問題児たちと昆虫館が異世界から来るそうですよ?(リメイク)   作:薄翅蜉蝣

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どうも、七星天道です。

色々と変えて再投稿しました。
以前のものよりはマシになっている………と思います。

それでは、本編どうぞ


プロローグ

 虫。

 それは、種として地球上で最も繁栄している生物。

 それは、生物界一の多様性を誇る生物。

 

 そしてそれは、『最強』の生物群である。

 

 

―――中南米、某国。

 

「う~、ここも開発工事か………また場所変えなきゃな」

 

 騒々しい機械音に軽くため息を吐き、呆れたように呟く少年。その少年は、緑ヶ原大地と名乗っていた。

 彼は、木を切り倒し、地面に穴をあけるショベルカーを不安げに見つめる。

 

「なんでどこもかしこも人間だらけにするのかね。あいつらはもっと他の生き物の大切さってものを学ぶべきだよ、まったく」

 

 ―――そんなんじゃいつか滅んじゃうよ?

 しかし大地の言葉は誰にも届かない。

 彼は最後にもう一度ショベルカーに目を向け、森の奥深くへ“翔んだ”。此れ、比喩にあらず。文字通り、“翅”を拡げて翔んだのだ。

 重機を越え、川を越え、数百キロほど進んだ辺りで、再び森に静けさが戻ってきた。

 

「ここはいつまで持つかなぁ」

 

 大地は不安げに呟き、辺りを見渡す。

 と、視界の端に一枚の封書を確認した。

 一瞬、もう既に人類の手が加わっているのかも、と危惧する。しかし、辺りに人間の気配はない。大地は不審に思いつつもその封書を手に取る。

 

「えー、なになに? 『緑ヶ原大地様』? ………俺?」

 

 大地はもう一度辺りを確認する。変わった様子はない。

 その封書がいつ置かれたものか、誰が置いたのか。それすらも見当がつかなかった。

 

「………なんにしろ、俺宛の手紙っぽいし、あけてみようかな」

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。

 その才能を試すことを望むのならば、

 己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、

 我らの“箱庭”に来られたし』

 

 大地が封を切り、中の文章を読む。瞬間、足下の地面がなくなり、上空4000メートルほどの位置に投げ出された。

 

「うぇ?」

「わっ」

「きゃ!」

「っ!!」

『ニャ!?』

 

 どうやら強制的にパラシュート無しのスカイダイビングをさせられているのは大地だけではないようだ。

 いきなり上空に呼び出された四人は全員が同様の感想を抱き、同じ言葉を口にする。

 

「ど………どこだここ!?」

 

 眼前には見たこともない景色が広がっていた。

 遠くに見える地平線は世界の果てを彷彿とさせる断崖絶壁。

 視線を少し下にずらすと、とんでもなく巨大な天幕に覆われた未知の都市が見える。

 彼らの前に広がる世界は―――完全無欠に異世界だった。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 そして大地達四人の真下には、大きな湖があった。

 

「うわ、このまま落ちたら濡れるじゃん」

 

 先ほどまでは重力に従って自由落下に甘んじていた大地だったが、濡れるとなると話は別だ。彼は天才と名高いニュートンを無視して、空中で停止する。

 今回は翅を生やしたわけではない。ただただ空中で停止した。

 他の人間三人+三毛猫一匹が驚いて大地を見るが、大地は特に気にした様子もない。全員の視線をスルーして、湖のほとりに降り立った。

 ほどなくして、湖に大きな水柱が三本上がるのだった。

 

 

 上空4000メートルから落下した大地以外の三人は湖に着水。

 湖に緩衝材のような薄い水膜がおかれていたため、三人は無傷ですんだ。だが、そもそも人間ですらない三毛猫はそうもいかない。この猫の“友達”である春日部耀はあわてて猫を抱き抱える。

 

「……三毛猫、大丈夫?」

『じ、じぬがぼおぼだ……!』

 

 先に断っておくと、この猫は人間の言葉を話しているわけではない。特別なのは猫ではなく耀のほうである。

 なんにしろ、ひとまず無事を確認した耀はほっとする。

 残りの二人、逆廻十六夜と久遠飛鳥はさっさと陸地に上がりながら罵詈雑言を吐き捨てていた。

 

「し、信じられないわ! まさか問答無用で引き摺りこんだ挙げ句、空に放り出すなんて!」

「右に同じだクソッタレ。これなら石の中に呼び出されたほうがまだ親切だ」

「……。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」

「俺は問題ない」

「俺も全然大丈夫」

「そう。身勝手ね……ってあなた! なに普通に会話してるのよ!! というか、飛べるなら私を助けなさい!」

 

 空気のように会話に入ってきた大地を、しかし飛鳥は見逃さない。

 

