学生達は掲示板に集まる。
そこでは、学生らしい騒がしい会話が続く。私と友達である宮城もそこにやってきてその様子を探る。
順位に関しては教員から貰った、個人の順位について書かれた別紙の紙に書かれているが、この掲示板では学年全体の順位が掲載されている。
もちろん、私達1年生の生徒の誰が、どの順位なのかを知るために、学生のノリで面白がって集まってきているのである。
私と宮城も同じ理由さ。
「くっそ……。中間より下の順位かよ……」
「まぁ、宮城は入学当初よりは成績が上がったんじゃないかな?」
宮城は自分の順位について呟いて落ち込んでいたが、私は別にそこまで悪い成績ではないと思う。
元々、入学当初の試験で見た宮城はとってもプレイングが下手で、順位は低いほうであった。
だが、私と今も活動しているデュエル部の活動のおかげで、デュエルの知識に関しては安定してきたと感じる。
難しい詰めデュエルや強敵である先輩の変則デュエルを通して、学ぶことができたんではないかな?
「お前の順位はどうだった?」
「僕の順位は学年で2位だよ」
「お前、入学当初は1年生の中でも一番成績良かったのに、落ちたもんだよな。今では2位だし。ワハハハ」
「………」
私の順位を宮城に教えると順位が下がったことに、腹を抱えながら爆笑している。
入学当初は学年一位の成績を収め、クラス中で目立っていた。
……。嫌な記憶だったな。クラス中のいろんな女子に騒がれて、ラブレターを貰いまくる事件。
まだこういったことがたまに行われることもあるが、私は毎回対応に困る。
本当は私はまた、学年1位を狙おうとしたけど、ちょっとしたミスでこういったことになってしまった。悔しいよ。
「しっかしすげーよな。お前の彼女」
「うん。すごいよね。神崎さんは。僕も尊敬するよ」
「598点って何だよ。流石、プロデュエリストって感じだよな。可愛い彼女がいてうらやましすぎるぜ…。夜のデュエルもすごいんだろうな」
「だから、僕達は夜のデュエルなんかしてない!!」
毎回彼女がいることに対してうらやましがられるが、女である私にとっては自慢できるものではない。
男装している以上、こういった勘違いが起こるのは仕方がないことだと思うが。
「ユウヤーーー!!」
「…っ!?」
私の背中に柔らかい感触がしたと思うと一気に抱きつかれた。
評判をしていると、学年一位の本人が登場したのはすぐにわかった。
「出たな。いつも奈々川の前に現われる魔女」
「何が魔女よ!!」
宮城は私の彼女である神崎さんに嫉妬するような悪い言葉を言う。
「ユウヤー。私に勝ちたいと思っているみたいだけどまだ実力不足みたいだね。まあ、あんたも頑張ったほうだと思うけど。デュエルキングを目指すあんたにはこんな微妙な順位でくやしいでしょうね」
「ぐぬぬ」
「今日からまた特訓ね。放課後すぐに帰ってきてデュエルの特訓よ。私がまた強くしてあげる」
馬鹿にしているようなゆったりとした口調で言われながら、子供扱いされるように私の頭をポンポンと叩く。
私のデュエリストとしての腕では、まだまだ神崎さんにはほど遠いと思い知らされた瞬間。
それにしても満点に近い数値の点である私の彼女の神崎さんにはすごい尊敬するよ。
私が神崎さんにずっといいなりなのは、強い存在であるために頭が上がらないからである。
「だけどよーー。奈々川と同じ学年で2位が二人いるってことはさぁ、次のテストもまたお前の順位落ちるんじゃね? 今度は学年で3番。はははっ」
「僕がどんどん成績落ちているっていう風に言わないでくれよ!! 僕はこれでも強くなったんだからさ」
宮城が言ったのは私も気になっていた、同じ2位が二人いるっていうことについて話される。
この生徒は、入学式の表彰では神崎さん同様に強い生徒扱いされていなかったこと。
それなのに、急に強くなって私と同じレベルのデュエリストの扱いになったことが、この学園でも有名になった話しだ。
「ユウヤは別に弱くなってないわよ。これからも私はずっと学年一位でユウヤはずっと学年二位なの。馬鹿にしないで貰える? クラス順位148位の雑魚君」
「俺が雑魚だと!? くっ……」
神崎さんはゴミを見るような目で、私の悪口を言う宮城を強気な口で懲らしめてくれた。
だが、ずっと私は言われているように神崎さんの下の順位ってやだな……。今度は馬鹿にされないように越えてみせるんだ。
「なんか、清水さんは厨房の頃はデュエルに関しては弱かったのに、高校生になってから成績上がったって話だぜ」
神崎さんは私が気になっていた子の名前を口にする。
私は、この最近デュエリストの腕が極端に上がったという女子生徒の清水アイという生徒が気になってしかたがない。
「気に入らない……。清水アイという私の恋人のユウヤと全く同じ点数の子猫ちゃんは。全然気に入らないわ。いつも何考えているかわからないし」
