ポケットモンスター ブラック・ホワイト・グレー 作:落ち葉
・リコside・
仲間に加わったツタージャ。一番道路でレベル上げをし、カラクサタウンで休憩を取り、二番道路でまた特訓をしていたところで、ライブキャスターが鳴った。
「もしもし?」
『あ、リコ! 今いい?』
「別にいいけど、どうかしたの?」
『やっぱり僕らの見立て通り、トウコはプラズマ団に誘拐されたらしい。プラズマ団の方からポケモン協会に接触があったんだ』
お兄ちゃんの説明を纏めると、プラズマ団はお姉ちゃんの身柄を確保し、お姉ちゃんの持つ伝説のポケモン、レシラムを手に入れたそうだ。プラズマ団のマッドサイエンティストによると、秘密兵器を使ってレシラムはさらにパワーアップすることが出来るとかなんとか。その実験をするのと、お姉ちゃんへの恨みを晴らすのが今回の事件の目的のようだ。
『今回の事件を一般人などに知らせることは、プラズマ団も考えていないみたいだ』
「どうして?」
『たぶん、好奇心旺盛な一般人などに、秘密兵器について探られたらたまったもんじゃないからじゃないかな。とりあえず、今はトウコの捜査に力を入れようと思う』
「わかった。……そういえば、こんな機密情報的なのを一般人の私に言っていいの?」
『被害者の家族だし、大丈夫だと思う。リコ、今どこにいるの?』
「二番道路だけど」
『随分と強行軍だね。明日にでもサンヨウシティのジムに行く気?』
「そうだけど? お兄ちゃん達もそうだったんでしょ?」
『まぁそうだけど……無理はしちゃダメだからね。近いうちに顔を見せてね』
「どこに居るのかわからないのに合流出来ないでしょ。お姉ちゃんの方に何か動きがあったら呼んで。出来るだけ急いで行くから」
『わかった。……それじゃ、またね』
お兄ちゃんとの通話を終えると、辺りは暗くなり始めていた。私も誘拐される理由はあるんだし、そろそろポケモンセンターに行っておこう。
『速報です。プラズマ団が、再び活動を再開したようです。現在、ヒウンシティを中心に被害が拡大しております。……』
ポケモンセンターのテレビ画面で流れるニュース。ロビーに居るトレーナー達は、不安そうな目で画面を見つめる。
バチュルとツタージャのメディカルチェックを済ませた私は、部屋に戻ってライブキャスターを起動する。短縮ダイヤルで呼び出すのは、先程も会話をしたお兄ちゃんだ。
『もしもし。リコ、ニュースを見た?』
「うん。どうするの? お姉ちゃんが居ないと……」
『そこは何とかするよ。早速なんだけど、リコ、出番だよ。急いでヒウンシティに来て欲しいんだ』
「いくらなんでも急展開過ぎない? 普通主人公は、ある程度のレベルや経験を積んだところで事態が急変して……みたいになるのに」
『そんなこと言われても、しょうがないだろ。プラズマ団には何か考えがあるらしい。とにかく、明日バッジを取ったらすぐ連絡して。僕がウォーグルで迎えに行く』
「了解。午前中でジムは終わらせるわ」
『頼んだよ』
さてと。随分と急展開だけど、今日は早めに寝て、明日のジムに備えよう。
サンヨウジムのジムリーダーは三人。挑戦者は、くじ引きで対戦するジムリーダーを決めるしきたりとなっている。
箱に入れられたくじの中から適当なものを引っ張り出すと、先端が青く塗られたくじだった。
「ジムリーダー・コーンとの対戦になります。フィールドへどうぞ」
メイドさんがフィールドまで案内してくれる。
土が敷かれたフィールドの向かい側に立っていたのは、青い髪のジムリーダー・コーン。水タイプのポケモンを主に使用する。私の手持ちはバチュルとツタージャで、電気タイプと草タイプだから、かなり有利だ。
「君のことは知っているよ。リコちゃん……リーグ準優勝のトウコちゃんの妹だね。彼女もかなり強かったのを覚えているよ。だから、ヒヤップとヒヤッキーを使わせてもらおう」
