遊戯王~デュエルキングを目指す少女の物語   作:魔法使い?

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第2章 たいかいへん
第23話『ライバル登場!?』


 入学してかなりの月日がたち、気が付けば海の日の近くの夏休みに。

 休みが近いから授業はほとんどなく学校は終わるのは早くてももちろん部活はまだ続く。

 サッカー部には全国高校サッカー選手権、野球部には甲子園に目標を立てているのか、外を覗くと一生懸命練習している学生たちの姿が。

 もちろん私達デュエル部にも高校デュエル甲子園という大きな大会があるので、休む暇なく部活が続いていた。

 

「奈々川。話がある。来い」

「僕!?」

 

 活動が終わって、私だけ残ってカードを片付けをしていた際に部長は急に私を指名させられた。

 動きを止め、私は何のことなんだろうと部長のほうを見る。

 

「お前も知ってのとおりこれから大会が始まる。そこでだ。お前にはマネージャーになってもらう」

「急にマネージャー!? えっ!? デュエル部にはマネージャーなんていなかったのに!?」

 

 今までこのデュエル部にはマネージャーなんていなかった。

 よくある運動の部活ならば、女性が男性部員の為に掃除、洗濯などの雑用や、スケジュール管理、スコア記録などの記録係や、やる気を出させるために応援など様々なことをやるのは知っている。

 だが、この部活は運動部なわけではないので今までいなかった。いらなかったのだから。

 なぜ急にマネージャーなんてと思っていると、その理由は部長が話してくれた。

 

「なに、簡単なことだ。1週間後に始まる抽選会に参加するときだけお前だけマネージャーをやってもらうだけだ」

「マネージャーって何をやればいいんですか?」

「一般なマネージャーの仕事である選手と選手のパイプ役をやるわけではない。ただお前たち1年生が抽選会に参加するだけでいい。お前はマネージャーとして代表のくじを引き、トーナメントの表の結果を教えてくれればいいんだ。堀内は柔道部が忙しいみたいだし、中里は何するかわからないからな……。俺はごらんの通り目が見えない……ごちゃごちゃするのは嫌いなんでな」

「たったそれだけ……? それがマネージャーの仕事?」

「ああそうだ奈々川。お前は1年の中でもまじめで人一倍落ち着いている。女のお前が一番やるのが間に合ってるだろうと俺は思うんだがな……」

 

 マネージャーの仕事はもっと忙しいと思ったが、雑用として高校デュエル甲子園の抽選を引くだけなのか。

 でも部長は女の私を信用して、こうやって重要なことを任せてくれたのは、とてもうれしかった。

 

「言い忘れる前にいっておくが、中里だけは気を付けろ。お前にいつ危害が加わってもおかしくない」

「思ったんだけど、部長は過去にカイザーは1年前問題があったと言っていたね。一体1年前は何があったんですか?」

「中里か……」

 

 過去に部長がカイザーと喧嘩して話してたときに言っていた。確かほかの学校の生徒と一緒に問題を起して一時停学になったってことを。

 その理由を目を瞑りながら部長は話した。

 

「中里は1年前。あいつは他校の高校と揉めたんだ。地区大会の初戦目でな。俺達冥界学園高校が1勝して、中堅を中里に任せていたときに事件が起こった。手札0枚で相手が残りライフ3ケタのとき、追い詰められた中里はデッキからではなく真ん中のカードから引いたらしいんだ。俺は人ごみが多かったから全く知らなかったがな。だが、それを唯一見かねた今は亡き2年が気が付いてこの試合の後に指摘したらしいんだ」

「今は亡きってやめちゃったってこと? それにイカサマって?」

 

 部長の言葉で私はカイザーとデュエルしたときを思い出す。

 それはお互いデュエルが硬直して、引き分けで終わったこと。不自然な終わり方をしたが、あの状況であんなカードで突破するのはありえるのだろうか……。

 カイザーはまさかあのデュエルでもイカサマをしていたのだろうか。私は考えすぎか……?

 

「そうだ。指摘されて怒りを買った中里は、やってないと言いながら、先輩にもあたるその2年をボコボコにしたんだ。ひどいくらいにやったらしいな。そのおかげで2年はやめてしまった」

「……。他校といってたけど……!?」

「ああ、元々悪でいつも喧嘩口調の中里は、大会である有名な不良校とあたってな。極東高校といってとくに不良が集まる高校だ。その高校とデュエル前にあいつは喧嘩しに乗り込みにわざわざ行ったらしいな」

「……っ!? 喧嘩!?」

「強豪高校である我ら冥界学園の為だからか世間では表沙汰にはならなかったが、あいつはそれで大会出場停止を食らってしまった。真実はどうなったかあいつだけが知ってるらしいが……」

 

 ニキビでリーゼントの男、いつも私が部室で会っているカイザーが改めて問題児だっていうことを、部長の話から知らされることとなった。

 あんな問題児がまた私達冥界学園高校の大将として選手と選ばれたわけだけど……。大丈夫なのかな……。

 乱暴で性格な男だ。部室の中で誰よりも冷静である存在の部長も言い返せないのだろうか? もうすぐ大会が始まるけど問題がなければいいけど。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 そして月日が立ち、ついに待ちに待った高校デュエル甲子園の抽選会の日へと変わった。