「いや。俺は好きだぜ。彼女のことは。ビッチなお前より大人しめな清楚な性格で、いつもクールでデュエルするときなんてすっごくカッコいいから! お前と全然ちげえよ」
「私はユウヤ一筋なのー。女なら誰でもいいと思っているあんたこそ、馬鹿にしないでもらえる? ったくこれだから童貞は。恋愛なんかわからないでしょ」
「う、うるせーー」
「言い返せないからって急に怒鳴っちゃって。馬鹿ね。あんたは」
「ぐっ…」
「2人とも、止めてよ。喧嘩しないでよ!!」
神崎さんと宮城の喧嘩を止めるように、体を大の字にするように、私は両手を広げる。
私のこの行為を見て、自慢の長いピンクの髪の毛を触りながら勝者である神崎さんは口をとめ、余裕を見せる。
口喧嘩もかなり強者である神崎さん。
私は怒られたことはないけど、機嫌を損ねると今宮城にやったようになるから、私はいい彼氏を演じ続けている。
こうしないとこうなったときに言い返せないから…。
しかし、宮城が言った「好き」といった意味。ちょっと顔が赤かったのが私は見逃さなかった。
◆◆◆
このやりとりの後、宮城はずっと授業中でも大人しく座っていた。
私はおかしいと感じた。今までの宮城だったらいつも私に対してちょっかいを出してくるのに、今日に限ってして来ないのだ。
放課後になっても部活に直行せずに、ずっと机でぼーっと座っているのだ。
いつもだったらゲームやエッチな本、ビデオにすっごく楽しみにして一目散に部活に行くのに、異常だと思った。
って思ったけど、テストが終わった関係で今日はどの部活も休みだったっけ?
「どうしたの? 宮城?」
「はっ!?」
私が近くに来て声をかけたのに、すぐに気がつかないのか、しばらくたってから宮城は机から音を立てて大きなリアクションをした。
「なんか、おかしいよ。宮城」
「べ、別におかしくなんかないし」
「もしかして神崎さんと喧嘩したことでまだ落ち込んでいるの?」
「ち、ちげーよ」
私は落ち込んだ理由を探ったが、どうやら違ったみたいだ。
宮城は私の彼女に対して、いつも気に入ってないようで、喧嘩しているんだけど、それが原因ではないようだ。
それなら何故……? その理由は宮城から話した。
「俺……。気になってしょうがないんだ。清水アイさんのことが……」
「気になっている?」
気になるの意味がぱっと私は出てこなかったが、宮城のおとなしい様子が可笑しいことから、しばらくしてその意味がわかった。
「俺、ずっと前から清水さんのことが気になってしょうがないんだ。清水さんを見ているとずっと心が踊ってしまう」
「もしかして……。宮城……」
「強者を表す綺麗な長い黒髪。冷静でクールなしゃべり方。最強な組み合わせである黒縁メガネに巨乳。そして委員長をやっている肩書きとを黒タイツを履いていること。俺は……。清水さんのことが全て気になって仕方がないのさ…」
「………」
気になっているようで、清水さんのいろんなことを話しているけど、最後のはいくつかの点はちょっと気持ち悪かった。
まあ、此間行った詰めデュエル前の霊使いの好みで、宮城は『アウス』が好きって言っていたな。清水さんにはそれと少しが共通点がある。
変態なことが好きなのは、男だから当たり前で仕方がないかも知れないと思ったが、もしかして……。
「俺は清水アイさんのことが好きなのかも知れない……」
「やっぱり……」
顔を真っ赤にしながら、私にそう言った。私が考えていたことと同じだった。
やはり普段と違うことで異常なこととなっていた宮城は恋をしていたんだな。
「ぐわああああぁあああああああああ。静まれ! 俺の右腕!!!」
「大丈夫? 宮城!?」
右手で頭をおさえながら机に頭を隠して、大きな声を上げる。
「告白してくる。清水さんを彼女にして、俺は童貞を卒業する」
「頑張ってね……」
相変わらず、私は宮城が何を卒業したいのか、わからないが、これが初恋に見える宮城には頑張って貰いたい。
私には男の恋心という物は全くわからないが、恋愛話が好きな私にとってはすごい興味深い話だ。
「でも、俺どうやって告白していいかわかんねぇよ。ぐわぁああ」
「だ、大丈夫だよ。僕が教えてあげるから」
再び大声で発祥する宮城。
私には男の子と恋愛したことがないから、男の子の考えていることや好きなものとかわからない。
でも、元々女である私には女の子の乙女心を一番知っている。だからそのサポートを教えられることを宮城に言うと、
「でも、お前って一度神崎のこと振ったんじゃ。お前から告白したことってあるか。いつも告白される側じゃんよ」
「あっ」
確かにそうだった。
私は一度も告白なんかしかことはなく、いつも男装している関係で女の子にいつも告白されてばっかりだ。
そして、私は告白をしないで神崎さんの彼氏になっちゃったしな。あの時、どんな言葉を言って神崎さんと彼女になったのかな?
