では、どうぞ!
1話 冥界に行こう
「・・・・・・・なんで?」
俺は目覚めて早々頭が混乱している。
隣にはいつものようにアーシアが寝ていて、それだけ見れば普段の光景だと思える。
そう、そこだけ見れば。
ではどこが違うのかと言うと、それは部屋の広さだ。
明らかに俺の部屋ではない。あまりにもデカイ。デカすぎる。
今気づいたけど、ベッドもとてもビッグサイズになっている。
と、取り敢えず、アーシアを起こそう・・・・・・。何か知ってるかもしれない。
「アーシア、おーい起きてくれー」
「・・・・・・んん・・・・あ、おはようございますぅ・・」
アーシアは眠そうに目を擦りながら挨拶をしてくる。起床にはまだ早い時間に起こすのは悪い気がしたが、状況が状況だ。
・・・・・・・・ごめんね、アーシア。
「おはよう、アーシア。ところで、ここがどこかわかるか? 明らかに俺達の家じゃないんだけど」
「ふふっ、忘れちゃったんですか?ここはイッセーさんのお家ですよ。お引っ越しが急遽決まって、急いでお洋服とか運び出すの大変でしたよね」
「え?」
ひ、引っ越し・・・・? そんなこと昨日やったっけ? まったく覚えてないんだが。
俺は昨日の出来事を、記憶を振り絞って思い出していく。
ええっと、昨日は確か、普通に学校に行ったな。
・・・・・・まったく授業の内容は覚えてないけど。
放課後になって、アーシアとイッセーと一緒に部室に向かったんだよ。
中に入ると既に皆がいて、軽く雑談をしたはず。
それで、アザゼル先生が突然『サーゼクスからの命で女子メンバーはイッセーの家に住むことが決定した!』と、なんともふざけた事をぬかしてきたんだ。
もちろん、その中にはアーシアも含まれているわけで、俺としては許せる筈もなかった。
だって、女神をイッセーとひとつ屋根の下で暮らさせるんだぞ?
そんなこと、俺が許さん!
━━━と、そんな感じの事をアザゼル先生に言ったら、ニヤニヤした顔で『お前も住めばいいじゃねえか』って言い返されたんだ。あの時の顔がすごくイラッとしたから即答で答えてしまったんだよ。
『いいですよ』ってね・・・・・・。
はぁ・・・・・・。 あの総督・・・・後で覚えとけ。
俺は高級そうなベッドに倒れこみ、目覚まし時計のアラームが鳴るまでアーシアと二度寝をした。
▽
朝食を食べ終えたオカ研女子メンバー+俺とイッセーは、現在イッセーの部屋に集合している。これだけの人数が集まっても、まったく窮屈に感じない。
相変わらず広いなぁ・・・・。
先程部長から教えてもらったのだが、この家は地上6階地下3階の豪邸にリフォームしたものらしい。たった一晩で。
俺はそれを聞いたとき苦笑いしか出来なかった。
悪魔の技術恐るべし・・・・・・。
1階はリビングやキッチン、和室。
2階はイッセー、部長、朱乃先輩の部屋。
3階はイッセー父母の部屋など。
4階は俺とアーシアとゼノヴィア。
━━━とまあ、こんな感じの部屋割りとなっている。
小猫はまだ引っ越してきてはいないので、部屋は空きとなっているが。
地下はトレーニングルームや映画観賞を出来る空間となっている。
そのトレーニングルームってのが気になる。もし龍王の攻撃に耐えられる造りだったら嬉しいな。もしそうだったら、わざわざ使い魔の森に手間が省けるぞ。
部長は全員が集まったことを確認して口を開く。
「この夏休みに冥界に帰るわ」
「えっ! 帰っちゃうんですか!?」
「ええ、夏休みだもの。故郷に帰るわ。毎年の事なのよ━━━って、どうしたのイッセー?」
突然涙目になるイッセーを部長は疑問そうに見る。
「うぅ、俺を置いて帰っちゃうのかと思いましたよぉ・・・・・・」
「まったく、そんなことあるわけないでしょう? あなたと私はこれから百年、千年単位で付き合うのだから、安心しなさい、あなたを置いてなんかいかないわ」
イッセーの頭を撫でる部長が弟をあやしているお姉さんに見えてしかたない。
「というわけだから、皆ですぐに冥界に行くわ。長期旅行の準備をしてちょうだいね」
「え、俺達も行くんですか?」
「もちろん。あなたたちは私の眷属で下僕の悪魔なのよ?主と同伴するのは当たり前よ」
部長は当然といった様子で俺の問いに答える。
ま、まじか。
生きてるのに冥界に行くのって、なんか変な気がする━━━━ッ!?
