暗殺教室 ~Another Story輪廻のカルマ~ 作:ひとみらくる
9、過去の時間(2)
「取り込んだ洗濯物は部屋の隅に溜めないでって言ったじゃん」
洗濯物を指差しながら、わたしはおじさんを叱っている。
「あぁ、ごめんね。あとからたたむつもりで・・・・・・」
「まーたそれ。いつもたたんでるのわたしなんだからね」
「だって、つい最近まで洗濯機回すの一週間に一回だったんだから」
「ありえない。おじさんっていうか、汚じさんってかんじ」
汚、の部分を強調して言ってみせる。
「あ、今失礼なこと言ったでしょ」
「失礼なのはどっちよ、誘拐犯のくせに」
「はい。すみません。おじさんキレイにたたみますから」
「たたみ終わったら、新しい本借りてきて」
「りんちゃんはおじさん使いが荒いなぁ。とほほ」
「うわ、リアルでとほほなんて言う人はじめて見た」
誘拐されてから一ヶ月が経った。
わたしはおじさんと一緒に暮らしている。一体どうしてこうなったのか今思うと不思議だけれど、居心地はそんなに悪くはなかった。そりゃあもちろん、自分の家に帰りたい。お母さんとお父さんと、お兄ちゃんに会いたい。でも、今ここでわたしが家に帰ったら、おじさんはどうなるのだろう。捕まってしまうのだろうか。同情心からなのか、ここに居続けてしまっている。そして、この奇妙な日々をそれなりに楽しんでいる。
一応、新聞の隅っこにわたしのことがひっそりと載っているが、テレビでのニュース等には大々的に取り上げられることはなかった。わたしが本当の子どもじゃないからなのかな、とか、愛されていなかったのかな、と悲しくなったけど。おじさん自身も日頃から怪しい行動をするような人でもなかったし、第一スーパーのトイレ付近には防犯カメラが無かったり目撃者もいないこともあってか、警察の方で捜査が難航しているのかもしれない。それに、そもそもわたし自身が共犯者のような存在になってしまっているから。
この一ヶ月、外には出ていない。丁寧に管理された理沙ちゃんのお部屋がそのまま残っていて、洋服や遊び道具が充実していた。おじさんは好きなように使っていいと言ってくれたので、ちょっと古いけど漫画を読んだり、ゲームをしたりして過ごしている。わたしが退屈しないように図書館で本を借りてきてくれたり、勉強道具も揃えてくれた。本を読んだり勉強したりするのはとても好きだったから、毎日不便することなく過ごしている。暇なときは部屋の掃除をしたり家事を手伝ったり。
おじさんが仕事に行っている間に逃げ出せることにとっくに気づいている。おじさんは、誘拐をした身で一度人生にも絶望してるため、いつ捕まっても良いと腹をくくっているようだ。だから、逃げるのも居続けるのもわたしの自由、と委ねているようだった。なんとなくおじさんを裏切ることが出来なくて今に至る。
計算高い性格のせいで、わたしは学校に友達がいなかった。だから、学校に行かなくたって平気。むしろ一人で黙々と勉強が出来て気楽だ。
そして色々と考える。迷っている。このままでなんとかなるんじゃないかなっていう自分と、わたしの居場所に帰りたいっていう自分。でも、気が付いたらいつの間にか、もしかしたらここがわたしの本当の居場所なんじゃないかとも思えてきて。
よく考えてみて。最初のわたしは捨てられた子。どんな未来も保証されてない子。たまたま、ぬくぬく育ててもらえただけ。
ただ一つ言えるのは、輪廻は輪廻のために、今をまっすぐ生きたい。