遊戯王~デュエルキングを目指す少女の物語   作:魔法使い?

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第18話 『恋の力』

清水

LP:4000→3000

手札:4枚

場 :モンスター

   溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム

   ナチュル・ビースト

   魔法・罠

   伏せ1枚

北村

LP:19600

手札:0枚

場 :モンスター

   ニードルワーム

   魔法・罠

   魂吸収

   伏せ1枚

 

 

『「ナチュル・ビースト」をリリース。「ナチュル・スタッグ」をアドバンス召喚!!』

 

 清水さんの場に、可愛らしいタッチで描かれたクワガタモンスターがハサミをチョキチョキと動かしながら現れる。

 攻撃力はリリースに使ったナチュル・ビーストと同じ2200。

 たまたま、先ほどのターンでマロンの効果で引いたカードだろう。デッキは2枚だったので2分の1で引いたことから珍しくもない。

 

『さらに「ミラクルシンクロフュージョン」を発動する。このカードはフィールド、または墓地に存在する決められたモンスター2体を除外して融合召喚を可能にするカード。これであたしは墓地の「ナチュル・ビースト」と「ナチュル・パルキオン」を融合。現れなさい。あたしの最強の切り札!!「ナチュル・エクストリオ」!!』

『「魂吸収」の効果発動だぜ。こいつを忘れちまったってことはないだろうな? 除外されたカード1枚につきライフを500ポイント回復だ!!』

 

 北村 LP19600→20600

 

 リリースしたモンスターをコストに使ったのか。苔を身にまとったドラゴンと緑色の鱗を纏った獣が合わさったモンスターが出現。

 だが、除外したことでライフが回復されてしまう。

 

『バトルと行きましょうか。「スタッグ」!! 目障りな壁モンスターを蹴散らしなさい!!』

 

 ハサミを動かしながら、たくさんの針を纏った昆虫に襲いかかろうとする。

 だが、この攻撃を見た瞬間、不良の北村はにやりと笑い、セットされてある罠カードに手を掛けた。

 

『トラップ発動。「聖なるバリア -ミラーフォース-」!!』

 

 元祖最強カードと言ってもいいおなじみの罠カード。このタイミングで発動されるのは清水さんにとって辛い状況だ。

 

『「エクストリオ」の効果発動。墓地のカードを1枚除外、さらにデッキのカードを1枚を墓地に送り相手の魔法、罠の発動を無効にするわ!!』

 

 「エクストリオ」が発動した罠カードに向けて、大きく口を開けると、咆哮を浴びせる。するとカードが無効になった「ジューッ」という音と共に破壊される。

 デッキのトップから落ちたのは私も知っていたが、「ナチュル・アンドジョー」のようだ。デッキを動かしたってことは清水さんのデッキは……。

 

『おいおい。これでてめぇのデッキは0になったぜぇ。このターンでオレ様のライフは削れる気がしないのに、そんな効果使っちまっていいのかい?』

『「スタッグ」の効果。このカードの攻撃宣言時にカードの効果が発動したとき、自分の墓地に存在するナチュルと名のついたモンスターを特殊召喚できる。よみがえれ「ナチュル・マロン」』

 

 相手の忠告を聞かずに自分のペースでカードをプレイする清水さん。 

 「スタッグ」の効果を警戒しなかったせいで、再びよみがえる栗型のナチュルモンスター。私もこのモンスターの効果はわからなかった。

 

『ぐっ……。またそいつか……』

 

 北村 LP20600→18400

 

『「マロン」、『エクストリオ』、『ラヴァ・ゴーレム』ダイレクトアタック……』

『ぐわああああぁ』

 

 3体のモンスターの直接攻撃により不良は、ソリッドビジョンの衝撃で吹き飛ぶ。

 

 北村 LP18400→11400

 

『メインフェイズ2。「マロン」の効果発動。墓地にある「バタフライ」と「アンドジョー」をデッキに戻して1枚ドロー。これでターンエンド』

 

 空っぽだった清水さんのデッキが再生していく。このドロー含めてもまだデッキは1枚。

 このターンで『欲張り』のデメリットはなくなった。次のターンも、まだ清水さんのデッキは残っているからまだ戦える。

 

 

