問題児たちと昆虫館が異世界から来るそうですよ?(リメイク) 作:薄翅蜉蝣
更新が遅れた言い訳をさせてください。
受験生につき、パソコンに触れられなかったのが一つ。もう一つは最近ポケモンを買ってしまってやりこんでしまったのが一つです。………以後気を付けます。
それでは、本編どうぞ
―――ノーネーム・居住区画、水門前
廃墟を抜けた六人と一匹は外観の整った空家群に出る。
そこには、ワイワイと騒ぐたくさんの子供たちがいた。黒ウサギを見つけたジンは六人の下にかけてくる。
「お帰りなさい、みなさん。水路と貯水池の準備は出来ています」
「ご苦労様ですジン坊ちゃん♪ 皆も掃除を手伝いましたか?」
子供たちがわらわらと黒ウサギの下に群がる。
「黒ウサギのねーちゃんお帰り!」
「眠たいけどお掃除頑張ったよー」
「ねえねえ、新しい人達って誰!?」
「強いの!? かっこいい!?」
「YES! とても強くて可愛い人達ですよ! 皆に紹介するから一列に並んでくださいね」
黒ウサギが柏手を一つ。すると子どもたちは一糸乱れぬ動きで横一列に並ぶ。
その数、およそ20。中には人間以外の動物の特徴を持つ少年少女もいた。
(マジでガキばっかだな。半分は人間以外のガキか?)
(すごい訓練したんだろうなあ。
(じ、実際に目の当たりにすると想像以上に多いわ。これで六分の一ですって?)
(………。私、子供嫌いなのに大丈夫かなあ)
(ひ、人が! 人がいっぱいいます!)
五人はそれぞれが様々な感想を抱く。
………内三人が否定的な意見を持っていることにはいささか不安を感じなくもないが。
コミュニティが落ちつかなければギフトゲームがどうとかいう話にすらならないのだ。
「右から逆廻十六夜さん、緑ヶ原大地さん、久遠飛鳥さん、春日部耀さん、瀧華花菜さんです。皆も知っている通り、コミュニティを支えるのは力あるギフトプレイヤーたちです。ギフトゲームに参加できない者達はギフトプレイヤーの私生活を支え、励まし、時に彼らの為に身を粉にして尽くさねばなりません」
「あら、別にそんなのは必要ないわよ? もっとフランクにしてくれても」
「駄目です。それでは組織は成り立ちません」
飛鳥の申し出をばっさり切る黒ウサギ。彼女なりに譲れないものがあるのだ。
同時に大地は黒ウサギの事を見直した。ここで飛鳥の意見に甘んじてしまえば、子供たちの将来の為にもよくない。ギフトプレイヤーを支えるための糧を生まなければならない彼らの職務を奪えば、彼らは組織内での責任を失い目も当てられない状態になってしまうだろう。
黒ウサギの目に宿ったそれは、コミュニティの危機という状況を独りで乗り切った者の光だった。
「ここにいるのは子供達の年長組です。ゲームには出られないものの、見ての通り獣のギフトを所持している子もおりますから、何か用事を言い付ける時はこの子たちを使って下さいな。皆も、それでいいですね?」
「「「「よろしくお願いします!!!」」」」
耳鳴りを伴う大音量。間近で聞いていた五人は音波兵器でも使われたかのような感覚を受けた。
「うん、よろしくね」
「ハハ、元気がいいじゃねえか」
「そ、そうね」
(………。本当にやっていけるかな、私)
(む、無理! もう無理です………!!)