 

「ユウヤーー。今日は予選大会の組み合わせが決まる日なんでしょー」

「えっいつの間に!? ミカ!?」

 

 朝、鏡を見ながら歯を磨こうと歯ブラシを持とうとしていたら、後ろから不意をつくようにいきなりミカが現れ、抱き付いてきたので驚いた。

 

「こんな時もラブラブするのは止めてくれよ。やりづらいよ」

「いいじゃーん。私もこれから歯を磨くわけだしーー」

 

 ミカは慣れなれしく私の肩や頭などの体を触ったあと、洗面所の歯ブラシを取り歯磨き粉につける。そしていつも通りの今日1日の最初の会話はミカから始まる。

 私もこの子と恋人になってからいい加減いろんなことに慣れて、いろんなことをされても平気になったが一体この関係はどこまで続くのやら。

 

「全く。名前で私のことを呼ぶようになっちゃって。ミカーー。だって。ちょーうれしい」

「………」

 

 嬉がるミカの様子を見ていると、急に自分が言ったことが恥ずかしくなってしまう。

 いつから私はミカのことを下の名前で呼ぶようになってしまったのか……。自分でも恥ずかしいと思ってしまう。

 

「あんたって付き合いたまに悪いことあるけど、私のこと好きなんでしょ」

「いや、それは……」

「だって、此間あんなにも私のこと好きって言ってくれたじゃない。夜中に一緒に寝ようっていってさ、いきなり抱きつかれるし、耳元で後ろを振り返らないでって言いながら何度も好きだ好きだって言ってくれたじゃない。あの日、とっても興奮したわよ。私ちょーうれしかったわー」

「ブッーーー」

 

 私は思わず口に含んでいた物を勢いよく噴出してしまう。

 それは自分でもなんであの日、行動したのかわかない恥ずかしい黒歴史を話されたこと。

 思い出したくもないことなのに、ミカにとってはいい思い出として印象に残っちゃってるし……。

 お兄ちゃんが言っていた喧嘩していた女の子を一番の励ます方法、夜這いを実践しただけなのにあんなことになるなんて……。

 よばいの意味って全くわからなかったけど、あれでよかったのかな? 夜中に一緒に寝るって意味で……。

 

「あ、そうそう。今日ってあんたの部活の大会の抽選会なんだって?」

「うん。そうなんだ」

「でもごめんねー。今日は抽選回いけないのー。プロデュエルの仕事が忙しいから。でも、大会にはボチボチ顔を出せるから期待しておいてね。応援してあげるから」

「うん。その応援だけでも十分だよ。ありがとう。ミカ」

 

 ミカはうがいをしながらそう言った。

 よく抽選会があることを知っているな。と思ったが、ミカは私の彼女だからってプライベートだけじゃなくて、私の学校のスケジュールとか詳しいのだろうか?

 私は全くミカのプロデュエルの仕事のスケジュールは詳しくないのに。

 

 十分に歯を磨き終わり、私は口を濯いぐと気分と共に歯も綺麗にさっぱり。これで朝の寝ぼけが気分爽快に変わって気持ちがとても楽になった気がする。

 かばんに大切なデッキなど物を詰め込み、これで会場に行く準備が整った。支度を済ませるとミカはエプロン姿で玄関まで待ち伏せしている。

 これも私を愛している行為なんだろうか。でもこの行為が母親のような親切っぷりに私は少々嬉しく感じる。

 

「あんたには前に私が渡しておいた3枚の禁止カードがあるでしょ。このカード達をお守りとして使いなさい。きっとこのカード達が大会で勝利に導いてくれるから」

「もちろんそのつもりさ。大切に使わせてもらう!!」

 

 私はすぐその場で男子用の制服のポケットから『天使の施し』『ラストバトル!』『レスキューキャット』を取り出す。

 ミカを思い出せるように、いつもどこでもすぐに取り出せるようにしてあるから、この場でもミカに見せることができた。

 

 このカード達は世間で言われる使用を禁じられたカード。だが、この高校生活では学生のデュエルを派手に見せる為にどうやら1枚だけなら使用を許可されているらしい。

 デッキを弄るのが好きな私はもらってからすぐに、それを生かせるようにデッキ構築を変えてきた。

 デュエル中、手札とっさに考えたコンボを実践しようとも、うまく生かせなかったからなあ……。

 学年2位の清水さんとのデュエル中はコンボを実践しようとしたがわざと負けられ、部活の中では私的に最強と思っている部長には考えをおみとおしにされ、簡単に破られてしまった。

 だが、今こそ実践のときだと思う。大会となると強敵と何度も戦うこととなるから。禁止カードの力を発揮するときだ。

 

「ユウヤ。頑張ってね行ってらっしゃい」

「ああ。行ってくるよ。ミカ」

 

 最後に靴を履いて靴紐を綺麗に直すと支度が終わる。扉を開けると後ろからミカが見送ってくれる。

 

