「勉強熱心だね奈々川君。ハァハァハァ……」
粗い息切れした声が聞こえた。後ろを振り向くと堀内先輩がうれしそうな顔をしながら私を見ている。
汗臭いにおいが付きのタオルで、自分の顔を拭いていたので、柔道部の帰りなのだろうか?
「青眼の白龍高校……。白龍ツバサ……」
此間の抽選会時で衝撃的なワンキルを学生全員に見せつけた白龍ツバサさん。
それは「すごい」などという他人事ではない出来事。その相手が明日、私達冥界学園で対戦相手となっているのだから。
私は対白龍ツバサさんについて、デュエル部においてあった去年の新聞を資料としながら、一生懸命デュエルの対策について考えていた。
おかげで、デュエル部には私一人だけ取り残されたということさ。
「ああ。ツバサ君だね。ハァハァ」
「堀内先輩。知ってるんですか?」
「知ってるって何を。私の初恋の男の子だからね。ハァハァ」
「ふぁっ!?」
「でも今は奈々川君のほうが好きだな。ハァハァハァ」
堀内先輩の初恋の相手と言って私は思わず吹き出しそうになった。男が好きなのは平常運転のようだ。
でも、相変わらず私を男として変態で見る目の堀内先輩は気持ち悪い。
「教えてくれませんか? 先輩。そのツバサさんについて。デュエルのこと詳しく教えてくれませんか?」
先輩は男の癖に男が好きという異常な考えの持ち主だから、その初恋の相手についても詳しく知ってそうだと思って聞いてみる。
返事はすぐに帰ってくる。
「教えてあげるね。白龍ツバサ君は学校名の通りにドラゴンデッキを使用してくる。聖刻っていうカテゴリーのカードを使用してくるんだよ」
「やっぱり……」
抽選会で何度もドラゴンの話をしていて、好きなカード群もドラゴンって言ってたからその辺はわかっていた。
会場でちょっこりと何回も展開要因として使用していたエクシーズモンスターの『聖刻龍王-アトゥムス』から聖刻を使ってくるのはうなずける。
「あの男の子のデッキで一番気をつけなきゃいけないのは融合モンスターだよ」
「効果がない融合モンスター出してましたけど、それで展開の糧にしてましたし」
「そうそう。よく見てたね。奈々川君はぁはぁ。ツバサ君の一番気をつけなきゃいけないものは融合モンスターにある。彼は『至高の果実』や『三位一択』などといったライフ回復をギミック多く積んで、ライフコストを稼ぎ『簡易融合』『デビルフランケン』などといったカードを使って融合モンスターを使用してくる。これらから繰り出されるエクシーズとシンクロは強烈だからね」
「ライフ回復ギミックか……」
初期ライフ4000の為、本来ならライフコストが掛かるカードを使用するのはあまり頃ましくない。
ツバサさんは抽選会で『魔導サイエンティスト』を簡単に使いこしていたことから、それを最大限に生かすライフ回復ギミックは大目に入っているのだろう。
納得のいく回答だ。
「あのー。堀内先輩はツバサさんと一度戦ったことがあるんですよね」
「私のことずいぶんと詳しじゃないかハァハァ」
「一度勝ったことがあるんですよね」
「そう。その通りだよはあはあ。去年の高校甲子園予選の決勝の中堅で私はツバサ君と戦うこととなった。そして私はツバサ君に一目ぼれした。そして私は勝った。けどデュエルの後、私は告白したんだよ。そしたら見事振られてしまって……」
「はぁ……」
別に聞きたくもない男同士の恋愛まで話されて唖然となったが。
でも、これで対戦カードの大きなヒントをつかむことができた。
ツバサさんは堀内先輩が負けていたことを悔やんでいたな。去年がツバサさんは中堅だったとなると、先輩の敵撃ちとしてまた戦う可能性だってある。
でも、今回は先輩の代わりに私が出るということとなる。中堅が私となると、対戦カードはツバサさんということとなる。
「………」
しかし、ツバサさんの資料を見ようとすると、知りたくもないのに関係ない堀内先輩のことまで何度も出てくる。
