3人の女の子が集まっているこの風紀委員室。
そこでは殺到とした雰囲気をただ寄せる。この複雑な関係に圧倒されそうだ。
「なんであたしの邪魔をするのかなー? あたしはこれから奈々川さんを調教してあたしの体しか受け付けない体にする予定だったのに。これからこれは発展して奈々川さんのごはんの世話もお風呂の世話もトイレの世話もぜーーんぶあたしがしてあげる予定だったのに」
相変わらず変態なせりふを言う清水さん。清水さんは私が女の子だということを知っているからこそ、今言った言葉がとても怖い。
想像するだけでも寒気がしてくる。神崎さんはすぐに言い返してくれた。
「それってただ、好きな人の自由を奪っているだけじゃん。こんなのは恋愛って言わないわよ。ただの束縛よ」
「あたしだって抑えたつもりなのよ。本当は奈々川さんの監禁生活は1か月くらい計画掛けてたけど、流石にそれは可哀そうだから1週間にする予定だったし、奈々川さんの子供も本当は10人欲しかったけど、6人に抑えたつもりだし」
「監禁? 子作り? ユウヤの彼女である私の前で喧嘩を売っているのかしら? ただじゃすまないわよ」
「そりゃ結構。これからあんたを潰して奈々川さんの彼女じゃなくす予定だから」
どこが抑えたつもりなんだろうか。清水さんの考えている桁が多すぎて、このまま神崎さんの助けが来なかったら私はどうかしてしまうかと思った。
清水さんは私のことが好き過ぎてどうしてこんなに狂っているのだろうか。とても怖い。
2人の戦いが始まろうとしている。
私は椅子に手足を縛られて、床に転がっている中、2人の女の子の戦いを見届ける。
「あははは。一度、あたしはあんたを潰して見たかったのよねー。学年一位であり、プロデュエリストである神崎ミカ。てめぇをよぉ!!」
「やれるもんならやってみなさい。私がユウヤの前で無様に負けるってことはありえないから」
「あたしはてめぇが負ける姿が見たいのよ。奈々川さんの前で敗北する表情を見せなさい」
清水さんと神崎さんは私を掛けて対峙している。
清水さんは今までの学園生活では一切見せなかった崩れた恐ろしい表情に変えて、神崎さんを睨めつける。
それほど落ち着いていないのだろうか。
対する神崎さんは清水さんとは正反対に、顔色一つ変えることなく対戦相手の清水さんを見る。
神崎さんはプロデュエリストで数々の困難を乗り越えたってあって、いつも通りの姿だ。
私と付き合ってから一切負けたことがないって、言ってたっけ? 今の神崎さんの行動からとても信頼できる気がする。
「さぁ、デュエルと行きましょうか!!」
清水さんと神崎さん、2人はお互いにデュエルディスクにデッキを入れて、読み込ませる。
2人共、私より強いデュエリストレベルだけあって緊張感が漂う。どっちが勝ってもおかしくない。
『決闘!!』
「あはははは。あたしのターンから行かせてもらうわ。ドロー」
先行は清水さんからか。さきほどの私とデュエルしたときとは違い、デッキからカードをドローする勢いがかなり力強い。
笑い声をしながらドローする清水さんなんて見たことがない。そこにはクールな委員長というキャラの面影が全くない。
「あたしは『ナチュル・クリフ』を攻撃表示で召喚するわ」
四角い一枚岩に手足やキノコが生えた、ぬりかべのようなモンスターが現れる。
私とデュエルした『友情YU-JYO』を発動するために特化したデッキではない。これが清水さんのマイデッキか。
「そして永続魔法『強欲なかけら』を発動する。このカードは自分のドローフェイズが来るたびにカウンターが置かれていく。そして、このカードのカウンターがね、2つ以上乗ったときにこのカードを墓地に送ることでデッキからカードを2枚できるのよ」
「説明なんていいわ。さっさとしなさい」
「ちっ。カードを1枚伏せてターン終了よ」
カードの説明はいいと神崎さんに焦らせて、清水さんはさっさとターンの権利を渡す。
効果を教えることはデュエリストの義務となっているが、別にいらない人もいるのだろう。
今回のプロデュエリストの神崎さんのように、カードの効果がほとんど頭に入っている人などは特に。
「私のターン。ドロー」
神崎さんはデッキのカードを流れ作業のように引き抜く。
相変わらずドローする姿は、何度見ても毎回かっこいい。これがプロデュエリストのオーラか。
これから神崎さんはどんなプレイングをするのだろうか? 私はわくわくしながら見る。
「お前のスタンバイフェイズ時に『エンペラー・オーダー』の効果を発動!! そしてそれにチェーンして『ナチュル・ロック』を特殊召喚。このカードは罠が発動したとき、デッキの一番上を墓地に送ることで特殊召喚できる」
岩石に顔が描かれたモンスターが現れる。攻撃力は1200しかないのにどうして清水さんは相手のターンに展開を?
「私はモンスターをセット」
「この瞬間。手札の『ナチュル・コスモスビート』の効果を発動。相手が通常召喚に成功した時、このカードは特殊召喚できる!」
「……」
「そしてモンスターが召喚時に発動する効果を『エンペラー・オーダー』の効果で無効にしてドローに変換できる。『コスモス・ビート』を無効にしてカードを1枚ドローするわ」
またモンスターを相手ターンで特殊召喚すると思ったら、違ったのか。しかもそれをわざわざ無効にしてドローブーストか。中々うまいな。
おそらく『ナチュル・ロック』を立てて、相手に通常召喚を誘ったのだろうか。返しに何かをする作戦だったのだろうか。
だが、神崎さんは動じることは全くなく、行動。
神崎さんは攻めずに守りを固めただけか。 私とデュエルした時は最初からクライマックスってくらいに飛ばしているのに。
様子見が一番最善な手だったのかな?
