遊戯王~デュエルキングを目指す少女の物語   作:魔法使い?

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第15話 『やんでれなおんにゃのこ』

 果たしてどのくらい時間がたったのだろう。どうやらあの後の記憶がないことから気絶してしまったらしい。

 突然我に返り、私は目を開ける。

 

「!?」

「おはよう。眠り姫」

「眠り姫?」

 

 何故か頭が痛い。私はねぼけているが姫とは一体なんのことだろうか?

 まぶしくて目がまだ慣れていないが、私の目の前には黒髪の女の子の姿が。

 

「どう? 気分は?」

「気分……? って何これ!!」

 

 私は異変に気がつく。驚いて手を動かそうとした。

 けれども動かない。何度も動かそうとしても無駄のようだ。手の自由も何らかで奪われている。体全体が動かない。

 私は今の状況を把握しようと体を揺らす。

 どうやら私が今、座っている椅子の上で、ロープのような何かで手足をきつく、動かせないように縛られているようだ。

 

 とくに私が不快だったのは、女とばれないようにしているサラシの上に、さらにロープでより窮屈にされる。

 胸のところが苦しい…。

 

「これはどういうことなの? 清水さん!!」

 

 私はようやく記憶を取り戻した。

 最後に私は清水さんとデュエルをしていたことを思い出す。

 場所は風紀委員室で移動はされていないようだ。清水さんと私の2人だけだったので、縛りあげた犯人はわかった気がする。

 

「何って。奈々川さんが逃げられないように縛ってあげたのよ」

「ちょ、ちょっと。冗談でしょ? これ、はずしてよ」

「冗談じゃないわよ。どうしてあたしの思いに気がついてくれないの?」

 

 私は清水さんに訴えたが、それに答えてくれない。いつもと違う清水さんの表情が変だ。

 そこにはまじめに優等生らしく委員長の仕事をしている顔ではなく、私の顔を見て頬を上げて笑っている顔になっている。なんだか怖い。

 

「ロープ解いてよ。今だったら許してあげるから。ねっ?」

「あたしね。奈々川さんのことが好きだったの。ライクではなくてもちろんラブよ。ずっと大好きだった」

 

 私の話を聞いてくれないようだ。完全に委員長は自分の世界に行っている気がする。

 もう一つ思い出した。私が気絶する直前に清水さんは私のことが好きと言っていた気がする。

 男装の自分が人気であるキャラだから、私はもう告白されるのにはなれているので、急なことにそこまでびっくりしていない。

 清水さんを合わせてこれで何回目だろうか。

 

「ごめんね。僕は君も知っている通りに彼女がいるんだよ。申し訳ない」

「そんなの関係ないわっ!! 関係ない!!! 関係ないのよ!!」

 

 いつも通り、私は断る。いくら告白されようがテンプレの対応には私はとても慣れているんだ。

 断っても反論するように清水さんの言葉が強い。何回も言っている言葉が力強い。

 

「あたしもあの神崎ミカと同じ真似をしたまでよ。あたしも、あたしの物にしたいからこうやって奈々川さんを縛りあげた」

「神崎さんと君は全然違うよ。そんなことはしない!!」

「本当にそれはそうかしら? あの子は奈々川さんのことを物扱いしている。奈々川さんに酷いことをしているんでしょ」

「違うよ。確かに神崎さんは僕のことを物っていうけど、そんなことはしないよ!! 僕を大切にしてくれるんだよ……」

 

 ただ、それだけのために私を縛り上げたのか?

