遊戯王~デュエルキングを目指す少女の物語   作:魔法使い?

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第2話 『どきどきの学園』

「「冥界学園高校新入生代表!! 奈々川ユウヤ!!」」

 

 実技試験のあと、実技試験、筆記試験の合計が一位だった私は入学式で表彰された。

 表彰されることは、「普通のことだなー」と思っていたのだが、予想以上に祝福されたのだ。

 

「きゃーーー」

「凄い!! 凄い!!」

 

 など、とくに女性の声が大きかった。その大きな歓迎の嵐をされたことで私は気分がよくなった。

 大勢の前で歓迎をされることはここまで気持ちがいいことだとは思わなかった。

 

 表彰の後、校長先生の祝福の言葉を行ったが、校長先生の話は私の時と違って、生徒は一切興味がないのかソッポを向いている。

 ソッポを見ているというより生徒達は私の方を見ている。特に女子の視線が多い気がする。私は視線のやり場が困った。

 

 

「「私からの説明は以上です。それでは新入生の諸君!! これからの学校生活を楽しんでください」」

 

 校長の話が終わってもなお、女子生徒達は私のほうを見ていた。

 私はこのとき、女子生徒達は何で、私に興味を持っていたのかその意味がわからなかった。その意味は後で知ることとなる。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 入学式を終えて私は自分の席に座った。午前中ずっと試験をやっていたのでもう12時だ。これからお昼休憩で休みが取れる。

 これまでの長い式を終えてようやく一息を付け、休憩時間中にこの学校に慣れようと思っていたが、どうやら私には休みがないらしい。

 やはり周りは私の話題でいっぱいだ。実技試験で目立ってしまったのが原因だったようだ。

 

「キャーーー」

「あの子。入学式で一位だった子よ!! 同じクラスなんて…」

「よく見たらイケメンよね…。あの奈々川っていう人…」

 

「………」

 

 私は目線を机の下にして顔を見られないようにする。恥ずかしいからだ…。

 最初はよくある「凄い」「カッコいい」などの褒める台詞で私を褒めていた人がいて、うれしかったのだが段々褒めることが変わっていった。

 何故なら女子が私のことを「イケメン」と言い出した。私は女で今、男装をしている。その容姿を褒め始めたのだ。

 この学園生活は、男になると決めた以上、女だとばれてはいけない。

 「イケメン」は私を男だと認めた言葉だが、恥ずかしすぎるよ…。しかもそんなことを言われたのは初めてだ…。

 前までの中学生の私だったら、今その女子達がやっているように、ああやってグループになって本物のイケメンに対して「キャーキャー」言ってるはずなのに…。

 

 

 これからどうしたらいいんだろう。この学園生活は…。まだ休み時間55分もある。

 私はなぜかクラス中の注目になっちゃったし…。やっぱり男の子になる以上、これからは男の友達も作らないといけないのかな?

 どうしよう私…。男の子すごい苦手だから話掛けにくい。と、そう思った矢先に、男の人が先に話しかけてきた。

 

「ほら、覚えてるだろ。お前の前にデュエルしてた」

「ああ、君は『終末の騎士』に3回ダイレクトアタックされて負けた」

「いやなこと思い出させるなよ…。あれは初手魔法6枚の超手札事故起こして…。本当だったら、俺がお前と同じようにワンキルするはずだったんだぜ」

「あはははは」

「お前ってもう女子の間に有名になっているぜ。1年生では最強イケメンデュエリストだってさ。うらやましいぜ。くっそっ。俺も同じ男だって言うのにどうしてこんな天と地の差があるんだ!! うらやましいぜ!!」

「本当は目立ちたくなかったんだけどなー…」

 

 私が普通に普段、女の子の格好でも、男の子にあまりしゃべりかけて貰うという機会がないからちょっとだけ緊張する。

 この話の流れまでちゃんと話が繋がっているけど、変ではない…よね。ちゃんと男の子の会話だよね…。

 

「奈々川ってこの辺で見ない人だからさ。どこから来たんだ?」

 

 話をしてもらっている以上、変に会話を切らしてはいけないと思った私はちゃんと説明する。

 せっかく話掛けてもらっているんだ。最初だから少しでも怪しまれると、これからの学園生活に支障を起こしてしまう。こうなっては駄目だ。

 

