NANAMI 作:鑢八茎
うちはが滅んだ次の日、既に早朝から噂が広まっていた。七実は団子を食べながら後ろに気配が現れたのを感じる。
「賞金首がずいぶんと堂々としてますね」
「この近くにオレより強い気配はお前しかいない」
七実の言葉にイタチは団子を頬張る。
「あの男、お前のことを忘れていた。いったい何をしたんだ?」
「幻術ですよ。小娘と侮ってくれたおかげですね」
「………オレはお前のことを上に報告する気はない」
「助かります」
七実はお茶を飲みながらお礼を言う。いざとなったら抜け忍になるつもりだったのだがそれは必要なくなった。
まあ仮に報告しても里の警戒が増えるだけで抜け忍にはならないだろう。何せうちはを滅ぼしたのはダンゾウの独断とはいえ里のため。ヒルゼンも里から消える人間は減らしたいだろう。ダンゾウとて、うちはを三人で滅ぼした内一人は里の敵にならないようにするだろう。
「所でイタチさん、何か変わった術をご存知ではありませんか?」
「…………木ノ葉の里から西に3日、独立の里真庭の里があるらしい。彼らは、独自の術を使うそうだ」
「この世界にもまにわにが……」
まあ自分がいるのだから同じようにこの世界に新たな生を受けた真庭忍軍かも知れないが、そう言えば彼らの忍術を全て知っているわけではない。
「独立、ですか……」
「いくつもの里が欲しがっているようだが………」
「………そうですか」
「オレはこれから極秘任務に移る。暫く、或いは二度と木ノ葉の里には戻れないかもしれない」
「それは残念ですね。私はアナタの事、気に入っていたんですが……」
七実はふぅ、とため息を吐いた。実際七実はイタチを気に入っていた。何せ家族以外で話した事があるのは前世では敵ととがめ、後はこちらを恐れる坊主だけ。年は違うが血の繋がりがなく対等な関係であるイタチは間違いなく七実にとって特別な存在だろう。シスイも一応そうだが死んでしまったからまあ良いか、と思っている。
「うちはは羨望と同時に、九尾の襲撃以来恐怖を持たれていた。そういう意味では、普通に接してくれるお前をオレは気に入っていたよ」
「そうですか………ではまたいずれ」
「ええ、いつかまた……」
七実は後ろにいたイタチの気配が消えたのを感じ取り、自分も去ろうと金を払おうとして既に払われている事に気づいた。
「………さて、私も行くとしましょうか」
七実はそう言って立ち上がり笑みを浮かべた。
「再会に、なるのかしら?まあ居ればの話よね………爪合わせ、使ってはいるけど万全ではないのよね。使い手がいると良いのだけど………いえ、悪いのかしら?」
その日、うずまき七実は木ノ葉の里から姿を消した。
捜索隊の中に混じっていた根のメンバーを殺し、その外を幻術で里に帰し完全に撒いた後目的の里につく。
「……独立しているだけあって、田舎ですね」
七実は村を見ながら思わずと言った風に呟く。
「田舎で悪かったわね」
「おや、アナタは?」
「真庭狂犬だよお嬢ちゃん」
七実が振り向けばそこには犬の被り物をした紫の髪の女が木の枝の上に居た。真庭狂犬と名乗っていた、真庭忍軍は12頭領と呼ばれる者達が居て、その者達は動物の名を名乗るらしい。目の前の女性もそうなのだろう。
「真庭の里に何のようだい?一応、うちは余所者にも寛大だけどスパイには容赦しないよ」
ギラリと獰猛に目を光らせる狂犬を見て七実はふぅ、とため息を吐く。戦闘に移るべきか……。
「で、どっち?」
「どちらとも……私は
「はあ?あたし等に木ノ葉に仕えろって……?」
「仕えろとは言いませんよ。ただ、その方が助かるだけですし……」
「ふーん……?」
七実の言葉に狂犬は首を傾げる。
真庭忍軍で一番里愛が強く仲間思いの狂犬としては敵対するなら殺すが仲間になるなら受け入れる。とはいえ仲間になる気は無いという。
「所で質問なのですが、アナタ前世の記憶を持っていたりしません?」
「………あるよ。あたしは一度死んでる。奇策師ちゃんに仕える虚刀流ちゃんに殺されてね……」
「まあそれはそれは、弟がお世話になりました」
七実がペコリとお辞儀すると狂犬は驚いたように目を見開いた。
「へえ、あたしの仲間を散々殺してくれちゃった虚刀流ちゃんの姉、ねえ……」
「私と戦いますか?」
「………いや、前世の遺恨は持ち込まないよ。文字通り死んだ訳だしね……アンタも死んだんだろ?」
「ええ、七花に殺してもらいました」
「はあ!?弟に殺された!?」
「殺されたのではなく殺してもらったのです。私自身、望んだ事です」
「そ、そう………変わってるねアンタ………」
狂犬は七実の言葉に顔をひきつらせた。七実は変なことを言ったかしらと首を傾げた。
「おーい、狂犬殿……里の外に余所者の気配があるって………ひ、ひい!?鑢七実!?」
「あら、アナタは確か………真庭……蛾、でしたっけ?」
「真庭蝶々だ!」
「冗談ですよ。覚えています……アナタが居るということは、蟷螂さんや蜜蜂さんも?」
七実が笑うと蝶々は顔を青くして後ずさる。狂犬はそんな反応に首を傾げていたが、頭領2人揃って何時までも戦闘音が聞こえないのを不思議に思ったのか何時しか数名の真庭忍軍が現れる。
「えっとさ蝶々ちゃん……何があったか知んないけど、取りあえず里の中で話さない?」
「んなことできっか!こいつ、絶対俺たちを皆殺しに来たんだ!」
「敵対する理由もないのにそんなことしませんよ。ああ、でもアナタが前世の遺恨を晴らしたいと望むならしかたありませんね」
「……ッ!!」
「私は何も争いにきた訳じゃありません。平和的に、お話をしましょう。ね?」