戦国†恋姫~とある外史と無双の転生者~   作:鉄夜

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第十三話

少女・・・斎藤結花龍興は、ずっと後悔していた。

 

3年前、今より幼い自分が下した命令を。

 

自分を可愛がってくれた叔父・・・龍海を部下に命じて殺させた己の愚かさを。

 

今思えば、龍海がいたから配下は自分の言うことを聞いていたのだ。

 

その証拠に、自分は今配下である大人達の人形に成り下がっていた。

 

そしてついには幼い頃姉のように慕っていた、飛騨も自分から離れていってしまった。

 

・・・いや、それはむしろ結花にとっては都合がよかった。

 

実を言うと、飛騨が何かを隠していることは気づいていていた。

 

ほかの配下は見事に騙されていたが、

結花だけは飛騨の違和感に気づいていた。

 

腐っても道三の孫なのである。

 

とはいえ、先程も記したとおりそれは結花には都合がよかった。

 

このまま飛騨を側近として置いていれば、これから下す自分の決断に巻き込んでしまうことになるのだから。

 

#####

 

結花は評定の間に配下を集めていた。

 

配下たちが全員いることを確認すると。

 

決意を込めた瞳で言う。

 

「みんな聞いて。

私は・・・織田に降伏しようと思う。」

 

結花の言葉に配下はザワつく。

 

「何を仰るのですか龍興様!」

 

「そんなことをすればどうなるか分かっておいでか!?」

 

「分かってる・・・私は確実に切腹させられる。

斉藤家は滅亡する。」

 

「ならば!」

 

「それでも・・・この国が滅ぶよりはマシだよ。」

 

押し黙った配下たちに結花は続ける。

 

「私が総大将になってから、この国は全く栄えなくなった。

ううん・・・むしろ悪くなってる。

このままじゃ確実に美濃は滅ぶ。

なら、たとえ家が滅ぶことになっても、国を守る為に最善を尽くす。」

 

「だから降伏して、織田にこの国を引き渡すと・・・。」

 

「うん、それが・・・今まで何も出来なかった私の・・・国主としてできる最後の仕事だお思う。」

 

「・・・そうですか、なら仕方ありませんな。」

 

目の前の家臣が立ち上がり、刀を抜く。

 

「何のつもりだ貴様!」

 

他の家臣は刀を抜くと、いそいで龍興の前に出る。

 

「弱き主など必要ない、これからは我らがこの国を統治する。

織田などには渡さん!」

 

「貴様!裏切り者が!成敗してくれる!」

 

「ふん、やれるものならやってみろ。」

 

そういった男から、黒い気が溢れ出す。

 

それと共に、黒い霧が男の背後に溢れ出す。

 

その霧は部屋中を覆う。

 

「な・・・なに!?」

 

霧が晴れると、そこに現れたのは人の形をしたものだった。

 

しかしその肌の色は人とは程遠い灰色だった。

髪は白く、左腕の肩から二の腕まで、禍々しい刺青が入っていた。

 

「この気配・・・あやかしの類か!」

 

結花が男を睨みつける。

 

「左様、これこそあの方に頂いた力。

すでにこの城は包囲されているだろう。

この力で我はこの美濃をさらに強固なものとする!」

 

(・・・あの方?)

 

一瞬疑問が頭をよぎったが結花はそれを振り払う。

 

「させない・・・あなたなんかにこの国は渡さない!」

 

「ふん、売国奴が・・・。」

 

男の体が霧に包まれる。

 

霧が晴れると、男の姿ら様変わりしていた。

 

身の丈が3メートルを超える巨大な牛の顔を持った化け物になっていた。

 

「・・・殺せ。」

 

その一言で魔物達は結花に襲いかかる。

 

それに対し家臣たちが応戦する。

 

「お逃げ下さい!龍興様!」

 

「皆!」

 

「我々のことはどうかお気になさらず!

貴方様には成すべきことがあるはずです!」

 

「・・・ごめんみんな・・・どうか無事で!」

 

家臣の言う通りに、結花は走り出す。

 

「何故だ・・・何故あの娘に従う。

あいつは国を敵に売ろうとしているのだぞ。」

 

「理由は2つ・・・あの方の目に力強い意志を感じた。

ならばそれに従うのが家臣の役目!

