凪のあすから ~Another after story~ 作:ひとみらくる
「ひぃーくーん! 要ぇー! ま、まってよぉー」
息せき切って、まなかが泳ぐ。水面はまだ遠い。
「まなかぁ! おっせーよ!」
「急いで! 遅刻するよ」
光と要はもうすでに水面に近い。
「月曜から遅刻とか、シャレになんねーぞ!」
光が叫ぶ中、要は水面の方を向く。微かに、地上から声がきこえる。
「あ、光! 上の方でさゆちゃんの声がする。僕、先行くね」
ぐんっとスピードを上げて、上へ上へ泳いで行った。
「ちっ! 要のやつ……。しゃーねーなぁ」
光は真逆、水底の方へ泳ぐ。そしてあっという間にまなかのところまでたどり着き、手を引いて水面を目指す。まなかが泳ぐより、スピードははるかに速い。
「ありがと、ひぃくん」
肩で息をしながら、まなかはつぶやいた。
一方、地上に先に着いた要は、さゆと水面を見つめていた。
「ちょっと、あと二分で光たち上がってこなかったら遅刻確定なんですけど!」
「そうだね。さゆちゃん、先行く?」
「べ、べつに! 遅刻くらい付き合ってあげる……要と、いっしょなら」
「さゆちゃんは、やさしいね」
要より少し背の低いさゆをなでた。とたんに、さゆの顔が真っ赤になる。
「はいはい、朝からいちゃついてんじゃねーぞ! おまたせさんなっ」
「お、おはよぅ~。ごめんねぇ……」
勢いよく光とまなかが上がってきた。いちゃついてたところを見られても、要はいつも通りの表情だ。
「なんとか間に合いそうだね」
「まなかさん、おはよう。こら、たこすけ、おそいぞっ」
「なっ! 俺のせいじゃねーぞ!」
「はいはい。みんな、走ろうっ」
要がみんなを促す。
「私のせいで、みんな、ごめんねぇぇ……」
全力で走り、なんとかチャイムが鳴る頃には全員席に着くことができた。
おふねひき以来、地上に雪は降らなくなり、寒さがだんだんと緩やかになってきた。走って暑くなったのか、光は制服の裾をパタパタしている。
「さゆ、おはよ。だいじょぶ?」
さゆの前の席に座る美海が声をかけた。
「美海ぁ。おはー……。たこすけのせいで遅刻しそーになった」
やれやれ、という表情で美海に挨拶しながら話すさゆに、すかさず光のツッコミ。
「だぁかぁらぁ、俺のせいじゃねーって」
こちらもまたやれやれという表情で美海が言う。
「光、おかあさんに言っとくね」
告げ口だ。
「なんっであかりに言うんだよ!」
「光がたるんでるって。受験に響くでしょ」
「ナイス美海」
「あぁもう、朝っぱらからお前ら元気だなぁ!」
「元気なのは、光もおんなじだなぁ。出席、とってもいーい?」
先生がやんわりと口を挟んできた。クラスの中が、クスクスと笑いに包まれる。
頬を赤くしながら鋭く美海とさゆを睨む光。
おふねひきから毎日のように続く、いつもの光景だ。
朝のHRが終わり、開口一番にまなかが謝ってきた。
「みんな、ほんっと、ごめんね!」
ぱんっと両手を合わせる。それに対し顔色を変えずに要が返事をする。
「ははっ。先週もこの光景見た気がするよ」
「今日はなんで遅くなったんだ?」と、光が疑問をぶつけた。
「えっとね、おばあちゃんに煮物の火見ててって言われて……、その後お花に水まきして、制服がね、お母さんがいつものところじゃないとこに置いちゃったから、あわてて探したんだけど見つからなくって」
「あーーーわかった、もういい」
「えええ! ひどいよ、ひぃくん。まだまだ続きが」
「まなかはほんっと、まなかだよな」
ちょっぴり呆れ口調だが、まなかのマイペースっぷりはいつものことだ。
「そ、それ、どういう意味~?」
「それよか、一限目体育だから、さっさと着替えねーと」
光が体操着を取り出したところで美海がまなかに声をかけた。