『やるじゃないか。オレ様のターン!! ドロー!!』

 

 倒れている不良は立ち上がってドローをする。手札はたった1枚しかないとはいえ、ターンを稼がれるカードをドローするととても厄介だ。

 ライフはまだ余裕の11400。「ヘルテンペスト」のおかげでデッキには相手にもモンスターが残っていないとなると、防御札を握られる確率は上がっているだろう。

 

『またデッキが増えたのか。これであと2ターン稼いだってわけか? でもな。これならどうだ? マジックカード「強欲で謙虚な壺」発動!!』

 

 強気で勢いよくデュエルディスクに差し込んだカードは、簡易サーチカードともいえる「強欲で謙虚な壺」。

 自分のデッキからカードを3枚めくり、そのうちの1枚を手札に加えることができるカード。

 弱点として相手に手札に加えられたカードと、残りのサーチしたカードが相手にバレバレな所があるが……。

 今の清水さんのギリギリのデッキの中では、そのデメリットもあまり気にせずに相手は使える。

 

『「ヘル・テンペスト」「D・D・R」に再び「ミラフォ」か。選ぶとしたらどうだろうな? もう発動を終えた「テンペスト」はいらないから、これは選択外として、「D・D・R」は手札がないから使えないなー。となると、ここで加えるのは「ミラフォ」だな!』

 

 清水さんは相手のデッキサーチを無言で見つめる。

 ばれる「ミラフォ」は簡単に対策されて、通常なら弱い。でも、今のデッキと手札に限りがある清水さんにとっては、対策が容易ではないだろう。

 破壊という手段がおそらくないのだから。魔法と罠を無効にすることができる「ナチュル・エクストリオ」も、デッキがないことから、発動すらできないだろう。

 

『オレ様は「聖なるバリア -ミラーフォース-」をセットしてターンエンドォー』

 

 わざとらしく大声でカード名を言いながらターンを終える不良。清水さんは絶対絶命である。

 

『あたしのターンドロー』

『この瞬間、「ラヴァ・ゴーレム」の効果発動だ。1000ポイントのダメージを受けてもらうぞ!!』

『くっ!!』

 

 

 清水さんの上にいるゴーレムのマグマが再び垂れる。

 そのマグマに直接当たった清水さんは、閉じこまっている檻の柵を背にするように仰け反る。

 

 

 

清水

LP:3000→2000

手札:3枚→4

場 :モンスター

   溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム

   ナチュル・エクストリオ

   ナチュル・スタッグ

   ナチュル・マロン

   魔法・罠

   伏せ1枚

北村

LP:11400

手札:0枚

場 :モンスター

   なし

   魔法・罠

   聖なるバリア -ミラーフォース-(セット)

 

 

『キャハハハハハ』

 

 清水さんは笑う。

 それは私も今まで見たことがない恐ろしい顔をしながら、対戦相手の不良を見ている。

 

『おいおい。なんだその顔芸は? 女の子がする顔じゃねぇだろ!! 馬鹿になっちまったのか?』

 

 清水さんの顔は、相手の言う通りに冗談抜きで「顔芸」しているそのものだった。

 普段では決してありえないとてつもない顔面崩壊したようなひどい顔となっている。

 

『これがあなたの最後のターンよ』

『おいおい。てめえのデッキは0枚だぜ。オレ様のセットカードはつええからな。そんなのできるはずわねぇ』

『あたしは「ナチュル・バタフライ」を通常召喚』

 

 蝶がヒラヒラと舞い、檻の隙間を通り怖い顔をしている清水さんの頭に止まる。普通なら女の子に乗っかっている蝶でとても絵になっているが、今の清水さんの顔からは、一切合わない。

 

『レベル6の「ナチュル・スタッグ」にレベル3の「ナチュル・バタフライ」をチューニング!! 野性の血流交わりしとき、大地を切り裂くパワーが目覚める! シンクロ召喚! 大自然の力、「ナチュル・ガオドレイク」』

『オレ様の残りのライフを削るためにまた強力なシンクロモンスターを出したのか?』

 

 清水さんの上に載っている蝶とクワガタのモンスターが光の粒となりまじ合う。

 「ナチュル」シリーズのシンクロモンスター。あの青眼の白龍と同じ攻撃力を持つライオンのタテガミを持つ強力なモンスターがシンクロ召喚される。

 