全く覚えていない。
「でも大丈夫だよ。僕が女の恋心を教えてあげるから」
「女の恋心って、男であるお前がわかんのかよ」
「ああ。僕がアドバイスしてあげるよ」
「やっぱ。神崎と付き合っているから詳しいのか。あの様子だと、強気の性格の神崎も夜のデュエル中は激しく腰振ってそうだしな」
「その話は止めてよ!! してないから!!」
「本当かよ」
宮城が不安そうな目をしているけど、大丈夫だ。
告白したことがないけど、私はいつか好きな男の子が出来たときに、告白しようと思って考えていたことや、私の考えている理想の恋愛方法とかいろいろある。
それに、私の考え以外にも、神崎さんと付き合ったことで新しく知った女の子の恋愛の考えとかいろいろ覚えたからね。
これを宮城に教えるつもりだ。
「告白する場所はどうすればいいんだ? それにタイミングは?」
「タイミングや場所は、別に関係ないと僕は思うよ。相手を驚かせるようにいきなり言われるのがいいと思うんだ」
「仕方はどうすればいい?」
「いい? たとえ口が下手でも、女の子は男の子が必死で告白している姿に弱いんだよ。とくに力強い発言にはぐっとくるもんなんだよ」
「やり方は? 電話かメールか? それとも口なのか?」
「電話やメールはちょっと弱いかな。口では言えないと女の子に弱い人だと思われちゃうよ。やっぱり強い男の子って思われたいなら直接言わないと」
「……。何でお前はそんなに詳しいんだよ」
「あっ…」
自分で宮城のアドバイスがなんて言ったのかわかんなくなっちゃった。
私が思っている恋愛の考えに必死になりすぎたよ。
恋愛の考えは人それぞれだと思うけど、その人の顔や性格、行動で決め付けるなんて全く関係ないと思う。
私は思いを熱く語ってくれる人や、優しい人が好きだ。
◆◆◆
「どうだった?」
「ああ。結果はともかくすっきりしたよ。ずっと思いのままだったら、俺は落ち着かなかったと思う。本番は緊張してうまく言えないと思ったけど、思いをまとめて手紙にしたおかげですんなりと言えることができた。ありがとな!! 奈々川!! お前のおかげだ!」
「っ!?」
私は宮城に感謝されて肩を叩かれる。
あれから落ち着きがなかった宮城だったが、告白を無事終えたことで顔はすっかりといつもの宮城に戻った気がする。
それも、告白したおかげでとっても笑顔が強くなったようにみえる。男らしい笑みを私に見せて安心した。
「でも、どうなったか気になるんだよな……。恋愛の結果。清水さんはこのことについては今度話すって言っていたし」
「それで、どうなったの? 詳しく教えてよ」
「やっぱ駄目だったかも知れない……。俺、告白するときに噛んじゃったし、声震えてたかもだな。うわあああああああああ」
「大丈夫!?」
宮城は結果がすぐに出なかったことや、失敗したことに対して思い出すと再び、落ち着きがなくなる。
やはり告白して、答えが出ないとこうなるのが普通か。
相手もすぐに答えを出して付き合うってことはないと思うしね。相手の都合で悩むこともあると思う。
それに、清水さんのタイプが、こんな喜怒哀楽の激しい性格の宮城が好きなのか全くわからないし。
「やっぱり不安だぜ……。今夜眠れないかもしれない」
「そんなに駄目だったの?」
「反応が微妙だったのがわからないんだ。俺が告白しているときもずーっと無言だったし、何を考えているのかわからなかった」
「きっとそういうもんだって。女の子だって急に告白されるとびっくりするもんだよ」
「大丈夫なのか?」
まあ、いきなりは誰でもびっくりすると思うよ。