「ユウヤ。行ってきますのキスは?」

「キ、キ、キキ、キ……キスっ!?」

 

 何でこうなるのか意味がわからない。ミカは目を瞑り、まるでキスをしてくださいと言わんばかりのポーズを取っている。

 

「でもハグなら」

「なっ!?」

 

 私は目を瞑っているミカに一瞬だけ寄り添って体と体をくっつける。そしてすぐに私は扉を出た。

 何だかミカは物足りなさそうだったけど、こんなところでちんたらしていたら、デュエル部の友達との待ち合わせに遅れてしまう。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 ミカの家から電車で約30分の駅から少しだけ歩き、私達の住む県の中央にある公民館でいよいよ地区予選の抽選回が始まる。

 予選とはいえ全32高校チームの巨大な大会だ。元々目が悪い部長はたくさん人が集まるのは苦手で警戒していたように、人の数がとても多すぎる。

 この人ゴミの中、少しでもわかりやすくなるよう友達の宮城とカズマ君を待つため、私はわかりやすいよう公民館の入口で待つことにした。

 

『で、ナナは結局あの子好きっぽいよな。何のためらいもなく抱きつくなんておかしすぎるだろ』

「ユウヤお兄ちゃん……。それは違うよ」

 

 この待ち時間の間に、軽いノリで話しながら急に出てくる、私と同じ痩せ型の体格に短い髪の毛の男の幽霊。

 ミカと私しか知らない今日の朝のやり取りを話されるわけだから、嫌な冷や汗を感じる。

 

『そんなわけあるか。あれどっかから見ても、俺からしてみればお前ら女と女が付き合ってるって感じてるって痛々しいんだよ。見ているこっちが恥ずかしいわ』

「そういわれても、あの子は私のことをユウヤとして見てくれてるんだよ。いまさら彼氏を断れるわけないよ」

『俺の名前を使われているのが余計痛いよ。死んでいるのにさ、ユウヤユウヤって……』

 

 ユウヤお兄ちゃんが成仏できずに、私の中でこうやって存在していて、私の体と共有されて人生の見られていると考えると、ぞっとする。

 お兄ちゃんの夢だったデュエルキングの意思を引き継いで男装している私の痛いところが見られていると思うと。

 

「でも、うれしいと思わない? お兄ちゃんがあの子と付き合っているって感じがしてこない?」

『俺があんな美人と生涯付き合えることはなかったけどさ……』

「いいじゃん」

『よくねえよ。ってかさり気なく話を変えない。で、結局ナナはあの子のこと好きなのか?』

「友達以上恋人未満ってやつかな……。自分でもよくわからない。でも私は男の子のほうが好きだな」

『それ嘘だろ』

「え!?」

 

 否定された。お兄ちゃんは幽霊の癖に、腕を組みながら私の恋愛を馬鹿にする。

 私はこの男装して入学した学園生活で、たくさんの女性生徒、今の彼女のミカ、男の癖に男大好きの堀内先輩、私と同じ姓なのに私が好きでたまらない清水さんなどなど……。

 思い出せば女子に告白されるほうが多かった気がする……。

 なぜか、ユウヤのキャラになった途端、告白されることは何度かあったが、私は人生の中で一度も愛を伝えたことなんかない。

 

『本当に男が好きなんだったら、お前のタイプ教えろよ。この会場に人いっぱいいるだろ。お前のタイプ指させよ。人いっぱいなんだからこの中に一人くらいタイプいるだろ』

「た、タイプって急に……」

 

 確かにここの会場はデュエルモンスターズの一般的な強さ男子のほうが強いに比例するように、男8割、女2割の比率でいる。

 私は「はやくはやく」と焦らしてくるお兄ちゃんの行為に顔を赤くしながら、あわててあたりを見渡す。

 

「こ、ここ、この人……」

 

 私は同様しながら制服の第一ボタンを苦しそうに首に引っ掛けている、大きいお腹が目立つ男の人を指をさす。

 

『おまえ……。あんなデブが好きなのかよ……。あれ、どっかから見てもオタク街のどこにでもいそうな、キモオタじゃねえかよ。タイプわりいな……』

「違うよ! 私はそこを見ているんじゃない。あの人……、体が不自由な自分のお母さんに気を使ってるでしょ」

『はっ?』

 

 私が気にしている大柄の男の子、この人ごみの中に中年の女の人の車いすを走らせながら何かを話をしている。

 おそらく体が不自由な母親をわざわざこの高校デュエル大会の抽選会の会場へ行かせてあげたのだろう。

 これから息子が行うとっても大きな大会をやるということを見せつける為に。

 

「私は優しい人が好きなんだ。顔なんて全然関係ない。かっこいい男の人は確かに好きだけど、それが恋愛対象って考えるのは私はないと思う。地味だけどああやって人を大切にしてくれる人は心が広くてとってもかっこいいなあって……」

『ったくよぉ。兄弟の癖に考えが全然違うんだな。俺はそうとも思わない。ブスより美人のほうを選ぶぜ。だったらお前の彼女はなんだ? あの子は顔じゃねえか』

「そうじゃないよ。あの子は私をとっても大切にしてくれる。気遣いが昔のお母さんを思い出させるんだ……。それよりお兄ちゃんってもてなかったよね」

『うるせえ。俺が本気を出せば恋人の一人や二人、すぐにできるんだよ。お前みたいに』

「あははは」

 

