雷龍を宿しました。(休載)   作:Takari

27 / 37
5話 堕天使総督

 

魔王様方がシスコンという衝撃の事実から1日。

 

俺たちオカルト研究部は、結界などで厳重に扉が閉められている部屋の前にいる。

 

何故こんな部屋の前にいるかというと、ここにいるもう1人の『僧侶』を迎え入れるためだ。

 

その『僧侶』は強力な神器を所有しており、周囲に被害が出てしまう恐れがあるため、この部屋に居てもらってるそうだ。いや、自分から籠ってるんだったな。

 

部長が結界を解除し、扉を開ける。

 

 

━━━━その瞬間

 

 

「イヤァァァァァ!!]

 

 

扉が開けられた途端に悲鳴を浴びせられて俺達は戸惑ってしまう。

 

 

え、なに?

 

女の子の悲鳴・・・・?

 

 

恐る恐る中に入ってみると、そこはいかにも『女の子』って感じの部屋だった。

 

 

さっきの悲鳴でも思ったけど、女子か。

 

イッセーが喜びそうだな。━━━訂正、既に喜んでるわ。

 

 

俺は隣でいやらしい顔をしているイッセーを見て呆れてしまう。

 

部屋を見渡してみると隅の方に、誰かがしゃがんで震えているのを見つける。

 

部長はその子に近づいて話しかける。

 

 

「ごきげんよう、元気そうね」

 

 

「な、何事ですかぁぁぁ!?」

 

 

おおう、すごいびびってるな。

 

人見知りを飛び越えてるじゃないか。

 

「あらあら、封印が解けたのですよ? さあ、私たちと一緒にでましょう?」

 

朱乃先輩も優しく話しかけるが、その子は調子を変えない。

 

「いやですぅぅぅぅ!! 一生ここでいいですぅぅぅ!! 人に会いたくないぃぃぃ!!」

 

こ、これは重症だな。

 

人に会いたくないって、ニートかよ。なんとかして、外に出してやりたいな。

 

俺達はさらに奥へ進み、その子の姿を見る。

 

そこにいたのは、金髪に赤い目、そして人形のように整った顔。 つまりは美少女だな。

 

「おお!金髪の女の子!!」

 

こらこらイッセー、そんなに鼻息を荒げるなよ。この娘が怖がるじゃないか。

 

俺も内心、凶悪な野郎じゃなくてよかったと安心したが、ここで部長から意外な言葉が出てくる。

 

「この子、見た目は女の子だけど紛れもない男の子よ」

 

「「は?」」

 

気の抜けた声がイッセーと重なる。 アーシアとゼノヴィアも声はあげていないが呆けている。

 

「女装趣味があるのですよ」

 

さらなる衝撃が俺達を襲った。

 

え、じゃあこいつは女子だから女子用の制服を着てるんじゃなくて、女装が趣味でそれを来てるのか?

 

「なんて残酷なんだ! しかも似合ってるから余計にショックがでかい! 引きこもりなのに女装趣味って、だれに見せるんだよ!!」

 

俺の気持ちも代弁してくれるようなイッセーの心からの叫びに激しく同感してしまう。

 

イッセーの叫びに女装君は

 

「だ、だって、女の子の服の方がかわいいんだもん・・・・」

 

も、もんって・・・・。

 

・・・・流石に男でそれはないだろうよ。

 

「かわいいもん、とか言うなぁぁぁ!!俺は少しでもダブル金髪美少女『僧侶』を夢見てたんだぞ!!くそぉ! 俺の夢を返せよぉ!!」

 

イッセー、お前の夢は知らんがアーシアを美少女と言ったのは良いことだ。

 

「・・・・人の夢と書いて、儚い」

 

「お、うまいな小猫」

 

「ありがとうございます」

 

「たしかに上手いけど、シャレにならないからぁぁぁ!!!」

 

もう現実を見ろよイッセー。 こいつは男なんだ。

 

可愛いけど、男なんだよ。

 

「と、ところで、この方々は誰なんですか?」

 

おっと、自己紹介がまだだったな。

 

「俺は小猫と同じ『戦車』の如月秋夜だ。おまえは?」

 

「ギャ、ギャスパー・ヴラディですぅ・・・・」

 

「ギャスパーか、よろしくな」

 

握手をしようと手をギャスパーの前に出す。

 

「ひっ!」

 

ギャスパーの悲鳴と共に俺は何か違和感に包まれる。

 

一体何事かと、振り替えって皆に聞こうとしたが俺は唖然としてしまう。

 

何故なら、この部屋にある動くものがピクリとも動かない━━━━停止しているからだ。

 

「こ、これは・・・・?」

 

「な、なんで動けるんですかぁぁ!?」

 

ギャスパーは部屋の隅でブルブルと震え上がっている。

 

そう聞くってことはこいつがやったのか?

