凪のあすから ~Another after story~   作:ひとみらくる

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アニメ「凪のあすから」の後日談です。
みんながハッピーエンドになるようにかいています。
原作のイメージを極力忠実に再現しました。

時間軸が少し分かりにくいですが、アニメ最終話のおふねひきの後、光たちが中学二年生で春休み直前の三月くらいです。
 (一月おふねひき→みんな目覚める→紡が大学に戻る→一ヶ月の間→三月の上旬紡が帰ってくる、という感じです)

※ワードソフトで小説と同じ書き方で執筆しています。そのままこちらのサイトにコピー&ペーストしておりますので、文と文の間に行間がなく、ウェブ小説としては読みづらいかもしれません。申し訳ございませんがご了承お願いいたします。


1、おかえりの声

凪のあすから ~Another after story~

 

 

 

1、おかえりの声

 

「ただいま」

 玄関の戸を開けながら、木原紡は懐かしい我が家の匂いを感じた。海の匂い。

 二階の方からドタバタと音が聞こえる。我が家の住人兼恋人のちさきが慌てて二階から降りてきているのが音だけで分かった。

 靴を脱ぎ、階段の方へと足を運ぶ。

 大学の寮に戻っていた一ヵ月間、ちさきに会っていなかった。電話越しに話しはしたが、なかなかタイミングが合わず、お互いの声が聞けたのはごくわずかな時間だけだった。紡は、ちさきが寂しい思いをしていないか毎晩心配だった。

 紡の祖父、勇は今は家にいない。一週間前に検査の為再び入院をしたが、明後日帰ってくる。ちさきと一緒に迎えにいく約束をした。

 おふねひきの日、汐鹿生の人たちが目覚め、ちさきの両親も目覚めた。汐鹿生では今まで通りの生活が始まった。ちさきは海の家に通ってはいるけれど、帰ることはなく、ほとんど木原家で過ごしている。

 まだ2月の下旬だが、研究等で忙しかった紡の大学は、他の大学よりも一足早い、春休み。

「紡、おかえり」

「あぁ、ただいま」

 ちさきとの久しぶりの対面。やんわりとした笑顔が可愛い。頬は朱に染まっている。久しぶりの再会に紡の胸が、じんと痛んだ。これは、幸せを噛み締めたときの痛み。胸に有り余るほどの幸せ。しかし、紡はそれを言葉にしない。

 廊下を抜け、囲炉裏のある部屋で腰を下ろす。懐かしい畳の感触。

 ちさきが、暖かいお茶を運びながら言う。

「なんか、髪のびたね?」

 そういえば、二か月程伸ばしっぱなしだった。

「そうか。……明日は暇だし、髪、切りに行こうかな」

「あ、じゃあ、シシオのね、村上さんのとこの床屋さんに行かない?」

「シシオにも、床屋、あるんだ」

「当たり前じゃない。至さんの前の奥さん……みをりさんの実家なんだよ」

「そうなんだ。じゃあ、美海のおじいさんとおばあさんってことか」

「うん。この一ヵ月の間にね、美海ちゃんとシシオに行って、会ってきたの。村上さんたち、すごく喜んでた。美海ちゃんと会うのは赤ちゃんのとき以来だったから」

「それ、いいな」

 ぽつりと紡がつぶやく。

「え?」

「今は、美海が好きなときに、いつでもおじいさんとおばあさんに会いに行けて」

「そうだね。今は……みんな幸せよね」

 ゆったりと柔和な笑顔でちさきは言う。

「俺も」

「ん?」

「ちさきとこうしていられる時間が幸せだと思う」

「わ、わたしも、だよ。一ヵ月の間、すごく寂しかったんだから……」

 照れ隠しに頬を膨らませる姿がとても可愛い。

「ほんとか?」

「ほ、ほんとですっ! まなかや光はいつも通りでうらやましいし、要はさゆちゃんとラブラブだし」

「ちさき。抱きしめていいか?」

「え?……あ」

 返事を聞く前に立ち上がって、座っているちさきのとなりに腰を下ろす。そのままの姿勢でちさきを抱き寄せた。

 何の抵抗もなく、紡の腕の中におさまるちさき。そっと髪をなでる。

「海の、匂いがする」

「今日は、海、行ってないんだけどな……」

「いつも、海のいい匂いがする。やさしくて、ほっとする」

「……そっか」

ゆっくり目を閉じる。紡の背中に回したちさきの腕が、少し力強くなった。

「おかえり、紡」

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