「いやー、めんどくさいし」

「ヤハハ、お前面白いな」

 

 三人(というより十六夜と大地)でふざけているうちに、耀も岸に上がる。

 

「此処……どこだろう?」

「さあな。まあ、世界の果てっぽいものがみえたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」

 

 耀の呟きに十六夜が応える。なんにしろ、彼らの知らない場所であることには違いなかった。

 

「まず間違いないだろうが、一応確認しとくぞ。もしかしてお前らにも変な手紙が?」

「そうだけど、まずその“オマエ”って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後気をつけて。そちらの猫を抱えたあなたは?」

「春日部耀……以下同文」

「そう、よろしく春日部さん。じゃあ私たちを置いて一人で飛んでいた薄情なあなたは?」

「さすがの俺でもちょっと傷つくよ? ……まあいいや、俺は緑ヶ原大地ってことでよろしく」

「ええ、よろしく大地君。最後に、野蛮で凶暴そうなそこのあなたは?」

「高圧的な自己紹介ありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれよ? お嬢様」

「そう、取り扱い説明書を作ってくれたら考えておいてあげるわ、十六夜君。」

「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

「ふたりとも、仲良くなるの早いね」

「仲良くないわよ!」

「おっと、嫌われちまったか?」

 

 心からけらけらと笑う逆廻十六夜。

 傲慢そうに顔をそむける久遠飛鳥。

 我関せずと無関心を装う春日部耀。

 三人をニヤニヤ眺める緑ヶ原台地。

 

 

(うわ~。なんか問題児ばっかりみたいですね~)

 

 彼らの様子を物陰から窺う人物、いや、兎物が一人。名を『黒ウサギ』という。

 彼女こそが彼らを呼びだした張本人である。

 協力を乞うために呼んではみたものの、彼らが一も二もなく協力する姿など想像に苦しむ。……どころか、九、十くらい用意しても協力してくれるビジョンはおぼろげだ。黒ウサギは頭を抱えた。

 

 

 そんなウサギの葛藤など露知らず、早くも四人はイライラを募らせる。

 

「……で? 呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものを説明する人間が現れるもんじゃねえのか?」

 

 基本的に待つのが苦手な十六夜は退屈そうに吐き捨てた。

 手荒な歓迎を受けて気がたっている飛鳥も不満の声を漏らす。

 

「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」

「……この状況に対して落ち着きすぎているのもどうかと思うけど」

「そんなこと言いながら、耀も全然慌ててないよね」

 

(まったくです)

 

 黒ウサギは耀と大地の意見に心の中で同調する。

 

「待っときゃいいじゃん。どうせそろそろそこにいる人が出てきてくれるって」

「俺も同意見だ」

 

 黒ウサギの心臓がびくりと震えた。

 

「なんだ、あなたたちも気づいていたの?」

「当たり前だ。かくれんぼじゃ負けなしだぜ? 俺からしたら、大地が気付いていたほうが驚きだ」

「心外だなあ。俺だってあそこまで隠れる気のない奴の気配はわかるよ。耀も気づいてたでしょ?」

「………風上に立たれたら嫌でもわかる」

「へえ、面白いな、お前」

「鼻がいい………とかかな?」

 

 軽口をたたく十六夜と大地の眼にもう笑みはない。二人は、警戒の色を強めた目で、黒ウサギの隠れている草むらを見据えた。飛鳥と耀もすぐに疑念のまなざしを向ける。黒ウサギは少し怯んだ。

 

「や、やだなあ御三人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ? ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」

「断る」

「やだ」

「却下」

「お断りします」

「あっは、取りつくシマもないですね♪」

 

 黒ウサギは諸手をあげて、降参の意を示す。

 しかし心の内では冷静に三人を値踏みしていた。

 

(肝っ玉は及第点。この状況でNoと言える勝ち気は買いです。まあ、扱いにくいのは難点ですけども)

 

 黒ウサギは道化を演じつつ、四人とどう接していくか冷静に判断張り巡らせる――と、耀が不思議そうに黒ウサギの隣に立ち、ピョコピョコと動く青いウサミミをわしづかみ、

 

「えい」

「フギャ!」

 

 力任せに引っ張った。

 

「ちょ、ちょっとお待ちを! 触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですかっ!?」

「好奇心の為せる業」

「自由にも程があります!!」

「へえ? このウサミミって本物なのか?」

 

 十六夜が右から、

 

「…………。なら私も」

「ちょ、ちょっと待―――!」

 

 今度は飛鳥が左から。左右に力いっぱい引っ張られた黒ウサギは悲痛な叫びをあげた。

 大地はというと、先程までのニヤニヤ笑いとは打って変わって不敵な笑みを浮かべ、その場を後にするのだった。




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