「まなか、更衣室行こう」
「うん! ……って、あれ? ああああああああ! 体操着がないぃぃ! わ、わすれちゃった」
勢いよく美海に返事をしたものの、一大事。体操服がない。
「保健室で借りようか?」
さゆが心配そうにまなかにきく。
「お前、慌てすぎ。俺のジャージ、使えば?」
ばさっと、光がまなかにジャージを投げた。すかさずまなかがキャッチする。
「で、でも、ひぃくん寒い……」
「さっきまで誰かさんのせいで全力で走ったんだから、暑いんだよっ」
「あ……。ありがとう」
「ほら、はやく着替えに行けよ」
「う、うん! 美海ちゃん、さゆちゃん行こっ」
「まなかさん、よかったね」
慌しく更衣室に向かう三人。その他の女子も次々と教室を出て行き、女子がいなくなったのを見計らって、教室にいる男子たちも着替え始めた。男子だけになると、ガールズトークならぬボーイズトークが繰り広げられる。
「先島って、そろそろ向井戸と付き合ってもよくね?」
にやにやしながら光をからかいはじめる男子。
「なっ、うっせーよ」
「ってか、潮留はいいのかよ。峰岸が狙っちまうぞ」
それに反応して峰岸が赤くなる。峰岸は小学生の頃から美海のことが好きだ。告白をする前に振られてしまっているが、それでもまだ諦めきれていない。一応、諦めようと努力はしているものの、なかなか自分の気持ちには嘘をつけないでいた。
少しでも何か変わるきっかけになればいいと、この場で決心する。光に向き合い、頼りなさげな表情ながらもキッと彼を見据えた。着替え途中なので、短パンだけはいている状態がなんとも情けないが。
「先島! ま、まままけないからな! 潮留のこと、やっぱり絶対諦めきれないし、潮留が先島のことずっと好きなのはわかってる。でも、振り向いてもらえるよう、潮留を幸せに出来るようにがんばるから、先島……だから」
言葉を一旦詰まらせ、再び口を開く。
「応援、よろしくな!」
野次に翻弄されつつも峰岸が言い切った。
「ひゅーーー」
「よっ、峰岸あちぃぞ」
「もっと言え~」
峰岸に啖呵を切られると思った光は少し拍子抜けしたが、一瞬間を置いていつも通りに言い放った。
「……おう。応援、してっから。美海は家族みてーなもんだから、俺じゃあいつを幸せにしてやれねぇって、わかってる。でも、幸せになることの応援なら出来る。俺は、峰岸が美海を幸せにできるやつだって思ってるよ」
穏やかに、そして力強く。光にとって美海はかけがえのない大切な存在だ。美海がいたからこそ、姉のあかりが幸せで。美海がずっとそばで支えてくれたから、光はまなかを想い続けることが出来た。美海の気持ちには、応えられず申し訳なかった。でもこれは申し訳ないで済ませてはいけないことだ。だからこそ、光は美海が幸せになってくれることを望む。出来る限りの全力で美海を幸せにするのだと、強く心に誓ったのだ。
「それより。マジ顔のとこ悪いんだけど峰岸、早く上着、着た方がいいんじゃね?」
男子の中で大きな笑いが起きた。
◇
その頃、男子たちが着替えている教室の外、つまり廊下に美海がいた。
(どうしよう。顔が、あつい……)
ジャージの上着を教室に忘れてしまったので、早々と体操着に着替え、男子が出てきてから取りに行こうと思ったところ、思わぬ会話をきいてしまった。
美海は今、自分が一体どんな感情なのか、うまく理解が出来なかった。戸惑いなのか喜びなのか。しかし、悲しさや切なさではない。
おふねひき以来、波のような感情の高ぶりや、深海のような悲しみは感じなかった。抑えていた光への気持ちを、まなかの気持ちとシンクロして光に伝えることが出来たから。美海の恋は叶わなかった。心の傷だって浅いわけではない。だけれど、曇天だった空が突然晴れたような、心が軽くなったような気がしていたのだ。時間をかけてゆっくりと癒せる気がした。
