遊戯王~デュエルキングを目指す少女の物語   作:魔法使い?

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第21話 『ぶちょ~』

 放課後。私がいつも楽しみにしているデュエル部の活動の時間だ。

 1年生の私は宮城とカズマ君を連れて部室に向った。此間は2人は仲が悪かったけど、仲直りしたおかげでとても私は楽しい気分だ。

 今日は確か部長が高校デュエル大会の代表選手を決める日だっけな…?

 この日の為に私は今までがんばってきたんだ。この学校はカイザーに堀内先輩、部長に強敵ぞろいだけど私はその仲の代表に入りたい。

 私はお兄ちゃんとの約束の為に勝ち続けなければならないんだ。チーム戦だから3人しか選ばれない。だから私は緊張している。

 

「今までの練習の結果から代表選手を発表する…」

「きたきたきたきたーーーーっ!!」

 

 宮城が急にハイテンションになったことから私は緊張感がより増していく。私はごくりと唾を飲む。

 そして部長は持っている盲目用の杖をトントンと地面に3回叩くと口が動いた。

 

「代表選手。まず最初は先鋒戦は部長の俺…」

「っ!?」

 

 私達1年全員はいきなり先鋒に部長が選ばれたことに反応する。当たり前だけど一番先輩の部長はまずは確定か。

 普通一番強いデュエリストは1戦目最初ではなく最後の大将に選ばれるのではないのか。部長はとくに。

 

「疑問に思っているようだな。一番最初に俺がいるのはチーム全体のモチベーションを上げるためだ…。最初に勝つことでチーム全体のやる気が上がる。これで後ろのお前達に任せるためだ…」

「なるほど…!」

 

 無口でボーっとしてる人だと思ったけど部長は何も考えてはいないわけではないのか。

 部長は格好や声のトーンの雰囲気からおかしいことを言う人かと思われていたが、全然そんなことはない。

 そしてしばらくして中々動かない部長の口からついにもう1人の代表選手が選ばれた。

 

「中堅戦は堀内。お前に任せた」

「オッケー…はぁっはぁっ…」

「この俺様が中々選ばれないのはおかしい…。だが、最後の切り札は当然この俺様。カイザーだろ!!」

 

 堀内先輩の息切れに近い返事とカイザーの好き勝手な言葉で私はさらに心拍数が上がる。

 これで残り最後の一枠から選ばれるのは私、カイザー、カズマ君、宮城の残り4人。私は心の中で代表選手に選ばれるんだと心の中で強く願う。

 

「そして最後の大将戦」

「!?」

 

 選ばれなかった4名の目つきが鋭くなる。しばらく無言が続くと全ての運命が掛かっている部長の言葉が動き出す。

 

 

 

「実は最後の1人のことなんだが…。中里か奈々川で迷っている…」

「はぁ? 何でこの中で最強のデュエリストの俺様を差し置いて、あんな気持ち悪い男女を選ぼうとしてるんだよ!! おかしいだろ!!」

 

 男女とは失礼だな…。

 でも正直私はこれまでの流れからして先輩達が選ばれていたから、最後はカイザーが選ばれるかと思ってた。これは意外な展開だな。

 

「もしかして僕達の実力は五分五分だからですか?」

「それもあるのだが…」

 

 今までの私達デュエル部の活動はひたすら詰めデュエルやら実技デュエルに励んできた。

 たぶんだけど、部長はその成績から代表を決めていたんだと思う。それで最悪なのは私はカイザーとほぼ同じ成績だったからだ。

 私が入部時にもデュエルして引き分けだったし…。

 って、私はあんな女性から見て最低な男をライバル意識してないのにどうしてこんな関係になってるのよ!!

 

「中里…。お前は過去に他校との暴力や俺の同級生いじめを起こして大会に出られなかった……。お前はすぐに暴力に発展するからな」

「ハハハ。思い出させるんじゃねぇよ!!」

「お前は先輩になった。でもいつかまた後輩に暴力を起こすかわからない…。この前のように…」

「あいつのどこが強かったんだ? 先輩頭しておいて俺様よりデュエル弱い癖に代表に選ばれるのが気に食わなかったんだ。しかもあいつはビビッて部活辞めちまったしな」

 

 元々ヤクザのボスのような風潮をしたような不良なカイザーのことだからこの発言に1年生は凍りつく。

 そういうのに弱すぎる私と宮城はそれが顔色に出るくらいに部長とカイザーの喧嘩にビビッている。

 過去にこの部活に入る時に宮城が言っていたことを思い出す。それでも私は先輩をいじめ倒したってことは聞いたことはない。カイザーはそれほど問題児だったのか。

 

「お前はデュエルが強いのが問題ではない。中里……。その態度が駄目だ…。お前は仲間を信用しないからな。何度も言った通り、仲間を信用しないやつは屑だ!! お前は問題を起し、1年前の大会はお前が出場停止だけで済んだが今度は何をするかわからない…。もし、次に大会が中止になるほどお前が暴れたらこの学校の恥だぞ!」

「はぁっ!? 糞部長に言われる筋合いはねぇよ。うっぜーな。てめぇを病院送りにしてやろうか?」

「………俺は何されたっても構わない…。だが、後輩には手を出させない」

「ハハハ。ほんとお前は口だけのカスヤロウだな。何で部長は雑魚のお前じゃなくて俺様じゃねぇんだよ。気にいらねぇ!!!」

 

 声の大きさも身長も圧倒的に違う部長ではカイザーの口喧嘩には叶わなかった。

 すると突然、カイザーは腕を伸ばしてこのまま暴力を振るうかと私は思ったが、手はそのまま組んで頭に乗せて大きな背中を部長に見せる。

 部長と話すのに飽きたのか私のほうに向う。

 

「奈々川ぁっ!!! 代表の座を俺様によこせよ!!」

 

