問題児たちと昆虫館が異世界から来るそうですよ?(リメイク)   作:薄翅蜉蝣

10 / 12
どうも、薄翅蜉蝣です。

かなり期間が空いた上、とんでもなく短いです。
本当に申し訳ありません。

それでは、本編どうぞ


第八話 昆虫館、敗北

『ヴォオオオオオォォォォオオッッ!!!!』

 

 天を衝くかの如く吠える獅子。その様はまるでこの世の出来事とは思えないほどだった。

 五メートルはあるかと思われる巨体から放たれる圧倒的な気配。それは殺気でも敵意でもない。ただそこにいるという存在感。それだけで周りのすべてを委縮させ、屈服させる。

 まさしく王と呼ばれてしかるべき威厳だった。

 

「こ、これは、神獣………? まさか、星獣!?」

「耀、飛鳥、ジン、早く逃げろ」

「で、でも、大地さん、」

「早く行け」

 

 いつもと違い、かけらも冗談の混じらない言葉。

 三人はそれに気圧され、悔しそうにしながらも逃げて行った。

 三人が見えなくなると、大地は周囲を見渡す。

 

「さて、ここに()()がいるってことは………命、いるんだね」

 

 返事はない。こんなところでのこのこ出ていくほど命もバカではない、ということだろう。

 仕方なく、大地はその獅子へ向き直る。

 

「久しぶりだね」

『………どの口が言っている。我々を捨てた貴様にそんな言葉を掛けられるいわれはない』

「つれないなあ。逃げるなら今のうちだよ。俺、本気出すから」

『ハッ、笑わせるな。貴様相手に逃げ出すものなどおらんわ』

「へえ、昆虫館に逆らうつもり?」

『貴様はもはや昆虫館ではない。聞くところによるとかつての頑強な肉体も捨て去ったそうだな』

「っ!」

 

 気づかれてしまっていた。見破ったのは十中八九水族館。抜け目のないやつだ、と大地は歯噛みをした。

 だがここで引くわけにはいかない。かつての力を失ったとはいえ、地球最強を譲るわけにはいかなかった。

 

「先手はもらうよ」

 

 大地の腕の一振りで大量の虫が召喚される。

 さまざまな種が乱れた昆虫の混成軍。神格を持つ彼らは勇猛に獅子へ突撃する。

 

『笑わせるな、ハッ!』

「あはは、やっぱダメかあ」

 

 神格は、しょせん神格。種の最高といえど、星の一片ほどの力を持つ獣には歯もたたない。

 笑いながらも、大地は少し焦りを覚えていた。

 ―――勝てない。

 それは、初めての感覚だった。どんなに強大な壁でも、大地はその力で振り払った。

 大地が人間と同じほどの霊格になる。それは自分の九割九分九厘以上の力を封じられるのと同義だ。

 正しくそれを理解したとき、獅子の爪が眼前に迫っていた。

 

「うわっ、と。あっぶな、あれ当たってたら死んでたね」

『フン、その減らず口がいつまでもつかな』

 

 続けざまに攻撃が飛んでくる。巨体に似合わぬスピードで連続で爪を繰り出す獅子。

 大地はよけるしかない。白夜叉の時のように策があるわけでもない。

 早くも大地は万策尽きようとしていた。

 

 

 

「ここまでくれば、だいじょうぶ、かしら」

「はあ、はあ、たぶん、だいじょうぶだと、思います」

「………私、ガルドを探してくる」

「か、春日部さん? ち、ちょっと休憩しましょう。もう疲れたわ」

 

 大地に逃げろと言われ、走りだした三人だが、途中で飛鳥がジンに『手を引いて全速力で逃げなさい』と言ってしまったばかりにジンと飛鳥の二人は地獄を見ることになったのだ。

 鬱蒼と茂る輝くジャングルで、獣の咆哮をバックに二人は倒れこんだ。このまま走っていれば途中で意識が落ちていたかもしれない。唯一の救いは、木に敵意がなかったことだろうか。

 

「二人は休んでて。私は大丈夫だから」

「でも、」

「じゃあまたあとでね」

「耀さん!」

 

 二人は引き留めようとするが、人外の脚力を持つ耀に対してなすすべもなかった。呆然と立ち尽くす二人。彼らの体力は既に限界であった。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 大地は自分の無力さに歯噛みした。いや、自分というより()()()()の、といったほうが的を射ているかもしれない。

 なんにせよ、彼が今までにないほど苦戦しているのは確かなことだった。

 

『どうした、昆虫館。そんなものでは我は倒せんぞ』

「わかってるよ。こんなの準備運動だから、ね!」

 

 渾身の力で獅子を殴る。無論、ただ殴ったのではない。

 拳になにやら黒いものを纏っていた。殴られた獅子の周りに旋風が巻き起こり、砂塵が舞う。―――やったか、と考えてはいけない考えが頭をよぎる。

 

『ぬ、ギフトは問題なく使えるようだな』

「あはは、これもダメか」

 

 自嘲ぎみに笑みを浮かべる大地。彼が使ったギフトは昆虫兵装(インセクトアーマー)。それもツリーウェタとキノハダカマキリの神格化によるものだった。―――ツリーウェタ。成虫の世界最重量とも言われるバッタの仲間。それに加え、カマキリの瞬発力。拳に神格の重さと速さをのせて放ったのだ。

 名の通り、昆虫を武器に変えて戦うためのギフト、昆虫兵装。今回の大地の切り札であり、唯一の策だった。

 

「ちょっとどころじゃなく厳しいね」

『かつて昆虫館だった者よ。言い残すことはないか?』

「………」

『沈黙は是と見なす』

 

 獅子の振り下ろした全力の脚力に、大地はなすすべもなかった。

 叩き潰されたように見えたが、獅子が脚をあげるとそこには脱け殻のようなものが落ちていた。

 

『………逃げた、か』

 

 昆虫館として、久方ぶりの敗走であった。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

(ガルドは………うん、まだ屋敷にいる)

 

 飛鳥とジンを振り切って、屋敷にたどり着いた耀。もとから二人をこんなところまで連れてくるつもりはなかったから、脱落はむしろ好都合だった。

 ―――飛鳥が聞けば青筋浮かべて怒るだろうな。そんなことを考えながら屋敷の扉に手をかける。とんでもなく大きな気配。けど負ける気はしなかった。ガルドの力は確かに強いのかもしれないが、ゴリラやライオン、ゾウまでもを“()()”に持つ耀と比べれば、素の力は弱いはずだ。

 

「っ!」

 

 屋敷に踏み込む。耀は自分の考えが甘かったことを知ることになる。

 

「お初にお目にかかる。儂は匠海。『水族館』だ」

 

 そこに立っていたのはガルドではなく、()()()だった。




いかがでしたか。

リメイクとして始めたこの話ですが、アイデアをまとめるのに苦しんでいます。
一応あらすじは終わりまで考えているので、気長に待っていただけると嬉しいかぎりです。

ご意見ご感想、誤字脱字などお待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。