雷龍を宿しました。(休載)   作:Takari

37 / 37
3話 顎に一発

 

部長に上から声をかける亜麻色の髪をした美人の女性。

 

その容姿は、20代前半くらいで髪の色こそ違えど部長にそっくりな顔立ちだ。

おまけにスタイルも同じくらいに抜群。

 

 

ただ、少し目付きがきついけど・・・・。

 

この人、部長のお姉さんかな?

 

 

部長はその女性を確認すると微笑んだ。

 

「お母様。ただいま帰りましたわ」

 

 

ああ、お母さんの方だったのか。

 

てっきりお姉さんの方・・・・・・・・か、と。

 

 

俺はそこで部長の言葉に引っかかる。

 

 

部長、さっきこの人のこと・・・・お、お母様って呼んだよな?

 

う、うそだ!?

 

見た目20代前半の美人な女性なのに!?

 

 

「お、お、お母様ぁぁぁぁああああっ!?

だって、部長とあまり歳が変わらない可愛い女の子じゃないですか!」

 

イッセーはあまりの真実に、目が飛び出るくらい驚く。俺とアーシアとゼノヴィアも、イッセー程ではないが目を見開いて驚愕する。

 

「悪魔は歳を経れば魔力で見た目を自由に変えることができるのよ。お母様はいつも私と同じくらいの年格好で過ごされているの」

 

な、なるほど。 だからこんなに若々しいのか。

 

俺も歳をとったら魔力で見た目を変えられるのかな?

 

出来るようになるのは何百年くらいか、当分先の話になるけど。

 

 

若さの秘密を解説された部長のお母さんは、口に手を当てて上品に笑う。

 

そして、今度は俺たちと向き合う。

 

「初めまして、リアスの眷属の皆さん。私はリアスの母のヴェネラナ・グレモリーですわ」

 

ヴェネラナさんが俺の方をまじまじと見つめてくる。

 

「あなたが、創雷師━━━如月秋夜さんですか?」

 

「は、はい、そうですが。 俺のことをご存知なんですか?」

 

「ええ、勿論ですとも。レーティングゲームで禁手に至り、フェニックス家の三男を一撃で降し、更には伝説の堕天使コカビエルを倒してしまうのですから。冥界で知らない悪魔は殆どいないでしょう」

 

 

なんでそんなに広まってるんだよ・・・・!

 

イッセーだって白龍皇を倒したじゃねえか・・・・。

 

 

俺の戦歴をスラスラと述べられて、なんとも恥ずかしい気持ちになってくる。

 

 

「それに、ミリキャスが毎日のようにあなたのことを話してきますからね」

 

 

ミ、ミリキャスゥゥゥ!

 

憧れてくれるのは嬉しいんだけど、師匠は恥ずかしいから程々にしてほしい!

 

 

グレモリー一家に俺のことを笑顔で話しているであろうミリキャスに、心のなかでそう叫んだ。

 

 

 

 

 

 

ヴェネラナさんと別れてから、各自に宛てられている部屋で待機をしていた。

 

 

兵藤家の部屋もかなり広いが、さすがはグレモリー本邸。

 

 

その倍以上の大きさの広い部屋だった。

そこで生活できるんじゃないかと思えるくらいに。

 

 

天井にはシャンデリア。 天蓋付きの巨大なベッド。風呂、トイレ、冷蔵庫、テレビ、キッチンなど、生活必需品が完備されていた。

 

 

この部屋、一人じゃ広すぎて落ち着かない・・・・。

 

 

高級そうなベッドに寝転がって気分を落ち着けさせようとするが、一向に収まらない。

 

 

コンコンッ

 

 

不意にドアがノックされる。

 

 

「はい、どうぞ」

 

 

ドアを開けて入ってきたのは、荷物を手に持ったアーシアとゼノヴィアだった。

 

 

「シューヤさん! あ、あんなに広いお部屋で一人は無理ですぅぅ!」

 

「・・・・・・どうも落ち着かなくてね。悪いのだけれど、アーシアと一緒にこの部屋に居てもいいかな?」

 

 

教会で質素な暮らしをしてきた二人にとって、こんなに広くて豪華な部屋だと落ち着かないらしい。

 

そう言う俺も落ち着かなくてソワソワしてたんだけどね・・・・。

 

二人が来てくれた方が俺も安心できる。

 

 

「ああ、俺も落ち着けなくてどうしようかと思ってたんだ。・・・・・さすがに部屋が広すぎるよ」

 

俺は苦笑いをして二人を中に入れる。

 

 

それから3人で雑談をしたり、設置されているテレビで冥界の番組を見て過ごしていると再びドアがノックされる。

 

