俺はグリーヴァス将軍(偽)。三日前まで生きていた英霊である。   作:KeI77777

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グリーヴァス将軍とダース・モールが好きです。

KEY(ドM)


俺はグリーヴァス将軍(偽)。三日前まで生きていた英霊である。

好きなキャラに憧れるのは子供のころまで。

そんなことをもし誰かが思っていたら俺はこういっただろう。

 

違う、と。

 

好きなものは好きだ。いくつになってもそう胸を張って言える。

馬鹿二人とよく一緒にスター・ウォーズで一番好きなキャラは誰かを話し合ったものだ。

 

俺が好きなのはエピソード3で登場したグリーヴァス将軍だ。

正直、エピソード3ではすぐにオビワンに倒されてそんな強くないじゃいかと思っていたが、海外の番外編のアニメを見て、めちゃくちゃ強くてかっこいいことを知ってからは彼が一番好きになった。

 

縦横無尽にかけめぐり、ジェダイ相手に無双するその姿はまさに戦士と言えるものだった。

ジェダイのメイスによって肺をつぶされていなければ、あの強さのままだったのに。

悔しくて仕方がない。

 

部屋に飾ってある彼のフィギアをいじりながら考える。

もし、全盛期の四刀流だったらどれだけ強かったのかと。

 

しかし、すでに退場して、番外編でも登場することはないキャラだ。

あきらめてベッドに飛び込んで寝た。

 

 

その日、グリーヴァス将軍に自分がなるとは思っていなかったが。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

前略。

要点だけ言うと、グリーヴァス将軍の姿になってどこかの世界に転生しました。

神様転生、神様転生。

わかりやすい設定に感謝する。

 

憧れの将軍の姿でもう何年かもわからないほど生き延びた。

 

色々ありすぎたけど、もう、随分と長く生きた。

 

この体はサイボーグだから年を取らないようだけども、度重なる戦いよって体が限界を迎えようとしていた。

俺は、グリーヴァス将軍として、戦士として戦えていたのだろうか。

1人のスター・ウォーズファンとしてはそこが一番の気がかりであった。

 

今俺がいるのはかつて、自分が前世でいた日本。

死ぬのならこの国がいい。そう思ってやってきた。

船や飛行機を使えないので、泳いできたが、体がさび付いてボロボロになった。

杖をついて、歩き続ける。

やってきたころに比べれば、随分と変わったと思う。

 

ローブと仮面で身を隠して道を歩き続ける。

久しぶりの喧騒に身を包まれ、郷愁に襲われる。

すべてが懐かしすぎた。

 

行きかう人々の顔つきも。

街の明かりも。

久しぶりの日本語も。

 

涙を流すことはもうできないが、思わず目元を抑える。

悲しみからか、疲れからかふらついて思わず壁に手をつく。

 

気を取り直して前を見ると、紫髪の少女が車に轢かれそうになっていた。

きしむ体を押して少女の元へと走る。

考えて動いたわけではなく、気が付いたら駆け出していた。

 

少女を優しく突き飛ばして、代わりに自分が跳ね飛ばされる。

 

近くにあった川まで吹き飛ばされ、沈んでいく。

 

最後の最後がこんな形だとは思っていなかった。

戦いで死ぬかと思っていたが、そうでもないらしい。

まあ、いっか。もうずいぶん好き勝手に生きてきたし。

 

重たい瞼を下ろして、眠りにつく。

 

最後に突き飛ばした女の子の安否を気にしつつ、お人よしは人知れず水の中へと消えていった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

間桐雁夜は落ちこぼれである。

かつて、魔術の名門とうたわれた間桐の中ではそう呼ばれても仕方がなかった。

本人の性質、性格はともかく、魔術的な素養はよろしくはなかった。

 

そんな彼は、たった一つの想いを胸にとある魔術師同士の殺し合いへと身を投じることになる。

 

聖杯戦争。

 

七人の魔術師がそれぞれサーヴァントと呼ばれる歴史上の偉人を英霊として召喚し、殺し合い、最後まで生き残った者が何でも願いをかなえるという聖杯を手にし、“根源”へと至るための物である。

 

間桐雁夜はそのうちの一人として戦うことを決意した。

自分の姪を助けるために。

 

間桐桜。かわいらしい顔立ちの彼女は、まだ数歳の幼子であるが、死人のような目をしている。間桐家に養子に出された遠坂家の次女だ。彼女の名誉のためにふせておくが、魔術の鍛錬と称して間桐の支配者である間桐臓硯にとあることをされることになるからだ。

それに異を唱えたのが魔術の道から落伍した間桐雁夜。

 

彼女に対して施す魔術刻印をすべて自分に使え。俺が聖杯戦争を戦い抜く。

そう正面から啖呵を切った。

それを聴いた臓硯は醜悪な笑みを浮かべて「親不孝な息子よ。望み道理にしてやろう。すこしは孝行するのじゃぞ。」といって早速“虫”を彼の体内に入れた。

 

激痛が彼の身を襲ったが、それに一切の悲鳴を上げることなく耐え切った。

 

そして迎えた聖杯戦争開始の日。

姪を助けたい。そんな思いから最高のサーヴァントを望む気持ちを上乗せして彼は詠唱を告げる。

 

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ。

  降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

右手に大きな力を込める。

決意を強く秘めて。

 

   みたせ   みたせ   みたせ   みたせ   みたせ

 「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。

  繰り返すつどに五度。

  ただ、満たされる刻を破却する」

 

ぎり、と歯を噛み締める。

痛みに耐えながら、平静さを取り繕うために。

 

       セット

 「―――――Anfang」

 

 「――――――告げる」

 

 「――――告げる。

  汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

  聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 「誓いを此処に。

  我は常世総ての善と成る者、

  我は常世総ての悪を敷く者。

 

  されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――。

 

  汝三大の言霊を纏う七天、

  抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

俺の命ぐらいくれてやる。

だから

 

「彼女を守れるような、サーヴァントよ!!」

 

俺の元へこい!!!

