遊戯王~デュエルキングを目指す少女の物語   作:魔法使い?

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清水アイ


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※追記
清水さん眼鏡っ子キャラ設定忘れてたので眼鏡ver

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第17話 『委員長』

「お前、どうしちまったんだよ。清水さんのところに行ってくるって言ったっきりで帰ってこないなんて」

「ご、ごめん。忘れてた」

 

 清水さんの件で土、日と休みを挟んで2日がたった。

 神崎さんと清水さんの修羅場があったものの、それを忘れるくらいに今日も何も変わらない平凡な一日。

 あれから清水さんは私の目の前に現れることはない。神崎さんのデュエルで無様にも負けたからだろうか?

 あんなことがあったから清水さんは私に会えずらいだろうな。私に好き放題しようと企んで、その計画が失敗したのだから。恐怖はもうこりごりだ。

 

 

 清水さんは、この学年生活でゆいつ私が男装をしていたことを知っていた。

 だから弱みを握って私のことを襲ってきたのだろう。それをつけいって私と同姓愛を狙おうとされてしまったのだ。

 委員長のたくらみは神崎さんの怒りにより失敗したものの、私は神崎さんに性をうまくばれないように結構ギリギリだった。

 

 たぶんだけど、ユウヤのキャラは予想以上に女受けがいいから、今回だけとは限らず委員長のように、ほかの女の子も警戒しないと。

 入学当初は男子ばっかり警戒してたけど女子も危険だな。

 って。あんな派手なことをしようとするのは清水さんしかいないか? あんな変態なことするのは。

 外見は男でも私の中身は弱弱しい女。再び弱音を握られて何をされるのかわからない。

 もし今度私が違う人に私が女だと知られてしまったら、うまく隠し通すことはできるのだろうか…。

 

 

 

 その話は置いといて、高校生活の青春と言うべきもの?

 私と宮城は放課後、教室で昨日のことで会話をしている。宮城に頼ごとをされていたが、完全に忘れてたよ……。

 

「ほんと忘れるなんてどうかしてるよ。あれから俺は2時間もお前の帰りを待っていたんだぜ」

「急に僕の彼女が出てきてさ、いきなり一緒に帰ろて言われちゃってさ。断っても無理やり連れて行かれてしまったんだ。ほんとにごめん」

「また神崎が登場したのか。ほんといきなり出てきて来るよな。お前の彼女。羨ましいぜ。いつもラブラブで…」

 

 もちろんとっさに考えた適当な嘘で宮城をごまかす。宮城は大きな感情変化をせずに会話を続ける。声はとても弱弱しいものだった。

 

「まあ、しょうがないよな……。こんな何もない平凡なデュエリストの俺が、学年2位のスーパーエリートの清水さんと付き合うなんてありえないもんな……。きっと振られたに違いないよ……」

「………」

 

 宮城は振られたと思い込んでとても落ち込んでいる。私にはその結果が分かるからこそ、宮城のことが可哀そうでしかたがない目で見るしかなかった。

 

 言えるはずもない。

 学年2位の委員長で、誰もが憧れる存在でもある清水さんは実は、男が死ぬほど嫌っているということ。

 そして私のことを女だと知っていて、私のことが好きで好きでたまらない変態だったっていうことを。

 こんな変わった好みの女の子である清水さんと知ってしまったら、宮城は余計ショックだろうな……。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 私はゆっくりと廊下を歩いていた。テストが終わったばかりでうちの学校の部活は今日も休み。

 いつもなら下校時間になったら神崎さんと一緒に帰ろうと下駄箱の前で待ち合わせをしているのだが、今日はプロデュエリストの仕事が忙しいから先に帰ったようだ。

 ほんと、あの子ってすごいよな。学業と仕事を両立しているんだから。

 本当は忙しいはずなのに、神崎さんは辛さを見せずに楽しそうにいつも私の彼女として接してくれる。

 何事もないように、私といるときの優しい彼女の表情はいつも助かる。私が知らないデュエルも勉強も教えてくれるし。

 私もデュエルキングになるためにデュエルを頑張らないとな。彼女に負けないくらいに強く。

 

 

『またてめぇかよ。わざわざ来んなよ!!! おんなぁああ!!!』

 

 