私がいきなり神崎さんに告白されたときも頭が真っ白になって正確な判断ができなかったし。
告白ってされる側も難しいもんだと私は考える。
「だったら僕が話してみるよ。清水さんに。どうなったか僕が確認してくる」
「変なこと言うなよな」
「大丈夫だって。うまく話をして清水さんの好きなタイプとか、好きなこととかいろいろ聞いてくる」
「すまない……」
私はうわさの清水さんに会いに行く。
学年で私と同じ2位の成績の順位の彼女だ。前から気になっていたし、一度話をしてみたかったんだ。
違うクラスだったからこういう機会は一切ないと思うしね。
◆◆◆
私は宮城の為にも3階の風紀委員室へと移動する。
「失礼します」
私は扉を2回ノックをして、丁寧に挨拶をして扉を開ける。
扉の先には、広い教室にも関わらずに、机は端にまとめられていて、中央に机と椅子が2つ置かれてある。
すると、その1つの机の窓際方向に座っていながら、書類を弄っている女の子ですぐにわかった。
神崎さんと勝負をするくらいに美しい長い髪の毛、私でも緊張するくらいに女の色気を見せる胸の大きな膨らみと綺麗な足を包むタイツ。
そして委員長を表すように知的な印象を示すメガネ。宮城が好きだといっていた清水アイさんの姿が。
「清水さん。…仕事中にちょっと悪いんだけど話があるんだけど」
「何のよう?」
ここの薄暗い黒のカーテンが敷かれているのと、返事が短く早口だけであって、失礼だけど怖い印象を与える。
清水アイさんはしっかり者と噂されている通りに「委員長」をやっている。
クラスの皆にはクールな「委員長」と思われいる通りに、やはりその姿は力強い。圧迫される何かを感じる。
「清水さんに教えてもらいたいことがあるんだけど」
「何かしら?」
急に立ち上がって私の横を通り、後ろに回って扉の前に立つ。私にはこの行為が何をしているのかわからなかった。
「お話するんだったら誰にも邪魔されないほうがいいわよね」
「………」
おかしいと思った。どうやら私の横を再び通ると、委員長は鍵を閉めたらしい。
どうしてわざわざ鍵を閉めたのだろうかと私は疑問に思ったが怖い雰囲気に流され、何も言えなかった。
「それって重要な話かしら?」
「べ、別にそんなに重い話じゃないよ」
今度は清水さんはカーテンも閉めようとする。この教室が電気が薄暗いのもあって、急に不気味な雰囲気へと変わる。
どうして私を閉じ込めようとしているか、わからない。
「奈々川さんはコーヒー飲める?」
「う、うん…」
多少、私はコーヒーの味は苦くて嫌いだが、この不気味な清水さんの雰囲気に断りきれなかった。
私が返事をすると黒板近くに飾ってあったコーヒーメーカーに触る。
怖い人だと思ったけど、気が利く人なんだなと思った。
「奈々川さんは砂糖入れる?」
「お願いします」
親切に砂糖を空けて、コーヒーに入れてくれた。私の分と清水さんの分、2つ持ってくると私もこれからの話に備えて椅子に座った。
「で、何のようかしら? 奈々川さん」
「そこまで長い話じゃないよ。僕はずっと前から清水さんとお話してみたかったから」
「っ!?」
そして苦手ながらも、飲む素振りをして少しずつ口にしながら私は委員長とじっくりと話しをする。
なぜかまったりとした感じだったから、私は宮城の恋の行方に対して、口にはできない気がした。
なんか宮城には申し訳ないな。
「君ってデュエル強いんだってね。僕と同じ順位だからびっくりしちゃったよ」
「別に奈々川さんに比べたら、あたしはすごくないわ。あなたにとても敵いそうにない」
「本当にそうかな?」
どうして、清水さんはそこまで控えめに自分の実力を認めていないんだ?