 

詠唱を崩してでも言っておきたかった言葉が彼の口から漏れる。

 

 

薄暗く、陰気な部屋が光で満たされる。

 

ここにサーヴァントは召喚された。

 

彼は結果として救われることとなる。

 

・・・・・・・・・・・・

 

(これはどういう状況だ?)

 

三日前に車に跳ね飛ばされて、川まで落ちて、そのまま永眠。

ウォーター・ベッドで心地よく眠っていたら、なんか英霊とかいう座に収まっていた。

 

え、どういうこと?と思わず狼狽。

誰かいないか歩いていると、懐かしの面々。

 

長きにわたるたびのうちで出会った過去の知り合いたち。

その誰もが歴史に名を遺す英雄ばかりであった。

 

英雄王や円卓の騎士などのなじみの面々はいないか探すもどうやらいないようだ。

 

あいたかったな、とこぼす。

 

自分の椅子らしい座に座って背もたれにもたれる。

 

(終わったのか。俺の人生。)

色んなことがあったけど生き切った。

悲しいことも、嬉しいこともひっくるめて、断言できることがある。

 

(いい人生だった。)

誰が何と言おうと俺の人生は最高だった。

それだけは胸を張って言える。

前世では決して得られなったものを数多く獲得することもかなった。

 

視線を感じてふと横を見ると、白髪ガングロ、赤い鎧みたいな服を着こんだ大柄な男性がこちらを見ていた。

 

「ど、どちらさまですか?」

「ああ、いや。何分、君のようないでたちの英霊はあまり見たことがないものでな。失礼。」

シニカルな笑みを浮かべてくっ、と笑う男の人。

皮肉めいた雰囲気を感じる。でも、悪い人ではなさそうだ。

自分の名前を名乗り、相手のことについて尋ねる。

 

「俺の名前はグリーヴァスです。あなたは?」

「私の名前は無銘とでも呼んでくれ。」

明らかに偽名のような名だが、本名を言いたくないからなのか。

触れずに質問をしていく。

 

「ここは英霊の座・・・でいいんですよね?なんとなくわかります。」

「そうだ。過去に偉業を成し遂げたり、人々の心に残ったものがたどり着くところだ。」

おめでとう、ヒーロー。そういってぱちぱちと拍手をする。

 

「君も何かしら伝説をのこしたということだ。誇りたまえ。まあ、まだ戦いは終わらんがね。」

暗い笑みを浮かべておかしそうにそういう無銘さん。

それって・・・・

 

何かを聴こうとしたら、自分の体が透けていく。

どこかに引っ張られていくような感覚。

誰かが、自分の助けを必要としている。そんな感じだ。

 

「ほお、さっそく仕事か。では、頑張りたまえ。」

何をですかーーーー?!!

と大声でさけぶ暇もなく意識が薄れていく。

 

その日、俺は現世に降り立った。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

で、今に至る。

 

薄暗く、気味が悪い蔵のような部屋。

 

目の前には息を荒くして、苦しそうな白髪のおじさんと、その後ろで杖をついているハゲチャビン。

なんか妖怪ぬらりひょんみたいな姿のお爺さんだな。

 

そう考えていると、妖怪が口を開けて話し出す。

「湖の騎士の触媒を用意したというのにこれはどういうことじゃ?雁夜。貴様一体どんな英霊を呼び出したのじゃ。」

 

その言葉を受けて驚きながらも告げる雁屋と呼ばれたおじさん。

「なんだこいつーー?クラスがバーサーカーではない・・・?ジェネラルだと?」

 

ぶつぶつと何か言っているようだけどよくわからない。

おなかがすいているのだろうか。

 

「・・・・・・・ふん。やはり落ちこぼれは落ちこぼれであったか。」

もうよい。

そういってどこかに行ってしまうおじいさん。

おじいさん?どうしたの?四度目の食事にでも行くの?と心配しつつ目の前の人に話しかける。

「俺の名前はグリーヴァス。ここは一体?」

「俺の名前は間桐雁夜。お前を呼び出したマスターだ。」

マスター?ジェダイかな?殺さなきゃ!とライトセイバーを構える。

 

「ちょ、まてまてまてまて!!その物騒な光る剣をしまえ!!俺にお前と敵対する意思はない!!」

慌てて両手を挙げて降伏の意思を見せる雁夜おじさん。

どうやら本当のようだ。

スイッチをオフにし、剣をしまうとほっとした表情になる。

 

「ごめんね、はやとちりしちゃって。」

「い、いや。いいんだ・・・。それよりお前は一体どこの英霊なんだ?」

困惑した様子でそう尋ねてくるおじさん。

俺?俺は・・・。

何だろう?

 

ただ好き勝手して生きていただけだし。

そもそも俺の名前って知られているのだろうか?

ウルクとか、ブリテンいったときとかは結構やらかしていたけど。

 

腕を組んで考える。

まあ、いっか。

なんとかなるか。

 

で、俺を呼び出した理由は?

「え?もしかして聖杯戦争のことを知らない・・・?」

「え?何それ?」

 

イ〇スさん何やってんの?

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

「王よ。こちらを。」

そういって玉座に座る男に対して宝物を献上する男。

歳は三、四十代程度。顎髭をたくわえ、優雅な雰囲気を漂わせる壮年の男性。

 

遠坂時臣。

聖杯戦争のマスターの一人である。

彼はとある英霊を呼び出した。史上最古の英霊。英雄王としてその名を知られる英雄の中の英雄。

 

ギルガメッシュ。

ルビーを思わせる紅い眼に、金色の髪を逆立てている美丈夫である。

彼は自分の臣下の貢ぎ物に目を通すと、いらん、と切って捨てた。

「時臣よ。貴様、我を愚弄する気か?この程度のものを俺の宝庫に収めさせようなどと。」

死にたいのか?