そして、今。不本意であったが、峰岸の決意をきいてしまった。光が自分をどれだけ大切に想ってくれているか知った。今まで、光への想いに必死すぎて、峰岸の気持ちなんてわからなかった。でも、峰岸も小学生の頃からずっと美海を想い続けてきたのだ。美海が他の人を好きだとわかっていながら。
美海も、峰岸も同じ条件だった。愛しさも、悲しさも、勇気を振り絞ったことだってきっと同じ。いや、勇気に大きさがあるのなら、峰岸の方が何倍も何倍も大きいに違いない。
応えたいと思った。峰岸の勇気に。
でも、どうしていいか、とっさには思いつかない。
ジャージの上着を着ていないせいで、寒い。少し震えてきた。
今は、無理だ……。美海は廊下を走り、保健室に向かうことにした。
走っていく美海の後ろ姿が教室のドアの小さい窓に映ったのを、傍で着替えていた要の瞳は見逃さなかった。瞬時に、きいてしまったのだと要は勘付く。
「光。僕ちょっと腹痛かも。保健室、行ってくるよ。先生に伝えておいて」
「冷えたのか?んじゃ、言っとくわ」
急ぎ足で廊下に出て走る。美海との距離はそう遠くない。走ってある程度近づいたところで声をかける。
「美海ちゃん、待って」
「えっ?」
大きな瞳をさらに大きくして振り返る。要を、ゆっくりと見る。まっすぐ美海を見つめる。二人の視線が噛み合った。一限目を知らせるチャイムが廊下になり響く。このままでは教室を移動する先生に会うと注意されてしまうので、どちらからともなく鍵の開いている空き教室に入っていった。
「さっきの、きいてた?」
「うん」
「驚いたよね」
「……驚きますよ。こんなの」
「ごめんね。僕達、勝手に言いたい放題で」
言いたい放題していた男子代表として要が謝った。
「違うの。要さんが走ってきたことに驚いたの」
予想外の美海の反応に面食らってしまう。
「峰岸や光のことじゃないんだ?」
「うん。あのね、あたし……さっきの、嫌じゃなかった。峰岸のことは、正直に……うれしかった。光も、あたしのこと想ってくれてた。うれしくて、でも」
「でも?」
「わからない……」
要は少し驚いていた。光が峰岸を応援することによって美海はもっと苦しい気持ちになるのではないかと思ったからだ。でも、美海はうれしいと言った。美海に訪れた小さな変化。
「そっか。美海ちゃん、それ、うまく言葉に出来なくてもいい。でも必ず、峰岸に伝えてみてくれないかな?」
「そんなの、無理だよ」
自然とうつむいてしまう。
「じゃあ、一言。うれしかった、って伝えてあげてほしいな」
「うれしかった……?」
予想外の要の一言で、思わず顔を上げ要の方を見る。
「そう。その一言でいいんだ。だから、ね?」
「うん……。わかった。がんばってみる。ありがとう、要さん」
「どういたしまして。追いかけてきちゃって、ごめんね」
「ううん。あたし、このままだったらどうしていいかわからなかった。なんだか、気持ちが軽くなった気がする」
軽く伸びをしながら。
「僕も、そんな気がするよ」
「えー。なんで要さんも?」
「ずーっと前に、恋する乙女気分だったからかな?」
「なにそれ。さゆに言っちゃお!」
いたずらっぽく言う美海に、要は紳士的な対応。
「おっと。それは勘弁」
「そういえば、要さんと二人だけで話すのって、あんまりなかったよね」
「そうだね。美海ちゃんは、いつもさゆちゃんと一緒だもんね」
「要さんは光たちといつも一緒だし」
「あ、じゃあ、今のうちにきいておこうかな。さゆちゃんって、どんなキャラクターが好きかな?」
「なんでですか?あ、もしかして、プレゼント?」
