暗殺教室  ~Another Story輪廻のカルマ~   作:ひとみらくる

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10、過去の時間(3)

 

「おじさん、連立方程式の問題解きっこしようよ」

「え、なにその呪文みたいなの」

「中学生で習うんでしょ、数学の連立方程式」

 パソコンから無料の問題集を印刷したものを出す。

「りんちゃん、できるの?」

「まだなんとなく。覚えたてだからなんとも言えないけど」

「そっか、おじさんはできないよ。なんてったって学生時代、数が苦(すうがく)と書いてすうがくと読むほど苦手だったからね」

「おやじギャグ・・・・・・」

 数学は苦手らしい。簡単に流されてしまった。

「そこは笑うとこだよ。そんな難しいこと考えてないでトランプやらない?」

 引き出しの中から、『理沙』と箱に書かれたトランプを取り出してきた。

「だって、ババ抜きも神経衰弱も七並べもおじさん弱すぎてつまんないもん。しかも二人でやるからさらにつまんない」

「じゃあ今日は大人のトランプを教えてあげよう」

 ちょっとドヤ顔のおじさん。

「なにそれ、面白い?」

「ポーカーだよ。これは主に賭け事だね。やり方覚えてきたら、何か賭けてみるかい? たとえば・・・・・・りんちゃんが勝ったら読みたい本を買ってきてあげるとか、負けたら僕のシャツをアイロンがけするとか」

「やる! 負けない」

 負けず嫌いの血が騒ぐ。

「よーし、じゃあまず、ポーカーは五枚の手札を使って・・・・・・」

 丁寧に教えてくれた。ポーカーは洞察力、観察力、推理力を鍛えるのにとても適した遊びだった。さすが、ポーカーフェイスという言葉が生まれるだけのことはある。おじさんに教えてもらってから、わたしはポーカーが大好きになった。

 おもちゃのコインをチップ代わりにして、最終的にコインが多い方が勝ち。勝った方の言うことをきくというルール。練習では一回おじさんに負けてしまったけれど、それ以外はわたしの圧勝。おじさんは面白いぐらいに手札の様子が顔に出てしまっているので、半ば強制でマスクを着けさせた。無理やりポーカーフェイス作戦。それでもわたしが勝ったけどね。

 土日はおじさんの仕事が休みで、ポーカーをするというのが習慣になりつつあった。基本的には全勝部わたしが勝ってしまうので、たまに負けてあげる。毎週わたしの本ばかり増えちゃうからね。わざと負けるように勝負を進めるというのもなかなか面白かった。

「やったぁ! やぁっと僕の勝ちだ。明日は久しぶりに自分でアイロンがけしなくて済むぞ」

 わたしに誘導された勝利ということには全く気付いていないおじさんは純粋に喜んでいる。

「あーあ、負けちゃった。でも、自分が何連敗だったか忘れないでよね」

「りんちゃんは本当に強いなぁ。小学生とは思えないくらい勉強も出来るし、将来有望だね」

 おじさんは意外と天然で、素直な性格だから考えるより先に出てしまった言葉。

「将来・・・・・・」

 ここに居るままのわたしに、将来という言葉か。

「あ、ごめんね。僕がりんちゃんを」

 慌てて謝ってくれるけど、別に何も思わない。

「大丈夫、なんとも思ってない。わたし、ここが好きみたい。将来、立派になって誰も悲しむことのない世界にしたいなぁ」

 子どもらしく、無邪気なことを言ってみせる。

 

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