俺は突如感じ取った気配に、警戒を強める。
しかし、すぐにそれが見知った者のであることに気づいて警戒を解く。
この気配、アザゼル先生か・・・・・・? もうドアのすぐ側まできてるな。まったく気づかなかった・・・・・・・。
俺は突然現れた気配に驚きながらも、少し悔さがある。そこそこ強くなったつもりだけど、まだ総督レベルには程遠いらしい。
「俺も冥界に行くぜ」
アザゼル先生の発言に皆は驚く。
この感じだと、気づいてたのは俺だけかな?
部長は目をパチクリさせながら先生に訊く。
「ど、どこから入ってきたの?」
「俺は普通に入ってきたぜ? それに気づけないのは単純に力不足だな。━━━まあ、秋夜は俺がドアに手をかける辺りで気づいていたが」
先生の視線に釣られるように、皆も俺の方を目を丸くして見てくる。
「すげぇ、全然わかんなかったぜ」
「さすがだね、まったく気が付かなかったよ」
「う、うん、ありがとう?」
イッセーと祐斗から尊敬の眼差しで見られるが、何と返せばいいのかわからず、疑問形になってしまった。
先生は懐からメモ帳を取りだすと、開いて読み出す。
「冥界でのスケジュールは・・・・・・・リアスの里帰りと現当主に眷属悪魔の紹介、若手悪魔達の会合。それと、あっちでお前らの修行だ。俺は主に修行に付き合うわけだがな。お前らがグレモリー家にいる間、俺はサーゼクスたちと会合か。ったく、面倒くさいもんだ」
うわぁ、スケジュールぎっしりじゃん・・・・。先生も大変そうだな。やっぱ先生になっても堕天使総督さまは忙しいのに変わりないのか。
若手悪魔の会合ってことは、部長や会長以外の次期当主が勢揃いになるんだよな。
いずれはその人たちともレーティングゲームで戦うことになるんだ・・・・・・しっかり見ておこう。
俺は一人静かに気を引き締める。
「では、あちらまで同行するのね? 行きの予約をこちらでしてもいいのかしら?」
「ああ、よろしく頼む。いつもは堕天使ルートで行くから、悪魔ルートは初めてだ。楽しみだぜ」
先生は子供のように無邪気な笑みを浮かべる。
▽
冥界に行くために、まず俺達が向かったのは普段利用している最寄りの駅だ。
因みに服装は皆同じ、駒王学園の夏の制服だ。これが一番の正装なんだそうだ。
それにしても、なんで駅なんだ? てっきり魔方陣で行くのかと思ってたんだが。
俺は疑問に思いながらも部長について行く。そして、エレベーターの扉の前で止まった。
「じゃあ、まずはイッセーと秋夜とゼノヴィアとアーシア来てちょうだい。先に降りるわ」
そう言って部長を含めた俺達五人はエレベーターの中へ入る。
降りる?
このエレベーター、上にしか上がれないはずなんだけど・・・・。
部長はスカートのポケットからカードのようなものを出して、電子パネルにかざす。
ガゴンッ
えっ! これ、まじで下に下がってるのか?