「それだけで終わりかよ。全然かっこよくないねーー」
「勝手に言えばいいわ」
「だったらあたしの責めを見せてあげる。あたしのターン。ドロー!!」
清水さんへのターンへと戻り、デッキのカードをめくる。
「このとき、『強欲なかけら』にカウンターが置かれるわ。そしてバトルフェイズ!! 『ロック』で裏モンスターを蹴散らしてやりなさい!!」
『ロック』がドスドスと音を立てながら攻撃対象の裏側のカードまで、移動して押しつぶそうとする。
そしてセットされたモンスターが表となった。
「この瞬間、戦闘破壊されるときに表になった効果が発動する。『ライトロード・ハンター ライコウ』」
「『ライコウ』…?」
表となったのは白い制服を着た犬。神崎さんが操るこのモンスターはエリートっぽい番犬のイメージだ。
リバース時にフィールドの好きなカードを1枚だけ好きに破壊できる万能モンスター。神崎さんはこの状況時には何を破壊するのか?
「そうねーー。あとあと邪魔になりそうな『クリフ』を選択しましょうか。そして『ライコウ』のもう1つの効果でデッキよりカードを3枚墓地に送るわ」
『ライコウ』が天上に向かって大きく吠えると小さな稲妻が発生して『クリフ』に降らせる。
そして『クリフ』は破壊された。
「『ナチュル・クリフ』。このカードにはリクルート効果がある。戦闘、破壊効果問わず、破壊された時、デッキから他のナチュルを持ってくる効果が。あとあと処理に困るからね。先に破壊指せてもらったわ」
「ちっ。プロの名は伊達ではないわね。そこらへんの雑魚デュエリストとは違って戦いがいがあるわ。おもしろい」
『クリフ』の破壊された時にリクルート効果が発動しなかったのに2人は動じることがない。
『ライコウ』により破壊したあとに墓地肥やしの処理が行われた。
『クリフ』の効果は任意効果、つまりこうすることで『クリフ』の効果を発動するタイミングを逃したのさ。
お互いにそれを気にしないでデュエルを続けているってことは本人達は当たり前のように知っていたんだな。
「でもドヤ顔しているところ悪いけど、まだあたしのターンは終わらないのよね。メインフェイズ2に入る。『ロック』をリリースしてあたしは『ナチュル・バンブーシュート』をアドバンス召喚するわ」
「……! そのカードは…」
「『ライコウ』を先に処理をしておいてよかったわ。まあ、プロデュエリストのあんたなら知っているわよね。このくらい」
タケノコの姿をしたモンスターが2体現れる。かわいい顔をしてとても凶悪なモンスターってことを私は知っている。
まずいぞ…。『バンブーシュート』はナチュルと名のついたモンスターをリリースしてアドバンス召喚した場合、相手はこのカードが存在する間魔法と罠を使用できなくなるって。
委員長は安全にこれを出すためにうまくカードを使用させたのか。そしてさらに追い打ちを掛けるようにターンは続く。
「フィールド魔法『ナチュルの森』を発動させる。そしてカードを1枚セットしてターンを終了させるわ。これがあたしのナチュル軸のロックデッキ」
風紀委員室がコミカルな森へと変わる。森は静かなイメージを連想させる。
神崎
LP:4000
手札:5枚→6
場 :モンスター
なし
魔法・罠
なし
委員長
LP:4000
手札:1枚(ナチュル・コスモスビート)
場 :モンスター
ナチュル・バンブーシュート
魔法・罠
ナチュルの森
エンペラー・オーダー
強欲なかけら(カウンター1)
伏せ1枚
『バンブーシュート』のおかげでゲームの中心となるであろう魔法と罠が封じられているため、神崎さんはきつい展開を強いられるはず。
でも、確かライトロードデッキってモンスターのパワーで勝つデッキだからそこまで痛手ではないと思うが…。これからどう攻めるか?
『ナチュルの森』はカウンター罠が発動するたびにナチュルをサーチできる効果を持っているってことで推理するけど、
おそらく清水さんのそのトラップカードはモンスターを守るカードだと思う。モンスターにも抜け目がないってわけか。
「私のターンね。私は『ライトロード・パラディン ジェイン』を攻撃表示で召喚する」
「この瞬間。手札の『ナチュル・コスモスビート』の効果を発動。相手が通常召喚に成功した時、このカードは特殊召喚できる!」
「……」
「そしてモンスターが召喚時に発動する効果を『エンペラー・オーダー』の効果で無効にしてドローに変換できる。『コスモス・ビート』を無効にしてカードを1枚ドローするわ」
魔法を封じられる以上、モンスターに頼らずをえない。ドロー効果はやはり強いな。
さらなる見えないプレッシャーを神崎さんに与えるつもりか。
「バトル! 『ジェイン』で『バンブーシュート』を攻撃!」
「しまった! 『ジェイン』を対処する方法はなかったわ!!」
神崎さんが出した『ジェイン』は攻撃宣言時に攻撃力を300ポイントアップする効果がある。
それなのにせっかく出した『バンブーシュート』を防ぐ手段がない? 清水さんのその伏せカードは何も意味を持たないカードなのか?
