一誠 side
今日も悪魔のお仕事が来ていたので、俺は依頼主の元へとむかっている。もちろん自転車で。
秋夜と同じ日に悪魔になったのに、あいつはもう契約を何件か取ったんだよなぁ………。
いやいや! 落ち込んでる暇はないぞ兵藤一誠!
こんなことでへこたれてたらハーレム王になれるわけがない!
俺は頬を両手でパチンッ!と叩き、気合いを入れて自転車のペダルを速く回転させる。
それはそうと、なんか自転車で行くのが定着してきてる気がするのは気のせい?
俺は疑問に思ったが、気にしないことにして頭から追いやった。
10分ほど自転車を爆走させて漸く目的地に到着した。
ふぅ、やっと着いた。
よーし、気を引きしめて行くか!
ピンポーン!
インターホンを鳴らすがいっこうに来る気配がない。もう一度鳴らしても同様の結果だった。
留守なのか?と思いドアに手を掛けると鍵が開いている。
勝手に中に入るのは抵抗があったが仕方ないと思い入らせてもらった。
「あのー! 依頼で来た者ですけどー! 誰かいませんかー?」
そう大声で言うも返事がない。
俺は仕方なく奥へ進む。すると、生臭くて鼻を押さえたくなるような異臭がした。
「うっ、なんだよこの臭い.....ん?なんだこの液体?」
触ってみると、どろどろとした液体のようなものだった。
明かりが点いていないため、一体何の液体なのかわからなかったが、次第に目が慣れてきてその正体が判明した。
「え……これ、も、もしかして……全部………血!?」
これが人の血液だと理解した瞬間、俺はたまらず吐いてしまう。
な、なんだよこれ……!なんで人の血が!?
俺が混乱していると、部屋の奥から男の声が聞こえてきた。
「これはこれは悪魔君ではあ〜りませんかぁ!」
「だ、誰だ!?」
そこにいたのは神父服をきた白髪の少年だった。見たところ俺と同い年くらいだ。
「俺の名前はフリード・セルゼン、とある悪魔払い組織に所属している少年神父でござんす」
「お前がこれをやったのか!?」
この男━━━フリード・セルゼンはふざけた調子で自己紹介をしてくる。
「クソ悪魔の力に頼るなんて人として終わってるんすよ...だーかーらー、殺してあげたんですよぉ!」
なんなんだこいつ………完全に狂ってやがる………!
平気で人を殺すなんて、こんなのが神父なのかよ!
「俺っちは、悪魔と悪魔に見いられたクソを退治するのが仕事なんで...あんたもぶっ殺しちゃいまーす!」
そう言って、フリードは光の剣と銃を構えて俺に襲いかかってくる。
フリードが光の剣を降り下ろし、俺は間一髪避けることが出来たが、フリードはすかさず銃を俺の足に撃ち込んでくる。
「ぐあっ!くそ、痛ぇ……!」
なんだよあの銃………打つ瞬間がまったくわかんねえ!
それに、撃たれた箇所が焼けるように熱い。やばい、感覚が無くなってきた。
「んじゃ、ばいちゃ〜」
フリードはそう言い、光の剣で止めをさそうとしたとき
「きゃぁぁ!」
「おやおや?助手のアーシアちゃん。結界は張り終わったのかな?」
悲鳴をあげたのは金髪の女の子だった。普段の俺だったら『金髪美少女!』って喜んでたんだろうけど、はっきり言ってそんな場合じゃない。
………アーシア?
アーシアって確か秋夜が道案内した女の子の名前……だよな?どうしてこんなところに?
「フリード神父、何故こんなことを...?」
「こうして、クソ悪魔どもを始末するのが俺達の仕事だからでごさんすよ」
「もうやめてください!見逃してあげることはできないんですか!?」
彼女は必死になって俺を庇おうとする。
な、なんで悪魔の俺を守ろうとするんだ?
