凪のあすから Another story ~狭山のあすから~   作:ひとみらくる

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4、キラキラ、走り出す

 財布から出したチケットを配る。

「ほい、これ中学生組の無料チケットな」

「わーい、狭山くんありがとう」

「わりぃな、狭山」

「今度、狭山のお父さんにもお礼言わなきゃだね」

 四人のやりとりを横目に、ちさきが財布を取り出そうとしたところで狭山がそれを止めた。

「ちさきの分は俺がおごるって言ったろ」

「え、そんな、けっこう高いし・・・・・・」

「誘ったのは俺なんだから遠慮すんなって」

「でも」

「いいって。代わりに、今後もサヤマートをひいきにしてくれよ」

「うーん、分かった。狭山くん、ありがとうね。お言葉に甘えさせてもらいます」

 ちさきが狭山に、はにかんだ笑顔を向けたところで光が冷やかしてくる。

「なに狭山、下心?」

 図星です。

「ちげーよ! 紳士な俺だよ」

「え、紳士がどこにいるって?」

「はい光の分のチケット没収」

 一連のやりとりをしながら五人はゲートをくぐる。

 さっそくまなかが園内マップを指差しながら目を輝かせている。

「けっこう海水の設置場所が多いから、エナが乾かなくて済むね。ねぇねぇ、まずは水族館の方行ってみたいなぁ」

「はぁ? 魚なんて毎日見てんじゃん」

「ひぃくん、シシオじゃイルカは見られないでしょ。わたしイルカが見たいの」

「あ、イルカは僕も見たいな」

「さすが要。ほら、ひぃくんもイルカ、見たいでしょ?」

「だー、もうしょうがねぇな。まなかが迷子にならないように見張っててやるよ」

「やったぁ。ちぃちゃん、狭山くん、一番最初はイルカイルカ」

 少し離れたところで歩いているちさきと狭山を手招きしつつ、人混みの中を進んでいく。

 そんな中学生組を見つめながらちさきがつぶやく。

「元気だなぁ。まなかたち」

「ちさきだって本当はあいつらみてーにはしゃぎたいんじゃねーの?」

「そ、そんなことないよ。私だって、もうハタチなんだから・・・・・・」

「なんだよ、無理すんなよ。俺はちさきにも楽しんでもらいたいんですけど」

「狭山くん・・・・・・」

「あいつら早いからいそがねーと。のんびり歩いてると、はぐれちまうぞ」

 ちさきのテンションを上げようと、狭山が先に早足で光たちを追う。

「あ、待ってってば」

 それを追いかけるちさきの表情は、ついさっきよりもキラキラしていた。

 シーパークは遊園地と水族館が一緒のテーマパークで、どちらも極端に大きいわけではない。

 水族館の方は、いくつもの小さい水槽コーナーの次はふれあい水槽、海洋ごとに分けたメイン水槽、そしてイルカのプール。

 そう長くはない距離を早足で進み、すぐに目的のイルカプールまでやってきた。イルカプールは簡易的な屋根が取り付けてあるだけの屋外にある。扇状にイスが設置してあり、時間ごとにイルカのショーが行われるようだ。

 ぬるい風が頬をかすめていく。

 先に到着していた中学生組が、すでにイルカプールの最前列を陣取っていた。やっと追いついたちさきに 、指をさしながら光が話しかける。

「今日一番迷子になりそうなの、ちさきだな」

「みんなが早すぎるのよ」

 ちさきが頬をふくらませたところで、まなかと要が言う。

「ちぃちゃん、イルカ、たくさんいるよ。みんなかわいいねぇ」

「あと十分くらいでショーの時間みたいだよ」

「まったく、イルカでそんなに目を輝かせるのは小学生とお前達ぐらいじゃね」

 冷めたツッコミをしたにも関わらず、イルカのジャンプや泳ぎに一番興奮していたのは狭山だった。

 

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