ヴァーリは再び鎧を纏い、イッセーと対峙する。
イッセーの機転を効かせた攻撃でヴァーリにかなりのダメージを与えたのは確かだが、まだ倒すには至っていない。
それに、イッセーが禁手状態を保っていられるのも時間の問題だ。
負けんじゃねえぞ、イッセー・・・・・。
「・・・・・一か八か、やってやる・・・!」
お互いににらみ合いが続いていたが、遂にイッセーが動き出す。
イッセーは、先ほどヴァーリの鎧を砕いたときに一緒に落ちてきた『白い龍』の宝玉を拾い上げる。
その行動にヴァーリを含めた俺達全員が怪訝そうに見る。
「『白い龍』!アルビオン!ヴァーリ!もらうぜ、お前らの力!」
そう言って、イッセーは自身の右手の甲にある宝玉を叩き割り、そこに白龍皇の宝玉を埋め込んだ。
「「「なっ!?」」」
何してんだあいつッ!!
まさかヴァーリの力を取り込むつもりなのか!? そんなことしたら何が起こるかわからないんだぞ!!
「うがぁぁぁぁああぁぁぁッ!!!」
イッセーが宝玉をはめ込んだ右手を抑えて、叫びながら悶え苦しむ。
『無謀なことを。ドライグ、我らは相反する存在だ。それは自滅行為にしかならない。━━こんなことで消滅するつもりなのか?』
ヴァーリの中に宿る『白い龍』アルビオンが淡々と言う。
それに対して『赤い龍』ドライグが苦しみながらも笑いを含ませて言う。
『ぐおぉぉぉッ!!・・・・・くっ! アルビオンよ!お前は相変わらず頭が固いものだ!我らは長きに亘り、毎回毎回違う宿主と共に戦い続けた!・・・・・だが!それじゃあつまらないだろう!』
未だに痛みが襲いかかっているドライグは、アルビオンに不敵な笑いを向ける。
『俺はこの宿主━━兵藤一誠と出会ってひとつ学んだ!ばかを貫き通せば可能になることがある、とな!』
「ばかで結構だ!才能で負けてるならばかを貫き通してやる!」
イッセーは痛みを我慢して、天に向かって吼える。
「俺の想いに答えろォォォォッ!!!」
『VanishingDragon Poweristaken!!!』
イッセーの右腕を白い光が包み込む。
光が止むと、右腕には白い籠手が装着されていた。
「・・・・・へへへ。『白龍皇の籠手』ってとこか」
は、ははは・・・・。
まじかよ。まじでやりやがった!
あんなに苦しんでたから心配したんだぞこの野郎!
『(赤龍帝が白龍皇の力を取り込むなど前代未聞だぞ・・・・・!歴代最弱と言われていたそうだが、あいつは案外化けるかもしれんな)』
クローゼが珍しく驚きを表面に出している。
それほどまでにイッセーの行為は常識を逸脱しているということなのだろう。
俺はふと、祐斗の聖魔剣を思い浮かべる。
・・・・そうか。普通ならあり得ないことでも、神がいない今ではそれが可能だ。現に、祐斗の聖魔剣がいい証拠じゃないか。
混じり合うことのない『聖』と『魔』、それが1つとなって完成された祐斗の禁手。
ならば『倍加』と『半減』でも出来ないわけじゃない。
パチパチパチ
イッセーに拍手を送るヴァーリ。
「おもしろい、ならば俺も少し本気を出そう!もし俺が勝ったら君と君の周りにいる全てのものを半分にしてみせよう!」
ヴァーリはそう言って宙に漂い、両手を広げ、光の翼も一回り二回り程大きくなる。
『全てのものを半分』だと?
力を半減させるんじゃないのか?
俺はその言葉に疑問を抱いていると、アルビオンの音声が響き渡る。
『Half Dimension‼』
ヴァーリが眼下に広がる木々に向かって手をかざす。
━━その瞬間
っ!?
おいおい、うそだろ・・・・?
木が半分の大きさになってる・・・・!?
俺だけでなく、イッセーやその場にいるほとんどの皆が驚愕する。
「赤龍帝、兵藤一誠。お前にも分かりやすく説明してやろう」
アザゼルさんがニヤニヤしながらイッセーに解説をしようとしている。
「あの能力は周囲のものを全て半分にしていく。つまりだ、白龍皇が本気を出したらリアス・グレモリーのバストも半分になる」
「・・・・・・」
イッセーはその言葉の意味を理解して、呆然と立ち尽くす。
な、なんで胸で例えるんだよ・・・・・。
他にもいろいろ合っただろうが・・・・・。いや、イッセーだとこっちの方がいいのか?