俺は『はい、どうぞ』と返事をすると、一人のメイドさんが入ってくる。

 

「お食事の準備が整いましたので、席までご案内致します」

 

「わかりました」

 

俺達はメイドさんの後ろに着いていき、夕食の会場へと向かった。

 

 

豪華な装飾が施されている廊下を暫く歩いて、漸く目的地の扉の前に到着する。

 

メイドさんがドアを開けてくれて中にはいると、既に俺達以外の全員が着席していたので慌てて移動を済ませる。

 

「師匠! お隣どうぞ!」

 

「あ、ありがとうミリキャス」

 

イッセーの隣が空いていたのでそこに座ろうとしたが、ミリキャスが自分の隣の椅子を引いて招く。

 

折角用意してくれたので俺はミリキャスの隣に着席した。

 

それにしても、なんて量の料理だ・・・・。

 

どれもこれも美味しそうだけど、豪華すぎて逆に食べづらい・・・・。

 

俺の視界いっぱいに映り込む多種多様な料理に、思わず頬が引きつってしまう。

 

「さあ、遠慮せずにたくさん食べてくれたまえ」

 

グレモリー卿のお言葉で会食が始まった。

 

 

俺とイッセーはこのようなことに慣れていないため、少々ぎこちなくナイフとフォークを使って何とか食べている。

 

チラッと横を見てみると、ミリキャスは上手に食べていた。

 

早速、師匠としての威厳が失われそうな俺である。

 

 

アーシアとゼノヴィアは苦戦しながらも様になっている。すごいぞアーシア!

 

朱乃先輩と祐斗は慣れた手つきで優雅に食事を口に運んでいる。 さすがはお姉さま『女王』とイケメン『騎士』だ。

 

ギャスパーは・・・・・・・縮こまって涙目になって食べてる。

 

頑張れギャスパー!

 

この食事会が終わればお前の大好きな段ボールに引きこもれるぞ!

 

俺は暖かい目でギャスパーを見る。

 

 

小猫は━━━まだ食事に手をつけていない。

 

食べることが人生の喜びと言っても過言ではない小猫が一口も食べないなんて。

 

最初は、俺が怒鳴ったことを気にしているのかと思ってたけど、流石にここまで様子が変だとそのことじゃ無いんだよな。

 

・・・・・・・そういえば、今日以外でも不思議に思うことがあった。

 

部室でイッセーがスケベ発言をすると、いつもなら小猫が強烈な毒舌を言うんだけど、最近だとそれが控えめになっている。

 

溜め息をついたり、どこか遠くを眺めていたり、何かに悩んでいるような感じがしたんだ。

 

・・・・ううん、小猫のやつ、大丈夫なのか?

 

 

俺はナイフを動かす手を止めて考え込んでいると、ミリキャスが心配そうに話しかけてくる。

 

「師匠、どうかしましたか?」

 

「ん? あ、ああ、何でもないよ」

 

俺が微笑んでそう言うと、ミリキャスは安心したような顔をする。

 

「あの、師匠の雷、後で見せてもらってもいいですか?・・・・・・映像で何度も見たけれど、生で見てみたくて・・・・」

 

「おう、勿論いいぞ。序でに禁手も見てみるか?」

 

「いいんですか!? やった!!」

 

ミリキャスは嬉しさのあまり両手を上げて万歳をする。

 

しかし、それを見たヴェネラナさんが注意する。

 

「はしたないですよ、ミリキャス。秋夜さんとの会話が弾むのはわかりますが、マナーはちゃんと守りなさい?」

 

「は、はい・・・・。ごめんなさい、おばあさま・・・・」

 

シュンと落ち込んでしまうミリキャス。

 

 

半分は俺のせいでもあり、少し罪悪感が沸き上がる俺はミリキャスの頭に手をポンと乗せる。

 

「ま、まあ、後で見せてやるから元気そうぜ」

 

「は、はい・・・・!」

 

 

うん、いい笑顔だ!