そしてもう一つは・・・。」

 

家臣は目の前の化け物たちを睨みつける。

 

「かわいいは正義だからに決まってんだろうがあああああああああああああああああ!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

その咆哮は部屋中に響き渡り、兵士たちを奮い立たせた。

 

#####

 

結花は城の中を全力で走っていた。

 

(逃げなきゃ・・・逃げてこの手紙を織田に・・・!)

 

結花は懐に入っている手紙を握りしめる。

 

「見つけたぞ!」

 

目の前に、先程とおなじ化け物たちが立ちはだかる。

 

「くっ!」

 

結花は立ち上がり、どうしようか考えていたいる間に敵は下卑た笑みを浮かべながら近づいてきた。

 

すると、

 

ボンッ!

 

天井からなにかが降ってきて地面にあたって煙を発生させた。

 

そしてその直後。

 

「ぐぎゃ!?」

 

「ぎゃ!」

 

「ぐえ!」

 

敵の悲鳴が聞こえてきた。

 

「な・・・なに!?」

 

結花が疑問に思っていると、煙が晴れて忍び装束の少女が姿を現した。

 

「あー、やっちゃったぁ。

・・・でもまぁこうなった以上、死なれるわけにはいかないし、久遠様も許してくれるよね。」

 

少女・・・凛には言葉とは裏腹に、反省の様子を全く見えなかった。

 

(久遠?)

 

煙が完全に晴れると、そこには複数の敵の死体が転がっていた。

 

凛は結花の手を掴む。

 

「走るよ!」

 

凛はそう言って床の手を引いて走り出す、

しばらく走り、2人で物陰に隠れる。

 

「あぁもう!何でこんなに化け物湧いてんの?

なにかの術?めんどくさいなぁ!」

 

半ギレ気味に言う凛に、結花は恐る恐る尋ねる。

 

「ねぇ貴方、どこの忍?」

 

「・・・え?」

 

結花の質問に、凛は間抜けな声を出してしまう。

 

「り・・・凛は通りすがりの正義の忍者だよ!

あはは!」

 

「織田でしょ?」

 

「君のような勘のいいガキは嫌いだよ!」

 

「はぁ!?そっちだって子どもでしょ!

ていうかさっき思いっきり久遠って言ってたし!」

 

「しまったああああ!」

 

凛は頭を抱えて絶叫した。

 

(この忍大丈夫かなぁ。)

 

そんな疑問が頭をよぎったが、

すぐにハッとなって警戒を強める。

 

「まさか私を暗殺するために!?」

 

「久遠様の命令もなしにそんなことしないよ。

まぁ寝てる間に顔に落書きはしたことあるけど。」

 

「犯人はお前かあああああ!」

 

結花は凛に掴みかかり、ほっぺたを引っ張る。

 

「いふぁいいふぁい!ひっはらないで!」

 

「寝てる間に人の顔面をコックリさん仕様にしやがって!

顔洗うの大変だったし犯人探しにてんやわんやだったんだからね!」

 

「それがどうした!

私なんてそのイタズラがバレて白様に個室でお説教食らったんだからね!」

 

「自業自得でしょ!

ていうか白様って誰!?」

 

「私のご主人様だよ!」

 

「はいまた言った!味方の情報またサラッと漏らしたよ!

忍向いてないんじゃないの!?」

 

「何だとこのチビ!」

 

「あんたにだけは言われたくないわこのぽんこつ忍者!」

 

凛と結花はしばらくいい争いを続けていたが、

ここで凛がふと気づく。

 

「ちょっと待って。

こんなに大声出してたら敵来ちゃわない?」

 

「それは大丈夫、ほれ。」

 

結花は床を指で指す。

 

そこには墨で「結」と書かれていた。

 

「これこれ、仮にも自分の城に落書きはいけませんぞぉ姫。」

 

「落書きじゃないやい、あと仮にもって言うな。

今はまだ私の城だバカ。

これは私の御家流、胡蝶夢幻(こちょうむげん)

この筆で文字を書いて術を発動させるの。」

 

「おー!なんか強そう!」

 

「そうでしょそうでしょ!!