はあ、もうどうでもいいや。
俺は思考を放棄してイッセーの様子を見る。
暫く固まっていたが、ギギギと首だけを部長へ向ける。その動きはちょっとしたホラーだぞ。
それからイッセーはプルプルと体を震わせる。
「ふ・・・ふざけんなァァアアアアアアアアァァァッ!!!!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』
鎧から出る音声と共にイッセーの力が跳ね上がる。
「ゆるさねえッッ! 絶対に許さないぞッッ!!ヴァーリィィイイイイィィィッ!!!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!』
イッセーからとてつもない質量のオーラが放出され、その影響で地面は陥没し、校舎の窓ガラスや壁にヒビが入る。
え、ええぇぇ!?
なんで!?
なんで、親が殺されるって言われたときよりも怒りが大きいんだよ!?
その光景にゲラゲラと笑うアザゼルさん。
いや、笑ってる場合じゃねえだろ!
確かにすごいパワーアップしたけど、その理由が最悪すぎる!
「今日は驚くことばかりだ。まさか、女の乳でここまで力が爆発するとは。しかし、おもしろい!」
ヴァーリはイッセーに向かって飛び出していく。
「遅えッ!」
しかしイッセーはそれを上回る速度でヴァーリに接近し、蹴り飛ばす。
ヴァーリは飛ばされた勢いを利用して、そのまま距離を取ろうとするが━━
「これは部長おっぱいの分!!」
イッセーが難なく捕まえ、腹部に強烈な右拳が放たれる。
『Divide!!』
イッセーが取り込んだ白龍皇の能力が発動し、ヴァーリの力を半減させる。
「ぐはぁっ!?」
ヴァーリのオーラが一気に減少するが、イッセーの猛攻は止まらない。
「朱乃さんおっぱいの分!」
「アーシアおっぱいの分!」
「ゼノヴィアおっぱいの分!」
怒濤のラッシュがヴァーリを襲う。
「そしてこれは、半分にされたら丸っきり無くなっちゃう小猫ちゃんのロリおっぱいの分だァァァッ!!!」
「がはっ!?」
止めの猛タックルを直撃したヴァーリは吐血する。
何気にアーシアの分も殴ってくれたな。
・・・・・ありがとう! 感謝するよ、イッセー!
「まさか、ここまでとは思わなかった。今の兵藤一誠なら『覇龍』を見せるに値するかもしれない!」
『っ!? 自重しろヴァーリ! 今それを使えば間違いなくただじゃ済まないぞ!』
あれだけの攻撃を受けても尚立ち上がるヴァーリ。
なんだ? アルビオンがあそこまで取り乱すなんておかしい。
それに『覇龍』・・・だっけ?
よくわからないけど、とにかくやばそうなのには間違いない。
「『我、目覚めれは、覇の理に━━━』」
ヴァーリがアルビオンの注意を聞かずに、なにかの詠唱を初めようとする。
その時、空から1つの人影がヴァーリの前に現れる。
「ヴァーリ、迎えに来たぜぃ」
目の前の男は、まるで三国志の武将が着ているような鎧を纏っている。
「美猴か。何をしに来た」
「相方がピンチっつーから遠路はるばるこの島国まで来たのにそりゃないぜぃ。他のやつらが本部で騒いでるぜぃ?北のアース神族と一戦交えるから戻ってこいってさ」
こいつも『禍の団』のメンバーか・・・・。
俺は美猴とかいうやつを静かに睨む。
それに気づいた奴は、俺の方を向いてヘラヘラとしている。
なんか無性に腹立つな、こいつ。
「そんな睨むことないぜぃ、創雷師さんよぉ。俺は別に加勢しに来た訳じゃないぜぃ。この白龍皇を迎えに来たんだ」
「俺を知ってるのか?」
「もちろんだぜぃ! 神器に目覚めて間もないのに禁手に至って、あのコカビエルも倒しときたもんだ!知らないやつの方が少ないんだぜぃ!」
へ、へえ。
なんかすごい熱弁してくれたけど、俺そんな大層なもんじゃないんだけど。
「お、お前は何者なんだ?」
イッセーがそう言うと、アザゼルさんが答える。
「あいつは鬪戦勝仏の末裔だ」
ん?
鬪戦勝仏なんて聞いたことないな。有名なのか?