 

折角の食事なのに悲しい顔で食べるのはもったい。どうせなら楽しく食べたいよな。

 

 

その後も、ミリキャスから質問されたり食事を楽しんだりした。

 

イッセーは、部長とグレモリー夫妻となにやらお話をしていたっぽい。

 

どんな内容かはわからないが、部長が度々顔を真っ赤にさせていたから大体は予想出来るけど。

 

 

そんなこんなで、俺達は豪華な会食を終えた。

 

 

 

 

 

 

魔王領の都市ルシファード。

 

 

ここは旧魔王ルシファー様がおられたという冥界の旧首都。

 

人間界とは多少の差異はあるけれど、どの建物も最先端の様相だ。

 

俺たちは若手悪魔、旧家、上級悪魔の会合が行われる場所へ向かっている。

 

専用列車を数回乗り換えて、漸く目的地の目の前にあるエレベーターに到着した。

 

さっき地下鉄で乗り換えるとき、待ち伏せていた人たちの部長に対しての歓声が凄かったなぁ・・・・。

 

やっぱり部長は美人だし、皆の憧れの的ってことか。

 

・・・・・・ちゃっかりその中に『創雷師!!』って俺のことを呼ぶちびっ子達がいたんだ。

 

流石に無視するのも気が引けるし、控えめに手を振ってあげたらすごく喜んでくれたよ。

 

ミリキャスもだけど俺って子供に人気があるのか?

 

 

「皆、もう一度確認するわ。何が起こっても平常心を保つこと。何を言われても手を出さないこと。━━━━上にいるのは将来の私たちのライバルよ。無様な姿は見せられない」

 

エレベーターで降りる前に部長は俺達に最後の確認をする。

 

将来のライバル・・・・・・。部長も相当気合いが入っているな。

 

ふう・・・・。少し緊張してきたぞ。

 

 

エレベーターが上へ上へと進んでいく。

 

かなりの高さまで上がってエレベーターが停止し、扉が開かれる。

 

「ようこそ、グレモリー様。こちらへどうぞ」

 

扉の近くで待機していた使用人が俺達を案内してくれる。

 

俺たちが通路を歩いていると前の方に複数の人影が見えてきた。

 

「サイラオーグ!」

 

どうやら部長の知り合いみたいだな。

 

部長の声に気が付いて近付いてきたのは、黒髪の短髪で野性的なイケメンの男性だ。

 

服の上からでもわかるほど鍛え上げられた肉体。相当な鍛練を積んできたのがわかる。

 

 

それに━━━━

 

 

なんて濃密なオーラだ・・・・。

 

何もしていない、ただそこに立っているだけなのに感じられる圧倒的な存在感。

 

この人、強いな・・・・。 俺が全力を出しても勝てるかどうかわからない。

 

それに威風堂々としていて、正に『王』という言葉が似合う。

 

彼の滲み出る強者のオーラに、俺は気分が高揚して仕方なかった。

 

ははっ、何でだろうな。

俺は別に戦いが好きなわけじゃないのに、この人とは戦ってみたいと思える。

 

正々堂々、真っ向勝負で。

 

 

「久しぶりだな、リアス」

 

「ええ、懐かしいわ。変わりないようで何よりよ。初めての者もいるわね。彼はサイラオーグ。私の母方の従兄弟でもあるの」

 

部長はサイラオーグさんと握手を交わして紹介してくれる。

 

「俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」

 

バアル家・・・・。

 

魔王の次に権力を持つ大王家で72柱での地位は一番上なんだっけ?

 

前にティア姉から教わったけど、記憶に自信がないな。

 

「お前がコカビエルを倒した創雷師━━━如月秋夜か?」

 

サイラオーグさんの曇りのない鋭い瞳が俺を一瞬で強ばらせる。

 

「は、はい。そうですけど」

 

「ふむ・・・・。いい目をしている。纏っているオーラも強者のそれだ。これならコカビエルを倒したのも頷ける」

 

サイラオーグさんは納得したように小さく頷き、俺に挑戦的な笑みを浮かべて言葉を続ける。

 

「・・・・・・だが、俺を倒すのは一筋縄じゃいかないぞ?」

 

その瞬間、とてつもないプレッシャーが俺に襲いかかってくる。

 

っ!?

 

な、なんて威圧だ・・・・!気を抜けば体が震えてきそうになる!

 

しかし、俺は驚きながらも自然と口元が釣り上がっていた。

 

「はははっ、すげえ・・・・!」

 

「っ、ほう・・・・・俺のプレッシャーを受けて笑うか。これは拳を交えるときが楽しみになってきたな」

 

俺に掛けられていた重圧が解除されて一気に体が軽くなる。イッセー達は特に変化は無かったらしく、どうやら俺一人に向けられていたらしい。

 

「俺も楽しみです。 あなたと戦える日が待ち遠しい」

 

俺とサイラオーグさんは握手を交わす。

 

俺たちのことを微笑んで見ていた部長がサイラオーグさんに尋ねる。

 

「ところで、こんな通路で何をしているの?」

 

「ああ、くだらんから出てきただけだ」

 

「くだらない?・・・・他のメンバーも来ているの?」

 

「アガレスもアスタロトも既に来ている。あげく、ゼファードルだ。ついた早々、ゼファードルとアガレスがやり合い始めてな」

 

サイラオーグさんは心底呆れた様子だ。

 

え、なに?ケンカでもしてるのか?