既にあちらには知られていた模様。ポケモンの変更を申し出てきたが、ツタージャの相手はヨーテリーよりもヒヤップの方が良いだろうし、好都合だ。
「カノコタウンのリコ、挑戦させていただきます」
「水タイプを愛する、このコーンがお相手します」
お互いに一礼。そして、モンスターボールをフィールドに投げた。
「頼んだ、ヒヤップ!」
「お願い、ツタージャ!」
コーンさんが技の指示を出そうとするより早く、ツタージャは技のモーションに入っていた。
リーフブレードをヒヤップに叩き付け、一瞬で距離を取る。ヒヤップの水鉄砲を軽々と避けながら、隙を見てリーフブレード。
「何故っ! 新人トレーナーのポケモンなのに、指示無しで……」
「あー、それを聞いちゃいますかー」
実は、こっそりツタージャに指示は出しているのである。肩に乗っているバチュルが、鳴き声を上げて私の代わりに指示を出しているのだ。初見で見破れないだろうし、ひとまずトレーナーを混乱させて時間稼ぎをすることができる。
それをコーンさんに伝えると、彼は驚いたようだった。
「なるほど……息もピッタリだね。手加減する必要はないだろう。ヒヤップ、ねっとう!」
「避けて!」
ヒヤップのねっとうをリーフブレードで半分に割り、自身に当たることを防ぐ。そして、緑色の刃を掲げたままヒヤップに突っ込んでいった。
「ヒヤップ、水鉄砲で遠ざけろ!」
「ツタージャ、決めて!」
ヒヤップの水鉄砲とツタージャの構えるリーフブレードがぶつかり合う。一瞬だけ止まった後、ツタージャが水鉄砲を受けるのを承知でリーフブレードをヒヤップに斬り込んだ。ヒヤップが仰け反るのと同時にツタージャの体が飛ばされ、二人の体が地に倒れる。
審判が戦闘不能かを判断するため、フィールドに入ろうとしたとき。ゆっくりとツタージャが体を起こし、立ち上がった。対するヒヤップは……
「ヒヤップ、戦闘不能! ツタージャの勝ち!」
目を回していた。
見事、初めてのトレーナー戦で勝ち星を掲げたツタージャを労い、モンスターボールに戻す。
「バチュル、お願いね」
肩に乗っていたバチュルが一声上げ、フィールドに飛び出す。コーンさんはヒヤッキーを繰り出した。
「ヒヤッキー、岩石封じ!」
「バチュル!」
コーンさんが選んだ技は、バチュルには効果抜群。少し低めの声で名前を呼び、長年一緒にいるからこそわかる意思疎通をする。バチュルは頭上にエレキネットを何重にも張り巡らせ、分厚い層にしていく。その上に現れた岩石封じが、ネットを襲った。岩石での攻撃が終わったあとも、ネットは変わらずに屋根を作っていた。それに満足したバチュルは、フィールド中にネットを張り巡らせる。
「ヒヤッキーが無闇に動けないようにする作戦か……。ヒヤッキー、水鉄砲!」
「いいわね……雨乞い!」
ヒヤッキーの水鉄砲をネットを使ってかわしながら、雨乞いをする。天井に雨雲が集まり、雨を降らせていく。
既に相当なレベルであるバチュルの雨乞いは、次第に威力を増していき、既に大雨となっていた。水捌けの良いはずのフィールドに大きな水たまりを作るほどの大雨で何をやるかと言うと、
「ヒヤッキー、まもる!」
フィールド中に張り巡らせたエレキネットを感電させ、ヒヤッキーを間接的に仕留めるのだ。
まもるで防ごうとするヒヤッキーに接近し、連続切りでヒヤッキーをまもる球状の壁を破壊しようとする。威力が最高に達しようとしたとき、まもるが壊れ、大量の電流がヒヤッキーを襲った。
ヒヤッキーは耐えようとするが、堪えきれずに倒れた。
「ヒヤッキー、戦闘不能! バチュルの勝ち! よって勝者、挑戦者のリコとなります!」
初めてのジム戦で無事勝利をおさめた私は、コーンさんにバッジをもらったあと、すぐにポケモンセンターに向かった。