いささか元気すぎるほどの子供たちの前では、なかなか平常運転でいるのは難しいようだ。………大地と十六夜を除いて。
それどころか、大地は目を輝かせて子供達を凝視していた。案外子供好きなのかもしれなかった。
「さて、自己紹介も終わりましたし! それでは水樹を植えましょう!」
「す、水樹ですか? よくそんなものを持っていましたね」
少し復活した花菜が口をはさむ。花菜としては、まさか最下層のノーネームが水樹(空気中の水蒸気から水を創り出すギフト。つまり水だけなら半永久的に作り出せるということであり、水樹を持っているかいないかでコミュニティの力が大きく左右する)などという代物を持っているのが不思議だったのだ。
「十六夜さんが蛇神様を倒して手に入れてくださったのですよ♪」
「ヤハハ、感謝しろ」
「はい、とってもとっても感謝しているのですよ! ああ、十六夜さん、そこの水門を開けてきてくれませんか?」
「あいよ」
水樹を台座に設置しつつ、黒ウサギが手で水門を示す。その方向には、ノーネーム本拠の館があった。かなり距離があるようだが、すぐ近くにあるかのような錯覚を受けてしまう。それほどまでにインパクトを持つ屋敷だった。
「とことん敷地と建物はでかいよね」
「や、やっぱり私たちが生き物を増やすべきなんでしょうか」
「いや、それはやめといたほうがいいと思う。それにそんなの、
「そうですね。私たちのギフトは最後の手段にしておきます」
「大地と花菜のギフトって?」
ずいっと音も立てずに現れた耀。どうやら聞き耳を立てていたようだ。
飛鳥と一緒に十六夜の持って帰った水樹に見惚れているものとばかり思っていたから油断した。
大地は苦笑し、花菜は身を縮める。
「私、二人には興味がある。特に大地はすごく強いし」
耀の眼は純粋な興味の色に染まっていた。おそらく悪気があって盗み聞きをしたわけではなく、たまたま聞こえてしまったのだろう。
大地や花菜としても、どうしても秘密にすべきことではないから話せないわけではないのだが………、
「うーん、俺たちのギフト、ね。花菜、どうする?」
「好きにしてください。私はどうなっても知りませんから」
「………そうだね、またあとで教えるよ。俺たち、
大地は溜めるのが好きだった。大げさに話すのが好きなのだ。そしてそれに花菜も乗る形になった。要するに、ふざけた。
「………わかった。じゃあ大地のタイミングで教えて」
好奇心旺盛な耀の最大限の譲歩である。本当は今ここで深く追求したいところではあるが、それが原因で不仲になるのも困る。大地はこの箱庭でできた初めての友達なのだ。かけがえのない友情をこんなところで
「分かったよ。またあとで、ちゃんと教えるからさ、そんな不満そうな顔はやめてよ」
「してないよ?」
きょとん、と首を傾げる耀。
大地からすれば嘘つけ! と一喝したくなるくらいには不満気に見えたのだが。まあ、先に一発かましているのは自分だし、責める気も特にない。
「大地さん、耀さん、花菜さん! 本拠を案内しますから、そろそろきてくださーい!」
黒ウサギの呼ぶ声。どうやら水樹の設置は完了したらしい。
「じゃあ、行こうか」
「うん。約束、忘れないでね」
「わかったって」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
屋敷に着いたころにはすでに夜中になっていた。月明かりのシルエットで浮き彫りになる本拠は高級旅館や城と見紛うほどの巨大さである。耀は本拠となる屋敷を見上げて感嘆したように呟く。
「遠目から見てもかなり大きいけど………近づくと一層大きいね。どこに泊まればいい?」
「コミュニティの伝統では、ギフトゲームに参加できる者には序列を与え、上位から最上階に住む事になっております………けど、今は好きなところを使っていただいて結構でございますよ。移動も不便でしょうし」
「そう。そこにある別館は使っていいの?」
飛鳥は屋敷の脇に建つ建物を指さす。
「ああ、あれは子供達の館ですよ。本来は別の用途があるのですが、警備の問題で皆ここに住んでます。飛鳥さんが一二〇人の子供と一緒の館でよければ」
「俺そこが良い」
食い気味に返事をする大地。やはり彼は子供が好きなのだろうか。
「え、あの、うるさいですよ??」
「俺そこが良い」
「泣く子もいますけど」
「俺そこが良い」
「そ、そうですか。そこまで言うなら大地さんは別館ということで」
「私も行く」
「耀さん!?」
彼女は子供が苦手ではないのか。黒ウサギの頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「この機会に子供に慣れておきたいし、大地に教えてもらいたいこともあるし」
「で、でも、 ………! そういうことでしたか! わかりましたわかりました♪ ふふふ」
「ふーん、春日部さんがねえ」
「ヤハハ、意外だな」
「わ、私は本館でお願いします………」
『大地に~』のあたりからニヨニヨと笑いだす黒ウサギと問題児二人。
彼らはなにか盛大な勘違いをしているようだ。