体から殺気を飛ばして言外にそう告げる。

 

冷や汗を垂らしながら、それでも優雅さは失わずに取り繕う。

「も、もうしわけありません。王よ。」

自分の失態を恥じて、謝罪する時臣。

ワイングラスを傾けて、飲み干すギルガメッシュ。

 

「次はないぞ。それよりもこの我を興じさせるものはおらぬのか?いつまでこの小さな小屋におればいい?」

時臣は自慢の屋敷を小屋扱いされて傷心するが、気を取り直して情報を伝える。

 

「今、私の弟子の言峰の持つアサシンに斥候をさせております。しかるべき情報が集まるまでなにとぞお待ち下さい。」

ふん、と鼻を鳴らして不機嫌さを隠そうともせずにあざ笑う。嘘は言っていないようだ。

そう判断して捨て置く。

 

彼は退屈していた。

呼び出されたと思ってきてみたら、小物が目の前にいた。

最低限度の礼節はわきまえていたので首をはねるような真似はしなかったものに、それだけだ。

率先して動くだけの価値を、まだ見いだせていなかった。

(やはり、ここも期待外れであったか)

 

 

期待はしていなかった。

しかし、それでも彼らのうちのどちらかだけでも召喚されていれば、面白い。

その可能性を愉しみに召喚されてやったのが理由の一つである。

 

宝物庫からとあるものを取り出す。

円筒状の小さな金属。

昔、彼がウルクを収めていた時に出会ったのちの親友からもらった宝。

 

手でもてあそぶ。

「グリーヴァス、エンキドゥ。お前達は居るのか?」

 

そのつぶやきは、誰にも聞こえずに消えていった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

雁夜おじさんから説明を受けて、現在倉庫街。

他のサーヴァントがいるという場所までやってきていた。

雁夜おじさんといっしょに遠くから確認する。

 

二本の槍を持ったイケメンのお兄さんと、見覚えのある聖剣を振り回している腹ペコ王がいる。

思わず冷や汗が流れる。

 

「ど、どうした?大丈夫か?」

「へーきへーき。」

白目をむきながら二人の一進一退の攻防を見届け続けていると、空からおっさんがやってきた。筋骨隆々の赤いマントを羽織ったひげのおじさんだ。

戦っていた二人の間を割って入る。

 

その顔つきは面白いものを見つけた、と言わんばかりの輝きに満ちた笑みだった。

おっさんが言っていることを要約すると、俺の臣下になれ、だそうだ。

その言葉に対してはっきりと拒否する二人。

正直おおらかでいい人そうだけど、俺も自由がいいからなぁ。

 

ことの成り行きを見守っていると、おっさんが激昂した様子で叫ぶ。

臆病者どもめ、姿を見せないと本気で怒るぞ、と。

かつてがちぎれしてきた「友達」のことを思い出し、思わず飛び出してごめんなさいしそうになったが雁夜おじさんに止められてなんとか踏みとどまる。

 

 

「お、落ち着け!!出て行ったら思うツボだろ!!」

「はあっ、はあっ、はあっ・・・・・」

動悸が激しくなり、心臓が痛み出し胸を抑える。

大丈夫、腹ペコ王にあってもきっと許してくれる。

最後の戦いのときに俺だけ行方不明になっちゃったけど。

めいびー。

 

深呼吸をして息を整える。

多少落ち着いてたので、どうするのか雁夜おじさんに聴く。

「とはいっても相手の情報はほしいでしょ?」

「いや、まあそうだけどさ・・・」

 

頭をぽりぽり掻いてそう告げるおじさん。

桜ちゃんのためにも絶対に負けられないのだから、慎重に行きつつ、相手陣営の情報はほしい。俺はマイナーな英霊だろうから真名が看破されることはまずないだろうし、されたところで大したハンデにはならない。

 

あきらめたような顔つきでため息をつき、仕方がないといわんばかりの顔つきで言うおじさん。

「わかったよ。危ない橋の一本や二本渡れなくて聖杯戦争を勝ち残れるわけもない、か。」

ただし、ある程度戦ったら撤退しろよ。

 

念を押されていってぽん、と肩を叩かれる。

ライトセイバーは使えない。

使ったら腹ペコ王に一発でばれる。

なら、もう一つの武器を使うまでだ。

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

征服王、イスカンダルだと名乗る男が私たちのところまでやってきて、軍門に下れと言ってきた。

当然、ランサーも私も断る、と答えた。

 

本当に残念そうな顔で落ち込む征服王にこの男はどこまで本気だ?と思わず驚く。

しかし、何かに気が付いたイスカンダルが叫びだす。

他のサーヴァントよ、姿を見せろと。

 

一喝によって倉庫街が大気に震えた数分の静寂後、何かが陰から飛びだしてきた。

 

それは、くるくると空中で回転し、一際大きなコンテナの上に降り立った。

 

全身を覆い隠すような大きなローブ。

顔には民族衣装のような仮面をつけていて、顔や表情はわからない。

体躯は2Mを超す長身の細身であることが体つきからうかがえた。

 

征服王の牛車の後ろで隠れていたマスターが叫びだす。

「な、なんだあいつ??!!」

「落ち着け。小僧。」

そういってデコピンされて倒れるイスカンダルのマスター。

目をまわしていたが、すぐに気を取り戻して立ち上がる。

 

「大物が釣れおったわい。こりゃあ強そうだぞ!!がっはっはっは!!」

「何を喜んでるんだよ!!お前は!!」

細かいことを気にするな、と言って自分のマスターの小言を受け流している。

 

そして、先ほど私たちに対していったことと同じようなことをその正体不明の人物に対して投げかける。

 