俺とイッセーが首を傾げる。
「お前らに分かりやすく教えてやるよ。奴は孫悟空、西遊記で有名なクソ猿だ」
孫悟空・・・・西遊記って・・・・。
「「ええぇぇぇっ!?」」
「正確には、孫悟空の力を受け継いだ猿の妖怪だがな」
いや、それでもすごいですからね、アザゼルさん!
「俺っちは仏になった初代と違って、自由気ままにいきるのさ。俺っちの名前は美猴。よろしくな、赤龍帝に創雷師」
美猴はそう言って、手に持っていた棍を地面に突き立てる。
そこから謎の黒い何かが広がっていき、二人を沈めていく。
「逃がすか!」
イッセーは逃がすまいと駆け出すが、鎧が解除されてしまう。
あれだけの力を瞬間的にでも使ったんだ。解除されるのも仕方ないだろう。
「創雷師、嫌がるだろうけど今度は君と戦いたい。そして兵藤一誠。いずれ再び戦うことになるだろう。その時はさらに激しくやろう」
その言葉を残してヴァーリと美猴は完全に沈み込み、この場からいなくなった。
▽
ヴァーリ達が撤退した後、三大勢力の軍勢が魔術師の死体や破損した校舎など、戦闘の後始末をしていた。
あー、そういえば。
・・・・部室を盛大に壊しちゃったんだよな。
どうしよう。あの人たちついでに直してくれたかな?
俺は不安を抱きながら、部長達とサーゼクス様達がいる場所へ移動した。
「無事だったか。━━アザゼル、その腕はどうしたんだ?」
「カテレアに自爆されそうになったときに1本くれてやった」
アザゼルさんの無くなった腕を見たサーゼクス様は、申し訳なさそうに顔を曇らせる。
「別にいいさ。それよりも・・・・・・うちのヴァーリが迷惑をかけた」
「・・・・・彼は裏切ったか」
「元々、力にのみ興味を注いでいたやつだ。それを知っていて、未然に防げなかったのは俺の過失だ」
アザゼルさんの瞳には、どこか悲しさが見える。
ミカエルさんがサーゼクス様とアザゼルさんの間にはいる。
「さて、私は一度天界に戻り『禍の団』の対策を講じてきます。すぐこちらに戻るようにしますので、その時に正式な和平協定を結びましょう」
そう言ってミカエルさんはこの場を去ろうとするが、俺は慌てて呼び止める。
「あの、ミカエルさん!」
「どうかしましたか、如月秋夜くん?」
許しを貰えるかわからないけど、言うだけ言ってみよう。
「1つ、1つだけお願いを聞いてもらうことは出来ますか?」
「いいでしょう。時間も余り有りませんが、いいでしょう」
俺はミカエルさんの優しい目をしっかりと見る。
「アーシアとゼノヴィアが祈りを捧げても大丈夫にすることは出来ませんか?」
これはずっと思っていたことだ。
学校のなかでも、家でも、二人はたまに悪魔であることを忘れて祈りを捧げてダメージを受けている。
それを見るたびに、何とかしてあげたいと思ってたんだ。
「━━━っ」
俺の言葉を聞いたミカエルさんは驚いた様子を見せる。
両隣にいたアーシアとゼノヴィアも目を丸くしていた。
ミカエルさんは微笑んで頷く。
「わかりました。二人分くらいならなんとかなるかもしれません。━━アーシア、ゼノヴィア、あなたたちに問います。神は不在ですよ?それでも祈りを捧げますか?」
ミカエルさんの問いに、二人は首を縦に振り、頷いた。
「はい。主がおられなくても私は祈りを捧げたいです」
「同じく。主への感謝と━━ミカエル様への感謝を込めて」
二人の答えを聞いたミカエルさんは微笑む。
「祈りを捧げてもダメージを受けない悪魔が二人くらいいてもいいでしょう。面白そうですしね。あと、木場祐斗くんから進言があった聖剣研究についても、今後被害者を出さないとあなたから頂いた聖魔剣に誓いましょう」
祐斗もお願いをしていたんだな。
良かったな・・・・・祐斗。
「祐斗、これで安心だな」
「やったな、木場!」
「うん、ありがとう、秋夜くん、イッセーくん」
祐斗はこれまでにないくらいな満面の笑みを浮かべる。
俺はミカエルさんに向き直って、頭を下げる。
「ミカエルさん、ありがとうございます!」
「ふふ、どういたしまして。では、そろそろ時間なので私は行きますね」
そう言ってミカエルさんは、天使数名を連れてこの場を去る。
「うう、シューヤさん・・・・!」
「おっと」
アーシアが目をうるうるさせながら俺に飛び込んできた。
俺はそれを受け止めてから優しく頭を撫でる。
「よかったな、これでいくらでも祈れるぞ?」
「ありがとう、秋夜。」
ゼノヴィアもお礼を言う。
「俺がしたくてやったことだから気にすんな。これでゼノヴィアも思う存分祈りを捧げられるな」
ゼノヴィアの頭を軽くぽんぽんと撫でる。
「あ、ああ」
ゼノヴィアの頬が若干赤くなっている。
もしかして照れてるのか?