「あ、そうだ! 湯浴みの準備をしませんと!」
上機嫌な黒ウサギに連れられて、大浴場へと向かう一行。辿り着いた浴場を見て、
「うえ………」
「これはなんというか………」
「最悪ね………」
「この風呂に入ったら逆に汚れそうだな」
「すみません!! 一刻程で準備しますから………!!!!」
黒ウサギに言われて一同は各々の部屋を見に行く。一通り自分の部屋を物色した春日部耀は大地の部屋に来ていた。
「早いね」
「大地のギフトって、結局どんなものなの?」
「耀の行動力にはびっくりだよ」
「いいから、教えて」
今耀に何を言っても無意味なんだろうな、と苦笑する。今の今まで我慢していた好奇心が溢れてしまったのだろう。
「ほんとに大したものじゃないよ」
大地はギフトカードを取り出す。
――――――――――
ギフトネーム“昆虫館”“蟲の楽園”“
“
――――――――――
「俺が持ってるギフトはこれ。実際によく使うギフトはコレとコレ」
大地は昆虫館と昆虫兵装の項目を指さす。
「白夜叉と戦う時に使ったギフトは?」
「それはコレとコレ、それからコレだね」
今度は昆虫館と蟲の楽園、そして主催者権限を指さした。
耀の中に、疑問がわき上がる。
「この、絶滅の鐘、は?」
「うーん、最近は使ったことないなあ。白夜叉にも使うな、っていわれてるしね」
「どんなギフトなの?」
「大絶滅を起こす為のギフトだよ」
「え………」
耀は大地の答えに唖然とする。“大絶滅”という単語にだけではない。平然とそれを語る大地に驚いたのだ。
大地は笑みを崩さない。大地にとって絶滅は負のイメージではない。耀が何故驚いているのか、わからないまま困ったように笑う大地。
「………大絶滅って、あの大絶滅?」
「そうだよ」
「………」
間髪いれずに即答する大地に再び沈黙する耀。彼女の生きていた世界は、人類の偉業によって六度目の大絶滅を回避した世界だった。それを覆すことができる存在が目の前にいるという。
「大地は………生き物が嫌いなの?」
「ん? そんなことないけど、なんで?」
「だって、絶滅って」
「………絶滅は必ずしも悪いものじゃないんだよ。特に俺たちからしたらね」
「大地、たち?」
「うん。俺の昔の仲間たち」
「今は違うの?」
「あー、いや。うん。その話はまた今度。今日は俺のギフトについてでしょ?」
「そうだった」
座りなおし、大地のギフトカードを覗き込む耀。
昆虫、蟲。彼の力はどれも虫に起因しているようだ。
「昆虫館って?」
「ああ、それはね………」
「耀さん!! 湯殿の準備ができましたー!!」
耀はがっくりとうなだれる。黒ウサギはつくづく間が悪い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
耀が渋りながら風呂へ向かった後、大地は一人、部屋にいた。
子供達はもう寝てしまったようだし、十六夜も外の人たちとよろしくやっているようだし、女性陣は全員風呂だ。
「さて、耀も行っちゃったし、どうしy」
「おっじゃまっしまーす!!!!」
ドゴーン、と嫌な音がして、壁が破壊される。
土埃の中に、二つの影が見えた。
「………久しぶりじゃな、εντομα」
「ζωον、ιχθυσ………」
瞬時に侵入者を把握する大地。彼らは大地より先に箱庭に召喚された大地の同胞だ。
意外に早く出会ってしまったと大地は歯噛みする。
予定では、十六夜や飛鳥、そして耀がもう少し強くなってから探すつもりだったのだ。
「………何の用?」
「もう、つれないなあ。決まってるじゃん、あなたたちを連れ戻しに来たんだよ、
「俺たちは兄妹じゃない」
「知ってるよ。でも、生みの親はおんなじ。これって兄妹と変わらないでしょ!」
ペースが崩れる。正直、大地は彼女が得意ではなかった。
ふと、もう一人の姿が見えないことに気付いた。
「あれ、ορνισは?」
「ああ、葵ちゃん? あの子なら拠点においてきたよ。あの子がいると交渉は無理だからね」
「………お前は相当あいつに憎まれている」
「はあ、めんどくさい」
「でもでも、私たちはもう怒ってないよ! 早く戻ってきてよ。こんな名前もない弱小コミュニティより、もっとずっと暮らしやすいよ!」
「いや、俺、ここで間に合ってるから」
スッと目を細める少女。獣の眼光を宿した彼女は、威圧的な光を消さずにもう一度伝える。
「帰ってきてよ、お兄ちゃん」
「俺はお前の兄じゃないよ。それに、今の仲間はノーネームだ。お前らじゃない」
「………後悔してももう遅いからね、昆虫館」
「………帰るぞ、命。εντομαには何を言っても無駄じゃ。お前も知っているじゃろう」
威嚇していた少女は、しかし最後にニヤリと嗤った。
「あ、そうだ! 明日のゲーム、頑張ってね。新しい仲間、死なないといいね!」
踵を返し、夜の闇に消える二人。
残された大地は言いようのない不安を抱えながら、ただ立ち尽くしていた。
えー、タイトルから御理解いただけた方も多かったとは思いますが、前回の予告は嘘です。次回こそ、次回こそはフォレス・ガロ戦でございます。
誤字脱字、ご意見ご感想などお待ちしております。