俺とイッセーとアーシアはこのあり得ない現象に驚きを隠せない。
ゼノヴィアは首を傾げるだけで、特に反応はしていない。
部長はそんな俺達の反応を見て、クスクスと笑う。
「ふふ、これは悪魔専用のルートよ。普通の人間じゃ一生たどり着けないわ。こんな風に、この町には悪魔専用の領域が結構隠されてるのよ?」
ここだけじゃなくて他の場所にも・・・・・・?
ま、まったくわからなかったぞ。
そして、目的地に到着したエレベーターの扉が開く。
その先に広がるのはだだっ広い駅のホーム。多少造りや模様が違うけど、ほとんど同じような感じだ。
暫く歩いていくとそこにはグレモリーの紋様に加え、サーゼクス様の紋様が描かれている鋭角な列車があった。
「グレモリー家所有の列車よ」
部長は堂々とそう言った。
ははっ、もうなんでもありじゃないか・・・・。
俺達は部長に促されて列車の中に入り、それぞれ席に着く。
部長は一番前の車両に、残りの俺達は真ん中の車両にいる。 朱乃先輩曰く、そういうルールなんだそうだ。
因みにアザゼル先生は、車両の端の席で既に昼寝を始めている。
俺はさっき、列車に乗ってすぐに疑問に思ったことを朱乃先輩に質問してみた。
「朱乃先輩。わざわざ列車じゃなくても魔方陣で行った方が早いんじゃないですか?」
「通常はそれでもいいのですけど。秋夜くん達新眷属の悪魔は正式なルートで一度入国しないと違法入国で罰せられてしまいますわ」
「ま、まじですか」
俺はそれを聞いて冷や汗が止まらなかった。
あ、あぶなかった・・・・。 この間ティア姉に冥界に行こうと誘われて、普通にOKしちゃったよ。
も、もし、先にティアの方で行ってたらどうなってたことやら・・・・・・・。
俺はアーシアの隣の席に座り、嫌な結末を想像して体を震わせていると、頭のなかに少女の声が響いてくる。
『(下手したら監獄行きだったんじゃない?)』
こら雷切、そんな怖いこと言うんじゃない。 なでなで禁止にするぞ?
『(ご、ごめんなさいぃぃ! いい子にしてるからぁぁ!)』
俺はこいつに伝わらないように内心思う。
━━━ちょろいな・・・・・・・と。
最近よく寝ているときに、雷切の世界に行って構ってあげてるんだが、毎回頭を撫でてと催促してくる。
その度に『面倒くさい』と言うと泣きそうな顔をされるもんだから結局やる羽目になるんだけどね。
はぁ。 俺って甘いのかな・・・・。
『(ふむ、そこが主のダメなところであり、良いところでもあるな)』
俺の中にいるもう一人の存在。雷輝龍のクローゼが威厳ある声でそう言う。
クローゼ・・・・。
俺は雷切にもっと厳しくするべきだろうか。 人生の先輩からアドバイスを頂きたいよ。
『(今はそのままでもいいんじゃないか? 雷切も突然主の態度が変わったら戸惑ってしまうとおもうぞ)』
そう言うクローゼは、雷切と初めて会話をしてケンカをしていたのが嘘のように雷切の面倒をちゃんと見ている。
お父さんと娘みたいな感じだ。
そうか。お父さんの言うとおり、このままでいこうか。
『(・・・・ぅぐっ・・・・ひぐっ・・・)』
あー、雷切? 今の嘘だからな? ちゃんと頭撫でてやるから泣かないでくれ
俺はやさしくそう言うと、雷切は途切れ途切れに確認をとる。
『(・・・・ほん・・・とう・・・・?)』
ああ、本当だ。
『(やったー!!)』
さっきまで泣いていたのが嘘のように、一瞬で喜びを全面にだす。
こいつ、まさか嘘泣きしてたのか・・・・?