「おぬし、わしの軍門に下らぬか?おもしろそうだ!!見たところかなりやるようだしな!!」

どうだ?とその人物に対して聴くが、返答はなく、どこからか取り出した双刃状の先っぽが紫電に包まれている武器を取り出す。

それを構えてこちらをうかがっている。

 

腕を組み、何かを見定めているイスカンダル。

「ほう、珍しいものをもっておるな。電気とかいうやつだったか。」

「なんだありゃ?!」

 

影は武器を構えると、ランサーに襲い掛かる。

かなりの速さでランサーも思わず驚いたほどだ。

両の手に持っている二つの槍で迎撃する。

 

「貴様・・!!何者だ!?ランサーでもないのにこの速さ・・!!」

ランサーが持つ呪いを施されている槍の切っ先をうまく電流が流れている武器の先っぽで受け流して打ち合っている。

かなりの技量があることがうかがえる。

 

アイリスフィールを後ろに下がらせながら、剣を構えて警戒する。

彼女をやられるわけにはいかない。

何十と槍を打ち合い、互角の戦いを繰り広げる二人。

うかつに近づいたら危ない。

 

そう思ってさらに後ろに引いた瞬間、ランサーの槍を交わした乱入者がそのままこちらに走ってきた。

アイリスフィールを背に、聖剣で迎えうつ。

「はああああああああああーーーーーっ!!!」

 

放電していない部分を狙って、風王結界で隠している剣を振りぬくが、まるで剣が見えているように紫電に受け流される。

バカな。見えない不可視の剣を易々と対応して見せただと!?

 

せめて正体を明かそうと剣を振るうがどれも流される。

本気で打ち込んでいないとはいえここまでやるとは・・!

 

脚元を切り払うと大きく跳躍し、遠く離れる。

 

さっきのでわかった。

こいつは危険だ。

未知数で底が見えない。

今のうちに倒してしまった方がいい。

 

そう思って聖剣の力を解放しようとすると、声が響く。

 

「――――――――久しいな、獣。」

それは、街灯の上に立っていた。

 

黄金の鎧を着こみ、金色の髪を後ろに流して逆立て、瞳は赤く燃えるような目であった。

王気が体中からあふれ出ている。これほどの英霊はそうそういないと思えるほどのすごみがあった。

 

腕を組み、その男は私たちを見下すように笑みを浮かべていた。

 

「どうした?なぜそのようなものを使っている?よもや我相手に手加減するなどというのではないだろうな?」

私たちを無視して乱入者に語り掛ける男。

その顔はまるで旧友に再会した喜びに打ち震えているような表情だった。

 

男が手を掲げると、背後から莫大な量の武器が展開される。

一目でその一つ一つが宝具であることがわかり戦慄する。

 

「ならば、本気をださせてやろう。」

男が手を振り下ろすと同時に、乱入者めがけて放たれる宝具。

それを躱しつつ、武器で払いながらしのいでいく。

 

しかし、はた目から見ても消耗してっているのがわかる。

何度も切り払っては宝具を凌いでいたが、持っていた武器をはじかれてしまう。

 

丸腰の乱入者に向けて放たれる圧倒的物量の宝具。

 

死んだ。

 

この場にいる誰もがそう思ったとき、予想外のことが起こる。

 

ローブを捨てた乱入者がとあるものを握り締める。

見覚えがあるそれに息を呑む。

円筒状の金属の物体。

それは、私たちブリテンを助けてくれたあの人が使っていたものと同じものだった。

 

 

そして、脇腹から二つの新たな手が展開され、四本の腕となり、光り輝く剣を抜き、宝具をすべて防ぐ。

 

自分の攻撃を防がれたというのに満足そうな顔つきで頷く金髪の男。

「そうだ。それでいい。そして久しいな、友よ。いや、グリーヴァスよ。」

つけていた仮面が割れて顔があらわになる。

 

その下には見慣れた顔があった。

円卓の騎士ではないが、彼らと同じ戦場を駆け抜けたもう一人の戦士。

「グリー、ヴァス・・?」

 

彼がそこに立っていた

 

 

・・・・・・・・・・・

 

(ばかばかばかばか!!ギルは一体何を考えているんだ!!?)

思わず心の中で悪態をつく。

正体がばれないようにせっかくエレクトロ・スタッフを使って戦っていたのにライトセイバーを抜いてしまった。

そうさせた本人はご満悦と言った顔だし・・・。

 

くっそう、相も変わらず唯我独尊なんだから・・・

ライトセイバーを突き付けて文句を言う。

「せっかく正体かくしていたのにーーー!!バカーーーー!!」

「何を言う。お前が手を抜いていたのが悪いのだろう?」

「そうはいってもさ!!友達が隠し事しているんだから察してそっとしておこうよ!!」

 

ううう、と落ち込む。

ごめん、雁屋おじさん、正体ばれちゃった・・・。

腹ペコ王はじっとこちらを見つめてきている。

 

「あなた・・・なのですね?」

おずおずと確かめるように聞いてくる。

そういえばブリテンに侵入してきた外敵と戦っているときに分かれて、それっきりだったな。今更になって出会ってしまった。

腕を上げてぎこちない笑みとともに答える。

 

「ひ、久しぶり・・・。元気だった・・?」

ブリテンはあのあと繁栄を遂げたみたいだからホッとしたけど、ブリテンに戻ったら俺のお墓が立ててあって、”ブリテンの守護者ここに眠る”、って書いてあったからそのまま帰ったんだよね。何だか今さら生きていたなんていうのも恥ずかしかったし・・。

 

モーちゃんが国をついで、治政はうまくいっていたみたいだけど。

 

考え事をしていると剣で首をはねられそうになる。

それをライトセイバーで受け止める。

あっぶない!!