委員長 LP4000→3900
「メインフェイズ2に入る。『ソーラー・エクスチェンジ』を発動。手札の『ライトロード・スピリット シャイア』を墓地に送りデッキからカードを2枚ドロー。そしてデッキからカードを2枚墓地に送る」
『バンブーシュート』がいなくなったことで魔法が使えるようになったことで手札を調整している神崎さん。
『ソーラー・エクスチェンジ』は単なる手札交換ではない。墓地を増やすことで切り札でもある『裁きの龍』を特殊召喚する条件を満たすカードでもある。
「そして『死者蘇生』の効果で『ライトロード・サモナー ルミナス』を特殊召喚! 効果で手札のモンスターを捨て『ライトロード・マジシャン ライラ』を特殊召喚するけど?」
「させないわ。手札の『ナチュル・フライトフライ』を墓地に送って『天罰』! それを無効にして破壊!!」
「『天罰』は今しか打てなかったみたいね。『バンブーシュート』を守るのに使えなかった理由。『ジェイン』の攻撃力を上げる効果は永続効果。永続を無効できないってことは『天罰』は手札交換をかねて今使うしかないってことか」
「『ナチュルの森』の効果によって私は『ナチュル・レディバグ』を手札に加える」
私でも『ジェイン』が永続効果なのがわからなかった。ルールの裏を付いた闘い方とか普通では考えられない。…。すごい。
「なかなかやるじゃないか。今まであたしとデュエルしてきた雑魚どもは『バンブーシュート』出すだけで弱音吐いてすぐサレンダーするカスしかいなかったのに。これこそやりがいがあるわ」
「褒めてくれて結構。これでターンエンド。エンドフェイズ時にデッキからカードを2枚墓地に送るわ」
エンドフェイズ時に『ジェイン』の効果でもデッキから墓地を肥やす。これでターンを終了させた。
「あたしのターン。ドロー。この瞬間。『強欲なかけら』のカウンターが2つになる。そしてカウンターが2つに乗ったこのカードを墓地に送ることでデッキからカードを2枚ドローできるわ」
神崎さんのターンでは清水さんの手札1枚だったのに、ここにきて一気に手札が5枚へとなった。
清水さんのデッキはトリッキーでやりにくそうだ。神崎さんのパワータイプのデッキとはまた違うな。
「そして『死者蘇生』!! 墓地の『フライトフライ』を蘇生させる」
頭部にはプルーン、胸部にはブドウ、腹部にはイチゴとカラフルな色をしたハエ型のモンスターが蘇る。
前のターンで『天罰』で捨てたカード。攻撃力は800しかないのにどうしてこのカードを?
「特殊召喚後に『地獄の暴走召喚』。攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚したときに発動できるカード。あたしは特殊召喚した同盟モンスターを可能な限り特殊召喚。お前は好きなフィールドにいる同盟モンスターを特殊召喚できる。選べ!!」
「まあ、私には『ジェイン』しかいないんだけどね」
清水さんの場にはハエのモンスターが3体へと変わり、神崎さんの場には聖なる剣を持った騎士2体が特殊召喚されていく。
神崎さんの2体しか特殊召喚しなかったのはもともとデッキに2枚しか入れていなかったからだろうか。
「だけど攻撃力800のモンスター2体を特殊召喚してどうするつもりなの?」
「あんたもわかっているんでしょ。このモンスターの恐ろしさを。このカードが場にいるときね。自分の場のナチュルの数掛ける300ポイント相手の場のモンスターの攻撃力と守備力が下がる。『フライトフライ』が3体いることで900ポイント。しかもこのカードは重複するから2700ポイントも下がるのよ」
「くっ」
ハエのモンスターが超音波を発生させると、白騎士は持っていた剣を落とし、膝を地面につける。
これで2体いる『ジェイン』の攻撃力と守備が0になってしまった。
「さらに、『フライトフライ』はもう1つの効果があるのよ。相手フィールド上の守備力が0のモンスターのコントロールをこのターンのエンドフェイズまで奪う効果が」
『フライトフライ』は先ほどと違う音の超音波を放つと、『ジェイン』が清水さんの場にへと移動する。
『ジェイン』は清水さんのほうへと移動すると礼儀正しくお辞儀をした。
「あんたって重装備していてわかりずらいけど、男なのそれとも女なの? ほんとソリッドビジョンのくせに性別わかりにくいわね。男だったらあたしの前からさっさと消えて」
『ジェイン』は清水さんに手をさしのばそうとしたが、それを拒否するように避ける。
清水さんは男嫌いの性格から相変わらず嫌っているようだ。それもソリッドビジョンであるモンスターにも変わりがないようだ。
「まあ、いいわ。どっちにしろあのブスの場はがら空き。全員でダイレクトアタックすれば勝ちなんだから」
『フライトフライ』3体と『ジェイン』2体が神崎さんに攻撃を一斉に仕掛ける。合計攻撃力6000。
私は神崎さんの負ける瞬間を見たくないあまり目を瞑る。神崎さんの伏せてあるセットカードは前から発動していないカード。これで終わりだと思った。
「馬鹿な!! ライフポイントが1も削れてない」
「『速攻のかかし』。これで防いで置いたわよ」
手札のカードを見せる。このカードは確か、直接攻撃時に手札から捨てることでバトルフェイズを強制終了するカード。
「ゴキブリ並みにしぶといわね。あんた」
「こんなところで負けるわけないわ。ユウヤの憧れな存在である私が」
「これでターンエンド。『ジェイン』の効果でデッキから4枚墓地に送る。『ジェイン』を処理する方法がないからこのターンのエンドフェイズにお前の場に戻る。さっさとあたしの前から離れろ気持ち悪い男!!」
男嫌いの清水さんはたとえ男モンスターである『ジェイン』を避けるようにシッシと手で降る。
ここまではほぼ互角か。デュエルモンスターズは序盤にたとえライフが減らなくても、一気にライフがなくなることもある。
このデュエルの流れからどっちが勝ってもおかしくはない。