 歩いていると近くから厳つい声が聞こえた。男の声だ。

 大きな声で怒鳴っていたので私は気になって足の動きを止める。

 

『あんた達よね! アンティルールでカードをカツアゲしている集団は』

 

 凛々しい女性の声が聞こえた。

 その声の場所は近くの教室の中だとわかったので、声の主達に気が付かれない位置で私は隠れる。一体何をやっているのだろうか。

 

『校則違反だって前に言ったでしょ。アンティルールの行為は学生同士ではやってはいけないって?』

『はぁ? そんなの勝手だろ!!! 強いデュエリストが弱いデュエリストを食らう。そんなのって当たり前の世の中じゃねぇかよ。やってて何が悪い?』

『はぁ……』

 

 影からため息の女の子の姿が見えた。力強い存在感を発しながら、黒の長い後ろ髪を垂らしている女の子の姿で誰だかわかった。

 私を散々襲おうと企んでいた清水さんの姿だ。その近くにアフロの男と坊主の男の姿も見える。

 アンティとはデュエリストが大事にしているカードを掛けてデュエルをすること。一般では禁止されている行為なのでもちろん、学校でも強く禁止されている。

 どうやら清水さんと不良達はもめているようだ。そのアンティのことについて。

 

『なんでやっちゃいけないんだぁ? 昔はやってたっていうじゃんかよ』

『生徒手帳の後ろから数えて2ページ目に書いてあるのがわからないの? 校則違反だって。あんた達がやっている行為は停学どころじゃすまないのよ』

 

 清水さんの顔写真が書いてある生徒手帳を不良達に見せて、委員長らしく正義感溢れる行為をする。

 だが、不良達は動じることなく。

 

『停学だーーー? 2年生の上から数えて3番目にデュエルが強い、このオレ様がそんな処分されるわけねぇだろ』

『奪ったカードを返しなさい? 今だったら反省を見せるだけで、処分されるところを大目に見てあげてもいいのよ。だけど、あんた達はこれまでの罪を償ってもらうけどねね』

『そんなことやんねぇよ。ばーーーか!!!』

 

 坊主の男は2年生だったのか。顔中喧嘩の後なのかわからないが傷だらけ。

 体が大柄でたとえるとアメフトの選手並みにいい体をしている厳つい男に絡まれているのに、清水さんは冷静。

 私も同じ不良のカイザーに絡まれたときは、とっても怖かったのに……。我慢しているわけじゃないよね?

 

『だったら、あんたが得意なデュエルとやらであたしとデュエルしなさい。あんたが勝ったら好きにしていいから』

『きゃはははは。このオレ様とデュエルか!! だったらアンティルールをやろうな。てめぇのデッキを掛けるってな』

『2年生の、堀内、中里と続けて強い北村先輩が負けるわけねぇっすよ。こんな女に』

 

 アフロの男に北村と呼ばれた不良のボスっぽい男は存在から、とても強い存在と私でもわかる。

 私のデュエル部の強敵でもある堀内先輩、カイザーに続いて強いとなると、相当デュエルの腕はすごいのではないか?

 清水さんは私と同じ学年2位の成績だけど、あの不良に勝てるのか? こっちのほうが順位が高いといっても相手は年上の2年生だ。

 

『そんなに強気だったらもっと賭け事の内容を決めてもいいよなぁ!! 委員長さんよーーー!!』

 

 北村という人はゆっくりとした口調で言った。

 

『ええ。勝手にすれば?』

『勝手にだって。でゅふふふ。北村さんひどいことしてくださいよ!!』

『ああ。もちろんそうするつもりだ。こいつ、この性格からして男いなさそうだよな。オレ様を怒らせた鬱憤を晴らしてやんないとな。女は男の道具だっていうことを思う存分に教えてやるよ』

『…………』

『何するつもりなんですか? 北村さん?』

『この女を顔面が変形するまで殴り続けてしてやるさ。地面にねじ伏せたこの女を裸にして、きったねぇ床をなめさせてやる。この女のプライドをボロボロにしてやるよ。肉体と精神を砕いてやるから』

『おもしれぇ!! 流石北村さんだ!!!』

『………』

 