『そしてあたしはふたたび『マロン』の効果を使うわ。墓地の「スタッグ」と「バタフライ」をデッキに戻して1枚ドロー!!』

 

 シンクロ召喚の素材を使ったことでこれで清水さんのデッキがまた0から1へと変わる。相手のライフを削る布陣を作ることができたが、相手のセットカードは「ミラフォ」。

 

『これで総攻撃力はオレ様が信じて送ってやった「ラヴァ・ゴーレム」と「エクストリオ」と「ガイオドレイク」と「マロン」合わせてちょうど1万か。足らんな。デッキが増えたことで「エクストリオ」の無効効果が使えるようになったが、それでお前のデッキは再び0枚になっちまうんだぜ。1ターンまってもいいが、そうしたら次のターンには「ミラフォ」が無効にできなくなっちまうな』

『アハハハ。馬鹿じゃないの? これで終わりだと思ったぁ? 残念!! これを見てみたらどう?』

『っ!?』

 

 私も対戦相手と同じで惜しくも攻撃力が足りないと思ったが、清水さんが手札にあった1枚のカードを見せると対戦相手の顔が引き詰まる。

 

 

『きゃはは。「ガオドレイクのタテガミ」発動。このカードの効果で自分のナチュルモンスター1体の効果を無効にすることで、エンドフェイズまで3000になるのよ』

『はっ!?』

『残念でしたーーー!! これで総攻撃力はおまえのライフ11400を上回った!! これでおしまいよ!!』

 

 

 「ラヴァ・ゴーレム」「エクストリオ」「ガイオドレイク」「マロン」が北村の周りを囲む。

 普段なら可愛いナチュルモンスターであるが、この攻撃時は違った。清水さんと同じく、顔面崩壊した表情に変わり奇声を発しながら攻撃のモーションをする。

 

『ぐああああああああああああああああああああああああああああ』

 

 対戦相手も、余裕そうだった顔が、まるでホラーを見たような悲鳴をしている。ソリッドビジョンなのにこのリアクションはなんだ?

 

 

 北村 LP11400→0

 

 

『このオレ様が負けるだと……』

『ねぇ。約束忘れてないでしょうね?』

『……。あ、ああ……』

 

 デュエルに負けた大柄の不良男は、多少おびえたような顔をする。

 そして、ポケットからカードの束を空中にばらまく。カード達はデュエル中で清水さんが「ヘルテンペスト」の効果でばらまいたカードの上に重なる。

 

『これで返してやったぜ。オレ様が盗んだカードはよ!!』

『これだけで終わりなの? あたしが勝ったら好きするっていう約束は?』

 

 そういえば、デュエル前にそんな約束をしていたっけ? でもその言い方が怖かったので、清水さんは何を企んでいるのだろうかわからないのが、恐ろしい。

 

『もちろん。そのつもりだ。オレ様も男だからな……』

『何やっているんですか? 北村さん。こんな女の言うことなんか聞かないでいいっすよ。デュエルで負けても所詮は女だ。力ずくで抑え込めばいい話っすよ』

 

 潔く負けを認めた北村という人とは違い、その部下であるアフロの男は清水さんの言うことを聞いていないようだ。

 さっきまで騒がしかった北村は立ち止まり大人しくなっているが、アフロの男は反対に清水さんの方へと向かっていき、清水さんの肩を触ろうとする。

 

『気持ち悪い!! 触らないで!! 汚れるでしょ!!』

 

 触ろうとする行為を避けて、まるで汚物を見たような顔をする清水さん。大げさに避けているような気がしたが、やはり男嫌いというのは相変わらずのようだ。

 

『見たか、北村さん。この委員長女。やっぱりこの反応から男を知らないようだな。めちゃくちゃに犯せば面白いんじゃねぇのか?』

『よせ。アフロ。この女にもう関わらないほうがいい』

『なんでですか? 北村さん!! こいつに男のほうが存在価値があるって教えたほうがいいんじゃないの?』

 

 嫌な会話をしている清水さんは、顔色を青くしながら2人の不良の会話を聞いている。そして、

 