神崎
LP:4000
手札:3枚→4
場 :モンスター
ライトロード・パラディン ジェイン×2
魔法・罠
なし
委員長
LP:3900
手札:3枚(ナチュル・コスモスビート、ナチュル・レディバグ)
場 :モンスター
ナチュル・フライトフライ×3
魔法・罠
ナチュルの森
エンペラー・オーダー
「私のターンドロー。『強欲な壺』発動。2枚ドロー」
このタイミングで禁止カードはなかなかおいしい気がする。これで神崎さんの手札のカードが5枚。
「私はフィールドの『ジェイン』を1体リリースして『ライトロード・エンジェル ケルビム』をアドバンス召喚。このカードがライトロードをリリースしてアドバンス召喚に成功したときにデッキからカードを4枚墓地に送り……」
光のワッカを頭に乗せている女の天使が神崎さんの場に登場。
「そうわさせないわ。『エンペラー・オーダー』の効果でその効果を無効にするわ。さらにそれにチェーンして手札の『コスモスビート』の特殊召喚効果。そしてそれも『エンペラー・オーダー』で無効」
「…?」
「そして相手のカード効果を無効にしたことで『ナチュルの森』で『ナチュル・マロン』を手札に加えるわ」
チェーン1『ケルビム』チェーン2『オーダー』チェーン3『コスモスビート』チェーン4『オーダー』と組まれていく。
チェーンの結果でお互いの召喚、特殊召喚の効果は無効になって互いにデッキからカードを1枚ドローする効果へと変わった。
そして神崎さんはその処理のあと4枚のカードを清水さんにかざす。
『ライトロード・ビースト ウォルフ』『ネクロ・ガードナー』『ライトロード・バリア』『裁きの龍』の4枚。
「デッキの墓地送り効果はコストだから無効にしても遅れるってか。それにしてもインチキくさいデッキの落ち方ね。まあ切り札の『裁きの龍』が落ちたのは安心したけど」
「『ウォルフ』がデッキに墓地に送られたことにより墓地から特殊召喚。そして『ライトロード・レイピア』を『ケルビム』に装備。攻撃力700ポイントアップ」
「だけど攻撃力はたった300しかないじゃない。そんなの雑魚モンスターで何ができるっていうの?」
白の制服を着た獣が現れ、白いレイピアを天使に装備して攻撃体制に入ったと思ったけど、これだけ展開しても『フライトフライ』の効果で攻撃力は下げられている。
『ケルビム』の攻撃力は3000になるはずなのだが、2700下げられていることで攻撃力はたった300しかない。
「こうすればいいのよ。私は手札から『月の書』を発動。フィールド上のモンスターを1体を裏守備に変更。これで『フライトフライ』を裏にしちゃえば攻撃力ダウンが1200だけでおさまるわ」
「ぐっ!!」
3体いたハエのモンスターのうち一体がデュエルモンスターズのカードを表す裏へと変わっていく。
こうすることで『ケルビム』の攻撃力は1800。『フライトフライ』の800を超えることが可能になった。
「『ケルビム』で『フライトフライ』に攻撃よ!!」
『ケルビム』は持っている杖からビームを発射させて『フライトフライ』を倒す。
委員長 LP3900→2900
「これで攻撃力ダウンは300でおさまったわね。『ウォルフ』で2体目の『フライトフライ』にアタック!!」
委員長 LP2900→1600
「最後に裏になっている『フライトフライ』を『ジェイン』で攻撃しなさい!!」
3体の白制服軍団達によるモンスターの連携で次々とハエのモンスターをたたく姿は相変わらず華麗である。
これで問題だった清水さんのロックを崩すことができた。
これなら神崎さんは……。
「カードを1枚セットしてターンエンド宣言するわ」
「やるじゃないか。次はあたしのターン。ドローー!! 『ブラック・ホール』を発動!!」
「『ブラック・ホール』?」
清水さんが魔法カードを発動すると、中央に大きな黒い空間が現れて神崎さんの白のライトロード軍団が吸い込まれていく。
これでフィールド上のモンスターをすべて一掃されてしまった。安心していたフィールドを排除するような使い方だったので絶望的だ。
「さて、残りのあんたのライフ4000を削る作業に移るとするわ。『ナチュル・マロン』を攻撃表示で召喚! 」
今度は栗の形をしたモンスター? 攻撃力は1200。
「『マロン』は召喚時にモンスターを墓地に送ることができる効果がある。でもそれは必要ない! 『オーダー』の効果で無効にしてドロー効果へ。そしてチェーン3時に『サモン・チェーン』。このターン3回の通常召喚を可能にするわ」
「やっかいなカードだ。先に『エンペラー・オーダー』を破壊しておくべきだったかしら?」
「放置しておいてもう遅いんだよ。そして『マロン』は墓地のナチュルを2枚デッキ戻すことでデッキからカードをドローできる! 『クリフ』と『バンブーシュート』をデッキへ!」
『オーダー』をさっきから委員長はいろんな使い方をしてドローをしまくっている。清水さんの言うとおりで破壊しないで放置したおかげで手札アドバンテージを大量に稼がれてしまった。
手札は『サモン・チェ-ン』を使ってもまだ5枚。通常召喚件が2回使えるとなると神崎さんは絶望的だ。
「そしてナチュルと名のついた効果を発動したターン。このカードは特殊召喚できる。『ナチュル・ハイドランジー』を特殊召喚!そして『ナチュル・コスモスビート』『ナチュル・レディバグ』を通常召喚!! そして『おろかな埋葬』発動。デッキから『グローアップ・バルブ』を墓地に送る。そしてデッキの一番上を墓地に送ることで『バルブ』を守備で特殊召喚する!!」
「一気にうじゃうじゃと出てきたわね」
アジサイの花、テントウムシ、桜の花のモンスターを一度に大量展開。
そしてここで清水さんは禁止カードを使うのか。地面から植物の植木のモンスターが生えてくる。
あれこれとやっている内にモンスターがいっぱい並んだ……。チューナーと非チューナーが並んだってことは…?