 

 話の合間に知ったけどちょうど私の近くにあるゴミ箱の中身に異変を感じた。

 汚く「清水さんへ」と書かれてある、くしゃくしゃに破られた紙とカードの束が無残にも捨てられている姿を確認する。

 見えたカード名は『苦渋の選択』と『成金ゴブリン』。これが何だったのかすぐにわかったよ。

 捨てられたのは私と宮城が一生懸命考えた清水さん宛てに作った告白の手紙と、先ほど私が清水さんとのデュエルで使われたデッキということを。

 デュエリストは命よりも大切にデッキを扱う。それなのに無残にも捨てられてしまったカードが泣いているように感じる。

 

 宮城の恋愛ダメだったね…。私のせいでこんな結末になってしまうなんてね…。

 

「ほんと、気持ち悪くて吐き気がしたわ。いきなり告白されたけど気持ち悪いからすぐに捨てちゃったわよ。あたしは奈々川さん一筋なのにありえない。キモ男め!! 変態なことしか考えてないんでしょ」

「………」

「あと、奈々川さんの手を触るためだけに必死で毎日調整したデッキなんだけど、あんな紙束デッキもう必要ないわ。あたしは奈々川さんをようやく手に入れることができたんだから」

「……」

「ああ、……。さっきまで奈々川さんに触れたこの手……。とってもいい匂いがするわ」

 

 清水さんは自分の手の匂いを鼻で嗅いでいる。彼女のお花畑状態に私は身の危険を感じた。

 この子は私のことが好き過ぎて、宮城の告白なんてどうでもいいと思っていたんだ。

 ストーカー行為に近いことをやっている清水さんから、今すぐでもここから逃げたいのだが、私は手足を縛られているのでそれができない。

 

「ああ、奈々川さん。ほんと素敵……。あたしだけのものなのよ。可愛いペット」

 

 清水さんは私の背後へと回って、私の髪の毛を触ってくる。

 飼い主がペットを撫でるような触り方だったので、寒気がした。

 

 

「あたしね。昔から男が嫌いでね。ほんと殺したいくらい嫌いだったわ。どうしてあんな気持ち悪い生き物が存在するんだろうっていつも思うのよ」

「……っ!?」

 

 清水さんが男に対して嫌っていることを話すが、その割には私が着ている男用の学ランを触っている。

 言葉と反対の行為を行っている様子がとても恐怖を感じる。

 

「本当はきったねえ男の子の制服を触りたくないんだけどね。でも、奈々川さんの物だから触れる」

「……!?」

 

 学ランを触っている清水さんの手が徐々に下がっていく。そして、

 

 

「奈々川さんは今は男の格好をしているけど、本当は女の子なんでしょ。あたし、ずっと前から知っているよ」

「どうしてっ!?」

 

 一番誰にも気づかれて欲しくない台詞の「女の子」と言われて私は凍りついた。

 どうして気が付かれてしまったのか? 私は世界が終わったかのように、今まであった平常心がさらに遠のいていく。

 

 でも何故、清水さんは私のことが女だとわかっているのに、私のことが好きなのだろうか?

 彼女の目にはさっきから冗談ではない何かを感じる。

 

 そして遂に清水さんの手が、女をあらわす物を触られてしまう。

 

「…。やめて…。触らないで…」

 

 忠告を無視して委員長は男子の指定された学ランの隙間から腕を突っ込み私の体を探っていく。

 私の一番触られて欲しくない部分に触られてしまった。それは今まで隠していた女の子を表すものを触れられる。

 

「へぇーー。隠しているんだ。サラシの上からじゃ、感覚わかりにくいけどこれっておっぱいでしょ」

「や、やだ…」

「奈々川さんって胸あるのに勿体ないよねー。どうして男装なんかして胸潰しちゃっているのかな?」

「うっ…」

「ごめんね。泣かしちゃったね。でも、奈々川さん許してね。あたしは怖いことをするつもりではないから」

「……」

「奈々川さんが実は女の子だと知ったら学校中が騒ぎになっちゃうわよね。ばらされたくなかったらこれから大人しくしてね」

 

 私はさっきまで恐怖を我慢していたのに、この行為で自我を崩された。

 脅されていることもあって、女の子だと知られてしまったことに涙を流してしまう。

 