例えば今発動してる「結」は書いた場所から一定の範囲に結界をはる術なんだよ!」

 

「おお!」

 

「この結界の中にいる間はこっちの声は外には漏れない!」

 

「おお!」

 

「しかも敵の攻撃からも守ってくれる!」

 

「おお!」

 

「防御力紙だけど!」

 

「おお!・・・ん?」

 

「あとそんなに長い間発動できないけど!」

 

「え?ちょ・・・。」

 

「さらに言っちゃえば音は消せても向こうからこっちの姿は丸見えだけど!」

 

「・・・」

 

そこまで聞くと凛は、

 

「はーつっかえ。」

 

心の底からがっかりした声でそう言った。

 

「しょうがないでしょ!まだまだ修行中なんだから!

それにこの筆本当は普通の槍くらい大きいの!

ちっちゃくなっちゃったから術の威力を弱っちいの!私悪くないの!」

 

「じゃあ何でそんなちっちゃくなっちゃったの?」

 

「・・・わかんないよ・・・私が手に持った途端ちっちゃくなっちゃったんだもん。」

 

結花は涙目で三角座りになる。

 

「やっぱり私は国主なんて器じゃなかったんだよ。

大人にいいように使われて、国も廃れさせて・・・挙句裏切られて。」

 

結花は抱えている膝に顔を埋める。

 

「なんかもう・・・なにもかも嫌になる。」

 

「・・・ねぇゆかちー。」

 

「ゆかちー!?」

 

まさかのあだ名に顔を上げると凛に顔を手で挟まれる。

 

目の前には凛の真剣な顔があった。

 

「国主の器がないって言うけど・・・だったら今、上で君の家臣はなんのために戦ってるの?」

 

「!!」

 

「自分のため?名誉のため?お金のため?

もしそうだとしたら、今頃あの人達だって化け物側についてるよ。」

 

凛は結花にさらに続ける。

 

「あの人達は君のために命をかけて戦ってるんだよ!

体張って守ってくれる人がいるのにそんなこと言っちゃダメだよ!」

 

凛の言葉に、結花は袖で涙を拭う。

 

「そうだね、ありがとう。」

 

「いいって事よ!友達を助けるのは当然!」

 

「は?友達?私とアンタが?」

 

「こんだけ口喧嘩したんだからもう友達っしょ!

あ、私のことは凛って呼んでくれていいよ、

ゆかちー!」

 

「プッ、あはははははっ!」

 

凛の言葉に、結花は吹き出す。

 

「あんた忍向いてないんじゃない?

そんなに感情的な忍び見たことないよ。」

 

「あはは、よく言われる。」

 

そんな風ににこやかに会話していると、敵の足音が聞こえてきた。

 

まっすぐ行った先は曲がり角になっており、その先から敵の足音が近づいてくる。

 

曲がらずに直進すれば外に通じる窓がある

 

「こっちで話し声が聞こえたぞ!」

 

「他に味方がいやがったか!」

 

その声に、結花はハッとする。

 

「とっくに効果切れてた!?」

 

「よし、逃げようゆかちー!」

 

「・・・待って。」

 

結花は懐から手紙を出す。

 

「私が敵を引きつける。

アンタはその好きにあの窓から飛び降りてこの手紙を信長に届けて!」

 

「な・・・何言ってるのゆかちー!」

 

「私は大丈夫、逃げ足には自信あるから。」

 

「で・・・でも!」

 

渋る凛の手を結花は優しく握りほほ笑みかける。

 

「お願い、凛。

私を信じて、友達でしょ?」

 

「・・・うん、わかった。」

 

凛は結花の手を1度解き、今度は逆に彼女の手を握る。

 

「じゃあ結花も私を信じて。

絶対助けに来る、約束する!」

 

「・・・うん。」

 

2人は目の前を見据える。

 

「・・・行くよ。」

 

「・・・うん。」

 

まず最初は結花が飛び出し、曲がり角の先にいる敵の前に滑り込む。

 

続いて、空中に胡蝶夢幻で壁と書き、それを叩いて飛ばす。

 

すると敵の目の前に透明な壁が現れ、道を塞ぐ。

 

「な・・・なんだこりゃ!」

 

「くそ!通れねえ!」

 

敵は見えない壁に混乱する。

 

「言って、凛!」

 

「うん!」

 

凛は走って窓から飛び出すと、空中で印を切る。

 

すると、凛の分身(にしては無表情)が現れた。

 

「このことを龍海様達に伝えて!大至急!」

 

凛の言葉に分身は頷き、着地とともに駆け出した。

 

凛も、急いで清州へと走り出す。

 

(間に合え・・・間に合え!)