敵同士のはずなのに。
「はあ?何言っちゃってんすか?悪魔は皆殺しなんすよ!!」
フリードは俺に向かって襲いかかってくる。
避けようとしてもさっき撃たれたせいで足に力が入らない。剣がすぐそこまで迫って、俺は恐怖で目を瞑ってしまう。
━━━だが、いくら経っても斬られることはなかった。
不思議に思い、恐る恐る目を開けてみると、そこにはフリードの剣を神器で防ぐ秋夜の姿があった。
「イッセー、大丈夫か?また似たような状況になったな」
「しゅ、秋夜!?」
一誠 side out
秋夜 side
「しゅ、秋夜!?」
なぜ俺がイッセーの場所を知っていたかというと、実は運が良かっただけなんだ。
俺は今日、悪魔の仕事がなかったため先に帰らせてもらったんだ。
折角だから買い物でもしていこうかと思ってスーパーに向かってたんだけど、その途中でクローゼから報告が来てな。
まあ、それがイッセーのピンチって事だったんだけどね。
それにしてもまじで間一髪だったな。あと少しでも遅くなってたらと思うとゾッとする……。
「ん〜?またクソ悪魔ですか?新キャラ登場は要らないんすよ!!」
そう言って、白髪のイカれ神父さんが俺に銃を撃ってくる。撃つ瞬間に光が出て来て驚いたが、なんとか避けることができた。
あっぶねえ! なんだ今の、光のせいで弾の軌道がわからなかったぞ……。
俺はなるべく動揺を見せないようにして神父と向き合う。
この場に緊張感が走る。
動き出すタイミングを探っているとき、俺はあまりにも意外な人物を見つけてしまう。
「...シューヤさん?」
「ア、アーシア!?どうしてここに?」
その人物とは、昨日出会って友達になったアーシアだった。
予想外のことすぎて頭の中がぐちゃぐちゃに混乱する。
な、なんでアーシアがここにいるんだ!? このイカれ神父の仲間? いや、でもこの状況だと仲間とは思えない。まさかこんな形で再開することになるなんて……!
でも、まだ俺が悪魔だってことは知られてないよな……?
「アーシアちゃんのお知り合いですか?いけませんな〜!俺らと悪魔は相容れない関係なのですぞー?」
くそ、アーシアには悪魔だってことバレたくなかったのに!なんてことしやがんだこのイカレ神父!
「シューヤさんが...悪魔?」
アーシアはあまりの事実に呆然とする。
「ごめんアーシア...友達に隠し事するなんて友達失格だよな」
「そんなことありません! シューヤさんはいい人です!悪魔とか………そんなの関係ありません!」
俺が悪魔だということ、敵同士だったことを隠していたのにも関わらず、アーシアは俺のことを友達だと言ってくれた。
「アーシア...」
「今の言葉は聞き捨てなりませんねー。そんな事を言う子にはお仕置きでござんす!」
そう言ってフリードは、俺と向き合うのをやめてアーシアをターゲットに変える。
なっ!?
アーシアを狙うつもりか!
「てめえなんかにアーシアを傷つけさせるか!!」
俺はすぐさま雷を体に巡らせて身体能力を引き上げる。
フリードの前まで瞬時に移動し、その勢いのまま壁に向かって顔面を殴り飛ばした。
バキッ!!
フリードの顔から骨にヒビがはいるような音が聞こえたが、罪悪感なんて微塵も感じていない。
アーシアを狙った罰だこのクソ神父!
「アーシア、大丈夫だったか?」
イッセーのことももちろん心配だが、今はアーシアを優先させてもらう。ごめんね、イッセー。
「は、はい。大丈夫です。………私、悪魔とか気にしませんから!」
「え?」
俺は突然のことでぬけた返事をしてしまう。
「昨日言ってくれましたよね、友達第1号になってくれるって。 私、すごく嬉しかったんです……。だから、友達失格なんて悲しいこと言わないでください………」
やばい、数年ぶりくらいに泣きそうだ……。
アーシアはこれがどんなにいけないことかわかってるはずなのに、それでも俺を友達だと言ってくれる。 ならば俺もそれに応えなきゃな。
「ありがとな、アーシア。こんな俺で良ければだけど、これからも友達でいてくれるか?」
「━━っ! はいッ!!」
アーシアは勢いよく俺に抱きついてきた。
うおっ!? だ、大胆だなアーシア。
ってか、これまるで告白みたいなことになってないか?………いや、これは友情だ! そんなこと考えたらアーシアに失礼だろ!