「なるほどね。奈々川は電車で2時間も掛かるところから来ているのか。何でわざわざこの高校に来たんだ?」

「そう…。デュエルが強い高校だって聞いたからここにやってきたんだ」

 

 それでも男の人達は私に大してやさしく接してくれた。

 私がこの冥界学園高校に進学した理由はデュエルについての超進学校だからだ。

 この世の中がどこでも「デュエル」「デュエル」と言われている世界なんだから、進学や就職のために冥界学園高校を選んだ人も多いだろう。

 私はもちろんデュエルキングになるという壮大な夢の為に、この学校を選んだわけだ。

 

「やっぱ筆記試験強い奴はデュエルも強いのかよ…。すげぇな」

「僕はデュエルだけは自信があるんだ。誰にも負けない自信がある。将来の夢はデュエルキングになることなんだ」

「デュ、デュエルキング……。規模大きいんだな。何かすごい奴と友達になれそうだな。俺の名は宮城ケン。何かある都道県と間違えられそうだから宮崎でもケンでも苗字か名前のどちらかを呼んでくれると嬉しい」

「宮城君だよね…」

「めんどくせーな。これからずっと一緒なんだから呼び捨てでいいんだよ。宮城でよろしくな!」

「っ!?」

 

 急に宮城と名乗った男は肩を叩く。私はいきなりだったのでびっくりしてしまう。

 おそらく男の子のノリって奴だろう。私はそれに納得した。これからも男として生きる以上、こういう付き合いがあるのだろう。

 

「じゃあ宮城。よろしく!!」

「奈々川ってさっき見てたけどデュエル滅茶苦茶強いんだろ。デッキ見せてくれよ! あと俺のデッキも診断してくれ!!」

「う、うん…」

 

 男の人にいきなり話しかけられてちょっとだけ緊張して焦っているけど…。まあ結果オーライで良かった。

 私、なんだか男の人と仲良くできてる。どうやら皆良い人そうで安心できそうだな。

 しかもこの宮城っていう人は、積極的にしゃべる明るい性格の子だったので、話しやすくっていい人だ。

 デッキの診断を頼んでくれと言われた宮城って子のデッキを見て、こうすればいいと教えてあげた。

 実技試験中に見てて思ったことだが、やっぱりこの子のデッキにはいらないカードが多かった。魔法の比率がおかしいのだ。

 それを私は指摘してあげてアドバイスをしてあげた。

 

「これで、事故率は減っただろうね」

「サンキューー。これで俺も奈々川みたいな最強デュエリストだ!!」

「あははは。後はプレイングの問題だから…」

 

 あれからいろいろとお話をし、宮城と呼び捨てでいいと名乗った子と友達になってくれる約束をしてくれた。

 これから男の子として生きていくのだから、女の子の友達ではなくてこうやって男の子と友達になるべきよね。

 よし! ここからは私は男の子らしい生き方をして学校生活を楽しむべきね。

 

「僕、トイレいきたくなっちゃった」

「おっ。トイレか。俺もいくぜ!!」

「えっ!?」

 

 長い話をしていたら急に尿意が来た私は、急にいなくなって失礼のないように友達らしく宮城に伝える。

 これから先の学校生活のためにもトイレの位置を確認するためでもある。それなのに…。

 

「じゃあ俺も一緒に行くぜ!」

「えぇ……!?」

 

 私に反応して次々と男子生徒がついてくる。

 

「何でついてくるの…」

「なんでって。男同士なんだから普通だろ!!」

 

 私の跡を廊下で男達が4人ほどついてくる。男の人は女子同様にトイレ一緒にいくことは常識のようだ。

 何か女である私を公開処刑するような感覚ですごい緊張する。

 ここで引くと絶対に怪しまれると思った私は一緒にトイレに行くことを何とか受け入れる。

 私はゆっくり歩きながらトイレに向かおうと左に曲がった。

 

「おい……。奈々川…。そこは女子トイレだぞ…。見てねぇのな」

「危なかったな。もうじき女子に変態扱いされるところだったぞ。ギャハハハ」

 

 宮城が私が女子トイレに向かおうとしたところを笑った…。

 私はもう男なんだった。忘れてたよ。男子トイレは右にあるのがデフォみたいね。

 だとしたら男子トイレを使えっていうのか!! 嫌な予感がする。まさかばれるんじゃないよね…?