 私は軽い冗談交えの笑いを取る。

 私とお兄ちゃんは顔はそっくりでも、デュエルの腕や性格や好きな物なんて子供のころから全くの真逆。

 

「おーーい奈々川~~!!」

『お前のダチが来たようだな』

 

 私を呼ぶ叫び声が聞こえ、少しずつ宮城とカズマ君が視界から見えるのと同時に、お兄ちゃんは消えてしまった。

 

「ったくよぉ。広すぎて迷子になっちまって。ここまで来るの大変だったんだぜ。なぁカズマ」

「宮城……。お前が急にトイレに行きたくなったっていって電車に遅れてしまったのが原因じゃないか」

「ははは。面白いね」

 

 とは言ったものの待合時間は5分程度しか遅れてはいない。お兄ちゃんとの会話をしていたせいでこの時間は退屈とは感じることはなかった。

 

「ところで奈々川。お前、誰かとしゃべっていたように見えたんだが」

「気のせいじゃない?」

 

 私たち3人は会場の中へと向かった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「「これより第69回高校デュエル甲子園。地区大会開会式を始めます」」

 

 

 学校ごとに指定されたプラカードの場所へと座り、アナウンサーの実況とともについに閉会式が始まる。

 予選とはいえ全32高校チームの巨大な大会だ。この会場には高校生だけでも約150人近くの生徒で溢れている。一般人含むと250は超えるだろう。

 

 実況がこの大会のルールを説明される。

 デュエルはいつも私達が行っている全国どこでも共通ルールであるLP4000制に加え、禁止カードは1種類だけ使用可能なルール。

 この大会は各高校が先鋒、中堅、大将と分かれ、3人で団体戦をぶつかりあうマッチ戦形式だと。

 16、16でAブロックBブロックと分かれるトーナメント形式で進んでいく方式であり、AかBブロックで勝ち進んだ高校は県大会の代表と選ばれる。

 県大会に出たいとなる高校はこの地区大会は重要な試合であると。

 

 デュエルの説明が終わると今度は、トーナメント表を作る説明へと変わる。

 みな緊迫したムードで番号が記されているカードが書かれている箱を引くために並んでいる。

 ここから引いたカードで会場いっぱいに大きく描かれているトーメント表が完成していくようだ。

 みんなカードを引くのにも真剣なのはこれからトーナメント表が決まる対戦相手の対戦順番が決まるからだろう。

 対戦カードの順番で、この後の大会の展開に大きくかかわっていくものなのだから。

 

「ベンチになっちまったけど、大会ってやっぱ緊迫感ありまくるな。デュエルの大会を生で見るのは人生で初めてだ。抽選会なのにドキドキやべえ」

「これが大会なんだよ」

 

 私の隣に座っている宮城の手はかつてないほど手が震えていた。

 今まで帰宅部だった宮城にはわからないものだろう。これがデュエリストの熱い戦いなのだから。

 

「でも、俺、よく考えたら緊張する必要ないな。だって補欠って応援しかやることないだろ」

「ふぁっ!」

 

 そういうと急に開きなおったように手の震えが止まって、軽い気持ちになったかのように手遊びを始める宮城。

 

「そういや、なんで奈々川がカードを引くことになるんだろう? 部長は目見えないから人ゴミが多いこの会場には行かないって言ってたし、堀内先輩は掛け持ちの柔道部もやるって言ってたし、カイザーはエロビデオ見るから忙しいって言ってたから先輩全員いないけど。ってなんでお前が?」

「僕……。一応、部長に今日だけマネージャーやれって言われたから……」

 

 宮城は大会のメンバーに選ばれていないんだから、補欠の人が重要な大会のカードを引くってことはないだろうと心の中で思った。

 

「奈々川。てきとーでいいよ。適当で」

「何言ってんのよ!!」

 

 高校生達が呼ばれている順番が進み、私達冥界学園の対戦カードを引くのが近くなると一緒に並んでいた宮城がこう言った。

 

「どうせ。うちの高校は先輩が超強いから無双してくれるよ。所詮地区予選なんだし、毎年全国大会入りは確定してるんだからさ」

「予選とは言ってもそう簡単に突破できるものではないでしょ!」

「カイザーと部長メッチャ強いじゃん。それに奈々川もいるじゃん。楽勝だって」

「対戦相手に失礼だろっ!! それに、この中にも強敵隠れているかもしれないし」

 

 補欠にもなれず応援役でなっている癖に宮城はどうしてこんな酷いこと言うのかなー…。

 簡単に言えるけど、実際はうまく行くのかわからない。

 私達の高校みたいに将来の進路の為、デュエルモンスターズについて深く勉強する学校も少ないとはいえ、この予選にも強豪高校が隠れているかも知れないし…。

 内のチームは昨年の高校デュエル甲子園4位の実力者の堀内先輩がほかの部活で忙しく、予選は出ないことになってしまったから……。

 それに、当たり前だけど大会には何が起こるのか全くわからないものだ。無名の弱小チームだって最後の最後で逆転とかありえないものではないから。

 

