雷龍を宿しました。(休載)   作:Takari

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6話 もう1人の僧侶

「行くぞギャスパー。 ほれっ」

 

「は、はいぃ! 」

 

アザゼルからアドバイスをもらって、実際に匙の『黒い龍脈』をギャスパーに繋いで余分な力を吸ってもらった。

 

制御の特訓として、バレーボールをゆっくりとギャスパーに放り投げ、それをギャスパーが神器で止める。この作業を繰り返している。

 

ほわ━んと飛ぶボールがギャスパーに向かっていく。

 

「えいっ!」

 

ピタッと、空中で静止する。

 

おお、ついに成功した!

 

「やったじゃないか、ギャスパー! これは大きな進歩だぞ」

 

「や、やりましたぁ!」

 

うんうん。 かれこれ始めてから30分くらい時間が経ったけど。 この調子で行けば同時に複数を止められるのも夢じゃないな。

 

「協力してくれて助かるぜ、匙!」

 

「気にすんな。その代わり、後で花壇の手伝いしてもらえるからな」

 

イッセーが匙に笑顔でお礼を言う。

 

俺としても感謝してもしきれない。 匙がいなかったらここまで順調に制御の練習が出来なかっただろう。

 

花壇の手伝いなんてこれに比べたら安いもんだ。

 

「はかどってるかしら?」

 

部長がサンドイッチを持って様子を見に来てくれた。

丁度ギャスパーも疲労がたまってきてる頃だから休憩にしようとしてたところだ。

 

「部長、美味しいです」

 

「うん、上手いッス!」

 

小腹も空いてきてたから、滅茶苦茶うまい!

 

俺達は、サンドイッチを直ぐに全部完食してしまう。

部長も満足そうな表情だ。

 

「そう、喜んでもらえてよかったわ。 それと、匙くんも手伝ってくれてありがとう。助かったわ」

 

匙は部長からのお礼に顔を赤くする。

 

「い、いいっすよ。先輩は会長の大事なお友達なんですし。神器についても新しい可能性が見つけられました。俺としても、収穫ありってことで」

 

本当にこいつはいいやつだよ。

 

初めての顔合わせの時は睨まれることからスタートして印象最悪だったけど。

 

 

 

匙がいなくなった後も、空が暗くなるまで引き続き特訓を行った。

 

 

 

 

 

 

「ギャスパー、出てきてちょうだい。無理してイッセーに連れていかせた私が悪かったわ」

 

『ふえぇぇぇぇぇんっ!!』

 

部長がギャスパーの部屋の前で謝る。

 

何故制御も順調に出来ていたのに、再び引き籠ってしまったのか。

 

どうやらイッセーの契約にギャスパーを連れていったそうなんだ。 そこまでは経験させるためとしていいかもしれない。

 

けど、ギャスパーは感情が高ぶってしまったため、時間を停めてしまったらしい。

 

 

さすがにここまで怖がるのは不思議でならないので、部長からギャスパーの過去を聞かせてもらった。

 

ギャスパーは名門の父を持つが、母が人間だったため純潔ではなかった。悪魔以上に純血で無いものを軽視、侮蔑する吸血鬼は、家族内でもその扱いが酷かったそうだ。

 

ギャスパーは吸血鬼と魔術の才能、更には神器まで宿してしまい、兄弟達にも怖がられて、いつもいじめられていたらしい。

 

「あなた達がもし時間を停められたら、どんな気分?」

 

その質問に俺達は顔を曇らせてしまうが正直に答える。

 

「………俺は、少し怖いです」

 

「俺も少し怖いですね……」

 

家から追い出され、人間界で生きようとしても怖がられる。 どこにも行くことが出来なくて路頭に迷っているところを、ヴァンパイアハンターに狙われ、1度命を落とした。 そこを部長に拾われたそうだ。

 

けれど、強力な力を持つギャスパーを当時の部長が使いこなせず、上からの命令で封印されていた。

 

『ぼ、僕は………こんな力いらないっ! だ、だって……みんな停まっちゃう!と、友達を……な、仲間を……停めたくないよ…。大切な人達の停まる顔をみるのは……もう……嫌だ…』

 

それが、お前の気持ちか。

 

停めたくないのに神器が勝手に発動してしまう。 そのせいで、人と合うのが怖くなる………これじゃあ、負の連鎖がずっと続いてしまう。

 

「困ったわ……。この子をまた引きこもらせるなんて、『王』失格ね、私」

 

イッセーは部長の悲しむ姿を見て、何か覚悟を決めたような顔をする。

 

「部長、これからサーゼクス様達と打ち合わせがあるんでしょう?」

 

「ええ。だから少しだけ時間を延ばしてもらうわ。 先にギャスパーを━━━」

 

部長が言い切る前に、イッセーが話す。

 

「あとは俺に任せてください。なんとかして見せます」

 

「俺も忘れるなよ、イッセー。 部長、俺達に任せてください」

 