 

 

『さっさと死んでよ。あんた達!! デュエルで負けたんだから死ね!!』

『なっ!?』

 

 素早い手つきでポケットから刃物のような物を取り出す。

 

『あたしは本気よ。だって男を滅ぼすっていう滅亡願望があるからね。一匹残らずっていうね』

 

 その刃物を近くにいるアフロの男に向ける。刃物の持ち方からして、清水さんが今やろうとしている行為は本気のようだ。

 

『こ、こいつやべぇんじゃないか?』

『だから行ったろ。関わらないほうがいいって』

『ヒィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ』

 

 

 アフロの男が清水さんの行為を見て逃げるのを見ると、大柄の不良も続けてここから立ち去る。私もさっきまでこの現場を見ていたのを隠滅するために、不良から隠れようとしたが遅かった。

 だが、ちょうど私が隠れている場所とは反対の所から、不良達が急いで逃げていたので、私がばれるということは一切なかった。

 そして、残ったのはカードがばらまかれている教室と、怖い顔をしていて、立っている清水さんのみ。

 

 

『ねぇ。奈々川さん。さっきからそこで隠れているんでしょ』

「っ……!?」

 

 隠れていたのに、気が付かれていたのか……?

 

「ど、どうしてわかったの? 清水さん」

「だってあなたの甘い香りがプンプンしたから。奈々川さんの香りが教室全体にしたの、バレバレなのよ。おかげであたしの鼻がすっきりした」

「あはは。隠れていてもバレバレだってことだったんだね」

 

 私のことが好きな通りに、気持ち悪いせりふを言う清水さん。

 私はここでずっと隠れていても無駄だと思い、清水さんの前へと姿を現す。

 

「ごめんなさい。びっくりさせてしまって。さっきまであたしがやってきたのは、ただの演出よ。カードをばらまいたのも、演技。本当に殺すつもりなんてなかったし、刃物だってほら、手に指してみたらわかるけど、先っぽが刺さるとへっこむようになるおもちゃだから」

 

 先ほど、やっていたことが演技だと清水さんは説明する。

 私は此間のことで清水さんにはまだ警戒心がある。密室でまた清水さんと二人っきり。また清水さんに襲われるんではないか、という警戒心がまだ残っている。

 だが、その警戒心があるのにもお構いなしに、体が勝手に教室に飛び散っているカードを拾う。

 

「3日前のことがあるのに、あたしのことを警戒しないの?」

「………」

「あなたの目の前にいる人は、強姦しようとした犯人なのよ。あなたが今、やっていることはその犯人を認めて、もう1回強姦されに来ているのと同じことなのよ。これってどういうことなのかわかる? 強姦魔相手にわざわざやってきて、お尻をわざと振ってもう一度犯してくださいって誘っているのと同じことなのよ」

 

 清水さんは勢いよく何かを私に伝えようとしたけど、ごうかん……? って何のことだろう? 交換じゃないのかな?

 

「此間のことは別として。だって、困っている人がいる人がいたら助けるのは当たり前のことだろ。 それが僕のポリシーだから」

「ありがとう……。うぅ……」

「清水さんが僕のことを女だっていうのをばらすのは簡単だったはずでしょ。それなのに神崎さんに言わなかったのは、清水さんの優しさだと思うんだ。それのおかえしだよ」

「うぅ……。奈々川さんにひどいことをしたのに許してくれるの…。こんな気持ち悪い女なのに…」

「ちょ、ちょっと泣かないでよ」

 

 清水さんは急に泣き出した。先ほどの固苦しいような強気な性格とは違い、自分の感情を表しているようだ。

 どうやら不良を撃退したあれは演技だっていうのは本気のようだ。顔が涙でびしょびしょに崩壊して、必至に訴えているのにも見える。

 