やっぱやめだ。 なでなで禁止。
『(いやぁぁぁぁ!!)』
雷切がすごい発狂しているが、俺は完全スルーを決め込み膝を枕にして寝ているアーシアの頭を優しく撫でてあげる。
今日は早起きだったから、眠くなって仕方ないよな。
それにしても、アーシアは本当に俺の癒しだ。見てるだけで心が和む・・・・。
『(ちょっと!私を差し置いてなんでその娘の頭を撫でてるのよ!)』
なんでって、アーシアだからに決まってるだろ。
『(うぅ・・・その娘ばっかりずるい・・・・!)』
アーシアはいいの! 特別なの!
それに、嘘泣きする方が悪いんだからな? あのまま素直に頷いとけば撫でてやったのに。
『(くっ、私としたことが完全に失敗したわ・・・・!)』
もうこいつはクローゼに任せておこう。
・・・・・・・クローゼ、お説教かましてやれ。
『(了解した)』
クローゼは返事をして、そのままギャーギャー言ってる雷切を神器の中へと引きずり込んでいった。
ま、自業自得だな。
俺は寝ているアーシアの頭を撫でていると、車掌服をきて白い髭を生やした初老の男性が扉を開けて入ってくる。
「初めまして、姫の新たな眷属悪魔の皆さん。私はこの列車の車掌をしている、レイナルドと申します。以後お見知りおき」
丁寧な挨拶に、俺達も立ち上がって一礼する。
「こちらこそ初めまして。リアス・グレモリー様の『戦車』の如月秋夜です。よろしくお願いします」
「は、初めまして! 部長━━━リアス・グレモリー様の『兵士』、兵藤一誠です!よろしくお願いします!」
「アーシア・アルジェントです!『僧侶』です!よろしくお願いします!」
「ゼノヴィアです。『騎士』、今後ともお願いします」
俺達の自己紹介を聞いたレイナルドさんはうんうんと小さく頷いて微笑む。
「元気がよくでいいですな。良い眷属をお持ちになりましたね、リアス姫」
レイナルドさんはそう言うと、俺達四人の体に特殊な機械を照らしてくる。
俺達は突然のことで反応に困っていると、レイナルドさんが白い髭を擦りながら説明する。
「これはあなた方を確認、照合する悪魔世界の機械です。もし偽りがあったら大変ですので。今のご時世、列車を占拠されたら大変なのです」
「あなたたちの情報は、駒を通して冥界にデータとして記載されたわ。だから、機械でそれを照合させるのよ」
なるほどね、セキュリティは万全ってことか。
それから数分で四人数分の照合を終えたレイナルドさんは、機械をしまってニッコリ微笑む。
「姫、これで照合と同時に入国手続きも終了しました。あとは到着予定の駅までごゆるりと休憩できますぞ」
「ありがとう、レイナルド。━━━━それにしても、ついこの間まで敵対していた種族の列車のなかでよく眠れるものね・・・・」
部長はそう言って、ぐっすり眠っているアザゼル先生をあきれた様子で見る。
仕方ないですよ、 アザゼル先生ですから。
そう思うしかないんです。
「ホッホッホッ。堕天使の総督さまは平和ですな」
レイナルドさんは愉快に笑った。
▽
レイナルドさんが車掌室に戻ってから暫く経ち、目的地到着のアナウンスが流れる。
『間もなく、グレモリー領に到着します』
俺はそのアナウンスを聞いて、窓から冥界の景色を見てみる。
空に広がるのは人間界のような青空ではなく、紫色で覆われていた。
山があり、川があり、木々が生い茂っていて自然豊かな場所だ。
俺達新人悪魔は四人揃ってその風景に圧倒されていた。
「ここは既にグレモリー領よ」
部長が自慢気に口にする。
す、すげぇ・・・・・・・。 この全部が部長の家の領地。 スケールが違いすぎる。
「グレモリーの領土ってどれくらいあるんですか?」
イッセーが部長を羨望と尊敬の眼差しで質問をすると、祐斗が後ろから答える。
「確か、日本でいう本州丸々くらいだったかな」
は?