 

#####

 

「ありがとう、ご苦労さま。」

 

凛の分身は、龍海に頷くと音もなく消滅する。

 

「まずいことになったでやがるな。」

 

「どうする、龍海。」

 

龍海は不安そうな表情をする飛騨と夕霧の方を向く。

 

「予定変更だ、今すぐ結花を助けに行く。」

 

龍海の言葉に2人は頷く。

 

「そう言えば飛騨。

裏口の鍵を持ってると言ってやがったけど稲葉山に裏口なんてあるんでやがるか?」

 

飛騨はニヤリと笑うと、洞窟の奥を指さす。

 

「・・・え?」

 

夕霧は首を傾げた。

 

#####

 

3人は薄暗い通路を全力で走っていた。

 

「まさか洞窟が城に通じてるとは驚いたでやがる。」

 

「もしもの時の脱出用なんだけどね。」

 

「ここを知っているのは、今はもう私と龍海、それと織田に嫁いだ結菜様だけだ。」

 

しばらく走ると行き止まりになっており、

壁にハシゴがかかっている。

 

はしごの先には扉があり、上に開くようになっていた。

 

龍海は扉の鍵を開けると、扉を開いて外に出る。

 

ちょうど、城の真裏に出た。

 

夕霧と飛騨が続いて外に出ると、3人は物陰から様子を伺う。

 

複数の敵が彷徨いているのが見える。

 

「こりゃまた随分と大所帯だこと。」

 

「あの化け物たち、最近出てきた鬼と関係があるんでやがろうか。」

 

「さあね、今はそれより作戦を立てないと。」

 

龍海は2人に向き合う。

 

「こうしよう、俺と夕霧が敵の気を引く。

飛騨はその間に城に入って結花を見つけてくれ。」

 

「・・・それしかないか。」

 

「心配入らないでやがる、そう簡単に夕霧たちはやられないでやがるよ。」

 

「分かった、二人とも気をつけてな。」

 

「よし、それじゃあ・・・いくぞ!」

 

3人は龍海を先頭に、敵の前に飛び出す。

 

「なんだお前らは!」

 

「どこから入ってきた!」

 

混乱する敵に、龍海と夕霧が吠える。

 

「かかってこい化け物共!」

 

「夕霧たちが相手になるでやがる!」

 

敵との戦闘が始まった。

 

3人は、敵を蹴散らしていく。

 

「飛騨!今だ!」

 

「早く行くでやがる!」

 

「あぁ・・・2人とも、死んだら殺すぞ!」

 

飛騨は城の中に向けて走っていった。

 

龍海と夕霧は背中合わせになる。

 

「夕霧、今の聞いた?

死んだら殺すだってさ。」

 

「まったく、恐ろしいでやがるな。

こりゃ簡単に死ねねぇでやがる!」

 

「安心しな、夕霧は俺が守るよ。」

 

「なら龍海は夕霧が守るでやがる。」

 

「はは、そりゃ頼もしいや。」

 

二人は会話しながらも敵を蹴散らしていく。

 

「オラオラオラオラァ!」

 

「こっからは先は通さねぇでやがる!」

 

城に、2人の叫びと敵の悲鳴が響き渡る。

 

#####

 

一方その頃。

 

「それは真か!!」

 

屋敷で白と談笑していた久遠は、凛からの報告を聞いて驚愕していた。

 

「はい、これを!」

 

凛が結花から渡された手紙を久遠に渡す。

 

久遠はそれを読み、少しすると顔を上げる。

 

「分かった、降伏すると言うなら見殺しにはできない。

これより出陣する。」

 

「それなら、もうひとつ報告したいことがあります。」

 

「・・・なんだ?」

 

凛は深呼吸をして言う。

 

「今頃城では斎藤龍海、斎藤飛騨とその仲間が戦っていることでしょう。

連携すればことが上手く運ぶかと。」

 

「兄上が!?生きていたのか!