イッセーのやつ、カッコいいとこあるじゃないか。この部分を女子にもっと見せろっての。

 

ギャスパーは俺達の大事な後輩なんだ。 先輩が何とかしてやらなきゃな。

 

「………イッセー、秋夜。 わかったわ。お願いするわね?」

 

「「はい!」」

 

俺達の勢いのある返事を聞いて、部長は微笑んで頷く。

 

やはりまだ心配なのか。部長が名残惜しそうに部屋を見てからこの場をあとにした。

 

 

 

 

「 おいギャスパー!お前が出てくるまで俺達はここから動かないからな!」

 

「右に同じくだ!」

 

ドアの前でどしっと腰を下ろして出てくるのを待つ。

 

 

 

・・・・・・。

 

 

 

「………出てこないな」

 

「……だな」

 

かれこれ一時間はずっとこの状態だ。 仕方ない、黙って座ってても埒が空かないからな。

 

俺はギャスパーに話しかけることにする。

 

「………なあ、ギャスパー。………自分が、俺たちが怖いか?」

 

『………』

 

返事はないが俺は話続ける。

 

「俺とイッセーはな、ドラゴンを宿しているんだ。 それもとびきり強力なやつだ」

 

俺に続くようにイッセーも話しかける。

 

「俺は……正直怖いんだ。 このドラゴンの力を使っていくうちに、体のどこかが違う何かになっていく感じがするんだ。けど、前に進もうと思ってる」

 

「……どうしてですか?も、もしかしたら大切な何かを失うかも知れないんですよ? 先輩達は、どうしてそこまて真っ直ぐに生きられるんですか……?」

 

やっと、返事が返ってきたか。

 

どうしてって、言われてもなあ。 俺には1つしかないからな。

 

「そんなもん簡単だ。 俺はアーシアっていう愛する人を失いたくないからだ。そのためにこの力を使うし、頑張って強くならなきゃいけない。 もちろん、皆も、お前も守るけどな」

 

「俺は………こんなに強い力を持ってても、弱い…。ライザーとのレーティングゲームの時も、コカビエルの時も、全然役に立てなかった……」

 

イッセーは手から血が出るほど握りしめ、歯を食い縛りながら話す。

 

「………イッセー」

 

「けど! だからこそ、俺はもっともっと強くなる!もう部長の悲しむ姿は見たくない!」

 

 

ギィ………。

 

ドアが開く鈍い音が鳴る。

 

「ぼ、僕でもなれるでしょうか……。先輩達のように強く……」

 

ドアから顔をひょっこりと出すギャスパー。

その顔にはうっすらと涙が溜められている。

 

俺はそんなギャスパーの頭を優しく撫でる。

ビクッと体を震わせるが、すぐにその身を委ねてくる。

 

「ああ、なれるさ、なれるに決まってる。 お前だって立派なグレモリー眷属の一員で、俺達の仲間で、 大事な後輩だ。一緒に強くなっていこう」

 

イッセーもギャスパーの目をしっかりと見て話す。

 

「俺達はお前のことは嫌いにならないぞ。先輩としてずっと面倒を見てやる。……まあ、悪魔としてはお前の方が先輩だけさ。実生活では俺達の方が先輩なんだ、任せろ!」

 

「━━っ!」

 

俺達の言葉に目を見開くギャスパー。

 

「ギャスパー、俺達に力を貸してくれ。そして、皆で部長を支えよう。お前が怖がるものがあるなら、俺達でぶっ潰す。これでも、伝説のドラゴン達の力が宿ってるんだぞ?」

 

軽く冗談を混ぜながらそう言ったが、ギャスパーがコメントに困っちゃったな。

 

「俺の血、飲むか?アザゼルのやつの言ってることが真実なら、俺の血を飲めば神器を扱えるかもしれない」

 

ああ、確かにそんなことも言ってたな。

でも大丈夫なのか? 血を吸われたらイッセーも吸血鬼になりましたー なんて、シャレにならないぞ。

 

しかし、ギャスパーは首を横に振る。

 

「怖いんです。生きた者から血を吸うのが……。ただでさえ、自分の力が怖いのに……。これ以上何かが高まったりしたら……僕は……僕は……」

 

「うーん。俺はお前の能力が羨ましいけどな」

 

「「は?」」

 

イッセーの言葉に、気の抜けた声がギャスパーと重なる。

 

この能力が羨ましいか、イッセーらしい。 何に使うかが容易に想像出来てしまうのが悲しいな。

 

「俺、変なこと言ったか? もし俺がその神器を持っていたら大変なことになってるな。 クラス中……いや、学校中の女子にいかがわしいことをしてるに違いない。………うはっ、想像しただけで鼻血がっ!」

 

「お前はほんッッッと、ぶれないよな!! さっきの感動を返せ!」

 

まじで感動を返せ、変態が!

1度でも感心した俺がバカみたいじゃないか!