「あたしね。ずっと一人だったの。ブスだった昔から、美人と言われる今までずっと一人。いつも一人で、誰からも恨まれて自分の居場所がないの」

「……」

「でもね。一人だけあたしを認めてくれる人がいた。それが奈々川さん……。あなただったの……」

「えっ……!?」

「気持ち悪いよね。あたしがあなたをおかしくなるほど好きなレズビアンだっていうこと。引いちゃうわよね」

「そんなことないよ。確かに、清水さんが僕のことを監禁するくらい好きだっていうのはちょっと引いたけど。別に僕は清水さんのことは嫌いになってない」

「どうして……?」

「だって清水さんは僕のおかげで、こんなにも変われたんでしょ。僕も憧れるほどの美人になっちゃってさ、それにデュエルも強くなって、怖い人に絡まれても冷静で入られる。さっきやっていたように不良達に絡まれて撃退するなんて僕にはできないよ。僕のおかげでこんなにも強くなれたっていうこと。僕、とっても嬉しいよ……。僕以上に強くなれたんじゃないのかな?」

「ありがとう……。でも、あなたにまだあたしはかなわないよ……。あなたの考えていることはあたしの思っていたことと同じだった。あなたのこういう優しいところがあたしは昔から好きだったのかもね」

 

 涙を袖で拭きながら清水さんは、私に向かって歩いてくる。

 まだ拾い終えていないカードをお構いなしに、踏み潰しながらこちらへ向かってくる。そして

 

「えへへへ」

「ちょ、ちょっとどさくさに紛れて抱きつこうとするなぁ!!!」

 

 自然のように、私のほうに倒れて、抱きついてこようとする清水さんを私を追い払う。

 

「女の子ってこういうのよくやるよねーー。奈々川さんが中学生時代にこうやって抱きついていること見てたよ。あたし」

「まあ、友達同士でよくやったけど……。清水さんとやると、なんか違う意味がする気がするからやらない」

「えーーーっ!!!」

 

 今の清水さんの学校での評判は、いつも落ち着いた委員長キャラで周りを一切受け付けないような固いキャラ。

 裏では仕事熱心で、学校の風紀を乱す不良達を追い払うようなキャラ。

 でも、私は昔の清水さんを知っているからわかるけど、清水さんは違うキャラだと思う。正義感漂うように作っている。

 男装をしているのにも、関わらずたまに女の弱さをさらしてしまう私と似ている気がしてきた。本当は弱い清水アイというキャラクターがいるのだろう。

 昔の清水さんは、こうやって感情を出すのは苦手な人間だった。もっと大人しいキャラクターだったのだ。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「ねぇ。ナナちゃん。今度のタッグデュエル大会。誰とペアを組む予定なの? もちろんナナちゃんは優勝を目指すよね」

「うーん。まだ、決まってないんだ。私」

「もしかして、兄のユウヤと組むの?」

「いや、兄弟とタッグを組むなんてありえないから。お兄ちゃんと私の考えっていつも合わないからさ、タッグは向いてないんだよね」

「ふーん。じゃあ誰と組むの? もしかして強い男の子?」

「い、いや。私は……。別に優勝とか目指してないから……」

 

 今から2年前の中学2年生の夏。

 体育祭の次に大きなイベントともいえる、タッグデュエル大会が行われようとしていた。

 女友達数人とともに、タッグを組む相手について盛り上がっていた。

 もちろん男の子と話すと緊張してしまう私には、男の子組む予定なんて一切ない。ましてユウヤお兄ちゃんと組む予定もない。

 いつもユウヤお兄ちゃんは怒ってばかりだから息が合わない。だから双子って言われても、デュエルの腕も全く別の物だった。

 

 私は誰と組むのか迷っているとき、教室でポツリと座っている清水さんが気になって自然と声をかけていた。

 いつも清水さんは本ばっか読んでいて、ほかのクラスの人としゃべっている姿は一切見たことなかった。

 だからいろんな人ととにかく仲良くなりなかった私は、気になって仕方がなかったのだ。

 

「清水アイさんだよね。初めまして。自己紹介まだだったよね。私、奈々川ナナ。清水さんってタッグデュエルのペアってもう決まっちゃった?」

「あ、その……。まだ…」

「だったら、私と組まない!? 一緒に頑張ろうよ!!!」

「で、でも……。あたしデュエル弱いし……。デュエル強い奈々川さんと一緒に組むと足手まといしかならないよ……」

「ちょっといいかな? 清水さんのデッキ見せて」

「あたしのデッキ……。すごく弱いよ……」

「面白そうなデッキだね。ナチュルって。弱いっていうけど、そんなことないよ!! 清水さんのエクストラデッキいいカードいっぱい持ってるじゃん。『ナチュル・ビースト』に『ナチュル・パルキオン』羨ましいなーー。なんだかお兄ちゃんのデッキのXセイバーデッキと相性よさそうだよね」