 カイザーはさっきのことで頭がいっぱいみたいで、私にもそのままの睨んだ顔で言ってくる。

 

「僕も代表は渡しませんよ。僕だって夢があるんですからね!!」

「先輩の言うことが聞こえねぇって言うのか!! ああっ!!」

 

 怖くたって私だってお兄ちゃんの夢に近づけるために代表の座は譲れない。

 たとえ私よりも年上であろうとデュエリストである以上、デュエルのことは誰だってプライドがある。

 

「このっ!!」

「っ!?」

 

 後輩の私にむかついたのか胸倉を掴んでカイザーより身長差がある私を宙に浮かす。

 カイザーはいつも通りに怒りの感情を私にぶつける行為をしたが、でも部長の言葉を思い出したのかすぐに手を離して止めた。

 

「やっぱやめだ。ヒョロそうな奴に喧嘩売っても楽しくねえ」

「そうですよね…」

 

 とりあえず私はほっとしてため息をつく。このまま喧嘩に発展したら間違いなく女の私は瞬殺されるだろう。

 

「だったら別の勝負で決めましょうか? ここは男らしく決めましょうよ…」

「気に入らないがそうするしかないな」

 

 私は学ランの胸ポケットの中をボサボサっと探ってデッキを取り出そうとする。デュエルだったら負ける気はしない。

 だけどカイザーが言った勝負は…。

 

 

「チンコデカイ方が代表なっ!!」

 

 

 私は凍りつく。男らしい勝負といわれてどんな勝負であろうと勝ってやると思ったが、そんな案が出るなんて…。

 女の私がそんな勝負勝てるわけないじゃない…。何で小学生並みな発想が出てくるのよ。

 

「はぁっ…!?」

「男らしくって自分で言ったじゃねえかよ」

「むっむむむ…無理だよ……。そんな勝負…!!」

「ハハハハ…。まだ戦ってもないのに自分のチンコが小さいからもう諦めちまったのか」

「………」

「何だ? 図星か。そういうことで俺様が代表入り決定ーー。やっほーー…」

 

 私は言い返せなかった…。くだらない戦いに負けると同時に女のプライドも負けてしまった。

 

「お前のデュエルキングになる夢はそんなものだったのか? 奈々川っ!!! 意地を見せないのかよ!!」

 

 カズマ君が最後に追い討ちを狙うように口をしゃべる。それもカズマ君はほとんど無口の人だからすんごい真顔で。

 ショックだった。狙えると思っていた代表がこんな形で幕を閉じた。

 私の1年最初の高校大会デビューはなしで終わった。どの部活も後輩よりも先輩が最優先だからしょうがないよね…。

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 代表発表が終わるといつもと同じのデュエル部の練習は始まった。

 今日の朝は大会がんばってねと神崎さんにいわれたけど代表すら選ばれなかったなんてあわせる顔がない。でも神崎さんは優しいから励ましてくれるんだろうと思いながら、部活を続けた。

 悔しい思いをしながら長い時間を終える。夕暮れに近くなると今日は早めに部活動を切り上げる。

 

「奈々川。話がある…」

「えっ…。僕ですか?」

「ああ。そうだ。ちょっとだけ俺に付き合え。すぐ終わるからな」

 

 デュエルディスクを自分のかばんに仕舞おうとした時、部長は急に私を呼び出した。

 

 

 

 私は杖をついて歩く部長の説明されて、事実上連れて行かれた。

 いつも怪しい部長が私一人を呼び出すことは滅多にない。それも私だけだ。おそらくだけど何か話があるんだろう。

 目が見えない部長の為に私は手をつなぎながら、部長に指示された箇所に進んでく。

 男の人と手を繋ぐのは慣れないな……。恋人でもないのに手を繋いでいくとかあるのか。

 彼女の神崎さんはいつも手を繋いでいるから慣れているが……。でも今は恋人でもなんでもない。

 変な気を起こしてはダメだと考えながら、部長の手のぬくもりを感じていく。

 

 そして部室から出て数分の場所に、進むと外に倉庫が見えた。その倉庫の扉を扉を開ける。

 この倉庫はデュエル部の倉庫であって大量のカードといろんな種類のデュエルディスクが転がっている。

 それにしても不気味だ。部長はほとんど無口なのも影響があるのかもしれないが、ここの倉庫が薄暗いのもあっていいイメージではない。

 

「きゃっ」

「………」

「何するんですか!! 部長!!」

 

 突然部長の手が離されて、私は突き飛ばされた。私は後ろから倒れて、悲鳴を上げながら尻餅をつく。

 盲目の部長だからって、力がないイメージがあったがそれでも男の力だ。女の私ではかなわないほどの力だろう。

 そして部長は倉庫の鍵を閉める。

 

「何をするつもりなんですか? 部長……」

「これで俺とお前は二人っきりだ…」

 

 私はいやな予感しかしなかった。いつも何を考えているかわからない部長は信用ならない。

 二人っきりで閉じ込められたとなると清水さんと堀内先輩のように、襲われそうになった事件のことしか思い出せない。

 それほど私は部長に対して怖かった。私はあれを再現されるのではないかと、地面を背にしながら震えている。

 

「これからお前と重要な話がしたいから閉じ込めた。邪魔者が入るとめんどくさいからな…」

「重要な話…?」

「そうだ。重要な話」

「僕をどうするつもりなの……?」

「…。勘違いするな。俺は堀内のようにお前を襲おうという考えはない。心配するな」

 

 流石に、部長は同性愛者の清水さんや堀内先輩のように襲おうとするわけはないか……。

 私がこの学校で知っている一番まともなキャラだけであって安心した。

 だが、ほっと安心したと束の間に別のことを言われて私は驚く。

 

「お前は女だ。どうして男としている?」

 

 私の感と的中した。部長が私と初対面時にも会ったときと同じ台詞を言われる。

 

 