 

「ごめん。ちょっと前見てなかった」

「嘘つくなよ。お前、一直線で女子トイレに入ろうとしてたぞ。もしかして覗こうとしてたー?」

「ち、違うよ…」

 

 ペコッと変な感じがするけど嫌々ながらとりあえず謝っといた。

 注意されて逃げ場がない私は生まれて初めて男子トイレというものに入った。

 そして入ってすぐに見たくないものが見えた。男子が立って便器にくっつくような距離でシューっという音と共に何かを出している。

 漫画とかでしか見たことないけど、これが男の人の……。

 

「どうしたんだ?奈々川!!」

 

 やばい…。ここで立ち止まったら私が変だっていうことがわかる。

 私がばれないようにするという選択肢はただ一つ。男の子がやっているようにはできないから…。こうすれば大丈夫のはず…。

 

 

 私はここから逃げる勢いで個室に入った。

 これなら私は恥ずかしいところを見られることなくすることができる。安心した私はほっとため息を吐き、ひと段落しようと座ろうとした時、

 何か男子達はざわめき始めた。どうやら私の行動がおかしいらしい。

 

「おい!見ろよ!あの奈々川が個室に入ったぞ」

「ウンコするんだってさーー」

「ウンコ、ウンコマンだーー!!!」

 

 下品な言葉が個室から聞こえる。女子の私には考えられない騒ぎが男子トイレで起こり、私は緊張のあまり汗がダラダラ出てしまう。

 これから3年間この男子トイレを使えっていうのか…。信じられない。私は服を脱げずにずっとこのまま座っていた。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

「「これで授業は終わりだー。今回のテーマデッキについてはこれから実践でも使われるぞー。よーく覚えとけー」」

 

 「キンコンカンコン」とチャイムが鳴り、一時間目が終わる。私は机の上においてあった筆記用具を片付ける。

 今日は「~と名のつくカード」についての勉強だった。

 高校生の授業はなんか、特別の授業のように感じたが、中学生時代の授業と「大して変わらなかった」のが感想だった。

 

 

 

「おーーい。奈々川ー。隣のクラスで面白いことやってるらしいぞーーー」

「えっ?」

 

 授業が終わったあと、廊下側の席の宮城に呼び出されて連れられる。

 

「なんだこれ…」

 

 私が隣のクラスを見た光景。それは1人の女の子を囲んで、列のようなものを作っている。

 

「神崎ミカ。あいつにみんなデュエルしたくて並んでるんだってよ」

「だれ? その神崎さんって人?」

「お、お前知らないのかよ…。あの有名の神埼を!!」

 

 宮城は何も知らない私に対して驚かされた。どうやらあの神崎ミカって子は有名なプロデュエリストらしい。

 去年のプロリーグでは2位の成績を収めた。超有名人らしい。私は全く知らなかった。でもどうしてこんなに行列が…サイン会か何か?

 

「あの列は?」

「神崎とデュエルして勝った人は付き合うことができるんだってさ」

「つ、付き合う?」

「ああ、お前も並んでくれば? 1年生の中で一番強いお前だったら楽勝なんじゃないか?」

「ぼ、僕は結構だよ」

「俺も並んで来ようかなーー。有名人と付き合う機会ってそう簡単にないだろうし」

 

 宮城に言われた通りによく彼女の周りをよく見ていると、デュエルに燃えた男子生徒達が「付き合う」というその言葉だけで必死に集まっている。

 女子である私には信じられないことだ。ただ、デュエルで勝てばいいという方法で付き合うのは、恋愛としてどうなのか。

 男装しているとはいえ、女である私はさすがに女の子と付き合うことは全くありえないので、この列には並ぶ意味はない。

 でもいいなー。プロとデュエルができるなんて。いつか彼女とデュエルしてみたいなー。

 

 

 私と宮城は神崎ミカさんのデュエルを見て、プロのデュエルはどんなものか確認した。

 デュエルは中盤に移る。神崎さんのライフは1900。場はなし。

 対する相手のライフはまだ4000。フィールドには紫色の髪型のモンスター『アトラの蟲惑魔』。

 可愛い女の子のように見えて昆虫族のモンスターだ。神崎さんはこのモンスターに苦戦しているようだった。

 