大して強くないくせにいつも「俺様は最強」といっている部活の先輩のカイザーとは大違いだ。
そして話しをしていくうちに私はしだいには委員長の警戒心はいつの間にか吹っ飛んでいた。
「いつも奈々川さんってニコニコしててうらやましいなーって思う」
「どうしたの?」
「あたしね。悩みがあるの…。クラスの人気者の奈々川さんなら話しを聞いてくれるよね…」
「へぇー…。完璧だと思っていた清水さんにも悩みがあるんだ」
「あたしなんて完璧なんかじゃない…。本当は弱いのよ。周りの生徒達に固いキャラだって言われるけどそんなことはないのよ…。あたしだって普通の女の子として生活したかった」
「清水さんも一緒か。僕の悩みと。僕もみんなに好かれているけど、本当は知られたくないことがあるんだ。僕だって普通の学園生活を送りたかった」
「なんだか。ありがとうね。奈々川さん」
「へっ?」
「こういった機会で話す機会なんて滅多になかったから」
私は1対1で初めて委員長とお話した。
委員長という名のブランドから周りからは上品な人だと言われていたから、ほとんどの人は仕事関係でしか話しはしたことないだろう。
こういう機会を作ってくれたんだから、私も悩みがあると告げる。
清水さんには言わないがこの体の宿命として女であることを隠す以上みんなには言えないし、いつばれるか心配なのが精神的に辛い。
もちろん清水さんにも言わないが私にも悩みがあるってことを話した。
普段の固い委員長とは違って弱音を吐いてくれたからいつもと違う弱い委員長が見れた。
「デュエルしてみる? 清水さん?」
「え? 奈々川さんとデュエル?」
清水さんに自分の左手についているデュエルディスクを向けて、急にデュエルを申し込むと驚いた顔になる。
「もしかして委員長の仕事の邪魔をした?」
「別に暇だったから構わないわよ」
「そうなのかな?」
机の上に置いてある書類が散らばっているほど散乱していて、大変そうだなと思ったけど本人が言うなら問題ないのか?
「一度、僕は同じ学年2位である君と戦って見たかった」
「あたしもそれは同じ。とっても光栄よ」
「どっちが本当の2位なのか決めよう。さあデュエルだ!!」
「そうね」
机から移動してデュエルがしやすい場所へと移動する。私と清水さんはデュエルディスクを向き合って構える。
清水さんは表に可愛らしく『クリボー』が刻まれたもの、裏に『D』の文字が刻まれたコインを指で弾いて、空中に飛ばす。
そしてそのコインが地面に落ちる。
「先攻はあたしから貰うわ!!」
清水さんは表が出たことを確認すると、そのコインを拾った。
『決闘!!』
委員長 LP4000
ユウヤ LP4000
「あたしのターン! ドロー」
勢いがある神崎さんとは違い、落ち着いた手つきでクールにドローする清水さんを見ながら私は、最初の5枚を確認する。
『レスキュー・キャット』『死者蘇生』『巌征竜-レドックス』『サイクロン』『X-セイバー アナペレラ』。
なかなかの手札だ。強敵と戦うには光栄であり、全力を尽くすことができるいい手札。
これなら神崎さんから貰った禁止カードである『レスキュー・キャット』を最大限の力に発揮できるかもな。
「あたしは手札から『王立魔法図書館』を攻撃表示で通常召喚。さらにフィールド魔法『魔法都市エンディミオン』を発動!!」
清水さんが2枚のカードを使用すると、この風紀委員室に大きな図書館と巨大な魔法都市が現われる。
それを見ながら次の私のターンの為に手札の使用方法を考えていた。
「『図書館』と『魔法都市』にはそれぞれ、互いに魔法を使用されることにより魔力カウンターが1つずつ置かれていく。今、魔法を使ったことにより『図書館』にカウンターが1つ乗るわ」
説明を聞きながらプレイングを考える。そして、いくつかの展開パターンを考えると頭に痺れる電流が走る。
私はこの手札で『レスキュー・キャット』をリリースして、デッキからレベル3以下の獣族モンスターを特殊召喚できる効果で、『X-セイバー エアベルン』『森の聖獣 ユニフォリア』を特殊召喚。
『ユニフォルニア』は墓地に獣族モンスターしかいない場合、自身をリリースすることで墓地の獣モンスターを特殊召喚できる。
これで再び『レスキュー・キャット』の効果を再び使用することができ、もう一度『ユニフォルニア』を呼び出して『レスキュー・キャット』を使いまわすことができる。
さらにこれを繰り返すことでフィールドをレベル3のXセイバーモンスター5枚で埋めることができる。
レベル3のモンスター2体を使って『M.X-Xセイバー インヴォーカー』をエクシーズ召喚。
『インヴォーカー』は1ターンに1度、オーバーレイユニットを使うことでデッキからレベル4地属性戦士族を守備表示で特殊召喚できる。
この効果を使い、『アマゾネスの射手』を特殊召喚。
『射手』の効果はモンスターを2体リリースすることで1200ポイントのダメージを与える効果を持っている。
場にいる4体のXセイバーをリリースして清水さんに2400ポイントのダメージ。
『死者蘇生』と『レドックス』の墓地のモンスターを復活できる効果を使うことで、さらに『射手』の弾を作ることができる。
これでモンスターを増やし、4800のダメージでワンキルさ。
我ながら、恐ろしいコンボを一瞬で考えたが、これが私の先攻だったらもう勝負がついていたと思うと、禁止カードってやっぱすごいなと思った。
次の私のターン、清水さんに妨害されなかったらこのコンボで勝負が決まる!!