「何を言ってるんでしょうか? 僕は立派な男の子ですよ。彼女だっていますし…」

「そうか…」

 

 私は緊張から震えて表情や声の高さを変えているのに対し、部長はさっきから何も変わらず同じテンションであり続ける。

 女ではないと私は必死に部長に言い聞かせるがまるで私の話を聞いていないかのような言葉だった。

 ばれてしまったのか…。私はただお父さんを喜ばせるためなのに、好きになってくれる女の子までだまし続けて…。

 もう取り返しのところがつかないところまで来ている……。これ以上を突き進めてくる部長に恐ろしさを感じる。

 

「そうか。そうか。お前は男か」

「そうですよ。男ですよ。何言ってんですか? 部長に初めて会った時から、僕は男だって言ってじゃないですか」

「バレバレなんだよ。お前が女だっていうことくらい」

 

 私は部長がどんなキャラなのか全くわからない。ずっと私の部長としてデュエルを教えてくれたけどただそれだけだった。

 ほとんど無口だし私と1対1で会話したことがあまりなかった。私は部長が目が見えない人としか知らない。

 それなのに私のことは全て知っているかのように部長は話す。私は何を否定しても全て無駄だった。

 

「お前と出会ってからすぐに怪しいと思ったよ。握手した時の手の感触ですぐにわかった。女性の手は特徴として男と比べて大きさが桁違いに違う。お前の手はスベスベで指が細長くてしなやかだ。きっと綺麗な手をしているんだろうな。今さっきお前と手を繋ぐようにわざわざ指示したけど、女性の手の感覚がしすぎだ! それに何より致命的なのはその声だ。お前の声は周波数が高いし、語尾も伸ばしている。ばればれなんだよ。いくら男を演じようとしても声が、女の特徴を表している」

「何を言ってるんですか? 僕は男の子ですよ」

「俺が目が悪いからってそう簡単に誤魔化せると思うのか? ただ男装しているからって俺には誤魔化せないぞ!! 俺には全てばればれなんだよ!!」

「………」

「これは俺の一人ごとだが…。もしお前が女だとしたらお前は男の戸籍を偽造していることになる。お前は存在しない人間を演じていることになるからな。公正証書原本不実記載の罪で5年以下の懲役か50万円以下の罰金だ。その覚悟もできているのか!? 警察にばれてお前の貴重な高校生活をパーにすることを」

「何を言っているのですか?」

「お前がそれでも男として通すなら俺はこれ以上何も言わない。俺はその話がしたかっただけだ」

 

 堀内先輩が言ってた。部長は目が見えない代わりにほかの五感は発達しているって。それも異状とも思えるくらいに。

 清水さんが私のことを女性とわかっているのは、こういう女性の特徴があったからだったのか? 部長には隠してもすべて無駄だと察した。

 

「…。全て話すよ」

 

 私はついに諦めた。部長は情報整理のエキスパートらしい。堀内先輩が信用するほどデュエル部の部長を任されるくらいだから、部員全員の責任感があるのだろう。

 私もカイザーの暴力問題のように知ってもらえるように全て本当のことを話した。私がなぜ男として生きているのかと。

 

 

 

「僕の家族にはプロデュエリストの父、デュエルアカデミアの教師をやっている母、そして僕には双子の兄がいた。僕の今使っている名前のユウヤと同じ名前の兄が。昔からデュエルがとっても好きで、デュエルキングになるっていう夢を持っていたんだ。けど……お兄ちゃんは悩みがあったんだ……」

「………」

 

 私の話を目を瞑りながら聞いている部長。私の話に何も突っ込んでこないので、真剣に聞いていると雰囲気から聞き取れる。

 

「僕という存在がすべての現況さ。僕がデュエルと勉強ができるからお兄ちゃんは、僕と比べられたんだ。ユウヤお兄ちゃんは昔は好成績だったが、年齢が上がってくるたびに伸びが悪かった。次第には平凡の順位だったため、父にいつも怒られていた。それもただの叱り方ではなく暴力も交わっていた。なんで、お前はデュエルができないんだと……。お兄ちゃんが暴力を振るわれているのをただ、僕は見るしかなかった。お兄ちゃんはなぜ、自分はデュエルができないのかいつも悩んでいたんだ」

「………」

「僕のお父さんはプライドが高かったんだ。全盛期はプロリーグで何度も優勝する程のつわものだった。今は、とっくに私の父の名はみんな忘れていると思うけど、当時は僕の彼女の神崎ミカ並みに知名度があった。だから突然スランプに陥って勝てなくなっておかしくなったんだ。それをすべて僕のお兄ちゃんにぶつけてたんだ。もともとは父はお兄ちゃんを自分が果たせなかったデュエルキングにさせようと、教育していたけど出来が悪かったから余計お父さんは苦しんだ。この成績ではデュエルキングはともかくプロデュエリストも、就職でデュエル関係の仕事に就くのは難しいってね。成績が良かった僕と比べて出来底ないってお兄ちゃんは追い込まれていた……」

「……」

「僕の家族は気が付いたらいつの間にか狂ってしまったよ。僕の母は父の仕事のリストラと暴力が原因で離婚した。お兄ちゃんもさらに荒れて不良になってしまった。そして事件は起こった」

「…………」

 

 徐々に暗い話となってくるのに比例して、私の表情は暗くなっていく。だが、部長は表情を一切変えずに黙ってすべてを聞いてくれる。石造のように固くしながら動いてくれないので、本当は耳で流しているだけなのかと、少し心配だけど。

 

「精神にやられてしまったお父さんは、私とお兄ちゃんを巻き添えにして無理心中を図ろうとしたんだ。そのおかげでお兄ちゃんとお父さんは……」

「もういい……。これ以上のことは話すな!」

「え?」

 

 私の話を中断するように、部長は倒れている私に手を差し伸べてくれた。私はその手を拾って立ち上がる。

 その手は今まで生きてきた人生の中で、一番というほどとっても温かい。

 