 

・・・・なるほど、確かにこれはすごい力だな。

 

「さあ? とりあえず、これ戻せるか?」

 

「も、戻しますから! ぶたないでくださいぃ!」

 

「いや、なんでこんなことでぶたなきゃいけないんだよ」

 

ギャスパーが解除してくれて皆が動き出し、イッセー、アーシア、ゼノヴィアは疑問符を浮かべているが、部長たちは苦笑いをしている。

 

「あれ?いつの間にそんなとこに移動したんだ?」

 

あ、そうか。

 

俺とギャスパー以外止まってたから俺たちが瞬間移動したように見えたのか。

 

部長がイッセーの疑問に答える。

 

「それはこの子の神器━━『停止世界の邪眼《フォービトゥン・バロール・ビュー》の能力よ」

 

 

 

 

 

 

あの後、部長からギャスパーについて大体の話は聞かせてもらった。

 

ギャスパー・ヴラディ、一応1年生らしいが教室には行ってないらしい。

 

転生前は吸血鬼と人間のハーフだったそうだ。

 

吸血鬼といえば、日光に当たるとダメなイメージがあるが、ギャスパーはデイウォーカーという日中でも活動できる特殊な種族らしい。それでも苦手なのは変わらないそうだが……。

 

あと、こいつには吸血鬼の才能と魔術師としての才能があるらしくて、吸血鬼の力に関しては黙ってても勝手に成長しているそうだ。

 

更に『停止世界の邪眼』も宿すと来たもんだ。

 

この能力は、視界にいれたものを停止させることができるという所謂チートってやつだ。

 

将来的に『禁手』に至れる可能性もあると言われているんだとさ。

 

でも、ギャスパーはその制御が出来ない。 いくら強い力を持っていても、自在に操れなきゃ意味がない。

 

そのため、ギャスパーはこうして部屋に閉じ籠っていたんだ。

 

 

「部長、よくこんな才能の塊みたいなやつを転生できましたね」

 

「『変異の駒』を使ったのよ」

 

「ミューテーション・ピース?」

 

聞きなれない単語に俺は首をかしげると、裕斗が答えてくれる。

 

「通常の『悪魔の駒』では到底足りない転生体に対して、1つの駒で足りてしまうという特異な現象を起こす駒のことだよ」

 

「へえ、やっぱりその駒はレアなのか?」

 

今度は裕斗ではなく部長が答える。

 

「ええ、上位悪魔の10人に1人は持っているわ。 この駒は『悪魔の駒』を作り出す際に起こったバグの類いなのだけど、それもまた一興としてそのままにしているの」

 

そんなレア物を持ってるなんて、さすが部長だ。

 

それを聞いて、尚更ギャスパーの神器を制御させてやりたいな。

 

「ギャスパーって血を飲むものなのか?」

 

「血嫌ですぅぅぅぅ!! 生臭いのダメぇぇぇ!!」

 

お前はハーフでも吸血鬼だろうが!

 

これまでのイメージが崩れる落ちるわ!

 

「・・・・へたれヴァンパイア」

 

「うわぁぁぁん!小猫ちゃんがいじめるぅぅぅ!!」

 

小猫がイッセー以外に毒舌を吐くなんて珍しい。

それにどこか生き生きしてる気が・・・・。 部活内で唯一の同級生だから遠慮がないのかな。

 

「とりあえず、私と朱乃はトップ会談について話し合いがあるから、その間にギャスパーの教育をお願いするわね? あとお兄様が裕斗の『禁手』を見てみたいそうだから一緒に来てちょうだい」

 

「はい、部長」

 

 

 

 

さあ、『脱引きこもり計画』を始めようか。

 