・・・いや、どうしてお前がそんなことを知っている?」

 

「・・・私は。」

 

凛は久遠の目をまっすぐ見て言った。

 

「斎藤龍海、斎藤飛騨と通じておりました。」

 

その場をしばらく沈黙が包み込み。

 

「分かった。」

 

そう言って久遠が立ち上がった。

 

「私は出陣の準備をする。

白・・・後は任せる。」

 

久遠が屋敷から出ると、白は凛の目をまっすぐ見て言う。

 

「話を聞かせてくれるかな?」

 

凛は白に全てを話した。

 

それを白は静かに聞いていた。

 

「これが凛の知ってる全部。」

 

「うん、わかった。」

 

「そう・・・じゃあ。」

 

凛は目を瞑る。

 

「せめて優しくお願いします。

痛いのやだ。」

 

「え?なにそれ。」

 

「サクッと一瞬で殺っちゃってくだせう。」

 

「いや、別に殺さないし。」

 

「え?なんで?凛は白様を裏切ったんだよ?。」

 

「いや、まぁ君が誰かと通じてるのはなんとなく分かってたし、裏切りの証拠があれば殺してたんだけど。」

 

「え?ちょっと待って!バレてたの!?

いつから!?」

 

「まぁそんなことはどうでもいいじゃない。」

 

「良くない!忍びとしては由々しき問題!」

 

「とにかく今の話を聞く限り、

君は斎藤の裏切り者と通じてたわけであって。

こっちを害するようなのことはしてない。

むしろ間接的にこっちを有利にするように進めてくれてたように取れる。

だから私は君が私たちを裏切ったと判断しない。

よって今回のことは不問とする。

納得した?」

 

「・・・だめだよ、それじゃあ。」

 

凛は真剣な顔付きで言う。

 

「裏切りは死・・・それが忍の掟。

だからお願い白様。

全部終わらせて。」

 

「・・・分かった、目を瞑って、凛。」

 

凛は言われたとおりに目を瞑る。

 

しかし、しばらくしても何も起きず、

凛は片目をこっそり開いた。

その瞬間。

 

ビシっ!

 

「ひぎゃ!?」

 

白のデコピンが炸裂した。

 

凛はあまりの痛みに悶絶しながら床を転げ回る。

 

「はい、お望み通り殺したよ。」

 

「殺したって・・・だれを?」

 

「猿飛佐助を」

 

「え?」

 

涙目になっている凛に、白は続ける。

 

「私は猿飛佐助を殺した。

今の君はただの凛だ。

これで忍びの掟は関係ない。」

 

「え?なにいってんの?

そんな屁理屈通るわけg」

 

「屁理屈で結構!」

 

白は自信満々に続ける。

 

「子供がうじうじ悩むな。

凛はもう私のなんだ。

私が生きろって言ってるんだから生きろ。

勝手に死ぬなんて許さない。

忍びの掟?知らん、犬に食わせろ。」

 

「白様・・・でも・・・。」

 

「なんだ?もう1発行くか?」

 

「や・・・やだ!

嫌だけど・・・。」

 

「・・・凛君はこれからどうしたい。

君の意思を聞かせてくれ。」

 

「私は・・・。」

 

凛は人呼吸おいて。

 

「白様と・・・みんなと居たい。」

 

泣きながらそう言った。

 

「うん、よく言った。

そういう君だから、私は娘にしたいって思ったんだ。」

 

「白様・・・うわあああん!」

 

抱きつこうとした凛を。

 

「おっと。」

 

白は綺麗に避ける。

 

「ぶべ!」

 

勢いそのままに凛はこけた。

 

「な・・・なぜ避けてし・・・。」

 

「いや、だって服汚したくないし。」

 

「そこは普通に受け入れるべきでしょうよ!」

 

「まぁまぁ、とにかく凛は先に隊舎に戻って彩華に伝えてきてくれる?」

 

「うー、わかったよ。」

 

白は凛がその場から消えたを確認すると、屋敷の外に出る。

 

「久遠、趣味悪いよ。」

 

玄関を出たすぐ側で立っている久遠に不機嫌そうにそう言った。

 

「意外だな、お前のことだから問答無用で叩き斬ると思っていた。」

 

「しらなかった?これでも身内には甘いんだよ、私。」

 

「ふん、そうか

まぁ、凛のことをお前に一任したのは私だ。

だからとやかく言うつもりは無い。」

 

「うん、ありがとう久遠。」

 

「気にするな・・・身内に甘いのはお互い様だ・・・さて。」

 

二人は真剣な顔付きになる。

 

「久遠、いよいよだね。」

 

「・・・ああ。」

 

久遠は白を引き連れて歩き出す。

 

「戦だ。」

 

そういった久遠の目は、鋭く光っていた。

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