 

「あのあとどこに行っていたんですか!!私たちが死んだあと、あなたは先に英霊の座にいると思っていたら、いなくてみんな落ち込んでいたんですよ!?娘なんてあなたに会えるのを一番楽しみにしていたのに・・・。」

モーちゃん、ごめんね。と心の中で謝りつつ、ハグハグする。

四本腕でしっかりと抱きしめる。

 

「ごめんね。でも、みんな幸せそうでよかったよ。」

再会を喜ぶが、後ろから殺気を感じて腕を二本だけ使って攻撃を受け止める。

激おこ状態の親友がそこにいた。

なにやってんの??!

 

「貴様・・・!!我が話しているところであろう!!」

「いっつも思うけどギルは短気すぎなんだよ!!もうちょっと寛容さを持とうよ!!」

「ハッ!!王としての慈悲なら持ち合わせているぞ!!凡愚どもであろうと地に頭を擦り付け、服従を誓い、平伏するのなら許してやろう!!」

「それって俺にもそうしろっていう振りじゃないよね?!!」

 

痴話喧嘩を始める俺たちをぽかんとした様子で見つめるほかのサーヴァントとマスターたち。イスカンダルというおっさんも若干困惑している。

「むううう・・・知り合い同士であったか。ますますほしくなったわい!!」

前言撤回。困惑しているんじゃなくて、楽しんでいるだけだった。

 

アルトリアを離して、大きくジャンプし、みんなから距離を置く。

ライトセイバーをしまい、隠し腕も収納する。

「それじゃあ、もうばれているみたいだから自己紹介させてもらうね。

俺の名前はグリーヴァス。そこにいるギルガメッシュとセイバーの友達だ。」

俺の発言を受けて叫ぶ征服王のマスター。

 

「グリーヴァス?!それってあの英雄王と戦って生き残ったっていう英霊じゃないか?!しかも“ブリテンの守護者”と同じ名前だし!!」

あれ、俺って意外と知られている?まいったな。あんまり知られていないって思っていたのに。頬を掻いて考える。

俺の宝具は主にライトセイバーだけだ。だから魔力がそんなにない雁屋おじさんにも負担が少なくて済むのでいいんだけど、ギルとアルトリアが相手だとちょっとやっかいだ。

 

おまけにこちらの正体はばれているようだ。

切り札はあるけど、使うと最悪雁屋おじさんが魔力切れで死ぬかもしれない。

ドロイドの親衛隊ぐらいなら召喚できるかもしれないけど、彼ら相手ではいくら何でも分が悪いだろう。

 

ここまでだな、と観念して踵を返す。

そんなこちらの背中に声を掛けてくるギル。

 

「せっかくこうして逢いまみえたのだ。よもや我を失望させるなよ?旧き友よ・・・。」

「今回ばかりは負けていられないから、奥の手も出すかもね。じゃあね、ギル。セイバー。」

 

ちょっと離れた場所に身を隠している雁屋おじさんを回収に向かいながら、走り抜ける。

(まさかあの二人とまた会うとは・・・・。)

正直とっても嬉しいけども、仲間でないのが残念だ。

 

それよりも気がかりなことがある。

(モーちゃん・・・怒ってないかなぁ・・・)

アルトリアの発言を受けて、彼女がどれくらい怒っているのか不安で仕方がなかった。

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

「行ってしまったな。いやあ、話してみたかったのだがのう。」

顎をさすり、さすりとこすってそういう征服王。

帰るか。そうつぶやき、牛車を率いて帰っていく。

 

「また会おう!!必ずや貴様らを我が配下に加えて見せよう!!!」

はっはっはっはと豪華に笑いながら夜の闇に消えていった。

 

「雑種どもよ。せいぜいすぐに死なぬことだ。やつがいるのだからな。」

そういって霊体化して去っていく英雄王。相も変わらずの強気、傲慢な姿勢を崩さずに。

 

取り残されるランサーと私。

自分のマスターと念話していたのか、こちらを見据えて言ってくる。

「我がマスターから引くように命ぜられた。セイバー。貴様との決闘は次まで待とう。」

「ああ、楽しみにしているぞ。」

 

では。

そういって消えていくランサー。

とうとう私たちだけになってしまった。

 

「セ、セイバー・・・。」

緊張して腰が抜けたのか、その場に座り込むイリアスフィール。

無理もない。今夜はいろいろとありすぎた。

彼女を支えて歩き出す。

 

「切嗣と合流して一旦拠点まで戻りましょう。彼と、あの英雄王が相手となると

一筋縄ではいかないでしょう。」

「ええ、それにしてもあなたはあのトカゲさんと知り合いなの?」

 

そう聞いてくるアイリスフィール。

彼をトカゲ呼ばわりしていて思わず噴いてしまう。

笑っていることを悟られないように平静を保ちながら言葉を紡ぐ。

 

「彼とは何度も戦場をともにした仲間です。特別な魔力や魔術は使いませんが、単純な戦闘能力なら私や円卓の騎士ともまともに打ち合えます。」

先ほどの戦いを思い出す。

久方ぶりの仲間との戦い。

腕は鈍っていなかったようだ。

思わず笑みがこぼれる。

 

「そう・・・。でも会えてよかったわね、セイバー。」

ニコリと笑いかけてそう祝福してくれるアイリスフィール。

 

でも、勝負は勝負だ。

負ける気はさらさらない。

 

彼女を引き連れて帰っていった。

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

「大丈夫か?グリーヴァス・・・。」

「だ、だいじょう・・・・やっぱだいじょばない。」

 

実は昨日倉庫街で全力で動いていて、一夜が明けた今でも結構疲れたのでベッドで横になって休んでいる。

体が大きいのでベッドから足がはみ出てしまっている。

「トカゲさん!トカゲさん!あそんでーーー!!」

 