「シンクロ召喚する前に発動しましょうか。『貪欲な壺』!! 墓地のカードを5枚デッキに戻して2枚ドロー」
「…っ!?」
ここで最悪なタイミングでドロー補充をされてしまう。1枚になった手札が再び2枚になる。
「その前に私は墓地の『ネクロ・ガードナー』の効果を2枚発動させるわ」
ここで温存していたカードが発動される。
神崎さんのこのタイミングの『ネクロ・ガードナー』はどういう意味なんだろう? フリーチェーンとはいえどうして?
プロデュエリストだからプレイングミスはないと私は思ったが?
「ちっ。バトルフェイズ。『コスモスビート』、『レディバグ』でダイレクトアタック!!」
「この攻撃は先に発動していた『ネクロ・ガードナー』の効果でシャットダウンされる」
よくわからないが、神崎さんの行為に清水さんは舌打ちをした。
だが、攻撃は問題ないのだろう。
弱小モンスターの攻撃が自動的に幻影の剣士が受け流す。先出ししてしまったことで攻撃力が高いモンスターを無効にできないのにどうしてこんなことをしてしまったのだろうか。
「ようやく攻撃が通るわね。『ハイドランジー』、『マロン』。ブスにダイレクトアタックしなさい!!」
「きゃっ」
神崎 LP4000→900
神崎さんが今日初めて女の子の悲鳴をあげる。この悲鳴は追い込まれていると表す物だと私は教えられる。
あれだけ男に対しても強気に見せる神崎さんがここまで追い込まれているんだから、ピンチなんだろう。
「メインフェイズ2に入るわ。レベル5の『ハイドランジー』レベル1の『レディバグ』にレベル1の『バルブ』をチューニング!! ナチュルを象徴する岩の化身よ。奴を敗北を与えるために姿を現せ。シンクロ召喚。『ナチュル・ランドオルス』!! 」
強大な大きさの岩石が緑を纏ったモンスターが出現。その迫力から神崎さんは圧迫させられる。
「ナチュルと名のつくシンクロモンスターが特殊召喚に成功したことにより、『ナチュル・レディバグ』を墓地から守備表示で特殊召喚することができるけど、発動しないわ。そしてレベル3の『マロン』とレベル2の『コスモスビート』をチューニング! ナチュルの森の奥へ住む獣の王よ。勝利のために姿を現せシンクロ召喚。『ナチュル・ビースト』!! プロデュエリストのあんたなら知っているわよね。このカードの恐ろしさを」
緑色の毛並みを放ったモンスターが召喚時の台詞と共に現れたモンスターが雄たけびを上げる。このカードは確か強力なモンスターだったはず。
フィールドに存在する限り、デッキのカードを2枚墓地に送るだけで任意に魔法カードを封じるという効果が。
「さらに永続魔法『強者の苦痛』を発動するわ!! これでおまえのモンスターの攻撃力はレベル×100倍下がるわ。これでターンエンド」
ここにきて清水さんのフィールドをさらに固めるべくさらなるカードを発動されてしまった。これで再び凶悪なロックをさせられてしまう。
場を一気に形成逆転することができた清水さんは自信気な表情へとなる。
「やはりあんたは『ナチュル・ランドオロス』のシンクロ召喚を狙ってきたか。先に『ネクロ・ガードナー』の効果を使って正解だったみたいね。どうやら『貪欲な壺』の効果でドローしたカードは2枚とも魔法みたいだし」
『ナチュル・ランドオロス』はモンスター効果が発動したときに、手札の魔法カードを捨てることでその効果を無効にして破壊することができる効果を持つ。
清水さんの残りの手札1枚は伏せなかったことから『ランドオロス』の効果を発動するためにコストにする予定である魔法カードの予感がする。
と、なると無効されるシンクロ召喚前に『ネクロ・ガードナー』を2枚使った神崎さんのプレイングは正しいと言えるだろう。
「まあ、あんたのプレイングミスの隙を見てこんなおもいきったことをしたんだけどね。あんたが『バルブ』を攻撃表示で特殊召喚してたら私は負けていたんだけどね」
そこまで考えてこのプレイングをしたのか? 相手のカードを知り尽くさないとこんなプレイングは思いつかないだろう。
強敵と何度も戦っているプロデュエリストだけあってレベルが高い。
「あははは。あたしがプレイングミスっていってるけどこんな状況でよく言ってられるわよね。『苦痛』で攻撃力を下げ、魔法、モンスター効果を封じってやったこの状況でよ。それにわざわざ『裁きの龍』の効果発動できるライフ1000より下にまで下げてやったんだ。あんたの逆転する余地はない」
「いいえ。そのプレイングミスがあんたの死の引き金になるわよ。」
「やってみろよ。この状況で!! そんなのできるわけないじゃない。こんなにカードを封じ込められたこの状況でよ!!」
「私のターン!!!」
神崎
LP:900
手札:2枚→3
場 :モンスター
なし
魔法・罠
伏せ1枚
委員長
LP:1600
手札:1枚(魔法?)
場 :モンスター
ナチュル・ビースト
ナチュル・ランドオロス
魔法・罠
ナチュルの森
強者の苦痛
エンペラー・オーダー
カードの発動を制限されていては攻める手段に掛ける。
それがプロであろうとデュエルキングであろうとも不可能に近い。
それなのにどうして神崎さんはいつも通り何事もないように冷静なんだ? まだ私を助けるためにあきらめてないっていうのか?