「ウヒヒッヒヒ。ミカたんのライフは残り1900。半分を切ったね。これでもうすぐミカたんは僕の物になるんだね」

 

 対戦相手はおかっぱ頭に大きな体格で腹が出ている。髪型はボサボサで容姿は失礼だが、とてもいいとは思えない。

 神崎さんは「ミカたん」と呼ばれていい表情をしていない。女の私から見てもとても気持ち悪い台詞として見える。 

 

「…。全然私はあんたに興味がない。ほんと退屈凌ぎにもならないわね。私のターン!」

 

 デッキからカードを引く神崎さん。前のターンでは『アトラの蟲惑魔』の手札から罠カードを使える効果で展開ができなかった。

 だが、相手は展開を果たしてせいで、手札はもう0枚。これなら『アトラの蟲惑魔』の手札から妨害されることはない。

 

「このカードは墓地に光属性が4体いる時に特殊召喚できる。『ライトレイ ダイダロス』を特殊召喚!! さらにこのカードは自分の墓地の光属性が5種類以上の場合に特殊召喚できる。現れろ!!『ライトレイ ディアボロス』!! 『ライトレイ ギアフリード』!!」

 

 前の神崎さんのターンではカードを1枚プレイしただけで終わったから、心配したがどうやら墓地を肥やしたおかげでこの3枚を呼び出すことができたようだ。

 光の海竜、騎士、龍が3体並ぶこの姿は、プロという縦書きもあって、見ている者を「美しい」と感動させる。

 

「全員で攻撃!!」

「うわあああああ。ミカたあああああん」

 

 それぞれ攻撃力2600、2800、2800という脅威の数字からの攻撃は、モンスターがいてもとどめを指すのは十分だった。

 一瞬でおかっぱの男のライフを0にすることは成功した。

 

「はぁ…。ほんとつまらない。どうしてこの学校は腕がある生徒がいないのかしら? 何が私と付き合いたいよ。付き合いたいならそれなりに腕がある子じゃないと。あんたらと私が釣り合うなんてありえないっつーの」

 

 神崎さんがため息をはく。その顔は呆れ顔だった。

 やはり大量の数相手でもプロには勝てないのが現状だとわかった男子生徒達は、神崎さんの厳しい言葉を受け、この場から離れた。

 

「あっ」

 

 その姿を見ていると、私は神崎さんと目が合った。何か嫌な予感がしたので私は目線を逸らした。

 

「みーつけた。私にぴったりな子」

 

 私を見てニヤニヤしている姿が怖い。

 

「あんたって奈々川ユウヤ君よねーー。1年生でトップの。すごいねーーっ」

「そ、そうだけど」

 

 神埼さんは私を褒めながら、逸らしている私に気を引こうとしている。

 そういえば、神崎さんも私同様に新1年生だ。そういえば入学式の表彰に名は出てなかったな。

 ってことは私は神崎さんより強いだろうと判断して少しだけ強気になった。

 

「私さー。特々生だから入学試験なしで入ったんだ。私もあんたみたいに試験あったらあんたに勝って1位だったかもねー。だからさ、この学校最強はあなたではなかったかもしれないよ」

「そうなんだー…」

 

 やはり超絶エリートには裏があったか。デュエルが強いプロなんだから、入試試験パスするのは当然だってか。

 

 

 

 

「あんたかわいいね。付き合ってあげる」

「断る」

 

 場が凍りついた。

 

 

 

 

「あ、あんたね…」

「ご、ごめん……」

 

 状況を整理しよう。デュエルを見ていたら告白された。

 告白……? ど、どどど、どうしよう…。私、初めて告白されたよ。しかもよりによって女の人にって……。私は女なのに。

 

「何よ。この屈辱……。私は今まで何百人もの人に告白された。だけど、私は妥協せずに今まで断った。そして今日、あんたの存在に運命を感じて人生初の告白をした。それなのにたった4文字で断るなんて……。こんなの今まで15年間生きてきた中でも屈辱だわ」

「ほんとにごめん…。僕、恋愛とかしないと決めたから…。でもお友達になら…」

 

 神埼さんはピンク色の背中まで続く長い髪に、つやつやの肌をした綺麗な女性だ。いわゆる誰からどう見ても美人といえる存在だ。

 私はそんな美人の存在の彼女の告白から断ったんだから、衝撃は強かったんだろう。男だったら誰でも落とせる自信があったはずだ。

 でもごらんの通り私はこの体だ。女が女と付き合うことはありえない。

 でも友達となら……。その美容の秘訣とか恋愛とかプロのデュエルについて教えてほしいし…。

 