「奈々川ナナ。これがあなたの本当の名前」

「僕のことを何で委員長が知っているの…っ?」

「そりゃあなたのことは何もかも知ってるわよ。あなたのことが好きだから。世界中の誰よりも奈々川さんのことを詳しいかな? 奈々川さんが僕っ子になる前からずーと知っているわよ」

 

 突然委員長が身を食らい尽くすような口調で言ってきたから私の夢を壊されてしまうのではないかと思った。

 私の本当の名前を出してきたから、清水さんは私が女だと知っていると確定したとわかる瞬間だった。

 

「ほんと、覚えてないの? だってあたし、中学生の頃あなたと同じだったじゃない」

「まさか?」

 

 私は記憶があやふやだったけど、何かを思い出した気がする。この頃はまだ女の子として楽しくて充実してた中学生活。

 

「覚えていないはずよねーー。だってあたしの中学時代は地味だったからクラスでも浮いていたわ。あだ名はメガネブスって付けられてたの知らない?」

「………」

「あたしは昔から何やっても駄目だった。ほんとドジで間抜けな女だったわよ。でもね。あたしはそれを変えるきっかけとなった人がいたの」

「……えっ?」

「そこであたしは奈々川さんと出会った。奈々川さんはすごかったわーー。デュエルも強いし、スポーツ万能、勉強もできてクラスの憧れの存在だったのよ。苦手な物がないんじゃないってくらいのポテンシャルにあたしは憧れた。うらやましかったなぁーー…。だからあたしも奈々川さんみたいな天才になってみたいと思ってみたんだ」

「思い出した……。あなたってあの清水さんだったの!? 全然違うから気がつかなかった!!」

 

 どうりで気がつかないはずだったよ。

 容姿が見栄えがいいような綺麗なスタイルの黒髪美人になってデュエルも私と同じ学年2位のデュエリストに変わっただなんて。

 私は性別と名前を偽る前から、委員長と学校が偶々同じだったって言うことは偶然だな。

 

「男にも評判が良かったからあなたがいつあのケダモノでしかない汚らしい男に奪われるのが怖かった…。ほんと、気持ち悪くて奈々川さんに関わる男ども皆殺しにするつもりだったのよ」

「そんなのおかしいよ。君の考えは普通じゃない」

「いいえ。普通だわ。あたしの方がずっとあなたを見ているのに…。それなのにどうして!! あんなブスと付き合っているのよ…」

「男装をした理由は神崎さんと付き合う為ではない。もっと別の理由があるんだよ」

 

 本当のことを言いたくてもうまく口にすることはできない。男装をした理由はそんな理由ではない。

 

「奈々川さんもあたしと同じで男より女が好きだからじゃないの? しっかし面白いわよね。あのブスは馬鹿だから奈々川さんは男だと思い込んで付き合っている」

「神埼さんのことが好きだからという理由で付き合っているわけではないから信じてくれよ。それに、そんな理由で僕を今、襲う理由にはならないよ」

「でも、あたしはあの女よりも幸せにすることができるわ。あの豚と付き合うのをやめてあたしのことを好きになりなさい」

「嫌だ!! こんなことをする清水さんなんて嫌いだ!!」

 

 神埼さんも普通の女の子ではないが、清水さんとは違って今やっているような酷いことはしない。

 委員長は加減を知らない。神崎さんはこんな風に私を恐怖に追い込むなんてことをしない!! 

 

「でも、あなたって本当にあの神崎ミカのことが好きなの? 奈々川さんってあの女の好きなことって言える?」

「……」

「言えないわよねーー。だって無理やり付き合っているんだもんねーー。世間では男と女が付き合っているって言われているけど、実際は女同士で付き合っているから。ほんと面白いわよねーー」

 

 すぐに私は神崎さんが好きなことを言い返せなかった。

 私は神崎さんと付き合った理由は、勘違いであって説得力のありそうな発言を言えない。

 

 神崎さんを騙している自分が急に悲しくなってきた。

 いつも楽しくくだらないことで2人で暮らしている日常。これが私にとっては間違いだったっていうのが自覚されていく。

 