「ファイナルターン!!」
「はぁ!?」
ファイナルターン宣言?
このターンで決めると言っているのよね。ここまで追い込められてこの状況でそんなことってできるのか?
「ついにピンチのこの状況になってついに頭が狂っちゃったか。できそうにもないこの状況でかっこつけてもこの布陣を突破することなんて誰にもできないわ」
追い込まれたこの状況で清水さんが笑う。
軽蔑され、けなされたとしても神崎さんの意思は崩れる気配はない。表情はとても真剣だ。
「このターンで終わらせる。私の意思は絶対に崩れることはないわ。だって私の好きな人がとられるなんて考えられないわ」
やはりぶれることがない言葉が力強い。私と同じ女ながら相変わらずかっこいい。思わず惚れてしまいそうになったが、いつも通り我に返る。
「あはは。だから奈々川さんはあたしの物って何度もいってんじゃん。あたしは今は奈々川さんしか見えない。お前みたいなブスに奪われるなんて考えられないわ」
「いいや。私の物なんだけど。黙ってくれる?」
神崎さんのぶれることのない、意思におびえているのか今まで大人しくて綺麗だった黒髪美人の表情が崩れる。
そして必至で狙おうとしている乱れた顔を向けて私に向ける。相変わらずとても怖い。
「あたしは今までメガネブスだとか、キモイだとか、臭いだとか、屑女だとか言われてさんざんいろんな奴に馬鹿にされた!! 勉強もデュエルもできないしあたしは自殺しようか考えたことがある」
崩れた顔に変えながら清水さんは話し続ける。悪口ひとつひとつの言葉が重く感じる。
「みんなあたしを嫌っているんだって思った。でも奈々川さんは違った。ダメ人間であったあたしにも声をかけてくれた。顔色一つ変えることなくいつものニコニコっとした表情であたしに話かけてくれた。奈々川さんだけは違ったのよ」
「へーー。それであんたの詰まらない話の続きはどうなるわけ?」
神崎さんは清水さんを煽るように口だしをする。その神崎さんの言葉を聞いてさらに清水さんの言葉は強くなる。
「なんの努力もなしにプロデュエリストやっているあんたにはあたしの苦労はわからないわよ!! そこからあたしは恋をした。奈々川さんに話かけてもらった日からあたしは変わりたいと決意した。あたしも奈々川さんに認められるように努力した。髪の毛だって冴えない自分を変えるために伸ばしたし、勉強も徹夜でした。デュエルもほぼ毎日特訓した。運動だって毎日2時間欠かさず続けた」
「ふーん。それで?」
「奈々川さんのおかげであたしは変わることができたわ。今では黒髪美人の学年2位の委員長っていう素敵な肩書きをゲットしたんだから。馬鹿みたいにそんな風に言われる毎日」
「よかったじゃない。これでハッピーエンドじゃないの?」
「これで幸せなんかありえないわ! あたしは奈々川さんのことがずっと好きで今まで生きてきたのに、それなのにどうして……。どうしてお前みたいなブスなんかと……!!」
「だから私のことをブスっていうのはやめてくれる?」
「ほんと、世界っておかしいわよね。今まであたしのことを悪口言ってきた男どもは、あたしが変わると同時にすぐに好きだとか、やらせろとか、言うんだからさ……。今まであたしのこと興味なかったはずなのにさ。おかしいわよね。そして強者になってみてようやくわかったわよ。この世は狂っているって」
清水さんの目が私と会話したときの優しそうだった時を思い出せないくらいに変化してきている。
今まで私の為に今まで清水さんは生きてきたっていうのか? 女の子が女の子に恋をするって私にはよくわからないけど、清水さんの表情を見るからとても本気のように見える。
清水さんの学生時代は全くわからなかったけど、それほど追い込まれていたんだ。普通の考えが狂うくらいに。気持ち悪いけど女の私に恋をして、ここまで変わってしまうなんて。
可哀そうな清水さんとは反対に、デュエルの優位を持っている神崎さんは冷静に言葉を放った。
「いいや。あんたのほうがよほど狂っているね。可愛そうな子猫ちゃん」
「……っ!? どこが狂っているのよ?」
「私だってこの世界がいやで挫折しそうになったことがいくらでもあったわ。でもいくらでも自分の意思で変われた。だからこそ今の私がいる。変われたおかげでこんなに強くなれた。おかげでユウヤの憧れの存在になれた」
「あははは。誰もお前の自慢話を聞いてないわよ。…あんたって処女でしょ。奈々川さんから聞いたわ。エッチはまだしもキスすらまだって。だからとられまいと必至なんだ」
「それはあんたも同じでしょ。まあ、それらは私とユウヤの関係が複雑になってからだし……」
清水さんと神崎さんの2人の口喧嘩がヒートアップしているけど、女の私を狙っている2人の話はとても嫌な言葉だ。女の子2人が女の子を求めて喧嘩するって、普通の人生では一生ないものだろう。
だけど、神崎さんのほうが説得力がある気がする。落ち着いた恋愛の考えは私でも納得できるものだ。実際私と付き合ってみて私でも深く考えられることは何度も経験した。
だからこそ、私は神崎さんが心の中だけど応援する。
「今から私の愛の力を見せてあげるわ」
「やれるもんならやってみなさいよ」
「私は墓地の光と闇を除外して『カオス・ソーサラー』を特殊召喚する。効果で『ランドオロス』を除外!!」
「そうはさせない。手札の『パルキオンのうろこ』を捨てそれを無効にして破壊させる! そして無効に成功したことにより『ナチュルの森』で『ナチュル・モスキート』を手札に加える」