ほ、本州丸々!? さ、さすがにそれは広すぎやしないか!?
俺達はもう目が飛び出るくらいに驚愕した。
それからも、部長が冥界やこの土地について説明しようとした
━━━━その瞬間
ドシィィィィンッ!!!
突如、走っていた列車が急停止した。
俺達は皆体勢を崩してしまうが、揺れはすぐに収まって慌てて状況の確認をする。
「アーシア、大丈夫か?」
「は、はい! ビックリしましたけど、大丈夫です!」
俺はアーシアが無事なことを確認して、ほっと胸を撫で下ろす。
それにしても、一体どうしたんだ? ただ事じゃないだろ、これ。
俺は列車の窓から外を見る。
特に攻められたような感じはしない。単に列車に問題があったのか?
俺は疑問に思い、部長に尋ねようとした時、この列車全体を何かで包み込まれるような感覚に襲われる。
「━━━っ! これは、転移か!?」
ティア姉に連れられる時によく転移させられるからこの感じはしっかり覚えている。
俺は皆に警告しようとするが、既に強制転移させられてしまった。
「うぅ・・・・ここは・・・・?」
目を開けてみると、そこはゴツゴツとした岩がそこら中にある荒野みたいな場所だった。
俺は急いで皆が無事か確認する。
アーシア、イッセー、朱乃先輩、小猫、祐斗、ゼノヴィア、ギャスパー・・・・。
━━━ぶ、部長とアザゼル先生がいない!? どこにいったんだ!?
まさか別のところに転移させられたのか!?
すると、ゼノヴィアが耳をすまして何かに気づく。
「なあ、何か聞こえないか?」
「え?」
俺も耳を澄ましてみると、確かに何かが聞こえてくる。
これは、地響きか・・・・? しかもどんどん近づいてきてる・・・・!
「な、なんだよこの音!?」
イッセーはそう言って身を構える。
そして、その音の主が姿を現す。
お、おいおい・・・・こいつは・・・・
「ド、ドラゴン!?」
俺達の眼前には、二本の金色の角を生やし紫色の鱗に包まれた二足歩行の巨大なドラゴン。
「ガアァァァァァァァァァッ!!!!」
その咆哮と共に、全てを焼き尽くすような業火を口からを放つ。
ぐっ・・・・! こんなの、まるでティア姉じゃねえか!!
俺達はそのブレスをなんとか避け、臨戦態勢に入る。
祐斗は聖魔剣を、ゼノヴィアはデュランダルを手に持ち、ドラゴンに向かって構える。
クローゼ! 俺達も行くぞ!
『(ふっ。ああ、俺達の力を見せてやろう)』
俺は雷輝龍の籠手を装着し、あの言葉を叫ぶ。
「禁手化ッ!!」
『Lightning Dragon Balance Breaker!!!』
俺は《雷輝龍の創電鎧》を身に纏い、ドラゴンに向かって行こうとした時、横から小猫が飛び出していく。
っ!?
何してるんだあいつ! いきなり接近しに行くのは無謀だぞ!
「戻れ小猫!!」
しかし、俺の言葉は届かず小猫はドラゴンに拳を放とうとする。
「ガァァァッ!!」
襲いかかる小猫をドラゴンは尻尾で叩き落とそうと横に薙いだ。
「クソッ!!雷切ィィィッ!!」
俺は右手に雷切を出現させて、神速で小猫の前へと移動する。
横から襲いかかってくる強烈な尻尾の一撃を、雷切を使って受け流す。
「ぐっ・・・・!! うおらぁぁぁッ!!」
ドゴォォォォン!!
ドラゴンの尻尾はあらぬ方向に命中し、岩山を砕いた。
俺はすぐさま宝玉に雷を集中させる。
『Charge starting!!!』
雷切! 一発でかいのぶっぱなすぞ!!