「『成金ゴブリン』を発動。奈々川さんにライフを1000回復させて1枚ドロー。そして引いたもう1枚の同盟カードを発動」
「ライフを回復させてどうするつもりなんだ?」
ユウヤ LP4000→5000→6000
私のライフが回復していく。1枚ドローだけの効果なのに、相手にライフ1000を回復させるリスクがあるカードを使うのは疑問。
だが、魔法を使ったことで2枚のカードに魔力カウンターが2つ乗るようだ。
「あたしは手札から『苦渋の選択』を発動!!」
「禁止カード!?」
「デッキから5枚のカードを選ぶ。その中から、奈々川さんは選ばないといけないの」
ここで清水さんも引いたことで私は言葉にするくらい驚いた。
禁止カードに選ばれているだけであってこのカードも強力だ。
清水さんは高速で、デュエルディスクの上にデッキを広げて、5枚のカードを一瞬で選ぶ。
選ばれたカードは『神聖魔道王 エンディミオン』『リロード』『打出の小槌』『ワンダー・ワンド』『簡易融合』。
「僕は『エンディミオン』を選ぶよ」
「残りは墓地へ」
デュエルディスクにおいてあったデッキを元の箇所へと戻す。
私がこのカードを選んだのは生贄が必要な上級モンスターだから。
けれど、これも相手の想定外のことなので、あまり意味がないと思う。墓地にいっても手札に来てもいいので事実上のサーチ。
『封印の黄金櫃』と『おろかな埋葬』の上位互換であるのが恐ろしい。
「そして今の魔法で魔力カウンターが3つになったことで『図書館』の効果。3つカウンターを取り除いて1枚ドロー」
さらに清水さんはドローを加速する。こんなにドローして何をするつもりなのか。
私は無言ながらも嫌な予感がしてたまらない。
「『無の煉獄』。1枚ドロー。『トレードイン』。手札の『コスモ・クイーン』を墓地に送って2枚ドロー。『ジェスター・コンフィー』を特殊召喚。『ワンダー・ワンド』を装備して2枚ドロー」
「……!?」
またまたドローをしてく。フィールドになにも動かずにデッキを減らしていく動きが、また不気味だ。
「『図書館』の効果で1枚ドロー。『トゥーンのもくじ』。『トゥーンのもくじ』をサーチ。連続で使って最後に『トゥーン・キャノンソルジャー』をサーチ。『図書館』で1枚ドロー。『テラ・フォーミング』。『魔法都市』サーチ。『打出の小槌』。手札のカードをデッキに戻してシャッフルしてその枚数分ドロー……………」
ひたすらドローをする。
まだ、私のターンが続く気配がしない。もしかして次の私のターンが来ないのではないかと、私は考えてしまう。
こんなにデッキを圧縮してくとなると、狙いはわかった気がする。私と同じくワンターンキルを考えているのではないかと。
エクゾディアによる特殊勝利か? はたしてバーンによるダメージ勝利か。
どちらにしろ、私には防ぎようがない。
私は、清水さんのトランプゲームであるソリティアをプレイしているように、その流れを自分の手札を見ながら見るしかない。
◆◆◆
ユウヤ
LP:7000
手札:5枚
場 :モンスター
なし
魔法・罠
なし
委員長
LP:4000
手札:8枚
場 :モンスター
王立魔法図書館(魔力カウンター0)
魔法・罠
魔法都市エンディミオン(魔力カウンター20個)
ここまで来るまで長いわけではなかったが、それでも退屈だった。
清水さんのデッキは、デュエルディスクを見ればわかると思うが、カードが置かれていない。
デッキは0枚になって手札が増えたにも関わらず、エクゾディアが揃った形跡がないことから、特殊勝利を目指していたわけではないと安心する。
だが、ここまで手札が増たってことは、キーカードを捜すためにひたすらドローしたこととなる。
これから清水さんは勝利のために何をするのだろうか。
「あたしは手札から『二重召喚』を発動!! このターン2度目の通常召喚を可能にする。『トゥーン・キャノンソルジャー』を通常召喚!!」
「っ!?」
嫌な予感が的中した。このカードは私がたくらんでいた『射手』と同じでモンスターをリリースすることで500ダメージを与える効果を持っている。
まさか、これで『成金ゴブリン』で増えたライフ込みで、私のライフを減らそうと?