黒の魔術師が現れ、光と黒の波動を相手のモンスターに向けて打ち消そうとするが、『ランドオロス』が咆哮を浴びせると、上から岩が降り注いで効果を打ち消した。
これで清水さんの手札がなくなったことで『ランドオロス』の効果は使えないが、神崎さんの手札は残り2枚となってしまった。
モンスター効果は使えるが、魔法も使えないこの状況、どちらにしろ絶望である。
「『光の援軍』を発動」
「ついに馬鹿になっちゃった?。魔法は使えないって散々言ったじゃない。これが追い込まれた人間のやけくそのプレイングか。『ナチュビ』でそれを無効。そしてまた『ナチュルの森』の効果により『ナチュル・フライトフライ』を手札に加える」
『ナチュビ』の咆哮が魔法カードを打ち消す。神崎さんは冷静に魔法カードをデュエルディスクに入れたが、無意味だったようだ。
これで残る手札は1枚となってしまった。また清水さんは手札を補充されてしまう。アドバンテージの差はさらに開くばかり。
「『ライトロード・ビースト ウォルフ』がデッキから墓地へ送られたことにより特殊召喚する」
「どうして?」
からっぽだった神崎さんのフィールドに獣の光の騎士が出現する。
獣の戦士は『苦痛』で弱体化しているが、凛々しい表情をしている。
「『光の援軍』は確かに無効にされた。だけど墓地へカードを3枚送るのは効果はコストなのよ」
「だからってこの3枚で『ウォルフ』が落ちたっていうの? ありえない? 運のいい豚め」
「運も相手のプレイングミスも実力のうち。それくらいわかるでしょ。それを否定するのは弱い奴の言い訳に過ぎない。プロの試合でも最後の最後の運で勝負が決まるってそんなの当たり前のことなんだから」
「で、でも無駄よ。たかが攻撃力2100。それでどうするっていうのよ!」
「私の切り札は『裁きの龍』だけだと思っているようね。でもね違う物を見せてあげる!」
清水さんがこの状況で少し同様した。神崎さんの未だに崩れる気配のない言葉や表情から私は勝利が近いと確信する。
「『ウォルフ』をリリースして『ライトロード・ドラゴン グラゴニス』をアドバンス召喚」
「えっ……!?」
神崎さんが使うモンスター。こんな切り札を隠し持っていたなんて……。
光輝く黄色の龍は大きく咆哮を上げながら登場する。その咆哮はこのデュエルの中でも一番大きい。
「このカードは墓地に存在するライトロードの種類の数×300ポイントアップするのよ。今、墓地にいるのは7種類。よって攻撃力が2100上がる。『苦痛』込みでも攻撃力は3500になるわね」
「…っ!?」
「『グラゴニス』で『ナチュビ』を攻撃!!」
「……きゃーーっ…!!」
委員長 LP1600→300
白の龍が咆哮を上げながら手足を縛られている私の耳に聞かせて、『ナチュビ』に噛み付いた。
ライフを削れれた清水さんは、神崎さんとのこのデュエルでは見せなかった弱弱しい悲鳴を上げる。
これで残りのライフは300で0になる。でもこれ以上神崎さんの場には攻撃できるモンスターがいない。神崎さんの様子を見るともうこのターン攻撃しないみたいだけど。
ではどうやって残りを?
「私はこれでターンエンド。『グラゴニス』の効果によりデッキからカードを3枚墓地に送る」
「えっ!?」
これでターンエンド宣言する神崎さんの姿を見て私は思わず言葉を出してしまった。
このままターンを渡してしまうと、返しの手札が多い清水さんのターンで、ぼこぼこに返されて敗北される気がするんだが。
期待した私は馬鹿だと思ってしまった。
「何がファイナルターンよ! 奈々川さんの前でかっこよく決まるはずだったのにライフはまだ残っているじゃない」
「………」
「あたしの場には『ランドオルス』が残っている。手札には『ナチュルの森』で加えた『モスキート』があるのよ。このカードを場に出して、効果によりナチュルと名のついたモンスターの戦闘ダメージは代わりに相手が受ける効果がある。これで自爆特攻すればあたしの勝ち。格好つけて恥をかいたのはあんただったみたいね、ほんと馬鹿みたい」
今まで以上に清水さんは笑っている。勝利を確実にものにできたような、そんな表情をしている。
だが、神崎さんは感情を一切変えることなく、
「いや。まだ私のターンはまだ続いているんだけど。勝手に終わらせないで」
「…っそんな!?」
「切り札は最後まで取っておくものよ。『閃光のイリュージョン』を発動。効果により墓地の『ライトロード・プリースト ジェニス』を特殊召喚」
温存していたカードがオープンされる。今から2ターン前に伏せた罠カードのようだ。
「これで終わりよ。『ジェニス』の効果。このターンライトロードの効果によってデッキからカードが墓地に送られた場合、相手に500ポイントのダメージを与える。そして自分は500ポイント回復する」
神崎 LP900→1400
委員長 LP300→0
僧侶が現れ、杖を振ると小さな魔法を発生させて清水さんに小さな攻撃をくらわす。この一撃はとどめを指すのには十分だった。
「さあ。子猫ちゃんの負けよ。私のユウタから離れなさい!!」
「くそっ。くそっ。くそくそくそくそくそ、クッソーーー!!!」
清水さんは負けた悔しさのあまり汚い言葉を連発する。その言葉から周りの生徒から言われているクールな委員長というのは想像できない。
「あたしは完璧だった。それなのに動揺してミスをした。どうしてこんな結末に……。奈々川さんはあたしのものになる予定だったのにどうしてこんな結末に…」