 

「いや、考えてもみてくれよ! 部長や朱乃先輩のおっぱいを自由に出来るんだぞ!? ああ、妄想がとまらん!」

 

「妄想は自由だが………そこにアーシアは入ってないだろうな?」

 

「うっ、は、入ってないでございますよ?」

 

ははは………こいつ処刑

 

「後でゆっくり、お仕置きしてあげるよ」

 

「ひいっ!? 」

 

 

「………ふふふ、あはははははっ!」

 

俺達の会話を聞いていたギャスパーが突然笑い出す。

 

「「お?」」

 

「はははっ!……ふぅ、お腹が痛いですぅ!」

 

やっぱり悲しい顔よりも笑ってる顔の方が全然いいな。

 

俺とイッセーは顔を見合わせて同時に小さくガッツポーズをした。

 

「せ、先輩達は、面白くて、優しいんですね」

 

笑いすぎて涙が浮かんでいるギャスパーが極上の笑みで俺達にそう言う。

 

うお、こいつまじで男なのかよ。 一瞬でも、グっと来てしまった自分が恥ずかしい………。

 

 

 

 

 

それから、イッセーの『赤龍帝の籠手』の能力━━『譲渡』を部長のおっぱいにしたらどうなるか? などと、伝説のドラゴンが泣いてしまいそうな使い方を俺とギャスパーに話してきた。

 

 

なにより、この提案をしてきたのが部長のお兄さん━━魔王サーゼクス・ルシファー様 だったということにビックリ仰天である。

 

 

途中から裕斗もこの話に参加してきて、グレモリー眷属の男子結集の瞬間だった。

 

 

すると、突然イッセーが真剣な表情で俺達には話す。

 

「なあ、みんな……。俺はグレモリー眷属の男子チームで行える連携を考えてみた」

 

なんか、嫌な予感がするんだが……。

 

「それは、気になるね………どういうものなんだい?」

 

裕斗とギャスパーが興味津々でイッセーに聞く。

 

「まず俺がパワーを溜める。それをギャスパーに譲渡して、周囲の時を停める。その間に俺が女子の体をさわりたい放題だ」

 

「お前しか得しないじゃないか! 俺と裕斗のいる意味がまるでねえよ!」

 

イッセーがまたまた真剣な表情で話す。

 

「いや、ある。 お前らは『禁手化』して俺を守れ。これはチームの連携が命だ。俺が力を溜め、ギャスパーに譲渡し、停止させて俺が触り、二人が俺を守る………完璧だ」

 

「誇り高いドラゴンの力をこんな無駄遣いするなんて……ドライグ泣くよ?」

 

『木場、お前はいい奴だなぁ』

 

お、おおぅ。 あの二天龍の一角━━ドライグさんが涙声じゃないな。

 

伝説のドラゴンを泣かせるなんて、ある意味感心してしまうぞ。

 

『これが宿主の違いだ、ドライグよ』

 

『ク、クローゼ……。 くそっ!何故俺がそっちに宿らなかったんだ!』

 

クローゼがドライグに胸を張って自慢してる姿がイメージ出来てしまう。

 

これが本当に伝説のドラゴン達………なのか?

疑いたくなってくるわ。

 

「す、すごいです! ドラゴン同士の会話なんて初めて聞きますぅ!」

 

内容は最悪だけどな。

 

「それにしてもギャスパー……段ボールからは出られないのか?」

 

「すみません。でも、ここにいると落ち着くんですぅ」

 

段ボールが落ち着くって……だが許そう。 徐々に慣れていけばいいさ。

 

「そんなに怖いならこれ被ればいいんじゃないか?」

 

イッセーが取り出したのは目の部分に丁度穴を開けた紙袋だった。

 

「「いやいや、さすがにそれは━━━」」

 

俺と裕斗がありえないだろう、そう思ったのだが。

 

「あ、これ………いいですねぇ、似合いますかぁ〜?」

 

うそーん、そんなんでいいのかヴァンパイアよ。

 

しかも紙袋にある2つの穴から覗かれる赤い目がギラギラ光って何気に怖いぞ。

 

「ギャスパー、俺は初めてのお前がすごいと思ったよ」

 

「……俺も」

 

「……僕も」

 

俺達は若干引きぎみにそう言うが、当の本人はお気に入りのようだ。

 

「ほ、本当ですか?これを被れば僕も吸血鬼としてハクがつくかも………」

 

いや、ハクがつくのは変態なだろうよ。

 

 

 

そのあとは、イッセーの『女子のこんなところがたまらなく好きだ選手権』が開催され、夜通しで猥談をするはめになった。

 

 

その時に、裕斗がちゃんと女子を恋愛対象に入れていることに俺とイッセーは心底安心した。




ギャスパー「がお〜! 」

秋夜「(かわいいな)」

イッセー「(かわいいなくそ野郎)」

裕斗「(かわいいね)」

ギャスパー「どうでしたか? 吸血鬼っぽかったですか?」

秋夜、イッセー、裕斗「グッジョブ!」
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