 

 

 

 

 

「ひいぃぃぃ!? 滅されるぅぅぅ!!」

 

「まだまだ、走れるだろう!」

 

聖剣デュランダルを振り回しながらギャスパーを追いかけるゼノヴィア。

 

あれ・・・・? 俺の想像してたのと違う気がする。

 

でもまあ、楽しそうだからいいか。

 

「助けて下さい、秋夜せんぱぁぁぁい!!」

 

「もうちょっと頑張ろうか、ギャスパー君?」

 

「そんなぁぁぁぁ!?」

 

ははは、助けを求められてもまだまだ行くさ。それに、まだ叫ぶ体力が残ってるなら走れるはずだな。

 

隣でイッセーが『・・・・鬼畜だ』 なんてことを言っているが気にしない。

 

「私と同じ『僧侶』にお会いできたのに、一度も目を合わせて貰えませんでした・・・・ぐすっ」

 

「あいつはなにもアーシアが嫌いでやった訳じゃないんだ。 ただ人見知りが強すぎたんだよ。だから気にするな」

 

俺はアーシアの頭を優しく撫でてあげる。

 

ああ、涙目のアーシアもまじ可愛い。

 

だがアーシアを泣かせるのは許されることじゃないな・・・・。

 

アーシアはずっともう1人の『僧侶』に会えることを心からの楽しみにしてたのに、それをぶち壊すなんてな。

 

 

俺はにこやかな表情から一転、鬼の形相でギャスパーに叫ぶ。

 

 

「もっと走れギャスパァァァ!! アーシアを泣かせた罪はでかいぞゴラァァァァァァ!!!」

 

 

「ふえぇぇぇん!! 秋夜先輩が怖いよぉぉぉ!!」

 

 

 

ギャスパーを走らせてからだいぶ時間が経つけど、意外に体力あるじゃないか。

それでも疲れてるのには変わりないと思うけど。

 

「……ギャーくん、ニンニク食べれば健康になれる」

 

小猫もニンニク装備でゼノヴィアと一緒にギャスパーを追いかける。

 

 

いくら吸血鬼でもさすがにニンニクは━━━

 

 

「ひえぇぇぇ!? ニンニクらめぇぇぇッ!!!」

 

ええぇぇ・・・・!

 

ニンニクって本当に弱点だったの?

 

どうしよう、俺も『へたれヴァンパイア』と呼ぼうかな。

 

それにしても、小猫が生き生きとしているな。 何かを食べている以外でこんな顔を見るのは久しぶりだ。

 

 

ギャスパーの特訓をしていると、奥の方から人影が一つ現れる、

 

 

「おーおー。やってる、やってる」

 

 

そこへやって来たのはソウルフレンドの匙だ。

 

 

「おう、匙」

 

「よっ、匙」

 

「よー、二人とも。解禁された引きこもり眷属がいるって聞いて見に来たぜ」

 

匙のやつ、ギャスパーを見て二回は驚くだろうな。

 

「ほら、あそこでゼノヴィアと小猫に追いかけられてるやつだ」

 

匙がイッセーの指差す方に視線を移す。

 

「おい、あれ普通に当たったら死ぬよな・・・・。ん?女の子じゃないか! しかも金髪美少女!!」

 

まずは一回目のびっくりいただきました。さあ、次へ参りましょう。

 

「でもあれ、女装野郎だぜ?」

 

「うそ・・・・・だろ・・・・!? なんで、引きこもりが女装? 普通は誰かに見せるために着るんだろうが・・・・」

 

匙はショックのあまり、膝から崩れ落ちて両手を地面につける。

 

はい、二つ目のびっくり━━━というよりも落胆か?

とりあえずこれが当たり前のリアクションだよな。

 

 

「それよりも、匙は何してるんだ?」

 

 

「見ての通り、花壇の手入れだよ。ほら、近々魔王様方がいらっしゃるだろ? それに、学園を綺麗に見せるのが生徒会の『兵士』たる俺の仕事だ」

 

 

さすがソウルフレンド匙!

 

雑用だろうとこなすなんてますます見直し━━━ッ!?