清水さんは体中を震えさせて痙攣している。そして立てなくなったのか風紀委員室の床へと沈む。
あれだけ私のことが好きだとか言われて、気持ち悪い人だと思ったが、今にも泣きだしそうな清水さんの表情を見ているとなんだか可哀そうに見えてきた。
そして捨て台詞を吐く。
「最後に教えてあげる。あなたはいつか奈々川さんの秘密を知ることになる。そしてあなたはその秘密に絶望して奈々川さんのことを嫌いになるわ。先に忠告しておくわよ」
私が女だと知る清水さんの発言は言い返せないほどあっている。
ずっと神崎さんと付き合っているからには、私がいつか女の子だっていうことがばれることになるだろう。
そうしたら男として好きになっている神崎さんの気持ちを裏切ることになる。こうなったら私はもう神崎さんとの関わりはなくなってまうんだぞ……。
こうなったら……。
「えっ!?」
「大丈夫だから。私がたとえユウヤの秘密を知ったとしても、私がユウヤが嫌いになるなんてことはないわよ」
優しく動けない私を安心させるように、体を抱きしめてくれた。神崎さんの温かい体温が私の不安を解消させてくれる。
「そんな強気なお前の言葉がいつまで続くかしら? まあ今回はあきらめてあげる。今度は必ずブスの汚い手から奪って、奈々川さんをあたしのものにしてやるんだから」
「はいはい。あと、私のことこれからブスとか言うのはやめてもらえないかしら?」
神崎さんの固い言葉はぶれないようだ。だからこそ神崎さんは信用できる。強気な性格の神崎さんは私は好きかもしれない。
「ユウヤ。ここにずっといるとおかしくなっちゃいそうだからさっさと立ち去るわよ」
「う、うん」
神崎さんは私の手足の自由を奪っていたロープを外してくれた。おかげで私は立ち上がることができた。
ずっと倒れていたので、立ち歩きにくい私を気づかってくれたのか、神崎さんは手を差し伸べてくれた。神崎さんの温かい手をつないでここから立ち去る。
世界が終ったような表情をしている清水さんを風紀委員室において。
◆◆◆
私はいつもと同じ帰り道を神崎さんの手を繋いで歩く。
清水さんに監禁されていたのが長かったのか、あたりは真っ暗になってしまった。それだけ長時間あの子の変態なことに付きまとわれていたのだろうか。
「ほんと無事よね。あの女にひどいことされてないわよね。逆レイプとかされてキスマークとかつけられてないわよね」
「だ、大丈夫だから」
私の頭や手を触り心配そうにしてくれる。私は逃げ場がないながら、懸命に抵抗したおかげで何とか変なことをされずにすんだ。
あと少し神崎さんの助けが来なかったら、女の子にエッチなことをされていたのだろうか? 考えるだけでも寒気がする。
「よかったわ。私心配したんだから。どっちがヒロインをやっているんだか……。それにしてもあんたって毎回変態な人たちに襲われるよね」
「ほんとにごめん。神崎さんありがとう……。なんとお礼を言っていいのか…」
「こういうのは女の私が襲われて、逆に助けてーって言って、あんたが助けてくれるんじゃないの?」
「強そうな神崎さんが襲われるって想像つかないな。なんだか一人で全部解決しそう」
「……。あんた勘違いしてない。私だって普通のか弱い女の子なんだよ。男の子の助けが必要なのよ」
私も男の格好をしているけど、別に強くもなんともない。私も神崎さんと同じ普通のか弱い女の子なんだけど。
「まあ、借りを作ってくれたんだ。今度は僕が必ず倍にして返すから」
この恩は感謝してもしきれない。助けてもらったんだから今度は私が神崎さんを助ける番。
いつまでも神崎さんの下にいるのは、私の尊厳がなくなってしまう。私はデュエルキングになるんだから、神崎さんに負けてられない。
「チュっ!」
「何すんだよ!!」
私に突然ほっぺたにやわらかい感覚が起こる。
「そんなわりには嫌がってないじゃん。キスされてニヤニヤしてるよ!」
「………。違うよ…」
「ふふ…。何だかんだ言って私のこと好きなんでしょ!」
否定はできない。清水さんの無理やりなキスとは違って、体は嫌だとは反応しなかった。
神崎さんの勘違いからあれほど女同士で付き合うってことは嫌がっていた感情があったのに、どうしてこうなってしまったのだろうか?
私は男になりきろうと付き合いをしてきたが、毎日彼女と接していくうちにしだいに考えが変わってしまった。
親切な気遣いな優しさに惹かれることもあって、私は安心感を与えていく。
あれほど絶対ないと思っていた女の子同士の恋愛にどうして不快ではなくなってしまったのだろうか。
いや、でも私はまだ男の情熱だとか行動力に憧れを持っている。
「もう。可愛いんだからっ!!」
私は神崎さんの腕に頭をがっちり掴まれてしまう。意識にしてないのにその行為に私は相変わらず嬉しい感性になってしまう。
「私は誰よりもあなたのことを応援しているんだからね。何か辛いことがあったら私に言ってもいいのよ」
そうだった。私は1人じゃない。こんなに応援してくれる人がいるんだ。
「帰ったらデュエルの特訓ね。面白い特訓方法を考えたんだから」
「うん」
「脱衣デュエルよ。ライフが減ってたびに服を脱いでいくの。ライフが0になったら裸になっちゃうの。私の裸を見るのは楽しみでしょ」
「ば、馬鹿。そんなの全然楽しみじゃないよ!!」
神崎さんは変態なのかギャグなのかわからない、そんなくだらない会話をして私達は帰った。