とりあえず煮詰まってた物を形にしました
窓際の席に座っている俺は特に何も考えず、窓の外を眺めていた。
梅雨時ということもあり、窓には大粒の雨が止めどなくぶつかっている。
視界の端にはニューロリンカーからの注意報通知が上がったままだ。
土日を過ごし、再び月曜になり心新たに……といきたい所だが、俺の心情は今の空模様のように曇り切っていた。
決して一限目の体育がなくなりそうだからとか、そんな理由じゃない。
どっちにしろ俺は持病のせいで激しい運動は出来ないので自ずと見学になるわけだし。
理由は簡単、妹の士の事だ。。
結局金曜の一件以来殆ど口をきいていない。
挙句の果てにいつもは一緒に登校しているにも関わらず、まさかの同伴拒否ときた。
なるべく早く収束してくれるとこちらとしてはありがたいのが……。
そんな考えを巡らせているとクラスのホームルームが始まり、現実へと引き戻される。
真面目に話を聞いていなかったが、どうやら一時間目の体育が雨で中止になったらしい。
前の席に座っている野球部の男子や、隣に座っている女子は露骨に残念がっている。
体育が中止になったことくらいでここまで残念がれるものなのだろうか?
中学生とはいえ、その辺りはまだ"子供"なのだろうか。
「子供か……」
思わず口からこぼれた声は、激しい雨の音でかき消されていた。
何時からだろう、自分が周りとは"違う"ということに気づいたのは。
決して容姿が優れているだとか、異常に頭が良いとかでもない。
ただほんの少し、同年代の子供よりも身体が弱かっただけだ。
だがそんなたった一つの事柄が自分の世界を客観視することに繋がった。
小学校に進学してからが特に顕著で、知らず知らずのうちに同級生達との距離感すら感じるようになった。
――皆は出来るのに、何故僕には出来ないのだろう。
そのように考えることが増えていった。
そんな頃だった、俺がバーストリンカーになったのは。
最初は自分の身体を思った通りに動かすこと自体に戸惑いがあったが、そのうちそんな戸惑いを忘れるほど加速世界にのめり込んだ。
そうしていくうちに、少しずつ俺は変わっていった。
『加速世界と現実では進む時間が1000倍違う』
そんな育ての親からの忠告すらも無視して俺は加速を続けた。
それが自分の精神に影響するなんて、そんな深く考えもしていなかった。
ほんの少しだけ進んでいた俺の中の時計は、周りとはさらにかけ離れた時を示すようになった。
後悔こそしてはいないが、我ながら馬鹿だったと今では思う。
士達にはBBのレベルを簡単に上げさせないようにしているが、それが理由だ。
まぁ、士はかなり不満を溜め込んでいるようが、あいつらに俺と同じ様にはさせたくない。
『ここは、僕が僕としていられる、本当の居場所なんだ』
本人が分からなくなったとしても、大切だったものが無くなると言うのはあまりにも大きすぎるのだから。