 

 

俺は微かに感じ取れた気配に警戒を強める。

 

 

・・・・・クローゼ、この気配・・・・。

 

 

『(ああ、堕天使だな。それもかなり強い力の)』

 

 

二人にもその事を報告しようとした時

 

 

「へえ。悪魔の皆さんはここで集まってお遊戯してるわけか」

 

浴衣を着た黒髪の男がダルそうに話しかけてくる。

 

イッセーと匙は未だに戸惑っているが、俺はすぐさま『雷輝龍の籠手』を出し、臨戦態勢に入る。

 

こ、こいつ、やばい強いな・・・・!

 

魔王様と同等くらいじゃないか?

 

堕天使で魔王クラスの強さといったらあいつしかいないよな・・・・。

 

イッセーがその正体を言う。

 

「アザゼル・・・・ッ!」

 

「よお、赤龍帝。あの夜以来だな」

 

その言葉でゼノヴィアがデュランダルを構え、小猫もいつでも戦えるようにする。

 

 

俺はアーシアとギャスパーを守るように移動して男━━━アザゼルを睨む。

 

 

「俺にその気はねえよ。 それに、お前らが束になっても俺には勝てない。・・・・・・俺の気配にいち早く気づいた創雷師なら、少しできるかもしれないがな」

 

 

アザゼルは特に構える様子もない。

どうやら敵意はないらしい。

 

 

けど、相手は堕天使総督だ。敵意は無くても警戒はするに越したことはない・・・・。

 

 

「それよりも聖魔剣使いはいるか?ちょっと見に来たんだが」

 

「それは残念だったな、裕斗は今いない」

 

 

こいつは神器研究をしているから、レアな禁手に至った裕斗が狙いのか?

 

 

「なんだ、いないのかよ。つまんねえな。━━━そこに隠れてるヴァンパイア。 お前『停止世界の邪眼』だろう?」

 

 

裕斗がいないと知ったアザゼルは残念そうに頭をぽりぽりとかきながら、此方に近づいてくる。

 

 

「そいつは制御出来なきゃ害悪になるものだ。補助具で不足している部分をおぎなえばいいんだが、悪魔は神器研究がそこまで進んでないからな・・・・。」

 

 

震え上がるギャスパーを興味深々な目でまじまじと見つめるアザゼル。

 

 

端から見れば男が怯えている美少女を襲ってるようにしか見えない。

 

 

アザゼルは此方に振り返り、匙のことを指差す。

 

 

「それ『黒い龍脈』か? 練習するならそれを使ってみろ。このヴァンパイアに接続して、神器の余分な力を吸い取りつつ発動させれば、暴走も少なく済むだろうさ」

 

 

その言葉を聞いて匙は驚いた様子だ。

 

 

「お、俺の神器、相手の神器の力も吸い取れるのか? ただ単に敵のパワーを弱らせるだけかと思ってた……。」

 

 

さ、さすがは研究大好き堕天使総督・・・・!

 

神器を見たただけで制御の練習に必要なことがわかるなんて。

 

 

「ったく、これだから最近の神器所有者は自分の力をろくに知ろうとしない。五大龍王の『ヴリトラ』の力がその程度な訳がないだろうが。 ━━まあ、一番手っ取り早いのは赤龍帝の血を飲ませることなんだが」

 

 

アザゼルはそう言うとこの場を去ろうとするが、何か思い出したのか、此方に振り返り俺達を見る。

 

 

「ヴァーリ━━うちの白龍皇が勝手に接触してきて悪かったな。 あいつは変な奴だが、今すぐ赤白の決着を着けようなんて思ってないさ。あと創雷師、ヴァーリからの伝言だ」

 

 

あいつからの伝言とか簡単に予想できちゃうんですけど。 どうせ戦おうとかなんだろ?

 

 

「『兵藤一誠の次は君だ。もっと強くなっておいてくれよ?』 だそうだ。はあ、お前も大変だな」

 

 

アザゼル・・・・。

 

お前も体中から疲れが滲み出てるじゃないか。

もしかしてこいつ、実はいいやつなんじゃないか?

 

 

「正体語らずに俺に接触してきたことには謝らないのかよ?」

 

 

「それは俺の趣味だ、謝らねえよ」

 

 

イッセーの文句にも見える問いかけにアザゼルはイタズラな笑みを浮かべてそう言い、この場から立ち去った。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。