 

俺が疑問に思っていると━━━━

 

 

ドオオオオオンッ!!

 

 

な、何事!?

 

突然、奥にある部屋から爆発音が響いてきた。

 

気になった部長が音のした部屋へと向かったので、俺達もついていく。

 

「まったく、だから開始前の会合なんて要らないと言ったんだ」

 

眷属の皆さんを引き連れたサイラオーグさんが嘆息をして部長のあとに続く。

 

 

部屋に入ってまず目に入ってきたのはボロボロになってしまった大広間だ。

 

装飾品も全て破壊されてしまっている。

 

そして、広間の中央で二人の悪魔が対峙している。お互いに武器を取り出して一触即発の空気だ。

 

「ゼファードル、こんなところで戦いを始めても仕方ないんじゃなくて?死にたいのかしら?」

 

眼鏡を掛けた女性悪魔が殺気を全開にさせる。

 

「ハッ!俺がせっかく一発仕込んでやろうとしたのによ!アガレスの姉さんはガードが堅くて嫌だね!ったく、魔王眷属の女どもは皆処女臭くて敵わないぜ!だからこそ、俺が開通式をしてやろうっていってんのによ!」

 

なんとも下品な言葉を連発しているこの男性悪魔。

 

緑色の髪を逆立てて上半身は裸、身体中にタトゥーを入れていてヤンキーのようだ。

 

この部屋を滅茶苦茶にしたのはこいつらか。

 

今の会話を聞いた感じだと悪そうなのはヤンキー悪魔の方だよな。明らかに女の方を侮辱してるし。

 

二人の様子を見ているとヤンキー悪魔が俺たちの視線に気付き、此方にガンを飛ばしてくる。

 

「なんだお前ら? これは見せ物じゃねえぞ!とっとと失せやがれ!━━━━ん?」

 

ヤンキー悪魔が怒鳴るのを止めて此方をまじまじと見てくる。

 

そして、気色悪い笑みを浮かべる。

 

「おお!そこの金髪美少女ちゃんめっちゃかわいいじゃねえか!アガレスはやめだやめ!なあ、後で一発やらねえか?」

 

「え、え?」

 

このヤンキー悪魔が言っている金髪美少女とはどうやらアーシアのことらしい。

 

アーシアは突然のことで何が何だかわからなくなって戸惑っている。

 

「へへっ!反応もまじタイプだぜ!やべえ、たまんねえ!」

 

ヤンキー悪魔はゲラゲラと笑う。

 

こいつ、俺の前でやってはいけない事をしちまったな・・・・!

 

薄汚い目でジロジロと見ているヤンキーの視線を遮るように、俺はアーシアの前に立つ。

 

「あぁ? 何だおまえ?邪魔だからそこに立つんじゃねえよ。金髪美少女が見えねえじゃねえか」

 

「わざと見えないようにしてるんだよ。汚ならしい目で見たことを今すぐ彼女に謝れ。そしたら骨の2、3本で勘弁してやるよ」

 

俺まだ手を出さない。こいつの返答次第で加減の具合を決めてやろう。

 

まあ、結局のところ病院送りにするのは確定だけど。

 

そうしなきゃ気がすまん! 一体誰の女に手を出そうとしたのかわからせてやる。

 

「ハッ!誰が謝るかよ!俺が誰となにをやろうが勝手だろうが」

 

ヤンキーが青筋を浮かばせて俺に中指を立ててくる。

俺はそれを見てニコっと笑う。

 

「そっか、謝らないのか。・・・・・・・なら手加減は無しにしよう」

 

「手加減?舐めてんのか、てめ━━━━」

 

 

ドゴンッ!!

 

 

ゼファードルが言葉を言い終える前に、激しい打撃音と共に俺のアッパーカットが顎に吸い込まれた。

 

「神器は使わないでやったんだ。ありがたいと思え」

 

天井に頭から突き刺さっているゼファードルに向かって吐き捨てるように言う。

 

「き、きさま!」

 

「下級悪魔の分際で!」

 

自分の主がやられて怒りのままに突っ込んで来るが、サイラオーグさんが立ち塞がる。

 

「如月秋夜に挑む前に主を介抱したらどうだ? それに、おまえ達が束になろうがこの男には勝てない。それくらいわかるだろう?だから主を回復してやれ」

 

「「「━━━っ!」」」

 

サイラオーグさんの威圧の込められた指摘に、眷属悪魔達は天井に突き刺さっているゼファードルの元に駆け寄った。

 

「秋夜、早速やってくれたわね・・・・」

 

「・・・・ぶ、部長」

 

部長が背後から深い溜め息をついて近づいてくる。

 

や、やべ! ついカッとなってやりすぎた!