『(ええ!私たちの力を見せつけなさい!)』
『Completion!!!』
溜められた雷を一気に解放して、雷切の刀身に高密度のエネルギーを纏わせる。
そして、放つ!!
ピシャァァァァッ!!!!
雷切からドラゴンの全身を包み込むほどの極大の雷撃が、けたたましい音と共に放たれる。
「ガァァァァァッ!!」
「なっ!?」
しかし、ドラゴンは先程よりも強力なブレスで、俺の雷を相殺させた。
クソッ! 結構強めで放ったんだぞ! それをこうもあっさり相殺しやがって!
俺はこのドラゴンの強さに舌打ちをして小猫に声をかける。
「おい小猫! 何でいきなり飛び出したんだ! 下手したら大怪我を負ったかもしれないんだぞ!」
「━━━っ、ごめん、なさい・・・・!」
俺の怒鳴り声で、小猫は体をビクッと震わせて俺に謝ってくる。
その姿を見て俺は自分を責める。
な、何怒鳴ってんだよ俺! いくら何度もこの言い方はダメだろ!
俺はどうしたらいいかわからなくなり、下を俯く小猫な頭をわしゃわしゃと撫でて前に出る。
「すまん、今のは言い過ぎた・・・・。でも、小猫のことを心配したのは本当なんだ。だから、あんまり無茶なことはしないでくれ」
「・・・・・・・」
小猫は何も言わずに俺の後ろで黙っている。 どんな表情で訊いていたのか気になるが、今は目の前の敵に集中だ。
「副部長! 指示をお願いします!」
「わかりましたわ! 秋夜くんを中心に祐斗くんとゼノヴィアでドラゴンを引き付けてください!
小猫ちゃんはアーシアちゃんとギャスパーくんの守護を! イッセーくんはその間に神器を! 私は空から支援しますわ!」
朱乃先輩は戦闘ようの巫女服に変身し、指示を飛ばす。俺達はそれに頷き、各自動き出す。
「祐斗、ゼノヴィア、行くぞ!」
「うん!」
「了解した!」
俺は雷を纏い、祐斗とゼノヴィアは『騎士』の特性で神速でドラゴンに肉薄する。
「はあぁ!!」
「もらったぁ!!」
二人はドラゴンに斬りかかるに行くが、二本の角で弾き飛ばされてしまう。
聖魔剣とデュランダルをものともしないのか!
━━━━でも、本命はこっちだ!!
『Charge starting!!!』
俺はさっきと同じように、雷切に雷を纏わせる。しかし、今度は際限無く神器に溜め、雷切の宿す雷も上乗せだ。
「はあぁぁぁッ!!!」
ドゴォォォォン!!!
収束した雷が極太の柱となってドラゴンを飲み込む。
ブレスを放つ暇も無く、巨大な両翼で自身の体を覆うようにガードする。
「グガァァ・・・・!」
光が収まってドラゴンを見てみると、翼が所々ボロボロになっていた。それ以外の外傷は無かった。
「う、うそだろ・・・・秋夜の雷が・・・」
「あらあら、これは・・・・・まずいですわね」
イッセーはドラゴンの耐久力に驚きを隠せないでいた。朱乃先輩は冷静に見えるが、笑顔がなくなり真剣な表情になっている。
だが俺は驚いている暇はなかった。
このメンバーのなかで一番火力があるのは俺だ。イッセーは倍加をすれば凄まじいけど、それだと時間が掛かる。
もう、『神速』を発動させるしかない・・・・・。
禁手状態での『神速』は、普通の状態で発動させるよりも桁違いの負荷が掛かる。
鎧の維持時間も一気に短くなるけど、これしかない!
「『神━━━」
「おおっと、そこまでだ」
俺は突如として発せられた声で動きを止め、その声の主の方を見る。
え、な、なんで・・・?
「アザゼル先生に、部長!?」
そう、俺達の視線の先には堕天使総督と、我らが『王』がいた。