「……」

 

 

 今とは違い、清水さんはとても感情を出すのが苦手なタイプだった。

 声がとても小さくて、耳を清水さんの口もとへ近づかないと全く聞こえない。

 とにかく内気なタイプだったが、清水さんはどんなことも必死で物事をこなすようなタイプだったから、私はとても嫌いにはならなかった。

 

 

 そして私と清水さんは2人でタッグを組んで、デュエル大会へと出場する。

 私と清水さんのタッグを批判するの物は結構いたが、私はそんな話を一切聞かずに、私は清水さんと普通に接した。

 清水さんは自分のことについては自信が一切ないと言っていたが、そんなこととは裏腹に、私と清水さんのコンビネーションがよかったのか、数々の苦戦の中勝ち進んできた。

 プレイングが下手でも、カード単体のパワーはとてもすさまじいものであり、そのサポートをするだけで簡単に協力な布陣を作ることができたのだ。

 タッグデュエルの結果は……。8位だった。

 

 

「あーーー。おしかったねーー。『次元の裂け目』張られると『ナチュル・ビースト』のコストが払えないから、魔法無効の効果使えないって知らなかったなー」

「ごめんなさい……。あたしが弱いばかりに……。足ひっぱちゃって……。あたしじゃなくてほかの人だったら、奈々川さんは優勝できたのに……」

 

 悲しそうに、私を見つめる清水さん。タッグデュエル大会前はほとんどしゃべることはなかった清水さんだったのだが、この大会の後、私に対してだけは普通にしゃべれるようになっていた。

 

「そんなことないよ!!」 

「……っ!?」

 

 申し訳なさそうな顔をしている清水さんの誤解を解くように、私は清水さんの手を握る。

 

「清水さんとタッグデュエルをしたおかげでここまでこれたんだよ。だってこれが私と清水さんのタッグでもたらした結果だよ。これってすごいことだよね」

「どうして……。奈々川さんはそんなに優しいの?」

「私が優しい?」

「だって、あたしはいじめられっこなんだよ。ブスで冴えなくて、いつも泣き虫で……。一人ぼっちで……。こんなあたし……。すごく気持ち悪いはずなのにどうして奈々川さんはこんなにやさしく接してくれるの?」

「私はただ、いろんな人と仲良くなりたかっただけだから。私。うれしかったなー。いつもとは違う清水さんを見れて」

「………」

「君はもっと強くなれるよ。だから、弱い自分を捨てちゃおうよ。もっと清水さんは今日のタッグデュエル大会みたいに強くなれるから。もっと自信を持ってよ」

「うん!! あたし……。奈々川さんみたいにいつか強くなりたい!!」

 

 私は嬉しかった。

 いつもモジモジしていて、便りなさそうな清水さんが、デュエル大会で私のパートナーとして大活躍していたこと。

 もっと清水さんは強いはずなのに、自信がないからこんな風に周りから言われているんだろうと私は思った。だから清水さんを励ますよにこういってあげたんだ。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「これでばらまいたカードは全部だね」

「ありがとう」

 

 清水さんがばらまいたデッキと不良が他の学生から、アンティで奪ったデッキを拾い終えて、清水さんに渡す。

 

 昔とは違って清水さんは自分のことを、表現できるのはとてもうまくなった。

 全く別人のようにたくましく、私を超えたかのように力強い。

 

「清水さん。僕と友達になってくれる?」

「え…。奈々川さんとと、友達?」

「ああ。だって僕が女だっていうことを知っているのは清水さんだけなんだ。だから……。もし女としての壁がぶつかったとき、相談できる人がいないと困るんだよね。相談相手は清水さんしかいないから……」

「奈々川さんと友達……。フレンド……。セフレ……。セックスフレンド……。一緒にセックスをする仲になったんだね……! うれしいわ奈々川さん……!!」

 

 こっちは真剣な話をしているのに、なんかいろいろと意味が違っている気がする。なんだよセフレって。ふざけているのか?