 デュエルの罰にひどいことを企むアフロと坊主の会話に、清水さんは恐怖にも動じることはない。

 清水さんは男嫌いって言っていた。もし負けるとなると、あの不良にやられることが恐怖でたまらないはずだ。

 今の刺激で倒れてもおかしくないくらいなのに……。女の私から見ても、恐ろしい内容。

 

『だったら、あなた達がデュエルに負けたらあたしも好きにしていいんだな!!!』

 

 迫力あるスピードで清水さんは言った。見ている私でもわかるけど、不良と清水さんはこれから危ないことをするってわかる。

 

『………。なんだ。この女…!?』

『ビビッてんじゃねぇよ。アフロ…。くくく。威勢がいいとは面白い女だ。そのほうがプライドを崩すのにはやりがいがある。やれるもんならやってみな!! 恥をかくのはお前だぜ!! 委員長さん』

 

 

 清水さんと北村という不良はデュエルディスクを装着し始めてデュエルの準備を始めようとしている。

 

 ただ、呆然と隠れて見ている私は清水さんを止めないと、大変なことになるっていうのに、どうしても助けを出すことができない。

 助けにいった私も、もしかしたら負けてしまってあの不良にボコボコにされてしまうのではないかという、怖さから足が動かない。震えている。

 今私は男の格好をしているが、万が一負けてしまって女だということがばれてしまったら……。

 あの不良達に私もひどいことをされるのではないかと考えてしまって動けない。でも助けないと……。清水さんが危ない……。

 

 

 委員長 LP4000 北村 LP4000

 

 

『オレ様のターーン!! モンスターを1枚セット!! これでターンエンドぉ!!』

 

 モンスターを1枚伏せるだけでターンを渡す不良。裏側表示のモンスターは見えない分、何かわからないことプレッシャーが大だ。

 

『あたしのターン……。ドロー……。「ナチュル・アンドジョー」を通常召喚。カードを2枚セットしてターンエンド…』

 

 不良の企みを怪しむことなく、清水さんは目を瞑りドローする。あれほどのプレッシャーの中、心を落ち着かせているのだろうか。

 そして清水さんの場に一匹の蟻のモンスター。攻撃力表示で出したが400しかない。これで大丈夫なのだろうか? 2枚の伏せカードに自信があるのか?

 

 

『ひゃははは。雑魚モンスターを立てて終わりか? 次はオレ様のターン。ドロー。……いいカードを引いたぜ!! 「トーチ・ゴーレム」を特殊召喚!!!』

 

 不良が特殊召喚モンスターを出したはずなのに、清水さんの場に巨大なゴーレムが現れる。その攻撃力は3000。

 清水さんは、蔑んだような目で見ながら不良の効果解説を聞いている。

 

『「トーチ・ゴーレム」は自分の通常召喚権を拒否する代わりに特殊召喚できるカードだ。ただし相手の場に特殊召喚される。オレ様の場に攻守0のトークン2体を特殊召喚されるっていうおまけつきでなぁあ!!!』

『「アンドジョー」の効果。相手が特殊召喚に成功したとき、デッキからレベル3以下のナチュルを特殊召喚。「ナチュル・バタフライ」』

 

 不良の場に2体の小型のゴーレムトークン。

 清水さんの場に子供の絵本に出てくるような小さくて可愛らしい顔をした蝶が目の前に現れまわりを一回転すると止まる。

 

『オレ様の特殊召喚を逆手にとったとか思っちゃいねぇだろうな!!!』

『………』

『反応がない女はつまんねぇな。でもこれからひぃひぃ言わせると思うと興奮するぜ。永続魔法「魂吸収」を発動。バトルフェイズだ!!!』

 

 不良がバトルフェイズに移動した? 戦闘では全く使えないトークンモンスターだというのに?

 

『トーチトークンで「トーチ・ゴーレム」に攻撃だぜ』

『「ナチュル・バタフライ」の効果。デッキからカードを墓地に送ることで攻撃を無効にする』

『だけどもう1体のトークンが残っているぜ。残念だったな!!』

 

 小さなゴーレムが巨大なゴーレムを殴る。大きさからして絶対に勝てない相手だとわかっているのに、小さなゴーレムは大きなゴーレムに潰されて返り討ちにされる。

 

 北村 LP4000→1000

 

 

『この瞬間「ヘル・テンペスト」!! 自分が3000以上の戦闘ダメージを受けた時に発動できるカードだ!! お互いのデッキと墓地のモンスターを全てゲームから除外する!!』

『出た!! 北村さんのマジックコンボだ!!!』

『…………』

 

 デッキのモンスターカードを全部? このカードの発動条件を満たすためにわざわざ自爆を? 難しい発動条件なのに「トーチ・ゴーレム」1枚で発動条件を満たしたのか?