「だけど、僕は家族のことを恨んだりしたことは一度もないよ。僕は家族のことが今でも好きだ」

「………」

「だから僕は生まれ変わったんだ。お兄ちゃんとお父さんの夢でもあったデュエルキングになるっていうことを!」

「お前は力強いんだろうな。俺が今まであった人間の中で一番明るい。その強さが力になっているっていうことを忘れるな。力の秘訣を忘れるんじゃないぞ!!」

「はい!!」

 

 私は掛け声をあげる。

 

「そういえば、電気つけるのを忘れていたな……」

 

 そういうと部長は暗かった雰囲気を明るくするかのように、倉庫の入り口付近の壁のボタンを押して電気をつける。

 盲目の癖に普通の人間がやるようにやっていたから、どこに何があるのかこの人は全て把握しているんだろう。

 慣れているように素早かったから、本当は私の手を差し伸べなくてもこの人は一人で、ここまで実は来れるのではないのだろうか?

 

 

「言い忘れていたが、そのことは皆知っているのか?」

「いえ…。知っているのは部長合わせて2人だけです。もう一人は僕のことを女だと知っている女の子が……」

「……。そうか…。わかった…。だけど、男って偽っている以上お前は女として扱わないぞ!」

「え?」

「お前も俺の部員だからな。これからもお前は男同士の部活に付き合ってもらう。お前も十分戦略内だからな。このデュエル部一番の秘密兵器だっていうこと。ついて来い!! 奈々川!! だが、お前がその夢に叶うとは俺は保障できない。男のフリをしたっていつかばれる。それに女のお前がこれから成長過程の思春期の男に勝てると思うか? 大会でも勝ち続けないといけないんだぞ」

「わかってる…。僕もこのことは承知済みさ」

 

 部長はこれ以上は私に深いことを聞かずにこのことは部員皆に黙ってくれると言ってくれた。

 私はそれに信用できた。どうしてなんだろう。この人も神崎さんと同じように安心感を与えてくれる。私のことを知って欲しいと思っているからだろうか。

 

「部長!! 僕とデュエルをしてください!!」

「………」

「僕も部長のことを知りたい。僕と全力でぶつかってくれませんか!?」

 

 私も部長と同じように知りたい。デュエルは戦った相手の全てを知ることができる。だから私は部長と戦うって決めたんだ。

 そして……。部長の返事はオッケーだった。

 

 私はバッグからミカから貰ったお気に入りのデュエルディスクを取り出す。部長も倉庫においてあった物を使って腕に付ける。

 2人は互いに向き合ってデュエルディスクを広げる。倉庫は狭くて暗いけどこのデュエルはそんな暗い戦いではない。

 これは部長のことを知る全力でいく戦いなんだ!!

 

 

 ナナ LP4000

 部長 LP4000

 

 

「先行は俺からだ…。俺のターン……。ドロー…!!」

 

 普通のデュエリストとは違い部長はデッキからゆっくりとカードを加える。そして右手で持っているカードの束を左手で触り始める。

 おそらく目の変わりに手で自分の手札を確認しているのだろう。

 

「俺は手札から『ショット・ガン・シャッフル』を発動…。効果によりライフを300払い俺のデッキをシャッフル…」

「何でそんなカードを…?」

 

 部長 LP4000→3700

 

 

 自動処理で部長のデッキがデュエルディスクのオート機能によってシャッフルされる。

 わざわざデッキをシャッフルするだけなのに300ライフも払うのは理解できない。だったら別のカードでもシャッフルできるっていうのに…。

 

「俺はターンエンド!」

 

 部長のデッキは一体なんだ…。デッキをシャッフルしただけでターン終わりにしてノーガード戦法だなんて…。

 

「僕のターン!! ドロー!!!」

 

 私のターンへと示すように自分のディスクにランプが点滅する。私は力いっぱいデッキのカードを引き抜いた。

 そしてそれを手札のカードとして追加してどう攻めるパターンを作るか考える。たとえ攻撃を誘っていようとも。

 

「僕は手札から『XX-セイバー エマーズブレイド』を召喚!!」

 

 カードに力を込めて力いっぱいデュエルディスクに置くとカードの絵の通りに、複数の剣を持つ昆虫型の戦士が実態化される。

 

「手始めにこっちから攻める!! 僕は『エマーズブレイド』でダイレクトアタック!!」

 

 隙がありまくりの部長にエマーズブレイドはエックスを描くように切り付ける。

 

 部長 LP3700→2400

 

 

 ダメージを与えることに成功して先手を取り、私はうまく言ったと思ったがそれは一瞬。

 部長が手札からカードを横向きでカードを置くとそのカードが出現していく。

 

「『トラゴエディア』。このカードはダメージを受けた時に特殊召喚できるカード…。そしてこのカードは手札の枚数1枚に付き600ポイント攻撃力が上がる」

 

 部長の手札は4枚。それでも攻撃力は上級モンスターに匹敵する2400か……。簡単に特殊召喚できる性質のカードなのに並の切り札くらいに凶悪な効果まで…。

 

「僕はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

「俺のターン!!」

 

 このドローで部長の手札は5枚になった。これで手札の戦略が増えたと同時に『トラゴ』の攻撃力も上がったわけか…。

 

「バトルフェイズに移動する…。俺は『トラゴエディア』で『エマーズブレイド』に攻撃する!!」

「いいよ。僕は何も発動せずに通すよ」

 

 大きな黒い蜘蛛の形をした悪魔がイナゴの戦士に大きく食らいつく。

 『エマーズブレイド』が簡単に破壊されてしまったが、私が伏せカードを使わずに効果を使ったのはこのカードの効果を信頼しているからさ。

 このカードが破壊された時デッキからレベル4以下のXセイバーを特殊召喚できる効果がある。私が選ぶのは…。

 

 ナナ LP4000→2300

 

