次の日の放課後
昨日の夜のことがあってから、俺は授業に集中することができず、始終呆けて放課後まで時間が経ってしまった。部活の方に顔を出しても同じ結果になってしまったため、部長からお休みをもらってしまった。
………だめだな、おれ。ずっとアーシアのことが頭から離れない。イッセー達にも心配かけちゃったし、シャキッとしないと。
俺は一人落ち着ける場所をさがしていた。そこで近くに噴水広場があるのを思い出し、俺はそこへ向かう。
丁度人が誰もおらず、俺は1人ベンチに座り目を瞑る。
しばらくそのままでいると、誰かに名前を呟かれる。
「シューヤさん?」
俺はその声に聞き覚えがある。いや、あって当たり前だ。
何故ならそこにいたのはアーシアなのだから。
「・・・・アーシア?・・・アーシアなのか?」
突然のことで頭の中が真っ白になる。もう会えないと思っていたアーシアともう一度会うことができた、その喜びが俺のなかでどんどん広がっていく。
アーシアは目に涙を浮かべながら俺に抱きついてきた。
「また、会えました・・・!もう会えないかと思ってました・・・・!」
「アーシア! また会えて良かった・・・!でも、どうしてここに?」
「その子が儀式から逃げ出したのよ。まったく、探したのよ?」
その疑問に答えたのはアーシアではなく、黒い翼を広げて宙に止まっている堕天使レイナーレだった。
「っ!? レイナーレ!!」
俺はすぐにアーシアの前に立ってレイナーレを睨む。もちろん雷輝龍の籠手は装着済みだ。
「アーシアをどうするつもりだ!」
「ふふ。その子の神器を抜き取って私に移植するのよ。そうすることで私は至高の堕天使になれる!アザゼル様に見てもらえるの!」
「神器を抜き取られたアーシアはどうなる?」
「そんなの、死ぬに決まってるじゃない。行く宛のないアーシアを保護したのは私よ?それに、教会から追い出された元聖女なんて、神器しか価値がないじゃない」
「なっ!? 」
俺はその事に驚愕したが、それよりも怒りの方が何倍も大きかった。
レイナーレはアーシアのことをまるで道具のように扱っている。俺は怒りで頭が支配されそうになるが、後ろからアーシアがおれの手を握ってきた。その手は恐怖で震えている。
「アーシア・・・」
怖いよな、逃げたいよな、死ぬが怖くないやつなんているわけがない!
アーシアの過去は知らないけど、誰にでも優しいってことはわかる!
「アーシアは俺の友達だ! お前らにアーシアを傷つけさせてたまるか!」
俺は雷を体に巡らせて身体能力を高める。それを見たレイナーレは偉そうに俺を見下してくる。
「ふんっ!悪魔になり下がったくずが偉そうに!貴方1人で何が出来るのかしら?」
レイナーレの周りに魔方陣が現れ、そこから新しく三人の堕天使が出てくる。1人は最初に俺を襲ってきた男の堕天使、残り二人は、何故かコスプレをした堕天使と青いロングの髪をした女の堕天使だ。
「ドーナシーク、ミッテルト、カラワーナ、そこの悪魔を殺しなさい」
………3人相手かよ。
普通に考えたら俺が一方的にやられるとか想像するよな。現に堕天使共はニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべてこっちを見てるし。
けど、生憎とこんなやつらに負ける程クローゼから柔な鍛え方はされてないんだよ!
クローゼ!最初から全力で行くぞ!!
『(了解した、我が主よ。あの鴉どもを蹴散らしてやろう!)』
「神速《カンムル》!!」
俺は今まで以上に強い雷を体に巡らせ、身体能力を更に強化する。俺の周囲には雷が迸り、髪が逆立つ。黒かった俺の目もガントレットとおなじグリーンに変化する。
これは雷の影響なのだろうか?
この技は、クローゼとの修行で身に付けたものだ。普段は体に負荷がかからない程度の雷を巡らせているが、それを限界まで巡らせ、潜在能力を強制的に引き出している。下手したら身体中の細胞を雷で焼け焦がしてしまうけど、なんとか成功したな。
これやった後は暫く動けなくなるけど、出し惜しみしてる場合じゃない。
「今度こそ貴様を殺してやる!」
最初に襲ってきたのは男の堕天使ーードーナシーク
光の槍を手に持ち、突きを放ってくるが俺は手に高密度の雷を纏わせ、片手で受け止める。
「なっ!?」
驚愕するドーナシーク。
高密度の雷で防いではいるが、光力を全て防いでるというわけではない。少し痛いが、戦闘にはまったく支障はない。
俺は光の槍を握りつぶし、即座にドーナシークの懐に入る。引き上げられた身体能力で胴体に拳をめり込ませる。
「うおらぁぁッ!!」
バキバキッ!!