「あの糞豚神崎の物を奪ってやる! あなたをこれから調教してあげるわ。あたしはあなたの飼い主様になってあげるんだから。あたししか体が受け付けないようにしてあげる」

「やめてくれ!!」

 

 意味がわからない。私と同姓愛をしたいというこの子のことだから大体想像が付く。

 嫌な予感がして逃げたいが、手足の自由はまだ奪われたままだ。私には当然まだ逃げる手段はない。

 

 

「奈々川さんの子供いっぱいほしいな……。きっと可愛い子が生まれるんだろうね」

 

 手の位置が今度は私のお腹へと変わっていく。お腹周りを触るような嫌らしい触り方だったから気分が悪かった。

 

「あたしと奈々川さんでいっぱい子作り。ああ……。これからあたし達、幸せな家庭を築くんだろうね…。あたし子供6人欲しいと思っているの。全員女の子が生まれるの。しっかり物の一番上のお姉ちゃん。スポーツ万能の双子の二女と三女。読書大好きで人前では恥ずかしがり屋な四女、強がりな性格でデュエル大好きな五女、最後は一番下なんだけど、アイドル並みに可愛いい女の子が欲しいな。あたしと奈々川さんの子だからみんな優秀で可愛い子が生まれるよね」

「………」

 

 お腹を触られているのもあるが、清水さんが恐ろしいことを考えているのに鳥肌が立った。

 清水さんの目が完全に逝っている。言っていることが冗談ではなく、マジで言っているとわかる。

 

「その前に儀式しようか」

「儀式!?」

「うん。儀式。子供を作るためにいっぱい奈々川さんとエッチするの」

 

 気持ちが悪い笑顔を私に見せながら、私の側を離れると机の中から何かを探って清水さんは持ってきた。

 

「奈々川さんのために必死に時間を作ってアルバイトして買ったんだよ」

「…!?」

「お薬と道具。初めて使うけど、いろいろとビデオとか本で勉強したから大丈夫。心配しないで」

「や、やだ……」

「同じ女の子だからわかってあげるよ。男ではわからない、女の子の秘密をねっ!」

 

 紐がついているピンクのおもちゃ、ピンポンだまサイズの丸い形がしているもの、今にも動きそうな棒のようなおもちゃ。

 私にはどうやって使う物なのか全くわからないが、ここから動けない私には身が危険な何かを感じ取る。

 

「でも、最初に2人の愛を近い会うためにキスをしようか…。その後のお楽しみにしようよ」

「っ!?」

 

 キスをすると聞かれて私は焦って反射的に暴れて避けようとした。

 すると私は何故か機械に動かされたように自動で倒れて頭に痛みを感じていた。

 別に痛いのはどうでも良かった。

 おそらく私がずっと重心を加えていて座っていたイスが倒れてしまったようだ。

 それくらい女性同士のキスなんて死んでも嫌だったのだ。

 

「そんなに嫌だったんだ。あたしとのキス」

「……や、やだ」

「もしかして、神崎ヤロウとまだキスしてないの?」

「……」

「その反応だとそうみたいね。笑えるわ。あのブス。付き合っているのに勇気がないからってエッチはともかくキスはまだとか面白すぎるわ。そりゃそうか。だって奈々川さんが服を脱いだら一瞬で女の子だってわかっちゃうもんね」

「……ぐず」

「そんなわけであたしは奈々川さんのファーストキスを奪えるのよね。あたしが奈々川さんの初めてを……。取っていてくれて嬉しい……」

 

 ファーストキスは白馬に乗った王子様って決め付けていたのに。かなえそうにない気がする。

 男の子になった私にはそれはもう必要ないのかな? こんな結末で終わりを迎えるなんて……。

 

 女だっていうことを知られてからこのままずっとさっきから清水さんの言いなりだ。

 弱みを握られてしまってはいつ学校でばらされてしまう可能性もある。

 うまく行ってた学園生活が、こんなところで崩される……。悪夢としか思えない。

 

「まあいいわ。時間もたっぷりあるし、キスでトロトロにする前に違うことをしようか」

 

 時間がいっぱいあると聞いて私は、この恐怖はすぐに終わらないことを知った。

 長い拷問のような展開に私は精神、体力とともに持つことはできるのだろうか?