 

「じゃあ、奈々川さんのセフレになった記念に教えてあげるわ。ねぇ知ってる?」

「何っ?」

「中学生時代に奈々川さんのリコーダーがなくなった事件と水着がなくなった事件あったよね」

「あ、あったね…。たしか……」

 

 清水さんが急に中学生のころを話す。なんだか嫌な予感がしてたまらない。

 

「あれ、盗んだのあたしなんだ。放課後、クラス中が居残りになって男子全員疑われてたでしょ。奈々川さんちょっと涙目になっていたよね。結局3時間くらい残っても犯人見つからなかったよね」

「ああああああああああああああああああっ。ないと思ったら!

「盗んだリコーダーと水着はあたしの家の家宝になったのよ。今でも毎日それでオナニーしているのよ。まだ奈々川さんの匂いがしみ込んでいるんだから」

「返してよ!! 変態!!」

「それにあたし、奈々川さんのスリーサイズも最近知ったんだ。あなたのおっぱい触った感触でわかっちゃった。教えてあげようか」

「スリーサイズって簡単にわかるものなのか?」

 

 オルニーってなんだろう? 人の名前かな? 清水さんは昔から変態だったっていうことなのか?

 それにしてもこの子は、エッチなことを言うのに羞恥心というものがないのだろうか。

 

「あたしね。あれからあなたのことをずーっと思って毎日胸を揉んだら、とっても大きくなったんだよ。奈々川さん見てみる?」

「ちょ、ちょっと何してんのよ!!」

 

 清水さんは顔を赤くしながら、自分の制服を脱ごうとしたから、急いで清水さんの手を触って私は止めようとした。

 昔と違って清水さんはとてもエロかっこいいような雰囲気に変わった。だから、裸にされるのは、清水さんの体付きがいいことから、女の私でも恥ずかしい。

 昔は感情を表すのは苦手だったのに、どうしてこうなった。

 タッグデュエル大会にふつうに接してあげてたのに、あの関係のあと、どうして清水さんの心の心境は「私のことが好き」になったんだ?

 

 

「此間のお返しでもいいのよ。今度は奈々川さんがあたしを拘束して、強姦してもいいわよ。奈々川さんのときに使えなかった道具とか拘束具とかいろいろあるから好きに使っちゃって構わないわ」

 

 清水さんはこの教室の中心の椅子に座って、ポケットから何かを取り出す。

 出てきたのは、3日前に意味がわからなかったローターのようなおもちゃと、手錠、ロープと肩こりに使うようなマシーン。

 どうしてこんなものがポケットに入っているんだ? まさか清水さんは1日中こんなものを持ち込んでいるというのか……?

 

「ところで清水さん。こうかんとか、レーズンビビヨンとか、オルニーってどういう意味なの?」

「あたし。こういう天然な所の奈々川さんも好きなのかもしれない」

 

 結局どういう意味だったんだろう。清水さんは困ったような顔をして結局は教えてくれなかったし……。

 今度神崎さんでも、宮城でも教えてもらおうかな?

 

 

 

『ここですよ。あの肉がぷりっぷりの委員長がいる教室は、まだいるのかな?』

『あーーー。ぼこぼこにしてぇなーー』

『やられたらやり返す。倍返しだ!!』

 

 

 厳つい男達の声が聞こえる。もしかしてさっき清水さんが追い払った不良達の仲間なのか?

 

「隠れて奈々川さん」

「で、でも……」

 

 昔とはちがい清水さんのほうから私に、声をかけてくれる姿を見るなんて思ってもいなかった。

 いつも弱虫だったのに。清水さんが私を守るように背を向けている姿。長い黒髪をバックにしているからとてもかっこよく見える。

 

「おいおい。男連れかーー。委員長さんは男いないって言ってんのに彼氏いんじゃねぇかよ。処女じゃねぇじゃん」

「大人のおもちゃいっぱい教室に落ちてんぞ。ってことはあいつらやったあとなのか?」

 

 やっぱり、清水さんが撃退した不良の仲間だ。アフロの男がもう一度やってきたことから、私でもわかる。

 2人だった連中が4人もいる。今、私が男装しているとはいえ、女2人対男4人の対立だ。

 力が弱い、私と清水さんだけで撃退できる相手なのか……。でもやらなければ……。

 