「あたしは『友情 YU-JO』を発動!」
「何だ。このカードは?」
「このカードの効果で、相手プレイヤーに握手を申し込む。ただし奈々川さんはこれを断ることができるわ。握手に応じた時は、あたしと奈々川さんのライフは合計して半分にした数値になるの」
珍しいカードを使うなと思った。握手をすることで効果が発動するなんて変わった効果だ。
だが、拒否できるならもちろん私はするよ。ライフが半分にされてしまうのなら、この後にバーンダメージで負けてしまうからな。
「僕は拒否する」
「フフフ。それは奈々川さんはできないわ。『友情』のもう一つの効果として手札にある『結束 UNITY』を見せることで握手は拒否することはできない!」
「何っ!!」
不気味に微笑しながら自信気に私に、拒否できないカードという『結束』のカードを私に見せる。
「握手すればいいんだよね」
「ウフフフフ」
今までボーっとカードをプレイしていたのに、清水さんは握手をするとなるとニコニコとしながら、私に近寄る。
そして握手をする。清水さんの手の体温は低いのか、とっても氷のように冷たかった。
いつも手を繋いで帰っている神崎さんの手と比べて全く違う。
ユウヤ LP5500 委員長 LP5500
これでライフが均等になった。まずい気がしてならない。
「『図書館』の魔力カウンター2つと、22個になった『魔法都市』のカウンター4つを取り除き、墓地にある『エンディミオン』を復活させる!! 現われろ!!」
黒衣装を身にまとった仮面魔法使いが現われる。ロッドを振りかざしている姿が、フィールド魔法の魔法都市と絵になっていて美しい。
だが、見とれている場合ではない。
「『エンディミオン』が自身の効果で特殊召喚に成功したとき、墓地の魔法カードをできるわ」
「そのカードは…!!」
私は清水さんの回収したカードを見て、何でこんなカードを戻したのか驚いた。
「あたしは『友情』を手札に戻す。そして『キャノンソルジャー』の効果で『エンディミオン』をリリースするわ」
ユウヤ LP5500→5000
「そして『友情』を発動する。握手をしてあたしと奈々川さんのライフを同じにする。ただし、『結束』を見せることで相手はそれを断ることができない」
「どうしてこんなことを……」
私のライフは5000で清水さんのライフは5500。
清水さんのライフは私より多いはずで、『友情』によりライフを均等にしても、私のライフが増えて、委員長のライフが減る。
自分が得をしないのに、どうしてこんなカードを……。
「ウフフフ」
「……」
清水さんとの2回目の握手。
勘違いだと思いたいが、1回目より清水さんの握手をしたときに、顔で笑っている姿がとてもぞっとした。
「さらに、もう1度、魔力カウンターを6個取り除いて墓地の『エンディミオン』を復活させるわ。そして『友情』を回収させる」
「っ!? もしかして…」
「そうよ。これはカウンターがある限り続く無限ループよ。フフフ。学年2位の奈々川さんも得意な無限ループコンボ。初めて作ったけどとっても面白いわね」
先攻1ターン目で無限ループを作られていたのか……。
私と同じ学年2位だけで、あって只者ではない実力の持ち主だ。
だが、しかしひたすらライフを同じにする『友情』では決着はつかないのではないのか?
『エンディミオン』は『キャノンソルジャー』の弾になる。だが、『友情』で私のライフを増やすのでは、削り切れないのでは?
もしかして清水さんは、初めから私に対して勝負をするつもりはなかったのでは?