 不良は雑に自分のデッキのカードを抜き取り、それを清水さんに証拠としてモンスターカードを見せた後、自分のポケットにしまった。

 除外されたカードは特殊なカードの効果を使わない限り、このデュエル中には使用することはできない。どうやらその代わりとしてポケットが除外ゾーンの代わりのようだ。

 

『ボーっとしてねぇで、てめぇもさっさとデッキのカードを除外しろよ』

『………』

 

 清水さんは凶悪なコンボをされてしまったというのに、無言で喜怒哀楽を変えることはない。

 不良に言われてから、デュエルディスクにセットされた自分のデッキを抜き取る。不良とは違いとても扱うのに慣れた手つきで、高速にデッキのモンスターを抜き取る。

 そして……。

 

『……っ!?』

 

 不良はぽかっとした口を開いて唖然とした。見ている私も驚いた。

 清水さんはデッキのモンスターをすべてチェックしたと思ったら、その抜き取ったモンスターカードの束を投げたのだ。空中に。

 空中に舞ったカード達は、無様にも地面にばらまかれる。

 

『あはははは!!』

 

 清水さんの自慢の長い黒の髪の毛が、顔を隠す。首をかしげながら大きく高笑いしながら清水さんは満足気に笑っている。

 

『いかれた女だ。デュエル中にカードを投げる奴なんて初めてみたぜ。こいつは爆笑もんだ』

『ねぇ? あたしのカード拾わないの?』

『何言ってんだ? こいつ? 自分のカードだろ? てめぇが拾えよ!!』

『あははは。あんた達が勝てばこのカードはあんた達の物になるのにね。あははは』

『………』

『拾わないの? だったらカードいらないんだよね』

 

 デュエル中にカードを投げ捨てるなんて、ありえない行為をするとは不良達は思わなかったのだろう。

 多少不良達は青ざめたのか、さっきまで攻撃的だった表情が変わってしまった。

 

『むかついた。てめぇをデュエルで負けさせて、そのカードを裸で犬みたいに口で拾わせてやるよ。そしてさらに!! 「魂吸収」の効果!! カードが除外されたとき、自分のライフを除外されたカード1枚につき500ポイント回復するんだぜ』

 

 1枚につき500? 清水さんの除外されたカード20枚、北村っていう2年生の除外されたカード枚合わせて10枚。

 30枚だ。合計15000ポイントの回復。たった1000だったライフが一気に初期ライフの4倍の数値に。

 デッキのカードを減らされ、ライフにも差を付けられた清水さんは一気に不利になってしまった。

 

 北村 LP1000→16000

 

 

『そしてさらにぃー、オレ様のデッキから除外された「ネクロフェイス」の効果!! このカードが除外されたとき、互いのデッキのカードを5枚除外するんだぜ!!』

『………っ』

 

 再びデッキ破壊のカード。優位に立っている不良の男は余裕たっぷりに、デッキの上のカード5枚を数えてポケットにしまう、

 そして清水さんは再び5枚のカードを数える素振りを見せずに、ドローするようなしぐさで上のカードを吹き飛ばす。

 それはちょうど5枚のカード。もし清水さんのデッキが40枚だと仮定すると残り7枚。今気が付いたけど、相手のデッキはデッキ破壊デッキか。

 

『笑えるなーー。カードを投げるのはこええな。でも八つ当たりするのは今のうちしかできないぜ。そしてさらに「魂吸収」の効果でライフを回復!!』

 

 北村 LP16000→21000

 

 ライフがまた増えた。デッキにモンスターがいないのにこんな大幅のライフをどうやって削る気なんだ。清水さん? もしかしてそうとうピンチなのではないか?