「僕はもう1枚の『エマーズブレイド』を特殊召喚!!」

 

 部長はバトルフェイズを終えすぐにメインフェイズに移行する。

 カード1枚1枚は重要だが『トラゴエディア』の特性としてカードがなくなっていく度に攻撃力が弱くなる特性を回避するためのプレイングだな。

 

「俺は手札から『デーモンの宣告』を発動!!」

「まさかとは思ったけど…。部長のデッキは天変地異コントロール」

「なるほど…。カード1枚だけで奈々川はそう思ったのか…」

 

 長年の勉強から私は部長のデッキは『天変地異』を利用したコントロールデッキだと発覚する。

 おそらくだけど次に部長が発動するのは『天変地異』のカード。このカードはお互いのデッキを表向きにするという変わった効果を持つカード。

 その効果でお互いのデッキをひっくり返して得る情報アドバンテージで相手をコントロールするデッキなのか…。

 

「バレバレですよ。先輩。次に『天変地異』を発動するつもりなんでしょ」

「ふふ…。お前は面白い…。お前のカードプールの知識は俺以上かと思うくらいにすばらしい…。が、俺のデッキにはその『天変地異』のカードは入ってない」

「入っていないだと……。じゃあどうやって『デーモンの宣告』の効果を当てるつもりなんだ!?」

「簡単なことさ。俺にはその『天変地異』がいらないからだ…!」

 

 『デーモンの宣告』は自分のデッキトップを当ててそれが当てれば手札に加えられる効果を持っている。

 それを『天変地異』なしで当てるなんて運要素が強いにも程がある。部長は運で当てるつもりなのか。

 

「『デーモンの宣告』の効果発動。ライフを500払い、俺は『禁止令』を選択する!!」

「っ!?」

 

 部長はデッキのカードを捲る。それを自分で確認せずにまず最初に私に見せる。

 

「どうだ…。お前にはこれが『禁止令』に見えるか…!?」

「どうして…」

 

 部長の手に持っているカードは紛れもなく『禁止令』だった。こんなの偶然なんかじゃない…。

 運で部長がカードを当てたなんて思えない。だって部長は慣れたような手つきだったから……。

 

「『禁止令』を発動。『大嵐』を選択する…。選ばれた名のカードは使用することができない」

 

 これも感なのか…。私の手札には『大嵐』のカードを握っている。永続魔法の宿命として除去カードに弱い。それを見越しての為にわざわざ…?

 

「俺は『ショット・ガン・シャッフル』の効果でお前のデッキをシャッフルする。そしてカードを1枚セットしてターンエンドだ…」

 

 今度も部長はまたデッキをシャッフルするだけの効果の永続魔法を使った。

 私は同様せずに自分のデッキがオートでシャッフルされる流れをポツンと見続ける。この行為は私にとって無害だと。

 

 

 部長 LP2400→1900→1600

 

 

「僕のターンドロー!!」

 

 私はデッキのカードを捲る。引いたのは守備モンスター単体を除去できるだけの『シールドクラッシュ』。

 今は『トラゴエディア』は攻撃表示となっているから正直この状況で引いても嬉しくない。せめて前のターンで使いたかった。

 そのまさかだと、部長が前のターンの最後に使った『ショット・ガン・シャッフル』でドローカードをずらされたわけではないよね……。

 

 ………。さてどうする…。

 『トラゴエディア』の攻撃力を下げてまで伏せたカードは明らかに怪しい。

 ここは『大嵐』を使ってすべてを吹き飛ばしたいけど使用は禁じられているから不可能。それにチューナーも手札に握ってないから『XX-セイバー ヒュンレイ』も狙えないな。

 

 

 

ナナ

LP:2300

手札:4枚→5枚(1枚は大嵐)

場 :モンスター

   XX-セイバー エマーズブレイド

   魔法・罠

   伏せ1枚

部長

LP:1600

手札:3枚

場 :モンスター

   トラゴエディア

   魔法・罠

   禁止令(大嵐を選択)

   デーモンの宣告

   ショット・ガン・シャッフル

   伏せ1枚

 

 

 

「僕は手札から『おろかな埋葬』を発動して『X-セイバー パロムロ』を墓地に送る。次に『XX-セイバー アクセル』を攻撃表示で召喚!! バトルだよ!」

 

 だったら別のやり方で攻略するまでだ! 青い髪に青い鎧を身にまとったXセイバーの仲間『アクセル』を呼び寄せる。

 

「『エマーズブレイド』で『トラゴエディア』を攻撃!!」

 

 イナゴの剣士がジャンプして巨大な蜘蛛のモンスターに飛び掛ろうとする。このままだと私のモンスターは負けてしまう。

 けど私には前のターンに伏せてあったこのカードがある。伏せてあったカードに私は手を掛ける。

 

「トラップ発動!! 『攻撃の無敵化』!! このカードには効果は2つある。そのうちの1つの効果、このバトルフェイズ中、僕が受けるダメージは0になるを選択!!」

「そう来たか…!!」

 

 『エマーズブレイド』は返り討ちにされてしまう。でもこれでいい。本当の狙いは…。

 

「『エマーズブレイド』の効果で僕は再び『エマーズブレイド』を呼び寄せる。そして『アクセル』の効果! ほかのXセイバーが破壊された時にデッキからカードを1枚ドローできる!」

「………」

 

 私はデッキの上をドロー。それでも部長は目を瞑りながら私の正面に冷静で立っている姿から、私にプレッシャーを与える…。けど、

 

「もう1回『エマーズブレイド』で『トラゴエディア』に攻撃…」

 

 さっきと同じやられるソリッドビジョンが映し出される。だが、『攻撃の無敵化』でダメージは一切受けない。

 どうやら自爆特攻は部長には防ぐ手段はないみたいだ。

 

「『アクセル』の効果でドロー。そして『パロムロ』を特殊召喚! 『パロムロ』も自爆特攻するよ」

 