 

「昔はもっと髪長くて可愛かったのに男の子になるために切ったの? でもあたしは今のあなたの姿も好きだなーー」

「うぅ……。誰か助けて……」

「鍵が掛かっているこの教室に誰も来るわけないじゃない」

 

 倒れている私の髪の毛を再び触られる。悔しいけど抵抗しても無力だと思うと、私は涙を流しながら諦めた。

 

「次は奈々川さんの体を拝見と行きましょうか。制服を脱ぎ脱ぎしましょうねーー」

 

 清水さんは私の男性用の学ランに手を掛けた。

 やはり、男嫌いというものもあるのかも知れないが、学ランを脱がすと言う行為が不慣れなようで脱がすことに苦戦しているようだ。

 でも、やり方になれると思うと簡単に脱がされる。ボタンが外れる感覚と共にこれから行われる恐ろしい感覚が。

 

 

 

 

「あんた…。私の彼氏に何やってるのよ!!」

 

 

 

「神崎さん……」

「どうして雌豚が……」

 

 絶望の時、大三者の声が聞こえた。

 委員長は声を焦らせながら私から手は離れたことで落ち着きがないってわかる。

 

「勝手に私の彼氏を盗んで監禁調教プレイって何様のつもり? 許可なく破廉恥なプレイをしているんだか。超変態よ」

 

 神埼さんはいつも以上に委員長に怒鳴った。「変態」の言葉が悪ふざけで私と一緒にからかう時よりも重く感じ取れた。

 このまま委員長の責めに朽ちるとずっと思い込んでいたから何よりも助けが来て嬉しかった。

 

「神崎ミカ。どうしてここに!…。奈々川さんとの空間を誰にも邪魔されないように、鍵を掛けていたはずなのに!」

 

 委員長は声を震わせて怒鳴る。何で神埼さんはここにやってきて広い学園の中で私の居場所はわかったのか。

 

「だってユウヤは私の彼氏なのよ。すぐに帰ってくるって行ってたのに遅いから可笑しいと思って、ずっと探していたってわけ」

「ぐっ……。むかつく女だ……」

「この子はね。人気だからわかるわ。雌猫ちゃんによく誘われるからね。急にいなくなったってことはその猫に連れていかれたってことでしょ。だからずっと探していたの」

 

 私のためにって……。わざわざ探してくれてたなんて嬉しい。わざわざ私のために探してくれるなんて嬉しいな。

 

「でも、どうして……。誰にも邪魔されないように鍵をかけていたはず……」

「あんた、勘違いしているようだけどここの鍵は開いていたんだけどね」

「あっ」

 

 そういえば清水さんとのデュエルの後、私は閉められていた鍵を開けたんだ。

 

「助けてくれてありがとう……」

 

 ここに神崎さんが来てくれただけで、恐怖の時間が、いつも通りの明るい時間へと変わることができた。

 神崎さんの勇士は同じ女として尊敬する。すごくかっこいいよ。

 

 

「ユウヤをこんな目にあわせて絶対に許さないんだから!」

「ねぇ……。あなたは何でいつも奈々川さんとこんなにも仲がいいの……」

 

 嫉妬しているのか、病んでいる口調で委員長は神崎さんに語りかける。神崎さんは会話を成立させる為に私との関係を答えた。

 