「奈々川…。呼ばれたみたいだぞ」

「あっ……」

 

 次に私達がカードを引く番だって言うのに、気がつかない私にたいして、カズマ君が教えてくれた。

 私は今緊張している。私が冥界学園高校の代表としてカードを引くことで、トーナメント表を決まるのだから。

 ステージの前へと上がり、スタッフの指示通りにボックスの中に手を突っむ。まだ引き残っているたくさんのカードの感触がする。

 そしていくつかのカードを触ったあとに、これだと思った右端一番奥のカードを手にとって取り出す。

 

「冥界学園高校。1番のAです!!」

 

 私にマイクを渡され、緊張しながらカードを天井に掲げながら書かれているものを読み上げる。

 すると私の背後にある液晶画面で移っているトーナメント表に私達の高校名が展示された。

 だが、私達冥界学園高校はちょうど中間あたりに呼ばれたので、トーナメント表はまだ中途半端にしか完成はされてはおらず、私達の対戦相手の高校はまだわからない。

 

「ふぅ……。緊張した……」

 

 再び自分の席へとほかの高校生達の視界の邪魔にならないようゆっくりと戻り、深呼吸をする。

 

「別にデュエルしたわけじゃないんだし、緊張することないだろ」

「緊張したら僕、トイレに行きたくなっちゃった。少し席離れるね」

 

 やはり32チームというだけあってしばらくトーナメントができるまで時間が掛かりそうだ。

 宮城とカズマ君に伝えると、私は一人で向かった。トイレは会場にずっと聞こえるマイク音が聞こえなくなるくらいの遠くの場所にあった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「ふう。すっきり」

 

 『虹クリボー』のキャラクターが描かれたハンカチで私は手を拭きながらトイレから出てきた。

 人はみんなトーナメント表完成に夢中になっているようで、トイレにいる人はいないから男に怯えることなく難なく女子トイレを使用することができた。

 男装しているとはいえ、いまだに私は男子トイレに入ることはかなりの抵抗がある。学校でも、人が入ることが少ない職員用の女子トイレしか利用できないから。

 ある程度時間たったわけだが、そろそろトーナメントは出来上がったのだろうか?

 

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」

 

 会場に力強い男性の叫びが響いた。

 私が戻ったら会場の様子がおかしい。人影の隙間から見るとトーナメント表は完成している。しかし、なぜかたくさんの人が自分の席に座らずに立ち上がっているのだ。

 

「おっ。奈々川いたいた。なんかすごいこと始めてるらしいぞ」

 

 宮城の声で気が付き、すぐにカズマ君と宮城と再会することができた。

 話を聞くとこの騒ぎの原因は高校生2人の原因だというのだ。

 

『鍛えられた肉体がデュエルを制する!! 我らが最強!! 決闘筋肉高校!!2年代表の岡山ニクタロウだ!! 青眼の白龍高校の白龍ツバサ!! この俺とデュエルしろ!!』

『君とは近くのトーメント表で当たらなーい!! だから青眼の白龍高校のオイラと大会前にデュエルですKAっ?』

『うぉおおおおおおおおお。これが俺達リアルファイト最強、決闘筋肉高校の筋肉だぁああ!!』

 

 決闘筋肉高校と名乗った男はその高校の名前の由来通りに、筋肉質の体系でいかにも喧嘩が強そうなイメージ。

 なぜかデュエルしろと申し込んだあと服を脱いで自慢の筋肉を見せ付ける。デュエルと関係ないものを周りに見せつけて私は一瞬意味がわからなかった。

 対する青眼の白龍高校も全身真っ白のスーツなのだろうか? 指定の制服を身にまとい髪の毛も真っ白に染めて、体中が白の生徒と周りと浮いている。

 

『青眼の白龍高校。かの有名な海馬コーポレーションの社長が個人経営で影で作った小さな学校。ドラゴン使いが集まりデュエルを教育する学校となった。そこで有名になった白龍ツバサ。去年の高校デュエル大会では個人で6位だったらしいな。世界のドラゴン使いの中では5本の指に入るとかなんとか。もうプロデュエリストの進路が確定したっていう話じゃないか』

『YO!! オイラはそんなに有名になったのKAっ!! びっくりだYOっ!!』

 

 青眼の白龍高校の歴史を話され、そこで決闘筋肉高校が言った、かの有名な「海馬社長」と聞いて私は驚いた。

 それに続けてさり気なく言った高校デュエル甲子園の個人6位という超高成績、この人も堀内先輩と同じ高校デュエル大会でも上位に来るほどの強敵の証。

 予選だと思ってたけどこんなところで強豪高校に会えるとは。

 

『俺、岡山ニクタロウ。趣味は筋トレ。好きなカードは仲間の為に命をも犠牲にするいいカードの『スクラップ・コング』と『カラテマン』だ!! 部活動ではデュエルに勝利する為に、毎日筋トレの日々を送ってきた!!』