「まぁ、そんな感じ。さゆちゃんは今までずっと、勉強も運動もがんばってきたからね。僕のことを想い続けてくれた五年間を、少しでも埋められるように、ね」
「うっわ。紳士すぎて、あたしが赤くなりそう。そうだなぁ……さゆはクマのぬいぐるみ集めるのが好きだよ。とくに特定のキャラクターが好きってわけじゃないから、可愛いクマならなんでも大丈夫だと思う」
「クマ、かぁ」
「でも、小学生の頃、あたしは可愛いって思って買ったプレゼントのクマ、さゆは可愛くないって言って喧嘩になったことがあるよ」
「じゃあ、さゆちゃん好みのクマじゃないとだめってことか……」
「うん。なんか、目がパッチリのクマより、目が小さくてしょんぼりした感じのクマが好きみたい。守ってあげたくなるかんじのやつ」
「うーん、ますます難しいね」
「でもなぁ。要さんがプレゼントしてくれるなら何でも嬉しいと思うよ! きっとさゆ、あたしにだったら文句いっぱい言えるけど要さんには言えないよ」
「そうだったら、いいんだけどなぁ」
「がんばって! あたし、要さんとさゆのこと、全力で応援してるから」
「ありがとう。美海ちゃんは優しいね」
「要さんだって、体育サボってまであたしのこと追いかけて来るほど優しいくせに」
親友の大好きな人がこんなにも優しい人で、美海は心の底から嬉しくなった。
◇
つい一ヵ月前までグラウンドの隅には、寒冷化のせいで降った雪が積もっていたが、今ではその面影はなく、春の野草がひっそりと芽を出していた。少しばかり、吹く風は冷たい。
「美海ちゃん、戻ってこないね」
「どうしたんだろう。一応、先生には保健室って言っといたけど、サボりなんて美海らしくないな」
体育の授業中、まなかとさゆがひそひそと話す。その周辺の男子たちもひそひそと話していた。まなかたち同様、美海がいないことが話題になっていた。中でも峰岸は、少し顔色が悪い。男子たちの間では、さっきの教室での会話を美海がきいてしまったのではないかという噂だ。
刻一刻と、体育の授業は進んでいく。
結局、一限目の間、美海は戻って来なかった。もちろん、要もだ。二人はすっかり話し込んでしまったのだ。二限間目が始まる頃には制服に着替えた状態で教室に戻って来た。
「ちょっと美海! どこいってたわけ? 先生には保健室って言っといたけど」
さっそくさゆが美海にきいてくる。
「あっ、ごめん。ちょっと、お腹痛くて」
「なぁんだ。なんかよくわかんないけどさ、男子たちが美海のことヒソヒソ話してたんだよね。知ってる?」
「うーん……。さぁどうかな」
さゆの質問を曖昧に流す。
視界に要が入ったので、さゆが要の方に行った。
「ちょっと、さっき、要も保健室だったよね?」
「僕もお腹痛くて。心配かけてごめんね」
「べつに。心配なんか、してないっ」
言動とは裏腹に、頬をあかく染めている。
「さゆちゃん。今日、僕と一緒にお昼食べない?」
「いいけど。美海とまなかさんたちも一緒に」
「今日は二人きりがいいんだけどなぁ」
にこやかに言う要に、さらに頬をあかく染めるさゆ。
「……し、しかたないなぁ! 要がそう言うんなら、二人でもいいけど! 美海ぁ、今日、お昼抜けるねー?」
要と会話中に、さゆは少し大きめの声で美海に問いかけた。
「わかった。ちょうど、あたしも他に用事があったから」
今の返し方は少しわざとらしかったかもしれない。美海は、要と打ち合わせをしていた。今日のお昼休みに、峰岸に、うれしかったと伝えるの作戦。うまく要がさゆを誘導してくれた。あとは美海が峰岸を誘う番だ。今のうちに誘ってしまうと、男子に冷やかされそうなので、お昼休みになった直後を狙うことにした。