「そりゃ出合った時からずっと仲がいいわよ。私と相性がいいくらいよ。相性はマックスっていうべきね」

「許さない……。絶対に許さない……」

「私のほうがずーっといるからユウヤのことは詳しいわ。女装が好きな変態で、影でこそこそやっているのよ。こないだも私の洋服とか制服を盗んで女装していたしね」

「この程度で詳しいって笑えるわよ。あたしなんか放課後や、学校外でも奈々川さんを調べまくったおかげで、匂いとか温もりなどで一瞬で感知できるからね」

「なにそれ? きもっーー。それってただのストーカーじゃん…。でも、私も匂いくらいわかるわよ…。ユウヤの洗濯物の匂いとか好きだし…」

「この豚め…。いつも奈々川さんといるせいで、奈々川さんのことを洗脳しやがって!!! 殺してやりたいくらいだわ」

 

 納得いかないのか、いかにもこのまま言葉でホラー映画でたとえると、言葉だけで呪い殺すようなゆっくりとした声で委員長はしゃべり返す。

 それにしても私に対しての2人の変態自慢が気持ち悪い。なんで女2人がこんな話をして戦っているんだよ。

 私のことがとっても好きだとしても、こんな自慢なんのうれしくもない。むしろなんでこんな展開になってしまったのか?

 女2人が私を争う戦いに。どうして女同士で私を取り合っているんだろうか?

 

 さらにそれを見て神埼さんは大胆にも調子に乗ったのかさらに挑発を続ける。

 

 

 

「私だってこんな大胆にしたことないわよ」

「………」

「ユウヤって男の癖に上半身でも裸を見られるのは嫌っているのよ。一緒に住んでいるとはいえ、あんたがやったみたいなエッチなことなんて一度もしたことはないわ」

 

 ………。一緒に住んでからとはいえ、エッチなことは一度もされなかったな。発言力は確かに正しい。

 ただ変なことをしてないとわかりきった途端に委員長は急に強気になったみたいで、あることを言う。

 

 

「奈々川さんの彼女の癖に奈々川さんの秘密何も知らないのね。ホントありえない!!」

「はぁっ? 部外者のあんたは何様のつもりよ」

 

 清水さん……。やはりこの作戦で来たか……。

 いつの間にか女同士が私を奪い会う最悪な展開に。何だこの展開は…?

 清水さんは私の弱みを握って神崎さんから私を離れさせて確実に自分の物にしようとしている……。

 

「あたしは中学校の頃から奈々川さんと同じだったからあなたよりもずーっと知っているわよ。そりゃ、奈々川さんの全てをね! 」

「何のかかわりもないあんたが何を知っているっていうのよ」

「じゃあいいましょうか。あなたも知らない奈々川さんの秘密を!」

 

 まさか神崎さんの前で私が女だっていうことがこんなところでばらされてしまうの……?

 今まで地道に重ねてきた神崎さんとの関係を壊されたくない……。まだ、私は神崎さんと仲良く一緒に暮らしたいのに……。

 

「服を脱がして見ればわかるわ。奈々川さんは実は……お……」

「………。ぅ…」

「あんたホント最低ね。好きって行っているわりには意地悪して泣かせるなんて人間の屑よ!」

 

 委員長がただ「私のことが女の子として好き」という身勝手な行為で夢を崩壊させられる不安から、私は自然に涙が出てたんだな。

 だけどそれを安心させてくれように、神崎さんは私を守るように私の体を包むよう、手で覆ってくれた。

 

「男の子ってみんなおっぱいが好きなんでしょ。そんなの私でもわかるわよ。ユウヤも私を抱きつくときはいつも胸から飛び込んでくるもんねっ! 変態だから」

「………え?」

「こんなことをして欲しいんでしょ?」

 

 このまま破滅の道に進むと思ったがそうでもなかった。頭文字は同じ「お」でも意味が全然違うぞ……。

 神埼さんは私が胸が好きな子な勘違い通りに、グイグイと自信気に大きな胸をプッシュしながら抱きついてくる。

 同じ女としてこんな行為をされて嬉しいっていうよりこっちが恥ずかしいよ……。でも気が付かれないで本当に良かった……。

 