骨が折れる嫌な音が聞こえたが、俺は気にせずドーナシークの後ろに回り込み、蹴り飛ばす。
「ぐあぁ!?」
その瞬間後ろから
「油断したな!」
「死んじゃえ!!」
カラワーナとミッテルトが光の槍を放ってくるが、俺は全て紙一重で避けていく。完璧に殺したと確信していたのか、二人の顔は驚愕で染まっていた。
こんなもんで殺せると思ってたのか?
なめられたもんだ……!
「「なっ!?」」
俺は神速で二人の目の前に移動する。カラワーナとミッテルトは俺の動きを目で追うことが出来なかったのか、その速度に驚愕する。 慌てて光の槍を作り出そうとするがもう手遅れだ。
「遅いんだよ!!」
俺はそれよりも速く、二人に向かって至近距離で雷を放つ。二人は雷に包み込まれ、止んだ頃には全身黒焦げでもう戦える状態ではなくなっていた。
「きゃぁ!!」
「ふふ、この子を守るんじゃなかったのかしら?」
アーシアの悲鳴を聞き、俺は自分の失態に舌打ちをする。レイナーレは既に俺から離れた場所に移動していた。
クソ!? あいつのことを忘れていた!間に合え!
「アーシア!━━━なっ!?」
「シューヤさん!」
俺はアーシアを助けに向かうが、タイミング悪く 『神速』が解除されてしまい、地面に倒れこんでしまう。そのまま魔方陣が完成し、レイナーレ達は光の粒子を残し転移していった。
「クソが!! 」
地面を殴る。その度に血が出るがそれでも殴り続ける。
何がアーシアを守るだ! 結局守れてないじゃないか!
自分の力の無さにどうしようもなくイラついてしまうが、俺は雷の使いすぎのせいか気づいたら意識を手放していた。
▽
目が覚めてみるとそこはオカルト研究部の部室だった。俺はベッドの上に寝かされている。
「あれ、...どうして部室に?」
「僕が気絶している君をここまで運んだんだよ」
祐斗が俺にお茶を持ってきて言う。
「祐斗━━━っ!! そうだ! アーシアを助けにいかないと」
俺は重い体を起こし、アーシアを助けにいこうとするが
部長に止められる。
「行ってはダメよ、秋夜。残念だけれど諦めなさい」
「諦める?そんなの出来るわけないないでしょう!」
俺はつい部長に怒鳴ってしまった。しかし、この感情が収まるはずもなくさらに続けて言おうとする。だが、朱乃先輩が部長の耳元で何かを話し、それを聞いた部長は椅子から立ち上がる。
「秋夜、私と朱乃はこれから用事で出掛けるわ」
「待ってください!まだ話は━━」
部長は俺の言葉を遮って言う。
「いい、秋夜?堕天使はね、チェスの駒1つで勝てるほど甘くはないのよ。じゃあ、祐斗、小猫、イッセー、秋夜をお願いね」
そういって朱乃先輩と部屋を出ていく部長。俺はすぐにここを出て、アーシアを助けに行こうとする。
「待てよ、秋夜。お前1人で行く気か?」
「ああ」
イッセーがそう聞いてくるが、おれは即答する。すると、イッセーから意外な言葉が出てきた。
「アーシアってこの子とはよく知らないけど、秋夜の友達なんだろ?なら俺も行く!」
「僕も忘れちゃ困るよ」
「私も行きます」
俺は驚きのあまり目を見開く。
ははっ、いい仲間を持ったもんだ。アーシアといい、こいつらといい、俺は恵まれてるよ。
俺は自然と笑みがこぼれてしまう。
「イッセー、祐斗、小猫………。たのむ、俺に力を貸してくれ!」
「「ああ!!(はい)」」
▽
ドゴォォォン!!
到着するや否や、小猫が先手必勝と言わんばかりに扉をぶち壊した
これもうバレたよね?俺はてっきりこっそり侵入するもんかと思ってたよ。
イッセーは顔を青ざめ、祐斗は苦笑いをしているが、小猫は当然と言わんばかりに言う。
「もう敵も気づいてるはずです」
「そうだな、んじゃ行こうか」
俺達は教会の中へと進む。
中に入ると、早速面倒なやつと出会ってしまった。
「どもども〜、悪魔のみなさん。おや?そこにいるのは秋夜君にイッセー君じゃないですか〜!さっそく、死ねやクソ悪魔ー!」
フリード・セルゼンか。顔の骨にヒビがいってるはずなんだけど。すごいタフなやつだ。
フリードは光の剣で俺たちに襲いかかってくるが、祐斗が剣で受け止める。
「ここは僕が引き受けるから、みんなは先へ!」
「わかった、気を付けろよ!」
フリードを祐斗に任せ、俺たちは地下へと進む。階段を全て降り終えるとそこには地下を埋め尽くすほどの悪魔払いの神父がいた。
「なっ!? こんなにいるのかよ・・・」
イッセーはその光景に驚きながら赤龍帝の籠手を装着させ、小猫も構える。
「秋夜先輩、ここは任せてください」
「おまえははやく奥に行ってこい!」
「二人とも……こいつらは任せたぞ!」
ここにいる神父達はイッセー達に任せ、俺は奥へと進む。
そこにはレイナーレと目に光を失ったアーシアが十字架にはりつけにされている姿があった。
「アーシア!?」
「あら、遅かったわね。既に神器は抜き取っちゃったわよ?」
そう言ってレイナーレはアーシアから抜き取った神器を俺に見せる。俺の表情を見て楽しんでいるのか、レイナーレは俺に見せつけるように神器を自身の体に移植していく。
「ふふっ! これで私は至高の堕天使になったわ!!」
「そ、そんな・・・間に合わなかったのかよ」
アーシアの近くまでよろよろと移動する。
何度も声をを掛けるが反応がない。
手を握るがすでに冷たく、亡くなったことを嫌でも証明してくる。
………アーシアが………死んだ?