『オイラも自己紹介するZE。趣味はラップとダンス。好きなカードはドラゴンカード全般なんだけど、特に好きなのは『青き眼の乙女』と『青眼の白龍』なんだZE! まあ、伝説のカードなんでオイラは持ってないけどNE。どのくらい好きかっていうと初めて自慰したきっかけは『青眼の白龍』なんだZE。ドラゴンは綺麗でかっこよくて、たくましくて超強くて……』

『お前のその長ったらしい話はいい。さっさとデュエル始めようぜ。青眼の白龍高校!!』

 

 この人達、自己紹介が普通ではないおかしすぎる。たくさんの他校の生徒たちに囲まれているのにも関わらず、変な主張を言い張っているのは変な雰囲気だ。

 

「あいつらレベル高すぎだろ。俺が人生で初めてした自慰は『水の踊り子』だっちゅーのに。『青眼の白龍』でやるとかきもすぎだろ」

「ねえ。宮城。青眼の白龍高校が言っていたじいって何なの?」

「それを俺に聞くのかよ……。お前も男なんだからオナニーくらいしたことあるだろうよ」

「えっ!? オニニーって何? どうやんの?」

「ふぁ!? 奈々川、お前オナニーしたことないのか? まさか……。そうだよな……。リア充のお前には必要ないもんな……」

 

 宮城に聞くと急に気分が悪くなったような顔をされた。私にはまったく意味がわかってない。

 

『OK。オイラとデュエル。望むところだZEっ!』

『その痛いラップみたいなの止めないか!!』

『だったら君も筋肉見せるのやめろYOっ!』

『筋肉は芸術だ。筋肉を鍛えることはデュエルの腕にもつながる。それがわからないのか?』

『オイラも同じでラップをするのはデュエルが強くなるんだYOっ!!』

『どうやら、筋肉とその芸術とやらがどっちが上なのか勝負で決める戦いになりそうだな』

『ああ。そうだNE。望む所だZE』

 

 この人達デュエルをするっていうのにまた、お互い変な主張を言い張って、当然私達には意味がわからない。

 言い合いが終わると、決闘筋肉高校の生徒はなぜか上半身裸の男がプリントされたデュエルディスクを、青眼の白龍高校の生徒は高校名通りにブルーアイズが描かれたデュエルディスクを取り出しデュエルが始まる。

 こんな人ごみの中の会場で人目を避けずにデュエルをするなんていい迷惑だ。

 ましては他のデュエリストがいるのにここでデュエルするのは、大会前にデュエルのネタバレを他校にばらすってことだ。私には真似できない。

 

『オイラのエクストラデッキの中から君に引いてもらうYO。その中からレベルが高いカードを選んだプレイヤーが先行DA! 文句ないよNE』

 

 ツバサさんは2枚のカードを白い制服のポケットから取り出す。そして相手も同意してその中から一枚を選んだ。

 青眼の白龍高校はレベル8の『メテオ・ブラック・ドラゴン』。決闘筋肉高校はレベル4の『暗黒火炎龍』。

 

 青眼の白龍高校 LP4000 決闘筋肉高校 LP4000

 

 

『オイラの先行だZE。ドロー!!』

 

 他の高校が見守る中、最初はラップの男から始まる。ノリノリのラップが素人の私が言うのも失礼だけど下手糞に見えるのは気のせいだろうか。

 

『「魔導サイエンティスト」召喚だZEっ!!』

 

 白い白衣を来た科学者が召喚される。メガネで隠されたその瞳にはどんな考えを持っているモンスターなのかわからない。

 白龍さんは禁止カードのこのカードを使ってどんな戦略を見せてくれるのだろう。

 

『「サイエンティスト」はライフを1000支払うことにより、エクストラデッキからレベル6以下のモンスターっを特殊召喚できるんだZEっ!!』

『いきなり禁止カードを引くとは運がいいみたいだな』

『ここから先はドラゴン達によりパレードの時間だZEっ。オイラはライフを2000払って「ツイン・フォトン・リザード」を2体特殊召喚するYOっ!!』

 

 決闘筋肉高校の生徒の表情がグッと引きつかれて私達に緊張感を訴えているように見える。上半身裸なのがふざけているようにも見えるが。

 白衣を来た科学者はビーカーにつまった薬品のような物を両手に持ち、それを腕で広げて地面に落とすと穴のような空間ができ、そこから赤と黄の色の翼を持つトカゲの形をした龍が出現。

 

 青眼の白龍高校 LP4000→2000

 

『効果を持たない融合モンスター……。これでどうするつもりなんだ…』

『答えは簡単っ。それ、モンスター召喚のコストにするんだZEっ。オイラは「ツイン・フォトン・リザード」2体でオーバーレイネットワークを構築っうー!!』

 

 デュエルディスクに乗せられた2枚の紫色のカードを重ねる動作を取り、エクストラデッキから真っ黒なカードをその上に重ねる。

 

『エクシーズ召喚だZEっ。光に導かれし龍達の王よ!! オイラの前で姿を現せ!! 現れろっ。「聖刻龍王-アトゥムス」!!!』

 