「(奈々川さん。逃げて……。奈々川さん犯される姿なんてみたくない。だからあたしを置いて逃げて)」

「(いや、どう考えても全員標的は清水さんっぽいんですけど)」

 

 不良達全員、清水さんを厳つい表情で見ている。どう考えても恨みを持っている連中だ。

 私が清水さんを置いて逃げるわけにはいかない。これから清水さんが怖い目に会うのはわかっている。

 

「おいおい。何をひそひそ話してやがる」

「それにしても便りなさそうな彼氏だなーー。なんか女っぽいし」

「だからって男の娘に興味持つなよ」

「わかってるって」

 

 今度は不良の連中は私に標的に変える。馬鹿にされるのは気に食わない。

 

「だったら相手してやるよ。僕がお前ら全然潰してやる」

「きゃーーーっ。奈々川さんかっこいいーー!!」

 

 私は前に出る。清水さんの力強い勇気に負けてられない。私のこの発言の後に清水さんの応援が。

 

「だったらタッグデュエルだ。2対2のデュエルこれでいいだろ」

「ああ望むところだ」

 

 私と清水さん対戦相手の不良がそれぞれデュエルディスクを構える。

 それにしても久しぶりだ。私が清水さんとタッグデュエルをするのは。中学生時代のタッグデュエル大会ぶりだっけ? なんだかわくわくする。

 

「僕の先行から行かせてもらう!!ドロー!!」

「この瞬間『増殖するG』を発動!!」

「構わないさ。僕の場には『XX-セイバー ガトムズ』と『XX-セイバー フォルトロール』2体に『XX-セイバー レイジグラ』が存在することで無限ハンデスコンボが完成している!!」

「だからどうした? Gの効果でお前が特殊召喚するたびに1枚ドローするんだぜ」

「それはどうかな? 無限の意味がわかっていないようだな。つまりだな。これを繰り返すと…」

「デッキがーーーーーーーーーーーー」

 

 まずは1人目の不良を私が撃破する。

 目の前のプレイヤーがいなくなったことにより、次は清水さんのターンへと移り変わる。

 

「次はあたしのターン。あたしはシンクロ召喚で『ナチュル・ビースト』と『ナチュル・パルキオン』と『ナチュル・ランドオルス』を特殊召喚!!」

「なんだそれは!!」

「これであなたはモンスター・魔法・罠の効果が発動したとき、無効になって破壊される。どうやって突破する? この布陣を?」

「ぐっ。くやしいが何もできねぇ……」

 

 2人目の不良も清水さんの固いロックにより、封じ込めて、相手をサレンダーにまで追い込んだ。これで不良の4人のうち2人を撃破したことになる。

 

「やべぇぞ。あいつら。超つええ。化け物か」

「逃げたほうがいいかもな……」

 

 4人の不良は私と清水さんのデュエルを見て、逃げ出した。どうやら何とか追い払うことができたようだ。

 

「ふぅーー。やっぱり男の相手をするのは疲れるなーー」

 

 私は手を伸ばして屈伸をする。

 

「何だか夢みたい。こうしてまた奈々川さんとタッグデュエルを組めるなんて……」

「ああ。僕もそう思うよ」

「こうやって2人きりでいると恋人同士に見えない?」

「女の子2人だけで、どうして恋人同士になるのよ」

 

 清水さんとの感動の展開だったのに、あの子の変態的な発言で雰囲気全部ぶち壊された気がする。

 

「あたし、あなたが彼女がいたってあきらめないから。絶対に奈々川さんをあたしの物にしてみせる。だから、奈々川さんはこれからあたしのこと好きになってね」

「いや、好きになる予定なんかないから」

「どうしてーーー?」

 

 こうして私は清水さんと友達になった。

 変態なことが多いけど、私のことが好きだっていうから悪い人ではなさそうだ。

 でもやっぱ裏表の感情の変化が激しい清水さんは怖い。何考えているのかわからないっていう風に感じてしまう……。

 此間のことは謝ってくれたから、また急に変態なことに襲われてしまうってことはないだろうが、少し心配だ。

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