あれからしばらくたった。
『エンディミオン』だけではなく『魔法再生』や『魔法石の採掘』でさらに『友情』を使いまわされたことで時間がさらに掛かった。
ひたすら私は『友情』の効果で清水さんと握手をしたが、私が思っていた通りに残りのライフは削れるようではなかった。
なぞのコンボを決められて、私はいまだにクエスションマークだが、ようやく私のターンへと変わる。
「あたしはこれでターン終了」
「僕のターンドロー!! いくよ」
私はデッキからドローした『サイクロン』を確認する。そして。
「僕はこれでターンエンド」
私は何もしない。カードを使わないがこれでいい。
「あたしのターンだね」
委員長はデッキに置かれたカードを触ろうとする。
だが、手の位置にはデッキはもうない。前のターンでドローをしすぎたことが原因のようだ。
デュエルモンスターズではデッキがなくなったら、いくらライフやカードがあったとしても強制的に負けとなるルールがある。
私は何もしてないのにも関わらず、清水さんは自分で自分の首を絞めた。
「奈々川さん。すごいよーー。あたしより強い。やっぱり学年2位の腕はただ者ではないね。もしかしたら、あの1位の神崎よりも強いかもしれないね」
「何がしたいのよ。君は…っ!!」
私は怒っていた。今まで行ったデュエルの中でも、一番というくらいに詰まらないものだった。
私は清水さんと楽しくデュエルができるはずだと思っていたのに、清水さんの自分勝手でひたすら自分のターンを回して、わけのわからないコンボを私に見せ付ける。
それで勝負がつくわけでもなく、ただひたすら私と一緒に『友情』の効果で握手をするだけ。
「あたしはただ、このコンボを奈々川さんに見せ付けたかっただけなんだよね」
「っ!? もしかして『友情』を私に使いたかったのって……」
「ただ、あたしは奈々川さんにずっと握手をしたかったのよね。奈々川さんの手って暖かくて気持ちよかったなーー」
「……っ!?」
私の握手をしたときに触れた手の感覚の感想を言われたことに対して、私は鳥肌がたった。
何故だか、さっきまでずっと握手をしていたのかわからないが、私は頭がクラクラする。気持ちわるくて少し吐き気がしてきた。
私はここに来た理由はなんだったか、忘れてしまったが、気持ち悪いこの場から私は離れようと、扉を触る。
はやく神崎さんのお家に帰りたい。
「あれ…?」
扉が開かない。そういえば、委員長が鍵を閉めたんだっけ。
頭が痛くてめまいがする。私は今まではっきりとして物が見えていたのに、周りの物がくにゃくにゃに見える別の世界にいるようだ。
体中がフラフラして真っ直ぐ体を保てない。
熱があるのかなと思っても倒れちゃ駄目と自分に自覚させる。
でも、それも無駄だった。私は我慢しても意識が吹っ飛びそうな誘惑に襲われる。
「どうして体が…?」
「あらら? デュエル前に飲んだコーヒーに睡眠薬が入っていたの気がつかなかったの?」
「睡眠薬!?」
まさか、コーヒーには砂糖を入れてくれたのではなく睡眠薬を入れていたのか?
道理でまだ、苦かったはずだ。
「どうしてこんなことを……」
「そんなの奈々川さんのことが好きだからに決まっているじゃない。眠らせてあたしのものにするのよ」
「好き!?……」
あれれ。
そういえば宮城は、清水さんのことが好きで告白したんだっけな。そのことについてはどうなったんだろう。
神崎さんは私のことが好きで、私の彼女となって付き合っている。冗談だけど神崎さんは私のことをものって言っている。
でも清水さんは全くの赤の他人。
それなのにどうして私のことが好きなんだ? 頭がクラクラしているのもあってこれは夢なのかな?
でも、私はたとえ夢でもまずいと思った。
今目の前にいる清水アイ。彼女がとっても恐怖に感じて、ここから逃げなければと思った。
私は鍵を空けて扉のノブに手をかける。そしてここから脱出しようとしたが、私の視界は扉から床になってしまう。
目の前は真っ白になった。
「逃げちゃ駄目よ。可愛いあたしの奈々川さん。……。うふふ。神崎豚もいないことだしこれから何をしようかしら。キャーーッ」
私はこれからどうなるか全く考えもせずに、意識は夢の中へと移動した。
夢の中で私は神崎さんとニコニコしながらいつも通りにデュエルをしている夢を見ている。
これから清水さんにより起こる恐怖の現実と、今見ている楽しい夢では全く違う世界だということは知らずに。