「今日は美海ちゃんもさゆちゃんもお昼は別々かぁ。ひぃくん、私と一緒に、食べない?」
一人あぶれたまなかは、光を誘うことにした。
「そこは一緒に食べてもいいですか、だろ?」
「はうぅう……。ひぃくん、一緒にたべてもいいですか?」
「いいに決まってんだろ」
◇
こうして、着々と授業は進み、お昼休みを知らせるチャイムが鳴った。
退屈な授業から解放された生徒たちによって、途端に教室がざわめき出す。そのざわめきに紛れて、美海が峰岸を誘った。
「峰岸。ちょっと。あのさ、迷惑じゃなかったら、その……たまには一緒にお昼食べない?」
明らかに不自然。同様する峰岸。たまには、というか初めての出来事だ。
「え?」
「いいからっ! 付き合って! ほら、屋上」
「え、あ……」
返事をする間も与えられず、美海に手を引かれながらもなんとかお弁当の包みを掴みつつ、屋上へ連行された。
峰岸が連れて行かれたあと、男子たちはひそひそと話す。やっぱりさっきの会話を美海がきいていたんだと確信に変わった。
「屋上の雪もなくなってる」
屋上に着き、美海がつぶやいた。
峰岸はどぎまぎした表情でキョロキョロしていた。もちろん、美海だって内心はかなり緊張しているが、平然を装いながら言う。
「ここ、すわれば?」
「うん。あ、潮留、ちょっと待って」
屋上の、コンクリートがむき出しのところに座る前に、美海の足元にハンカチを広げる峰岸。
「制服、よごれないように」
「あ、ありがと……。でも、峰岸のハンカチがよごれちゃう」
「いいんだ。潮留の制服がよごれるほうが嫌だし」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「うん」
突然の誘いに、きっとまだ驚きを隠せないであろう峰岸だが、そんな咄嗟の心遣いに美海は感動した。
しばしの沈黙を破るようにして美海が口を開いた。まだ開いていないお弁当箱を力強く握って気持ちを落ち着かせながら。
「……あたしね、男子達の会話、きいちゃったんだ」
観念したかのような口調で峰岸が答える。
「やっぱり、そうだったんだ。ごめん、潮留。ほんと、ごめん! この後に及んでほんとしつこいよな、ごめ」
「あやまらないで!」
泣きそうになりながら謝る峰岸の言葉を、強い口調で遮る。
「あの、ね。あたし……うれしかった」
「え?」
「うれしかったよ。苦しくなるくらいに、うれしかった」
「そんな。でも、俺、一方的で」
「ううん。あたしも、今まで峰岸の気持ちに応えられないまま、一方的だったんだよ。お互い様だよ」
「潮留……」
「もう、一方的じゃない。あたし、峰岸のことちゃんと見るから。今まで、峰岸があたしのこと見てきてくれた分、あたしも見る。今更だけど峰岸のことに、一方的になっても、いい?」
「潮、留。ごめん。俺、うれしくて……泣くとか、好きな子の前で泣くとか、情けな」
「情けなくない」
涙を拭う峰岸の両手をそっと握る。少し冷たい手。
涙の粒だけは、暖かい。目元を拭えなくなった峰岸は、恥ずかしそうに美海の瞳を見つめた。
「潮留の目、すごく、綺麗。海みたいに青く見える」
「そう、かも。光たちほどではないけど、お母さん譲りだから、少し青いみたい」
「潮留。俺、もっと頑張る。あのとき男子達の前で言ったことは本当だから。潮留を幸せにできるように頑張る」
「ありがとう」
二人で笑いあう。
美海は、叶わぬ恋を苦しい程に味わった。今なら峰岸がどれだけ苦しかったか、自分のことのように分かる。そんな峰岸に、心からありがとうを伝えることが出来て良かった。
「あっ! たいへん、あと十分で昼休み終わっちゃう」
「いそがないと!」
慌ててお弁当を食べる二人。
降り注ぐ太陽の光は暖かい。
春は、もうすぐそこに。