「覚えておきなさい!! 絶対にこの屈辱を返してあげる!! わかった?」

 

 捨て台詞をはいて神埼さんはこの場から去った。この強気な性格からか、私は友達にすらなれなそうな感じがした。

 私が断ったこと、すごく怒っているのかな? でもこれはしょうがない。これから先、神崎さんとの関わりが難しそうだ。

 

「やったな!! 奈々川。かっこよかったぜ!! これで俺と同じように一生童貞の仲間入りだ」

「ど、どうてい……??」

 

 宮城がよくわからない言葉を言った。その意味は私にはわからなかった。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 そして体育の時間。私は男子の中に混じってバスケをするので、女の私は男の力には勝てないと思ったのだがそんなことはなかった。

 私は中学生のころバスケ部だったのでむしろ得意の分類だ。いつも以上に体が軽いようでスムーズに仲間とパスの連携が取れた。

 そして私は大きくジャンプすると華麗にダンクが決まった…。やはりデュエルの進学校だからか。

 学校全体がデュエルに力を注いでいるおかげか、運動部はあまり強くないのだろう。

 

 

「きゃーーーー。ユウヤ様ーーーーーーーーーーーーー」

「きゃああああああああああああああ」

「ユウヤ様ーーーーーーーーー。かっこいい~~~」

「ありえねぇよ…。女子の奴、入学したばっかの奈々川をもう『ユウヤ様』だぜ」

「だ、ダンクなんて初めてみたよ…」

 

 たくさんの男子の嫉妬と女子の『きゃーー』という声が聞こえる。

 

「はぁ…」

 

 私はため息を吐いた。私はこんなキャラになりたくなかった。

 どうやら私はこのキャラを残りの3年間続けるとなるとかなり辛いプレッシャーになるだろう。

 私の中学生時代のキャラクターは「ドジっ子」だった。それなのに今の私は間逆。

 

「お前はいいよなぁ…。ちらほら女子にされて。俺なんか一度もこんなにモテたことないぜ」

「僕はこんなキャラを演じるなんてコリゴリだよ。本当は普通の高校生になりたかったんだけどなぁ」

 

 宮城に嫉妬される。本当は普通の女子高生になりたかったんだけど。

 可愛い制服を着て女の子同士でこうやって『きゃーきゃー』言う生活。でもそれは諦めるしかない。

 

「えっ!! 何これ!!」

 

 体育を終え、移動の為に靴を履き替えるために、下駄箱を開くと大量の何かが雪崩のごとく出てきたのだ。

 どうやらそれは全部私宛のラブレターだった。しかもそれは数え切れないような量。

 漫画やアニメで見たようなことが本当に現実で起こっているのだからびっくりしたけど。

 

 

 

 

 これからは体育の時間は私が嫌いな時間になるのだろう。

 本当の私は運動系の人間なので、「嫌い」と思うのは昔の自分からは考えられないが、何より大変なのは着替えなのだ。

 男装するにあたってクラスで堂々と着替える男子生徒や、男子と更衣室で混じりながら着替えるのは流石に無理がある。

 と、なると残りの選択はトイレや別の教室で着替えるのが選択肢となるのだろう。

 トイレは知っている通り、男子トイレで嫌なことが休み時間にあったので無理だ。気持ち悪い。

 かといって空いている教室を使って着替えることは、突然他の生徒が移動際で人に見られる危険があるのだ。

 体育前はなんとか空きの教室で着替えることができたので、体育後もそこで着替えることにする。

 人が来る気がするからすぐに着替えなければ。

 

 辺りをキョロキョロして周りをいないことを確かめると私は短パンを脱いだ。

 

 女だとバレないように胸を縮ませるサラシがさっき運動したせいで汗で匂って変な感じだ。

 ベトベトしてるから脱ぎたいけど大変だからやめよう。

 それにもしもの為にパンツもトランクスに変えるべきだけどスースーするから履けないんだよなぁ…。

 

「えっ……」

 