そういってこちらに乗っかって俺に遊ぶようにねだってくる桜ちゃん。

 

「おいおい、さすがに今は・・」

「いいよ。じゃあ庭に行こうか!!」

「うん!!」

 

彼女を肩に乗っけて部屋を出る。

子供は好きだ。一緒に遊んでいて楽しいから。

 

しょうがない、といいつつもうれしそうな雁夜おじさんを交えて一緒に三人で遊んだ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「言峰、アサシンからの情報はどうだ?」

「間桐家に遣わした者から報告がありました。」

 

自分の弟子に聴く。

彼はアサシンのマスターにして、私の弟子だ。

優秀な魔術師であり、自慢の弟子だ。

 

「報告はあったのですが・・・・」

「なんだ?どうしたのだ?」

言いにくそうにしている。

 

「・・・・・・・・子供と一緒に例のサーヴァントが遊んでいると。」

思わず持っていたティーカップを落としそうになり、優雅さを失いそうになる。

 

遠坂は常に優雅たれ・・・・!

この程度では驚かない・・・!

 

動揺を隠すために紅茶を飲み、続きを待つ。

「調べたところ、あの英雄王の旧友、グリーヴァスで間違いないかと。」

グリーヴァス。

 

それはどこからかやってきて、古代ウルクに現れた金属に身をまとう正体不明の獣であると伝説にはある。

 

 

嘘か誠か、ギルガメッシュと戦って生き延びているという文献も残っている。

あの英霊の強さを知っているだけに信じられなくなる。

 

(せっかくギルガメッシュを召喚し、聖杯戦争に勝ったと確信していたのにこれとは。)

思わず心の中で悪態をつく。

しかし、エルキドゥよりはマシなはずだ。

 

(あの倉庫での戦いを見た限りでは近接戦闘にたけたサーヴァントのようだが・・・。英雄王には王の財宝がある。相性はいいだろう。)

 

かつての友に出会えて気をよくしたのか、あれから彼の機嫌はかなり良くなっていた。

このまま様子を見つつ、アサシンでの暗殺も視野に入れておこう。

そう考えていた時、背後から声を掛けられる。

 

「どうした、時臣。」

こちらの考えを見透かしているような目つきを向けて、そこに立っていた。

「いえ、なんでもありません。王よ。」

「そうか。よもやつまらぬ小細工を弄すると思って居ったぞ。」

 

気づかれている。

それを咎めに来たことに思い至り、内心恐怖に包まれる。

 

「―――――――邪魔だけはするな。それだけを言いに来た。」

そういって言いたいことは言ったとばかりに帰る。

 

テーブルに拳を振り下ろす。

「クソっ。」

優雅さも忘れて思わず声を荒げて取り乱してしまった。

弟子も心配そうにこちらを見ている。

 

「師よ。あれは脅威となりえます。今のうちに対処をしておいた方がいいかと・・・。」

「わかっている。しかし、彼が言っているのは自分がやつを倒すということだ。我々が手を出せば、怒りを買うことになる。」

 

最強の味方が最大の脅威になる。

それだけは何としても避けなければらない。

 

「引き続きアサシンに監視をさせておけ。何かあったらまた知らせるのだ。」

「はっ。」

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

一緒に遊び続けて、疲れて寝てしまった桜ちゃんをベッドに寝かせる。

その横に同じように中年の体力不足で疲れて眠っている雁夜おじさん。

 

子供みたいだ、と二人の頬を突っつく。

 

 

布団をかけて、風邪をひかないようにして、部屋を出る。

するとあのおじいさんが目の前に立ちふさがっていた。

 

「どうしたの?えーーっと・・」

「臓硯じゃ。間桐臓硯。」

 

ぴしゃりと言い放つ。

でも、先日初めて出会ったときよりは雰囲気が柔らかなものになっている。

気になったことを聴いてみる。

 

「おじいさんってもしかして人間じゃない?」

「・・・・・・なぜそう思う?」

「だって明らかに気配が人間のそれじゃないし。」

 

長い時を掛けて、色んな存在と出会い続けてきたからか目の前にいるぬらりひょんが人ではないことに気が付いた。実際に話してみて確信した。

 

「まあ、いいんじゃない?俺からしたら今更だし。」

厨房に行って料理を作るために横をすり抜ける。

 

「おぬしに聴きたい。」

「ん?」

 

何か意を決したようにそういう妖怪。

「聖杯に何を願う。」

 

んーーっと考えて、答える。

「桜ちゃん・にスター・ウォーズを見せてあげたい!!」

「スタ・・?」

何言ってんだ、こいつ?みたいな目を向けてくるが気にせず続ける。

 

「大昔の神話だよ。それをあの娘に見せてあげたいのさ。」

「なるほど、我々魔術師と同じく根源への到達を望むのじゃな。」

 

何かずれているような気がするが同意しておく。

「おじいさんはどうしたいの?」

「永遠の命がほしい。」

 

ニタリ、と気味の悪いスマイルをこちらに向けてそういう臓硯おじいさん。

興味がわいたので更に深く聞いていく。

 

「なんで?」

「死にたくないからじゃ。」

 

うわあ、わかりやすい。

でも、それは泥沼なんだよねえ。悟りを開いたあの人からもそこら辺の死生観を諭されたし。

 

「知り合いの仏様が言っていたんだけどさ。人はね、永遠の命を得ると次は死にたくなるんだってさ。」

信じられない、といった顔つきを向けてくる。

構わず続ける。

 

 

「死は生であり、生は死であるからなんだって。できないことができるようになりたいのが人間だから、不死になったら次は死ねる方法を探すようになるからだと。」

杖を強く握りしめ、怒りを含んだ声で尋ねてくる。

 

「ならばおぬしは怖くないというのか?死ぬことが。」

「怖いよ。」

 