 再び『アクセル』の効果でドローする。

 どうやら部長に止められないコンボを仕掛けるのに成功したみたい。この攻撃に対して部長のセットカードがオープンしないなら、それは攻撃時に発動するカードではないのだろう。

 

「墓地にある『パロムロ』は戦闘破壊された時、500ライフを払うことで特殊召喚できる。もう1体の『パロムロ』が破壊されたことで特殊召喚!!」

「ふん…」

 

 部長はわざとらしく鼻で笑う。

 

 ナナ LP2300→1800

 

「『アクセル』の効果でドロー。部長は気づいていないみたいだね。これが無限ループ地獄になっていることを」

「……!?」

 

 長い髪で隠れている目を大きく開け、ようやく部長は自分の置かれていることがわかったか…。

 これはカイザーにもやった無限ライフ回復コンボの応用だ。

 今回は『レインボーライフ』じゃないから自分のライフがどんどん減っていくことになるんだけど…。

 

「『パロムロ』で再び『トラゴエディア』に特攻。『パロムロ』の効果で500ライフ払って再び特殊召喚!! 『アクセル』の効果でドロー!! もう1回『パロムロ』で…」

「残念だったな…。無限ドローコンボとは言ってもお前のライフは無限にはない。『パロムロ』のコストを払うのに限度がある…。いくらカードをドローしようとお前のライフが減るだけだぞ…」

「そのくらい承知ずみさ…。本当の狙いは…」

 

 ナナ LP1800→1300→800

 

 私が狙うコンボでどんどんライフが減っている現象を、部長は考えながらいう。

 部長の言う通りで4000制のこのルールでは『パロムロ』の払うライフにはたった数回しか使えない。

 でもこれで十分なんだ…。私は手札に握ってあるこのコンボでドローした1枚のカードを右手で触る。

 今までドローしてた理由は部長を倒すための切り札、このカードに全てを掛けていたのだから。

 

「『パロムロ』をリリースし『エネミーコントローラー』を発動。第2の効果。自分のモンスターをリリースすることでこのターン相手のモンスターのコントロールを得る! これで僕は『トラゴエディア』を選択する!!」

「…っ!?」

 

 古いゲーム機のようなコントローラーが現れそれが『トラゴエディア』につながれる。するとリモコン操作で動くロボットのようにモンスターに、装着されこちらの元に移動する。

 

「『トラゴエディア』の攻撃力は自分の手札の枚数分の攻撃力アップするんだよね」

「まさかその為に…」

「そう。僕の手札は今までドローし続けていたから手札は9枚ある。よって『トラゴエディア』の攻撃力は5400。これでとどめだ!! 部長に『トラゴエディア』ダイレクト!!」

 

 勢いよく部長に指を刺して攻撃の命令を出す。私はほっとしてずっとデュエルの姿勢にして構えてあった体勢を崩す。

 『トラゴエディア』が攻撃するというシーンを見ながら、私はあることを考えていた。

 ついに私は部長を倒したんだな…。部活の頂点に立つ部長を超えることができて私は満足だ。

 

 

 

 

「これで終わりだと思ったか!」

「…何で…!?」

 

 私は突然の出来事に理解できなかった。部長の場にはなぜか私のXセイバーの仲間『XX-セイバー フラムナイト』がいる。

 『フラムナイト』はフィールドにいるとき、1度だけ相手の攻撃を無効にすることができる厄介な効果を持つ。

 自分で使うと頼もしいのにそれが敵になるとこんなにも恐ろしいなんて…。

 でも部長のデッキはXセイバーデッキではない。それなのに私のカードがどうして部長の場にいるんだ!?

 

「『徴兵令』を発動していた…」

「『徴兵令』?」

「そうだ。このカードは相手のデッキトップを確認してそれがモンスターカードだった場合、自分の場に特殊召喚できるカードだ!」

 

 これも完全運要素が強いカードなのにどうして『デーモンの宣告』のように当たり前のように部長はまた成功したの?

 ただいえるのは『アクセル』や『エマーズブレイド』の効果で、さっきから私のデッキの上が変動していたことだ。

 私がオーバーキルしないで『エネミーコントローラー』を引いた時点で止めておけば『徴兵令』を使われなかった…。

 でもそれは結果論で私はデッキのトップカードなんて知らない。私のデッキをシャッフルし続けていたのが、プレイングミスだっていうのか?

 

「くっ…。僕はカードを4枚伏せてターンエンド……。この瞬間『トラゴエディア』は持ち主のフィールドに戻る…」

「俺のターン…。ドローーっ」

 

 私は、ブラフの『シールド・クラッシュ』含む4枚のカードをセットする。

 ライフはこのコンボを狙ったリスクとしてたった800。

 風前の灯火で今すぐにもライフをなくなってしまいそうだが、私はこのコンボで増えた手札で作った強力な布陣があるからそう簡単には負けない。

 この無限ドローで引いた超強力カードをセットした。部長のターンを防いで、次の私につないで勝ちにつなげる。

 

「手札から俺は『ナイトショット』を発動!! フィールド上にセットされたカードを破壊する。この効果の対象となったカードはチェーンできない」

「…そんな……」

 

 カメラが現れピカッと自動でボタンがへこみ、私のフィールドにフラッシュバックする。

 すると私のセットされている1枚のカードが消えていた。それもまた数ある伏せカードの中にも狙ったようにピンポイントで…。

 

「『ラストバトル!』か…。このカードは禁止カードということでデュエルの勝利条件を特殊な物に変える強力カード…。どうやらお前は保険にこのカードを持っていたようだな。これでモンスター1対1対の特別なバトルを行いこれでモンスターが生き残ったプレイヤーは勝利できる。お前はこれでいざというときに墓地の『パロムロ』を使うことで引き分けを持ち込むつもりだったか。『ラストバトル!』の効果で強制戦闘とはいっても、互いのモンスターが生き残ったり、いなくなったりしたら引き分けになるからな」

「はぁ……。禁止カードってうまく発動できないよねー…。どうしてかませになっちゃうんだろう…」

「不自然すぎるんだよ。もう1枚ドローできるはずなのに、『パルムロ』のライフコストを中途半端に残していたのはこのためか」

 

 ブラフもあったはずなのに禁止カードを選ばれるなんてついてないなー…。

 でも部長はピンポイントに狙っているように見えるは偶然か?