 ガタガタと音がする。教室から誰かが入ってきた音だ。

 この音にびっくりして私は焦る。たぶん今まで生きてきた中で一番焦っていると思う。これは死に近い意味だから。

 それに気がついた私は急いで着替える。だが、学校指定のズボンがうまく履けずに女物のパンツに引っかかる。

 

「みーちゃった」

「か、神崎さん。どうしてここに?」

 

 この学園生活が終わった。さっき合った神埼さんに着替えを見られた。

 しかもちょうどパンツが見え見えの状態で。これは絶対に私のことを悟られた。

 

「何で神崎さん…。ここにいるの?」

「私はさっきからあいつらに追いかけられていて隠れ場所探してたのよ。あんたこそなにやってるの?」

「あ、その……」

「へーー。あんたってそうだったんだー」

「………」

 

 心臓が破裂するそう思った私はそのままの格好のまま動けない。神崎さんは徐々に私に近寄ってくる。

 

「へーー。女物のパンツはいてたんだー。それにバッグからはみ出ているのってブラジャーでしょ」

「あっ」

 

 バッグのチャックも閉め忘れて、見られてはいけない物もさらに見られた。終わったと思った。

 だが、私はおもいも知れない展開にここからなる。

 

「今はやりのブラ男ってやつかー。パンツも女物のものなんか履いちゃって。あんたって女装癖の趣味があったんだ」

「はっ?」

「あんたってさっき私の告白断ったときも、このパンツ履いてたんでしょ。変態。私は女装が趣味の男に愛の告白を断わたれたんだ。ショックだわー」

 

 私が予想していたのと違う展開になった。何とか最悪な展開を避けようと隙を探る。

 

「もしかしてあんたって変態なのね。ああやってこうやって擦りつけるのが趣味なんだ。どうなの?」

「そ、そうさ。僕は変態さ。さっきまで君と合っていたときもこのパンツを履いていた」

 

 何言っているんだろう。私……。女だってばれたくないから変態キャラを作ってこんな言葉を発していたけど、気持ち悪い。

 こんなこと言ったって神崎さんの前で学校中に知れ渡ったら一瞬で私の学園生活はパーだぞ。

 

「じゃあ決定ねーー。私との契約決定ねー」

「契約?」

 

 うれしそうに神崎さんは言った。振られて落ち込んでいたときの顔とは全く違う。

 

「そう契約。これから3年間私と付き合うこと。それが私との契約」

「付き合うって……。恋愛じゃないよね」

「そうよ。恋愛よ。私はあんたと恋愛したいとおもっているの。それが契約」

「嫌だよ。僕は女の子と付き合いたくないっていったじゃないか」

 

 契約とまだ神埼さんは私と付き合うってことをあきらめていないのか。何度も言うように私は絶対無理だ。この体である以上。

 しかも普通じゃない恋愛って何なのよ。言い方が怖いからロクでもない気がしてならない。

 

「なら、ばらしてもいいよ。あんたの性癖。学年1位の奈々川ユウヤ君は、入試試験中ずっと女装していたって」

「やめろーーー!!! それは恥ずかしい」

「なら、私の言うことを聞きなさい。これから先。ねっ!!」

 

 私を思うがままにコントロールできて神埼さんの顔はニコニコしてる。絶対この子サディストだ。どっちが変態だ。

 神崎さんは私の姿を見て、弱みを握ってきた。これはいいなりになるしかない。

 

「そんなに嫌なら、デュエルで決めようか?」

「デュエル?」

「そうデュエル。私が勝ったらあなたは私の一生いいなりなの。私の彼氏としてね。でもあんたが勝ったらこの話はなしでね。私とこれから関わらなくてもいいわ。でも、デュエルの勝敗関係なしにあんたの秘密は絶対にばらさない。都合のいい話だと思わない?」

「断る気はないけど、もしデュエルを断ったら?」

「そうねー。あんたの人生終わるわよね」

 

 私の3年間の長い学園生活を終わりにしたくない私にはこのデュエルを断る選択はできない。

 

「望むところだ!!」

 

 私はバッグの中に入れてあったデュエルディスクを取り出して、神崎さんに向けて展開する。

 

「デュエルする気満々なのはいいけど、パンツ見え見えよ」

「あっ」

 

 さっきまで修羅場すぎて隠すの忘れてた。このパンツもうずっと神埼さんに見られていたのか…。恥ずかしい。

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