最後の言葉にかぶせるように即答した。

死ぬのが怖くないなんて長く生き続けた俺からしたら、ただ狂っているだけだ。

それは言い切れる。

 

「でも、だからこそ人生は楽しいんじゃん。あんただって本当は永遠の命とやらが目的なんじゃなくて、永遠の命を得てやりたいことがあったんじゃないの?」

 

彼の言葉から見え隠れしている本音を指摘していく。

この爺さんが何をしようとしてのかは全部雁屋おじさんから聴いている。

雁屋おじさんはこの人を憎んでいるようだけども、俺はどうにも哀れに思えて仕方がなかった。

 

まるで、最初の目的を見失って、手段だけに固執してしまった感じだ。

「きれいごとを。儂は本音でしゃべっておる。おぬしのような悟ったやつが嫌いなんじゃ!!」

窓から大量の虫が入ってくる。

触ってみるとぬめぬめしていて気持ちが悪かった。

 

えんがちょ、えんがちょ。

 

「せいぜい勝ち残って見せるのじゃな。」

そういって立ち去る。

 

でも、その背中は心なしかかわいそうに思えた。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

「セイバー。きみは彼のことを知っているのか?」

自分のサーヴァントとは決して話さない。あらかじめ決めていたことだがそうもいっていられなくなった。

 

セイバーに質問する。

 

人類最古の王、ギルガメッシュ。

そして彼の友。

彼の友は歴史上たった二人しかいない。

エルキドゥでなければもう一人の方だ。

 

四本の腕と、光輝く剣を持つ戦士。

「グリーヴァス。彼がそうです。」

 

思わず顔に手をやる。

神話の時代から長年生きていて、様々な国の伝承にちらほらと出てくる英霊だ。

 

多くの英霊と知り合いになった友好的な人物(?)としてよく知られている。

 

「英雄王といい、今回の聖杯戦争は強敵が多いな。マスターを狙うのが早いか・・?」

「それも一つの方法ですが、彼は優しいので向こうから襲い掛かってくることはないと思います。」

断言するセイバー。

殺し合いなのにそんなことがあるはずがないと思い、眉を顰め、煙草を吸う。

 

「なんでそう言い切れる。」

「それは彼が底無しののお人よしだからです。」

 

咥えていた煙草を落としてしまう。

まさかそれが確信の理由?

 

「彼は自分が殺されかけていた時にも、戦っていた相手のことを気遣っていました。」

過去を懐かしむような目で遠くを見つめるセイバー。

その胸中はうかがい知れない。

 

「だからですよ。彼は大馬鹿ですから。」

いつもはクールな彼女がふっと子供のような笑みを浮かべた。

話を一緒に聴いていたアイリスフィールも驚いている。

 

「やっぱりそうだったのね。彼は私のことを襲おうとする素振りさえ見せなかったし。」

倉庫街でのことを言っているのだろう。確かにマスターだと思われる相手を狙わずにセイバーを襲った。

一騎打ちを望んでいた騎士のランサーと違い、そうする必要もなかったのにだ。

銃の整備をしながら話を続ける。

 

「そいつも厄介だが、今は他の二つのサーヴァントのことが気になる。」

キャスターとアサシン。

 

この二体はまだ姿を表していない。

情報がない相手というのは厄介だ。適切な対処法が何かがわからないのでどうやって戦うのか慎重に行く必要がある。

 

 

ライダーはあの言動からして、腹をくくるまで勧誘を続けるだろう。

本気で殺しに来るまでは後回し。

 

ランサーも不意を衝いて殺しに来るような真似はしてこない。

騎士の誇りとやらが邪魔して、正面からの戦いしか望まないやつだ。

 

英雄王とグリーヴァスは互いに争わせばいい。

実力的にはまともに戦えるほど強い両者の共倒れを狙えばいい。

 

どちらかが残ったとしても、万全の状態で生き残るとは思えない。

弱ってるところをセイバーの宝具を使って消し飛ばせばいい。

 

嫌がるようなら令呪をもって命じればいい。

手段は選ばない。

 

何としても勝たなければならない。

 

(アイリとイリヤ、そして自分の願いのためにも・・・!)

 

拳を強く握りしめて決意する。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「おっかしいなー・・・」

夜になったというのに戻ってこないグリーヴァスを心配して待つ。

 

臓硯にも聴いてみたが、「知らん。」と一言だけ言ってどこかに行ってしまった。

膝の上に乗っている桜ちゃんも何だか心配そうだ。

 

「トカゲさんどこ行っちゃったの・・・?」

目を潤わせてそういってくる。今にも泣きだしてしまいそうだ。

頭を撫でてあやす。

「大丈夫だよ。トカゲさんはねー。ちょっとお散歩に出かけているだけだからすぐに戻ってくるさ。」

「ほんと・・?」

「ほんとほんと。それはおじさんが約束してあげる。」

 

あれ、何でこのセリフいうと寒気が走るのだろう、と思いながらも抱きしめて背中をぽんぽんと叩いてあげる。

 

(どこ行ったんだよ・・・。ごまかすのにもさすがに限界があるぞ・・・。)

そう思っていたら、がちゃり、と部屋のドアが開く。

 

「遅いぞ!どこいっ・・・て・・・・」

絶句する。

 

それは異常事態が起こっていたからだ。

 

角を生やした和服の綺麗な少女がグリーヴァスの腕を組んでいる。

当の本人は死んだような目でなすが儘にされている。

 

美少女が持っていた扇子を口元に当てて、こちらに話しかけてくる。

「あなたが私のマスター(旦那様)のマスターですか。お初にお目にかかります。

わたくし清姫と申します。此度の聖杯戦争ではキャスターとして召喚されました。

どうぞよろしくお願いいたします。」

 

フフフ、と笑っているがちっとも笑えない。

一体どういうことなんだ?これは?