 たった1枚の除去カードでこのカードを運よく選ぶなんて、運がいいにもほどがある。

 

「俺は『フラムナイト』をリリースして『モンスターゲート』を発動!! このカードの効果によりモンスターが出るまでデッキを捲りモンスターが出た時、そのモンスターを特殊召喚する…」

「っ!?」

 

 突如丸く穴が開いた謎の空間が現れる。その空間に『フラムナイト』が吸い込まれていく。

 これも運要素が強い不確定な魔法カード。せっかくのチューナーモンスターを捨てるなんて私には考えられない。狙いは一体何なんだ。

 部長はデッキを次々と1枚1枚捲って私に見せる。そしてモンスターをあらわすカードの色を引いた。

 

「俺が捲ったのはこのカード。『オネスト』!!」

 

 開いた空間から歩いてきたのは背中に白い翼を生やした男性の天使が登場…。

 このカードは手札にあるときダメージステップに捨てることで攻撃モンスターの攻撃力分上げることができるカード。

 『トラゴエディア』に『オネスト』…。部長のデッキ。光と闇を示したもの…。天変地異コントロールに見えてカオス軸? ますます私は混乱する…。

 

「手札から『アレキサンドライトドラゴン』を通常召喚!!」

 

 アレキサンドライトと呼ばれる宝石を聞いたことがある。宝石のように神秘的に輝く綺麗な鱗を持つ龍。たが、攻撃力は2000で効果を持たないモンスター。

 

「『アレキサンドライトドラゴン』と『オネスト』をリリースして俺は手札から『マアト』を特殊召喚!! 」

「このモンスター…」

 

 そのモンスター。全身にエジプトの古代の物だと私は学校の教科書で見たことがある物を見にまとう。

 確かこれは歴史上の人物が大事に扱っていた千年アイテムだというもの。

 これはテレビで過去に現代にもあるとか言われていたらしいけど、最近では話題すらなくなった。とっくの昔に皆は忘れてしまったのだろうか。

 

「『マアト』のモンスター効果…。カード名を3枚選択する…。デッキを3枚捲り選んだカードがあれば宣言したカードを手札に加える」

「これも当てるつもりなのか…?」

「俺は『神聖なる魂』『マシュマロン』『月の書』を選ぶ…」

 

 今度は1枚ではなく3枚を当てるという部長…。平然として普通に行っているけど普通に人間離れした行為をやろうとしていることに私は鳥肌が立つ。

 部長はデッキの上のカードをなれた手つきでぴったり3枚握る。もちろん選んだとおりのカード全て…。

 

「さらに『マアト』はこの効果で加えたカード1枚につき攻撃力が1000ポイントアップする。その攻撃力は3000だ。そしてバトルフェイズ! 『マアト』で攻撃表示の『アクセル』に攻撃!!」

「部長…。まさかだとは思いますが、自分のデッキの上と私のセットされているカードがわかるんですか?」

 

 『マアト』は千年アイテムのロッドを武器として無防備の『アクセル』に突き刺そうとするビジョンを眺めながら、私は部長に思ったことを冗談口調で聞いてみる。

 

「ああわかる…」

「やっぱり…」

「何のために俺が毎日部室に来ていると思っているんだ? お前たち1年のデッキを少しでも知るために来ている。お前のデッキのことならすべてお見通しだ」

「………」

「このことについてお前は俺のことをどう思うか? 俺が怖く見えるのか?」

「今までやって見せたプレイングは運ではない。だって最初の流れからわかるよ。そのくらい」

 

 私が思うのは部長の今までの行為は私の手札を監視カメラで監視しているとか、自分のデッキに細工しているわけではない。

 まじめで仲間思いの部長のことだから決して不正なんかじゃない。

 

「堀内先輩から聞いたよ。目が見えないから代わりに鼻と耳が人より優れているんでしょ」

「………」

「部長はすごいよ。僕は尊敬するよ。友達みんなはさえない先輩だっていうけど僕は違う。だって僕達のカードを毎日見ているってことは今、僕の今、伏せてあるカード、手札、デッキの上のカードが全てわかるんでしょ。こんなの仲間思いの部長にしかできないよ」

「…………。ああ、そうだ。お前たち1年のカードの微かな匂い、カードをプレイしたときの風圧や音、すべてを暗記させてもらった。お前たちをデュエル部のメンバーとして信用させるために、覚えたんだがな」

 

 年上の堀内先輩は柔道部の部活があったり、カイザーはサボり癖があるのにも関わらず、部長はほぼ毎日来ている。

 デュエルのアドバイスはほとんどないし部活の内容を告げるだけで、ほとんど無言で目を瞑っている部長だけどただいるだけではない。

 裏ではこうやって僕達以上に努力を重ねていたんだ。部長として、そして仲間のために…。

 

「でもね。部長はやっぱり弱点がある。部長はミスしたんだよ。トラップ発動!! 『次元幽閉』!!」

「……っ!!」

「モンスターの攻撃時に発動できるカード。フィールド上の攻撃モンスターを除外する」

 

 やっぱり伏せカードは全て見えると言っていたけどこのカードの存在には気がつかなかったか。

 部長の『マアト』は、突然、次元の狭間が歪み出した穴に吸い込まれて消えてしまう。

 

「やはり匂いか…。この香水の匂いには気がつかなかったみたいだね。僕がドローしている間にこのカードだけちょっと細工してもらったよ」

 