「こんな状況でイチャつくなよ……」
イッセーが呆れた様子で言ってくる。
「その、なんかすまん。 い、今手当てしたやるから!」
俺は急いで手当てをしようとするが、肝心の手当てする物がないな。救急箱もどこにあるかわからないし。
………仕方ない。 服をちぎって包帯代わりにするか。
俺はやむを得ず袖の部分を手で千切ろうとしたとき、アーシアが手を上げて言う。
「私が治療します!」
そうだよ。回復のスペシャリストがここにいたじゃないか! 治癒する神器、優しいアーシアにぴったりだな。
淡い緑色の光がイッセーの足を包み込む。
「おお、すげえ!」
あっという間に、撃たれた傷が治っていく様子を見たイッセーが感嘆の声をあげる。
傷が完治するのと同時に、突如床から赤い魔方陣が出現してきた。
「イッセー、秋夜、大丈夫!?」
そこから出てきたのは部長、朱乃先輩、祐斗、小猫だった。皆が心配した様子だ。
なんで部長達が?もしかしてイッセーが呼んでくれたのか?
でも丁度良かった。アーシアの保護を頼もうとしてたんだ。
「はい..なんとか、秋夜が助けに来てくれなきゃ今頃どうなってたか..」
「俺も特にケガはありませんよ。それよりも部長に願いがあるのですが……」
俺の問いに部長は首を傾げる。
「なにかしら?」
俺は1度アーシアを見てから部長の目を見て言う。
「この娘を、アーシアを保護できませんか?」
「残念だけれど、それはできないわ」
俺の期待は虚しくも砕け散る。
「っ!何故ですか?確かに教会関係者ですけれど、アーシアは俺たちに危害を加えるような人じゃありません!」
「悪魔が教会側の人間を保護する時点でだめなのよ。私も協力してあげたいけれど、その行動によって天使側が戦争を起こしてくるかもしれないの。納得できないでしょうけど、我慢しなさい。」
三大勢力のことを出されたら嫌でも引かざるを得なくなってしまう。俺のせいで悪魔全体に迷惑をかけるわけにもいかない……。
「そ、そんな………」
俺はその事実に納得できなかった。出来るはずがなかった。もう一度頼もうとするが、朱乃先輩が部長に慌てて報告をする。
「堕天使の反応が複数近づいてきます!」
「わかったわ。みんな、急いで転移するわよ!」
部長に促されて、ここに来た時と同じ魔方陣を再び展開する。
こんなときにまた堕天使か!?
ほんとにろくなやつらじゃないな!
「ならアーシアも一緒に!」
「それはできないのよ、秋夜。この魔方陣は私の眷属しか通れないの。残念だけど諦めなさい」
「っ! なら俺もアーシアと一緒に残ります!」
部長にダメだと言われるのはわかってるけど、引き下がるわけにはいかない。ここに来る堕天使共はアーシアを狙っているはず。俺1人戦ってでもアーシアを守ってみせるぞ。
俺は雷輝龍の籠手を出して戦う意思を見せる。
すると、後ろからアーシアに背中をトンと押される。俺は後ろを振り返る。見えたのはあの幸せに溢れた笑顔ではなく悲しみが見える笑顔だった。
「シューヤさん……行って下さい。私は大丈夫ですから」
そんな悲しそうな笑顔で言われても、はいそうですかって言えるわけないだろ!
「大丈夫な訳ないだろ!俺が堕天使を倒すから!だから━━━」
「ありがとうございます、シューヤさん……。でも私、初めてできたお友達が傷つくのは嫌なんです………。悪魔の皆さん、シューヤさんをお願いします。」
アーシアは今にも泣きそうな顔で俺の言葉を遮りそう言ってくる。
そんなの、俺だって同じだ!アーシアが傷つくなんて嫌なんだよ………。
「わかったわ。秋夜は必ず守るから安心しなさい。」
そう言って皆が俺の体を掴み、魔方陣の上に引っ張ってくる。
準備が完了したのか、魔方陣が光を放ち、転移が始まろうとしている。
俺は神器の力を使ってでも抜けようとしたがすでに遅く、最後に見えたのは━━━
アーシアの涙だった。
フリードのキャラが難しい。あと後半イッセーが影になってしまいました。
最後まで読んで頂き有難うございます。
これからも応援よろしくお願いします。