 

とりあえずソファーに座らせて状況の確認をする。

 

 

二人から話を聴くことにした。

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

哀れな臓硯おじいさんと話した後、外に出てみることにした。

 

どうやらここは俺が前世でいた日本らしい。

 

ご飯は美味しいのだろうか。

 

食べた見たいが、この姿でご飯どころに入ったら大騒ぎになる。

仕方がないのでローブと仮面をつけて散歩するぐらいにとどめておく。

 

裏道に入って少し休む。

 

(あー、ちょっとはしゃぎすぎたー。)

 

さっき二人と遊んでいたののもそうだが、屋根をぴょんぴょんと飛んでいろいろな景色を見に行っていたらだいぶ体力を消耗してしまったようで、疲れが出てきていた。

 

壁にもたれかかる。

 

(そろそろ帰るか)

 

そう思った瞬間何かが飛んでくる。

 

反射的にそれを避ける。

 

避けたところに炎が広がった。

 

もし逃げ遅れていたら丸焼きにされていた。

 

炎が飛んできた方向を見る。

 

そこには、微笑を携えた和服の美少女が立っていた。

それだけならまだ普通だったかもしれないが明らかにおかしなところがあった。

 

彼女の頭には角が生えていた。

 

狂気を宿した瞳をこちらに向けてきている。

 

サーヴァント。

自然とその考えに思い至った。

 

エレクトロ・スタッフを取り出して、構える。

この武器なら殺してしまうようなこともない。

 

油断なく構えて目の前の少女に問いかける。

「いきなりバーベキューのお申込みかい?見た目よりもずっとファンキーなんだね。」

「じっとしてくださればすぐに終わります。動かないでくださいませ。」

 

一言話してわかった。

彼女は狂っている。

 

話が通じるような相手にも思えない。

 

焼かれるのは御免なので、スタッフを目の前の少女にたたきつける。

少女が何かをつぶやいた瞬間、目の前が業火に包まれる。

「さきほどよりも強くしてあります。すぐに楽になりますから。」

 

冗談じゃない。まだここで死ぬわけにもいかない。

四本腕を展開し、ライトセイバーを取り出す。

 

手首を高速回転させて、炎を防ぐ。

腕がちりちりと焼けるが徐々に彼女に近づいていく。

 

「おおおおっおおおおおおお!!」

「まあ、なんて情熱的な・・・♡」

 

うっとりとした顔つきでこちらの姿を見てくる彼女。

ぞっとしながらも一歩一歩歩んでいく。

 

せっかくギルと、アルトリアと会えたのに死んでたまるか・・・!!

 

炎の勢いが強くなってくる。

しかし止まる気はない。止まれない。

 

彼女の目の前まで来たところで隠し腕の二本が故障する。

限界を迎えたようだ。

 

だが、十分近づけた。

 

少女はふっと笑うと目をつむる。

 

「どうぞ。わたくしめを殺してあなた様の糧としてください。それがこの戦争のルールなのでしょう?」

クスクスと笑う彼女。

 

まるで死ぬのを愉しみに待っているようだ。

首元にライトセイバーを当てる。

 

「そう。それでいいのです。」

 

そして、俺は勝者の権利を行使した。

 

ライトセイバーで彼女の扇子を焼き切る。

 

真っ二つに裂けたそれが地面へと落ちる。

 

目を開けてこちらに問いかけてくる。

「なぜ?」

「俺が勝ったんだ。俺がどうしようが俺の勝手でしょ。」

 

武器をしまい、家に帰ろうとする。

しかし、少女は納得がいかないといった顔だ。

「わたくしに嘘はおやめください。私は嘘を憎んでいるので真実を語っていただけますか?」

 

先ほどまでの余裕が消えて、年齢相応の顔つきになった。

なんだ、やっぱりかわいいじゃん。

 

恥ずかしいがまあ、言ってもいいかと考えて告げる。

「正直ね、君に見とれていた。殺したくないと思った。だからやめた。」

 

固まる少女。

あー、やっぱりそうだよね。

うん、突然そう言われてもね。

 

またフラれちゃったか。そううなだれていると顔を赤らめている彼女に聞かれる。

「・・・・・・・・・わたくしは清姫と申します。あなた様のお名前をお聞かせ願えますか?」

へ?と予想だにしない言葉を受けて間抜けな声を出す。

 

なぜか名前を聴かれているらしい。

言葉に詰まりながらもなんとか答える。

「グ、グリーヴァスだけど・・・・。」

「グリーヴァス様とおっしゃるのですね。そう・・・・。」

 

蛇が獲物を狙うような目で見てくる。

「結婚は洋式と日本式、どちらがお好きですか?子供は好きですか?何人ほしいですか?

ペットはいかがですか?愛が重い娘はどう思われますか?本はたしなまれておりますか?よければ一緒に読みませんか?彼女は・・・」

「ちょちょちょ!!落ち着いて!!」

 

手をがっちりと両手で包まれて質問をまくしたてられる。

これはなんだ。

 

何が起きているんだ。

この感覚、いやな予感がする。

 

ギルは愛が重い地雷女のイシュタルという女神にロックオンされてしまった。

必死にあっちいけ、と撃退した結果帰っていったけど。

 

アルトリアはモーちゃんに狙われていた時期があった。その頃の彼女は今、目の前にいる彼女の様に何かにとりつかれていた。

 

それらの記憶を呼び起こして結論を出す。

 

地雷どころか核弾頭だ。

 

 

全力で飛び上がり、屋根をけって逃げ出す。

 

後ろを向くと、こちらに笑みを浮かべながらじっと見つめてきている彼女が追ってきていた。

 

 

俺は何も見ていない、見ていない、見ていない、見ていない・・!!

 

「誰か助けてええええええええええええええっっ!!!」

 

恥も外聞もなく叫んだ。

 

 

 

 

 

 





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