 

『前のターンにセットされていた「ニードルワーム」を反転召喚。お前のデッキ5枚を墓地へと送る』

 

 とげとげの幼虫が表となる。清水さんは再びデッキの上を触り、5枚のカードを手に取って今回は投げるのではなくちゃんと墓地ゾーンへと送った。

 

『「月の書」発動。「ニードルワーム」を裏守備にするぜ。そしてまだ終わらねぇぜ。オレ様のデッキ破壊!! 「太陽の書」発動!! 表だ!!!』

 

 まずい。これを受けたら清水さんのデッキはゼロとなってしまう。2枚しかないデッキから5枚は削れないので0枚になるが、この時点で負けではない。

 だが、次のターン確実にやってくるドローフェイズで清水さんは、ドローができないことで敗北してしまう。私が清水さんを助けないと……。危ない目にあってしまう!!

 そう思ったら自然に足が進んだ。だが、私が助けにいかないといけないと思ったその時、清水さんの罠カードの発動で足が止まった。

 

『「無謀な欲張り」。デッキからカードを2枚ドロー……』

 

 清水さんは残りのカードの2枚の束を引いて3枚だった手札に合わせる。

 私は遠くから見ているが、これで清水さんの装着しているデュエルディスクのデッキは2枚。私の計算は合っていた。40枚ぴったりのデッキのようだった。1ターンでまさかデッキをすべて破壊するとは。

 

『自分から自分のデッキを0にするだと!!!』

『「欲張り」のデメリット。これであたしは2ターンの間ドローフェイズは行えない。あたしはドローフェイズで敗北するってことはなくなったわ!!』

 

 うまい!! これなら負けることはなくなった。

 これで「欲張り」のデメリットにより2ターンのドローフェイズがスキップされる。デッキが0だろうとこれで関係なくなった。

 

『なかなかうまいことをしたなーー。だけどよぉ。おんなーぁ。俺様のライフは20000越えだぜ。それに、てめぇのデッキは残り0枚なんだ。結局はデメリットの2ターン待てばオレ様の勝ちなんだぜ。それができるかーー。ターンエンドフェイズ時に除外されている『異次元の偵察機』を3体を特殊召喚。このカードは除外されているとき、エンドフェイズ時に特殊召喚できるんだぜ』

『……。あたしのターン……』

 

 あの不良の言う通りなのかもしれない。「ヘルテンペスト」によりデッキにカードがなくなってしまった清水さんには攻め手がない。

 顔に表情を付けずにデッキを引いた清水さん。この状況を一体どうするのだろうか。

 

 

 

 

清水

LP:4000

手札:5枚

場 :モンスター

   トーチ・ゴーレム

   ナチュル・アンドジョー

   ナチュル・バタフライ

   魔法・罠

   伏せ1枚

北村

LP:21000

手札:1枚

場 :モンスター

   トーチ・トークン

   ニードルワーム

   異次元の偵察機×3

   魔法・罠

   魂吸収

 

 

 相手の手札は使い切ったことにより、防御手段は今残っているモンスターだけ。と、なると攻めるチャンスならある。

 限られた2ターンとはいえ、もしかしたら清水さんは21000のライフを削る手段があるかもしれない。

 

『レベル2の「ナチュル・アンドジョー」にレベル3の「ナチュル・バタフライ」をチューニング。シンクロ召喚。「ナチュル・ビースト」』

『ここでシンクロ召喚か。面白いねーーー』

 

 不良に向かって緑色の獣が大きく咆哮を浴びす。同様することなく煽っているのはデュエルに余裕があるからだろうか。

 本来なら超強力効果を持つ。ナチュルビーストにはデッキのカードを上から2枚墓地へ送ることで相手の魔法カードを無効にできるが、しかしながら清水さんのデッキにはカードが0枚なので使うことはできない。

 

『『ナチュル・マロン』を通常召喚!!』

 

 清水さんがカードをプレイすると、栗の形をしたモンスターが現れる。

 

『へーーーー。「ヘルテンペスト」では手札のモンスターを除外できないのが隙になっちまったか』

『「マロン」の効果。自分の墓地にある「ナチュル」と名のついたカード2枚をデッキに戻して1枚ドローする……。「アンドジョー」と「ナチュル・スタッグ」を戻すわ』

『なにっ。さっきの「バタフライ」のデッキ墓地送り効果で落ちたカードが、たまたまモンスターだったってわけか』

『これであたしのデッキは1枚追加された。これで「欲張り」のデメリットと合わせてあたしの寿命はこのターン含めて3ターンになったわねー』

 