普段はそんな表情見せないから何というか、ぐっとくるな。
その後は、少し後始末の手伝いをして非常に内容の濃い1日を終えた。
▽
「てなわけで、今日からオカルト研究部の顧問となった。アザゼル先生と呼べ。それか総督でもいいぞ?」
スーツを着崩したアザゼルさんが何故かこの部室にいる。
あ、そう言えば、部室の窓やら壁やらは直してくれていました。ありがとうございます!
俺は心のなかで部室を直してくれた方々に感謝を送る。
さて、話を戻して、何故ここに堕天使総督が居るかというと、会長に頼んだら教師の役職になったから、だそうだ。
まずそこからツッコミたいけど話を進めよう。
それで、アザゼルさんがこの学園に滞在する条件として、俺達オカルト研究部の未熟な神器持ちを正しく成長させることらしい。
あと、会談のときに公となった『禍の団』の抑止力としても俺達の候補が挙げられた。主に白龍皇に対してらしいんだけど。
赤龍帝であるイッセーが居ればそうなるのも自然か。
アザゼルさんが言うには、ヴァーリは自分のチームを持っているそうだ。名前は仮付けとして『白龍皇眷属』。そのメンバーはヴァーリと美猴を含めた数名。
あ、それとアザゼルさんの無くなった片腕なんだけど、義手が付けられていたんだ。レーザービームや小型ミサイルを撃ち込める万能アームなんだとさ。
無駄にかっこいいじゃねえか。
それと、イッセーが取り込んだ白龍皇の力なんだけど、あのとき以来まったく機能しないとのことだ。
アザゼルさんは取り込むのは可能かもしれないが、それを自在に使いこなすのは禁手に至るよりも難しいと言っていた。
━━━とまあ、こんな感じだったかな。
俺が話の内容を思い出していると、アザゼルさんが祐斗に問いかける。
「聖魔剣使い、お前は禁手状態でどれくらい戦える?」
「現状、一時間が限界です」
「ダメだな。最低3日は維持できるようにしろ」
アザゼルさんの言葉を聞いた祐斗は気合いの入った表情になる。
「創雷師、お前はどれくらいだ? 4、5日くらいか?」
今度は俺にも同じ質問をするをしてきたので、首を横に振る。
「いや、クローゼが言うには2週間近くは維持できるそうですよ」
「は?」
俺の言葉を聞いたアザゼルさん━━━アザゼル先生が口を開けたまま固まる。
皆も目を丸くしていた驚いた表情をしている。
え、なんで?
俺がおかしいのか?
「お、お前、普段どんな修行をしてるんだ? 禁手に至ってから少ししか経ってないのにそこまで維持できるのは普通じゃないぞ?」
どんな修行って・・・・・。
毎日ティア姉と戦ったりしてるだけなんだが。
・・・・・・・・。
・・・・・たぶんこれだわ。普通、龍王とスパーリングなんて考えようとも思わないな。
「たぶん、ティア姉・・・・・ティアマットとの修行のお陰ですね。あれは本当に、命がけですから」
「━━━っ、ティアマットを何者かが使い魔にしたとは聞いていたが、まさかお前だったとはな・・・・・。なるほど、それなら納得だぜ」
アザゼル先生もティア姉が俺の使い魔だってこと知らなかったのか。知ってるのはオカルト研究部と四大魔王様達だけだ。
この事がバレてしまうと大騒ぎになるから隠すことにしていたんだけど、アザゼル先生なら教えても大丈夫だろ。
「これは教えがいがあるやつらばっかりだな・・・・・。━━━いいか、お前らは俺が一から叩き直して強くしてやる。 俺は暇な堕天使様だからな、時間はたっぷりあるぜ!」
アザゼル先生が胸を張って自信満々にそう言う。
はあ、この間まで敵同士だったのにもう溶け込んでるよ、この人・・・・・。
でも、どこか憎めないんだよな。
イタズラ好きな先生だけど、この人なら信頼できる。
ここでアザゼル先生が突然立ち上がる。
「よし、じゃあ早速修行として童貞卒業ツアーに行くか!」
・・・・・・訂正。
この人信頼出来ないわ。