「・・・・す、・・・・・・ろす」
俺は何度も何度も同じ言葉を小さく呟く。
「ん?何かしら?」
「━━━殺す」
俺は雷輝龍の籠手を装着すると同時に『神速』を発動させる。レイナーレの目の前まで高速移動し、力の限り顔面を殴り飛ばした。
「ぐぎゃッ!?」
レイナーレの顔は原型を留めておらず、くちゃぐちゃになっていたが、淡い緑色の光がレイナーレを包み込み、顔を元通りに治した。
「ふ、ふふふ・・・すごいわ!これが聖母の微笑の力!」
「だからどうした?なら、生きているのが嫌になるくらい痛めつけてやるよ」
そう言って俺は何度も何度も顔を潰すほどの威力で殴る。
それでも再生するレイナーレの体を、次は強烈な蹴りで首の骨をへし折る。
自分でもやっていることに嫌悪感を抱いてくるが、攻撃の手が止められない。アーシアを殺されたことに感情のセーブが完全に崩壊してしまった。
殴って、蹴って、時々雷を放つことを繰り返していると、次第にレイナーレの俺を見る目が侮蔑から恐怖へと変わっていく。
「お、お願い……!もう殺して……!」
そう簡単に死なせるかよ……。
俺は雷を再び放とうとした時に後ろからイッセーに止められる。
「秋夜、そこらへんでいいんじゃないか?アーシアちゃんもお前のそんな姿は見たくないはずだ」
アーシアの名前が出て、おれは少し冷静になる。確かにこんな姿、アーシアには見せられないな。
「何か言い残すことはあるか?」
「こ、殺して………」
「そうか、ならそうしてやる」
俺は高密度の雷をレイナーレに放つ。その威力は強力で肉片すら残らなかった。
………アーシア。
俺はアーシアのもとへ行き、優しく抱き抱える。
俺は目から涙を溢れさせる。1度涙が出ると止まることなくずっと流れる。
「ごめん・・・・ごめんな、アーシア。守ってやれなくて・・・」
俺は何度も繰り返し謝る。 そんなことをしてもアーシアは戻ってきてはくれないのに。
「その子を生き返らせたい?」
「・・・え?」
その声の主は部長だった。どうしてここにいるのか疑問に思ったが、それよりも気になることがある。
「アーシアを生き返らせれるんですか!?」
「ええ、これを使えばね」
部長が取り出したのは悪魔の駒だった。
「悪魔の駒はね、死んだ人間も悪魔へ転生させることが出来るのよ。私としても、その子を是非とも眷属に加えたいの」
「そ、それじゃあ!」
それなら、アーシアを生き返らせることが出来る!
俺は一瞬で喜びに包まれるが、すぐに顔を曇らせる。
でも、アーシアは元々教会側の人間だ。それを敵である悪魔側の世界に引きずり込んでいいのか?
でも、アーシアには生きていてほしい……たとえ恨まれても責任は俺が持つ!
そう決断して、俺は部長にお願いする。
「部長、お願いします。……アーシアを生き返らせてください!」
「わかったわ」
部長はアーシアの体に駒を近づける。するとアーシアの体は光に包まれ、暫くすると目をゆっくりと覚ました。
「・・・・あれ? 私・・・・」
「アーシア! もう2度と離さない・・・・今度こそ守って見せるから・・」
俺はたまらずアーシアに抱きつく、一瞬戸惑うアーシアだが優しく微笑み、抱き返してきてくれた。
誓おう。命に変えてもアーシアを守ると……。
「はい、シューヤさん」
こうして、リアス部長の眷属にアーシアが加わった。
ヒロインなのですが、アーシアに決定しました。色々と候補を挙げて貰いましたが、その通りにいかない人もいると思います。そこのとこは申し訳ないです。
最後まで読んで頂き有難うございます。
これからも応援よろしくお願いします。