「そんなどうでもいいような秘密じゃないわよ。奈々川さんの真実は……」

 

 再び反れた話を戻そうとして、委員長は私の真実を神崎さんに教えようとする。

 

「しつこいわねー。本人が嫌がっていることをどうして何度もストーカーのように言うのかしら?」

「知りたくないの? だってこれを教えたらびっくりするわよ」

「ユウヤが嫌がるようなことは知りたくないもの。それにユウヤは、そんなに重要なことなら私に隠さないでいつも教えてくれるからね。いつもそうでしょ!」

 

 神崎さん本人は私の真実を気にならないようで接してくれる。

 それより私の恋のライバル意識としている委員長が言っていることだから嘘だと思っているんだろうな…。

 

「ありがとう……」

 

 私は感謝の言葉をあらわした。

 

「べ、別に遠慮なんかいらないわよ」

 

 この発言の後、神埼さんは私の頭をふんわりとした同姓の手で撫でてくれた。友達以上の関係だからこそこの感覚は安心できる。

 

「許さない……」

 

 委員長は私と神埼さんとの関係にうらやましがっているみたいで、私の耳から妬んでいるように聞こえた。

 

 

「さぁ、さくっとあいつをやっつけて上げるわ。さっさと済ませてあんたを助けてあげるわよ」

 

 神崎さんが委員長に向けて会話をするとガチャガチャと音を立てて何かを組み立てようとする。

 すぐにデュエルディスクの音だとわかった。神崎さん……。デュエルをするつもりだ。

 

「神埼ミカ……。プロデュエリストであり、学年1位であるお前があたしとデュエル? 面白いじゃない。すぐに潰してあげるわよ。あたしが勝って奈々川さんをいただくわ!!」

 

 私は何度も、プロデュエリストの神埼ミカに負けた。私は神崎さんの実力の前では勝てなかった。

 それが今、今度は神崎さんは委員長とデュエルをする。敵にすると厄介なのに、味方にするとなんて心強いんだろう……。

 

「負けたらあんたは、ここから立ち去ってもう2度とユウヤと近づくんじゃないわよ!」

「だったらそっちは奈々川さんと別れなさい。奈々川さんはあたしの物に変わるんだからね」

 

 怖い。私のために昼ドラのような展開がおきていることに。

 どうして女同士の闘いって男の子の暴力の喧嘩より言葉の圧力が大きいの?

 

 

 

「さぁ……。愛をかけてデュエルよ!!」

 

 

 学年2位と1位の2人は向き合ってデュエルディスクを構えて戦おうとしている。

 神崎さんはいつも私とデュエルするときに使うデッキのようだ。清水さんは私とデュエルしたデッキは捨てたから別のデッキを使うようで、スカートのポケットから取り出した。

 2人の表情は真剣だ。私は複雑な心境の中、清水さんと神崎さんを見届ける。

 2人はプライドを掛けたデュエルとともに、恋愛の為に私を掛けたデュエルでもある。

 

 私の彼女である神崎さんは、私が女であるということは知らない。男装している私のことが好きだから付き合っているんだ。

 対する清水さんは私を女であるということを前から知っている。神崎さんとは逆に女のほうの私が好き。

 こんな複雑な恋愛関係の中のデュエル。

 私はどうして女の子が女の子を求める争いになってしまったのか理解でない。

 こういう「私のために争わないで!!」っていう三角関係は普通は男の子がやるもんだろう。

 

 でも、私は神崎さんを応援するんだ。

 やはり長いこと彼氏として一緒に暮らしていることで神崎さんには慣れている。

 あまりしゃべったことがない清水さんとは違う関係だからこそ理解している。

 私の為に何をして、何を考えているのか。私には、神崎さんがどんな思いや気持ちでこれからデュエルするのかわかる気がする。

 私は神崎さんの「私を守りたい強い意志」っていうものに答えてみたい。

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