 現れるのは黄金の鎧を身にまとう、黒い翼を大きく広げた細身のフォルムの竜人型ドラゴン。

 ただでさえ重いだろう、召喚のライフ2000も支払って呼んだこのカードで何をするのだろうか。

 

『オーバーレイユニットを1つ使い、「アトゥムス」の効果っ!! 自分のデッキからドラゴン族モンスターを攻守共に0にして特殊召喚が可能だっ!! オイラのフィールドに来いっ!! 「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」!!』

『っ!!』

『オイラの学校ではこのカードの略称は『レダメ』ちゃんって言うんだZE!』

『しらねーよ!』

 

 真っ赤なメタルブラックカラーの瞳を持つ機械龍。

 教科書に載っていた誰でも知っている伝説のデュエリストが使った『真紅眼の黒竜』が改造されたモンスターにほぼ近い。

 戦闘能力がないとはいえ、このカードはドラゴンデッキの中核だったはず。

 

『「レダメ」ちゃんのの効果発動だZEっ。手札か墓地のドラゴン族モンスターを1体特殊召喚できるんだZEっ。オイラは手札より「デルタフライ」を呼びよせるYOっ」

 

 薄羽を広げて飛んできたのは爬虫類にも見た小型の龍。

 

『またオイラは「サイエンティスト」の効果を使って「ツイン・フォトン・リザード」を召喚するZEっ。そして「デルタフライ」の効果で「フォトン・リザード」のレベルを1上げRU!! そしてレベル7「フォトン・リザード」にレベル3「デルタ・フライ」をチューニング!! シンクロ召喚「トライデント・ドラギオン」』

 

 エクシーズ召喚に続けて次はシンクロ召喚か。

 三つの首を持った巨大なドラゴンがそれぞれ、3つの頭から雄叫びを上げる。

 

 青眼の白龍高校 LP2000→1000

 

『このカードがシンクロ召喚されたとき、自分のカードを破壊し、その破壊したカード1枚に付き、このカードの攻撃回数を増やSU。オイラは「アトゥムス」を破壊』

『なぜ自分のカードを!?』

 

 「アトゥムス」は出てきたばかりの「トライデント・ドラギオン」に吸収されていった。

 しかし、私は何をやっているのか全くわからない。先行1ターン目には攻撃できないって誰だって知っていることなのに、どうしてコストなんかにしたのだろう。

 

『オイラはレベル10の『レダメ』ちゃんと『ドラギオン』でオーバーレイネットワークを構築エクシーズ召喚っ!!』

『2回目のエクシーズ召喚だとっー!!』

 

 示しているのはレベル10のモンスター2体。

 効果を使用し、役割を終えた鋼鉄の黒龍と3つ首のドラゴンは黒い粒子となりブラックホールとなり吸い込まれていく。

 

『「超弩級砲塔列車グスタフ・マックス」。オイラの元へ』

 

 エクシーズ召喚されたのは巨大な列車に、列車の数倍の砲台を備える。それは名前通り超弩級のデカさでこの会場の半分をモンスターのソリットビジョンが占領する。

 

『「グスタフマックス」。効果発動っ。ユニットを1つ使って相手に2000ダメージの攻撃DAっ!!』

『ぐわっ。俺の鍛えられた筋肉がなければ即死だったぜ……』

 

 長身の砲台から攻撃が発射される。私達は砲台の真横にいたので直接音を聞いてしまうので耳を隠した。それにしてもソリットビジョンなのにやけにリアルな砲台だ。

 先制は青眼白龍高校のようだ。白龍高校はわざわざ自分のライフを1000まで削ってまで、リスクを恐れずに先行ターンに2000削るのは、どうなんだろう。

 

 決闘筋肉高校 LP4000→2000

 

『まだこれ、1ターン目だろ…。もういいから早くラップ終わらせて俺の華麗な筋肉を見せるターンを始めさせろよ!!』

『まだオイラのラップは終わらないんだNAーっ。オイラは手札から「神秘の中華なべ」の効果を発動しまーっSU。「グスタフマックス」をリリースしてこのカードの攻撃力分のライフをオイラは回復っ!! 次に「貪欲な壺」を発動!! 墓地の「ツイン・フォトン」3枚と「レダメ」ちゃんと「グスタフマックス」をエクストラデッキに戻し2枚ドロー!!』

 

 青眼の白龍高校 LP1000→4000

 

 砲台をリリースしてライフを初期ライフに戻す。そしてエクストラデッキのカードも再生して手札のカードを増強する。

 今の白龍高校の場には『サイエンティスト』1枚のみの最初の場に戻った。それに手札はまだ4枚も残っている。融合モンスターが戻ったってことはまだまだターンは続きそうだ。

 

『またオイラは「サイエンティスト」の効果を使って「ツイン・フォトン」2体を召喚するZEっ。そして『ツインフォトン』2体で再びオーバーレイ……』

 

 『サイエン』はまたトカゲの形をした龍を呼び寄せ、先ほどと同じ『アトゥムス』をエクシーズ召喚を狙う。

 もう1度ドラゴンをデッキから特殊召喚できる効果により『レダメ』を呼びよせ、効果で墓地の『デルタフライ』を蘇生する。

 