 私は神崎さんがいつも愛用している香水を取り出す。

 過去に聞いたことがある。アロマ・タクティクスと呼ばれるカードに匂いを付けてデュエルをしている人がいると。

 でも部長はほとんど無臭のはずの私のカードを当てることができるプロ。だから聞いたことがない匂いにはわからなかった。

 

「ほう…。面白いことをするな…。奈々川は…。俺の戦略を見てそんな行為をされたのはお前が初めてだ…」

「僕だってこんな人間離れした超能力みたいなことをする人初めてみましたよ」

「だが、お前こそ重要なミスをした。俺がわざわざ訳のわからない相手の罠カードに突っ込んで終わりだと思うか?」

 

 やっぱり私が仕掛けた罠もお見通しじゃないのか…。部長は笑っている。部長が笑っている顔を見るなんて見たこともない。

 

「俺はライフを500払う。『デーモンの宣告』の効果により俺は『火炎地獄』を選択する…」

「えっ!?」

 

 また部長は直感で自分のカードを当てようとする……。

 しかも部長は相手に1000ポイントのダメージを与えることができる止めを刺すバーンカード…。ライフが800しかない私は嫌な予感が頭によぎる。

 まさか……?

 

 部長 LP1600→1100

 

 

 

 

 部長がカードを捲る。結果は…。

 

「ははっ。『火炎地獄』で止めを刺すなんて脅かさないでくださいよ。部長のデッキにはライフ変動が痛い『火炎地獄』なんて入ってないでしょ」

 

 捲ったカードは魔法カードを表す緑色のカードではなかったことから、『火炎地獄』ではない。

 モンスターの色をしている肌色のカードだった。部長はミスしたんだと確信する。

 『デーモンの宣告』の外したリスクとしてそのモンスターは墓地に置かれる効果がある。

 

「僕には大量にドローしたことで手札がいっぱいある。当然アドバンテージに差が開いている今ならいくらでも部長を倒せるパターンがありますよ」

「俺が間違えたというのか? よく見てみろ!!」

「…!?」

 

 私は墓地に送られたカードをデュエルディスクの機能を使って急いで確認する。あの部長が外すわけなんかない。わざと外したんだ…。

 

「『エクリプス・ワイバーン』が墓地に送られた効果で俺はデッキのレベル7以上の闇族性ドラゴン、『混沌帝龍 -終焉の使者-』を除外する」

「え?」

 

 私はこの行為に意味が分からなった。

 

「そして光2体を除外して『神聖なる魂』を特殊召喚!! さらに墓地の『エクリプス・ワイバーン』が除外された時、この効果で除外したカードを手札に加える!!」

 

 『混沌帝龍 -終焉の使者-』の名を聞いて私は絶望する。このカードはデュエルモンスターズ史上最強のカードともいわれる……。

 これをいつでもサーチしてとどめをさせるからわざとこんなプレイングを取ったんだ…。

 

「残念だったな。これで終わりだ…。奈々川…。墓地の光と闇を除外して『混沌帝龍 -終焉の使者-』を特殊召喚!!」

 

 もはや説明不要のゲーム破壊カードを召喚されてそれを防ぐ手段はなくなった私の場と部長の場を、混沌の龍が全てを目茶目茶に吹き飛ばされる。

 その効果により私の残りライフは消し去った。

 

 ナナ LP800→0

 部長 LP1100→100

 

 

 

「ありがとうございました…。部長…」

 

 私はぐっと悔しさを堪えながらお辞儀をする。私は部長とほぼ互角戦えて満足だ。

 

「部長…。大会がんばってください…。僕は後輩として応援しますから…」

 

 私は部長に負けの姿を見せ、ここから急いで倉庫から立ち去りたかった

 大会のことを思うと私は余計悔しさが体に滲む。だって大会は一学期だけじゃない。

 今度こそまた半年後に部長に選ばればいいじゃないか…。悔しさをばねにしてがんばればいいじゃないか…。

 

「待て…!」

「えっ…」

 

 持っている杖を離し、部長は急いで私を止めようと触られた。

 

「堀内が大会を辞退するみたいだ」

「えっ…」

「お前は中堅としてデュエル部の代表選手として戦ってもらう。よろしく頼むぞ。奈々川!!」

「……はい!!」

 

 私は部長が話した言ってる言葉の意味がしばらく理解できなかった…。

 部長が何度も私を説得しようとしてようやく内容が掴むことができた。

 

「こんな面白い戦略を組み立てるお前がこの部活に役に立たないってことはありえないからな…。お前は強い。もっと自信を持て!!」

「ありがとうございます…」

「俺は部長としてお前を表で活躍させてみせる。そのお前の大きな夢を手伝ってやる…。だから頑張れ…」

「ありがとうございます……。ありがとうございます…」

 

 馬鹿の一つ覚えみたいに私は何度もお辞儀しながら涙をこぼさないようにした。

 私の心の中は嬉しさとびっくりしている複雑の気持ちでいっぱいだった。

 

 

 どうやら堀内先輩は柔道部も入っているみたいでちょうど、柔道部の大会とデュエル部の大会が被ってしまったようだ。

 そこで柔道の腕もデュエル顔負けの先輩は、こっちも重要な選手の扱いらしく抜けないポジションの為、柔道を優先した。

 それより堀内先輩ってカイザーにもデュエルと柔道どっちが好きなんだよって言われてたな…。

 ほんとあの人は一体何者なんだよ…。高校デュエル大会4位って自慢してた癖にあっさり大会のエントリーを捨てるなんて。

 

 あとで聞いた話によると堀内先輩は私のことが男として好きだから、必死に代表を狙っていた私の話を聞いていたみたいなんだ。

 ありがとう…堀内先輩……。でも私は堀内先輩の狙っているホモの恋愛関係は気持ち悪いからいやだよ。

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