 

「まったく、あれほど手を出さないでって言ったじゃない。・・・・・・・でも、私も正直スカッとしたわ。ありがとう、秋夜」

 

「いえ。俺はただ、アーシアが汚されるような気がして頭に血が上っただけです。流石にやり過ぎたような気もしますけど・・・・」

 

俺はさっき殴り飛ばしたゼファードルを横目で見る。

 

今は天井から抜け出していて眷属の一人に治療を施されている。

 

顎が真っ赤に腫れ上がって気絶している姿を見て、ほんのちょっと罪悪感が否めない。まじで少しだけ。

 

「シューヤさん、怖かったです・・・・!」

 

「おお、よしよし。怖かったよな、でももう大丈夫だ」

 

涙目のアーシアが俺の腕にギュッと抱きつく。

 

あんなヤンキーにジロジロ見られたら怖いに決まってるよな。よく我慢したな、アーシア。

 

俺はポンと頭に手を乗せてアーシアを落ち着かせる。

 

「お前、アーシアのことになるとマジで容赦ないよな」

 

「神器無しで一撃・・・・流石としか言えないよ」

 

イッセーと祐斗が苦笑いをしてそう言ってくる。

 

いや、だってしょうがないだろ! アーシアは俺の女神なんだから!

 

「ま、まあ、神器無しで一撃は俺でもビックリなんだけどな」

 

まさかあれだけでダウンするとは思わなかったぞ。

 

あいつもあんなだけど次期当主なんだろ?それにしては柔すぎだろ。

 

『(主とあの男では力の差が歴然だろう。次期当主としては些か実力不足だと思うが・・・・。

この場に居る者で主と拮抗するのは、やはりバアル家次期当主だな)』

 

『(ええ、彼はずば抜けてるわ。まあ、秋夜には勝てないんだけどね)』

 

クローゼと雷切が俺を高く見てくれて嬉しいと思うのだけど、ストレートに言われるのはどうもむず痒い。

 

「如月、兵藤、これまた随分と派手にやったな」

 

奥の方から不意に声をかけられる。

 

「おお、匙じゃないか。 それに会長も」

 

匙は『よっ』と、片手を上げて俺たちの側まで来る。

どうやら丁度到着したしたらしいな。

 

 

 

 

 

 

壊滅的なまでにボロボロになった広間を支配人の人たちが魔方陣で直してくれたお陰で、無事に自己紹介が進められる。

 

この場にいるのは各次期当主の6名。

 

先ほどヤンキー悪魔と対峙していた眼鏡を掛けた女性は、大公アガレス家の次期当主━━━シーグヴァイラ・アガレスさん。

 

俺が顎を真っ赤に腫れ腫れさせたヤンキー悪魔━━━ゼファードルは、グラシャラボラス家の次期当主だ。

あの後、無事に意識を取り戻したそうだ。ほっと一安心。

 

どうやら本来の次期当主だった人は不慮の事故で無くなってしまったらしく、ゼファードルは新たな次期当主の候補らしい。

 

こんなのが代表でいいのか、アガレス家よ。

 

他の御家に口出しするつもりはないけどさ。

 

そして、バアル家次期当主のサイラオーグさん。シトリー家次期当主のソーナ会長。グレモリー家次期当主のリアス部長も挨拶を済ませる。

 

最後に残ったのは優しげな雰囲気の男だ。

 

「僕はディオドラ・アスタロト。アスタロト家の次期当主です。皆さん、よろしく」

 

俺はディオドラ・アスタロトの顔を、というか目を見て眉をひそめる。

 

こいつの目、なんか嫌だ・・・・・。

 

パッと見だと優男でいいやつに思えるけど、不思議と好きになれない。

 

話したこともないのに一方的に嫌うのはどうかと思うけど。

 

 

その後は6人が軽い談笑をしていた。

 

度々ゼファードルが俺を睨んでくるが目を合わせようとすると慌てて逸らされる。

 

言いたいことがあるならはっきり言いやがれ、それでもヤンキーか?

 

俺はだんだんイライラが募ってきていると、支配人がドアを開けて部屋に入ってくる。

 

「皆様、大変お待ちいただきました。━━━━皆様がお待ちです」

 

 

さて、お偉いさんが集まっている行事とやらが始まるのか。

 

どんなもんか楽しみだな。

 

 

俺たち若手悪魔は支配人の案内で会場へと足を運んだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。