだね! 上級悪魔でもすぐ気絶しちゃうのに☆」
上級悪魔でも気絶するもんを俺にするなよ! って、言ってやりたいけど我慢だ我慢!
もしこの場にティア姉がいたら絶対ヤバいことになってたな。先に帰らせといてよかった。
「セラフォルー殿らしい。 それにしても、これまた奇抜な衣装ですな」
「あら、おじさま☆ご存知ないんですか?今この国では流行りですのよ?」
「ほう、そうなのですか。これは私が無知だったようだ」
「ハハハハ、父上。信じてはなりませんよ」
さっきまでの威圧感はどこへいった。 それにグレモリー親子とレヴィアタン様の会話がなんかおかしいと思うのは俺だけか?
会長も我慢の限界なのか、顔を真っ赤にして震えている。
「ソーナちゃん、どうしたの? 私との再開にもっと喜んでもいいんだよ? それに、百合百合な展開でもいいと思うのよ、お姉ちゃんは!」
「こ、ここは私の学舎であり、私は生徒会長を任されているんです。いくらお姉さまでも容認できません」
「ひどい、ひどいよソーナちゃん!お姉ちゃん悲しい!お姉ちゃんが魔法少女に憧れてるの、ソーナちゃんだって知ってるじゃない! 」
ああ、会長。 本当にお疲れ様です。 あなたがコカビエルの闘いにお姉さんを呼ばなかった理由がわかった気がしますよ。
「うぅ、もう耐えられません!」
あの会長が目元を潤わせて、この場を走り去る。
「待ってよ、ソーナちゃん!お姉ちゃんを置いてどこにいくの!」
それを走って追いかけるレヴィアタン様。
「ついてこないでください!」
「いやぁぁぁん!お姉ちゃんを見捨てないでぇぇぇ!!ソーたぁぁぁぁん!!!」
「『たん』付けは止めてくださいとあれほど!」
最初は会長のことをからかってるのかと思ってたけど、これは逆だな。めっちゃ溺愛してる。所謂シスコンってやつか。会長の気持ち、わからなくも無いですよ。ここまで酷くはないけど……。
「うむ、今日もシトリー家は平和だ。そう思わないかい?リーアたん」
「お兄様、私の愛称に『たん』付けしないで下さい」
こっちにもシスコンがいらっしゃいました。
その後も、サーゼクス様が部長の溺愛っぷりを見せたり、イッセーの両親が部長のお父さんと話をしたりと、とても内容の濃い1日だった。
セラフォルー「ソーたぁぁぁん!」
サーゼクス「リーアたん!」
ティア姉「秋夜!」
秋夜、ソーナ、リアス「「「はあ……」」」
愛されすぎるのも辛いものである。