『もう一度「ツイン・フォトン」を特殊召喚。「デルタフライ」でレベルを上げ、レベル7の「ツインフォトン」とレベル3の「デルタフライ」でシンクロ召喚!! 「天穹覇龍ドラゴアセンション」』

 

 細長い、蛇の形をした白く輝く龍の王。地面から上昇しながら天空を目指してフィールドを駆け巡る。

 これで白龍高校のフィールドには『サイエン』『レダメ』『アトゥムス』『デルタ・フライ』『ドラゴアセンション』の計5枚。

 この状況、さっき見たような気がしたと私は感じた。そしてまさしくさっきと同じことが起こった。

 

『そして「レダメ」ちゃんと「ドラゴアセンション」2体でオーバーレイネットワークを構築…っ』

『この2体から出るモンスター…。まさか……。やめろっーーー!!!』

 

 防ぎようがない開幕に、決闘筋肉高校の選手は絶叫をするが手遅れだった。

 鋼鉄に黒光りする龍と蛇の形をした龍王が合わさり合ってエクシーズ召喚されるのはさっきにも現れた巨大戦艦。

 

 

『「グスタフマックス」を召喚。これでゲームセットだZEっ』

『ぬぉおおおおお』

 

 掛け声と共に大砲から対戦相手の立派な肉体目掛けて砲弾が発射されていく。

 砲弾の銃声音が公民館全体に鳴り響き、各地区の高校生全員に青眼の白龍高校勝利のファンファーレが知らされる。

 

 決闘筋肉高校 LP2000→0

 

 

『っ……。何もできなかった…。デュエル界では筋肉よりラップの方が各上だというのか……』

『はっはっは。どうDAっ。参ったKAーっ!』

 

 いろんな人達に見守られる中、青眼の白龍高校による先行1ターンキルでデュエルは終了した。

 敗北のみ味わう羞恥心を隠すように、決闘筋肉高校の生徒はさっきまで見せていた筋肉を隠し体を制服で覆った。

 はたして決闘筋肉高校がわざわざ上半身裸になった意味はあったのだろうか?

 あと、2人がさっきからずっと口論しているけど、デュエルモンスターズの世界では筋肉もラップもデュエルの腕に関係ないから…。

 

 

「なんだあれ……。先行ワンターンキルなんて生まれて初めてみた。すげぇ……」

 

 宮城が感激のあまりに大興奮している。

 私もそれは同じ感想で、後攻ワンターンキルは何ども見たことあるし、自分でもやったことはあったので珍しいってことはない。

 でも、このように人を感動させるような綺麗な先行ワンキルなんて見たことなんて全くなかった。あの人はとてつもなく強い。

 

 あれだけ好き放題展開してみせて白龍高校の手札は『魔導サイエンティスト』『デルタフライ』『神秘の中華なべ』『貪欲な壺』の計4枚でワンターンキルを見せてきたのだ。

 私はこの姿を見て、感激する。この人はここにいる生徒の中でも一番強いデュエリストであるだろうと確信した。

 私の恋人ミカ、いや私達のデュエルの部長と同じレベルのデュエリストか……。

 

 

 

「おっ。その制服は冥界学園高校の生徒だNA。オイラの存在びびってRUっ!!」

「えっ!?」

 

 見入ってる私達の存在に気がつき、たくさんの生徒たちに囲まれている中、ツバサさんは話しかけてくる。

 

「前回、オイラ達は地区大会2位で負けたからNEっ。あの時の屈辱果たしてやるZEっ。ヒャッハーっ」

「あっ…」

「オイラは冥界学園高校のデュエル甲子園4位の堀内チンジを倒SUっ。これが目標っ! そして祝福っ!!」

「あ、あのーっ……。堀内先輩は……」

 

 向こうはハイテンションでラップをしながら話しているから、こっちは会話のテンションに合わせられず言いたいことを言えない。

 こっちが口を動かそうとしたらあっちがしゃべってくるのか。白龍ツバサ。堀内先輩同様、どうして強いデュエリストはキャラクターが濃いのかしら。

 

「決勝で合おうZEっ。君達っ。オイラは優勝目指すからよろしKUっ。君達も頑張REっ。じゃあNAっ」

「………」

 

 白龍さんの好き勝手言いまくる台詞に3人は沈黙する。

 向こうが気にしている堀内先輩は今回はこの予選大会は事情の為、出れない。残念だってことを伝えずに白龍さんはどっかに行ってしまった。

 

 

 それより何よりも重要な真実は…。

 

「決勝で会おうって言ってたけど…。青眼の白龍高校ってオレ達、1回戦で当たることになってるんだけど…」

「えっ!!」

「あいつ…。トーナメント表全く見てないみたいだなっ…」

 

 トーナメント表が完成し、印刷された紙をカズマ君は私と宮城に見せる。

 それは白龍さんがペラペラしゃべっていたことが全くあってないことを意味する。

 

「と、なるといきなり優勝候補の青眼の白龍高校が相手かよ!!!」

 

 

【挿絵表示】

 

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