 清水は墓地ゾーンからシンクロ素材にした1枚のカードを空欄だったデッキゾーンに突っ込み、デュエルディスクのオートシャッフルを終えたあと、2枚のうち1枚を引く。

 これで、デッキ切れの心配はなくなったが……。

 

『「死者蘇生」。墓地の「バタフライ」を蘇生…』

『バトルフェイズと行きましょうか。「トーチ・ゴーレム」、「ナチュル・ビースト」、「ナチュル・マロン」、「ナチュル・バラフライ」。「偵察機」とトーチトークンに攻撃しなさい』

 

 大きなゴーレムが獣、雄叫びを発しながら、続けて蝶と栗型のモンスターが小型の機械3体と小さなトークンを破壊していく。

 

 北村 LP24000→19600

 

『ぐっ』

『メインフェイズ2に入るわ……。レベル3の「ナチュル・マロン」にレベル3の「ナチュル・バラフライ」をチューニング。シンクロ召喚「ナチュル・パルキオン」!!!』

 

 シンクロ召喚されたのは、東洋龍のようなドラゴンに体中が苔や鉱物が生えたモンスターが清水さんの場に。

 

『これでターンエンド』

 

 このターンで5300を削った。だが、残りライフがまだまだである。この調子で清水さんは勝てるのか…?

 遠くでデュエルを見ている私は、嫌な予感がしてたまらない。

 

『オレ様のターンぅ。ドローぉ』

 

 煽りらしいターン宣言をしながらデッキのカードをめくる不良。

 

『デッキを増やすとは驚いたが、まさか。てめぇのデッキが切れるまえに、オレ様のライフを0にしようかと、思っているんじゃねぇよなーー』

『………』

 

 清水さんは何も言わない。見ている私には本当に勝てるか怪しいと思ってしまう。こんなところで負けてしまう清水さんではないと思うが……。

 

『お前にさらに絶望を見せてやるよ。オレ様はてめぇの場に存在する「トーチ・ゴーレム」と「ナチュル・パルキオン」をリリース。「溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム」を特殊召喚するぜ』

『………』

 

 場に攻撃力が1番目と2番目に高かったドラゴンとゴーレムが消える。

 清水さんを閉じ込めるように檻に包まれ、その上に溶岩を身にまとった化け物が代わりに出現する。

 あの不良も清水さんと同じで『ヘルテンペスト』で除外範囲外の手札に最初からあったカードか…。

 

『「ナチュル・パルキオン」。墓地のカードを2枚除外するだけで、オレ様の罠カードが使えないから厄介だと思ったが、これでどうだ? オレ様はカードを1枚セット。モンスターを守備にしてしてターンエンド』

 

 1枚伏せた。トゲトゲの昆虫は残り2ターンしかない清水さんを防ぐような守りの体制へと入る。

 困っているような言い方をしたからあのカードは罠カードか……。せっかくの罠対策だったカードまでも……。

 

 

『あたしのターン…。ドローフェイズはスキップされる…』

『この瞬間。お前の場にいる「ラヴァゴーレム」の効果で1000ダメージだぜ。まあ、元々ライフを0にする気がないが、そういう効果だから受けてもらうぜ』

 

 清水さんの真上にいる溶岩の魔神のマグマが溶けだし、小さな液体が清水さんの髪の毛に掛かる。

 だが、迫力あるソリットビジョンにも清水さんはリアクションは何も反応を示さずに冷静で立っている。

 

 

清水

LP:4000→3000

手札:4枚

場 :モンスター

   溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム

   ナチュル・ビースト

   魔法・罠

   伏せ1枚

北村

LP:19600

手札:0枚

場 :モンスター

   ニードルワーム

   魔法・罠

   魂吸収

   伏せ1枚

 

 

『さぁお前のデッキはあと1枚だ、残り2ターンでオレ様にとどめをさせるかな?』

 

 残りデッキ1枚の清水さん。限られたターンで19600のライフを削れることはできるのだろうか?

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