昔の堀内先輩の写真を見てるといつも思うんだけど、今と全然違う。今と同じ190ある高身長に、今と違うブヨブヨではない引き締まった筋肉、そして笑顔がとても似合う美男。
「昔の私の写真をずっと見られて照れるな……。はあはあ」
「こっちのほうがかっこいいのに……」
「やっぱ奈々川君もそう思うんだ。はあはあ。私のことが好きになってくれるんだったら、また去年のように痩せてあげるよ」
「いいですから。先輩」
入学当初に、堀内先輩に襲われた記憶。気持ち悪い今ではなく、あれが去年のイケメンだった堀内先輩だったとかと考えてしまったが……。
いや、イケメンに襲われたいとかそういう考えではなくて。やっぱり同性好きな人は考えが恐ろしすぎるから何されるかわからない。
◆◆◆
いよいよ高校デュエル大会の予選が始まる。今日のデュエルの舞台は私達冥界学園高校の体育館の中で行われるようだ。
まず最初の一戦は、優勝候補ともいわれる、抽選会では驚異的なワンキルを見せ付けられたドラゴンの使い手青眼の白龍高校の生徒達との戦い。
去年の大会の組み合わせも予選の決勝戦で私達の学校と当たったみたいだけど、そのときは部長と堀内先輩の活躍でうちの高校は勝利したらしいんだ。
だから今日のこの戦いも私達の勝利で終えるといいんだけど……。
「ユウヤー!!」
デュエル部の部員として初めての大会に私は少々緊張して待合席で座ろうと向かった。女性の声を感じたので振り向く。
私の彼女のミカだ。顔を確認しようとしたら急にハグされ、ムギュっとした女性の感覚が私の右腕に当たる。
「約束通り、応援に来たよーーー」
「ありがとう!!」
「ユウヤはいつデュエルするの?」
「僕は中堅戦に選ばれたから2番目にデュエルするんだよ~」
「じゃあユウヤは最初のデュエルの勝敗関係なしに確実にデュエルできるね。私、応援してるから!!」
「うんっ!」
この行為が緊張を薄くしてくれた。ミカの髪型がいつも私と一緒にいるよりすごく可愛くセットされて応援する気マンマンと感じる。
わざわざ私の為にとっても嬉しいと感じる。けど同じデュエル部の仲間のカイザーの手がグッドを逆さまにした手で嫌な顔でこちらを見ている。
「まじうっぜー。彼女だ? てめぇらさっさと消えろよ!! 腐れビッチ!! チョロイン!!」
カイザーが中指を突き立てて私達の関係にかなりねたんでいる。
「何あれ? もてないからってひがみ?」
「ミカ。先輩のカイザーに怒られちゃうからやめなよ」
それを見たミカは軽い一言を言う。だが、それにカイザーは気が付き、ミカに強烈なことを言った。
「あんな、キンタマついてっかわかんねぇ男のどこが好きなんだよ。最近の女は見る目がねぇな。あんな奴が好きなお前も大したことなさそうだな」
「あー……。めんどくさいわね。いかにももてない男がいいそうなセリフよね。あのカイザーって男、女と付き合ったことないでしょ。いかにも馬鹿っぽい」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
急に大きな声で発症したカイザーに私は驚く。
それでも何を言われようがミカは美貌の長いピンクの後ろ髪をさわりながら、余裕そうな身振りを見せる。
あの子は私以外の人にはずいぶんと厳しいことを言うな。
「私はそろそろここから移動するけど、ずっとあんたのこと遠くで応援してるよー」
「ありがとうねー。応援!!」
「さよならーー!!」
別れ際の際、ミカは私の頭を2回叩いてここから立ち去って、ここから少し離れたデュエル場の観客席の場所に移動した。
今日、私はチームの為に重要なデュエルをするんだからヘマ掛けてミカの期待に裏切らないようにしないとな。
「お前の彼女。マジでビッチ臭がするよな?」
「ピーチ臭?」
私が観客席に戻ると、ミカのことをカイザーが桃の匂い? とかなんとか言ってたけど、気にせずに、もうすぐ始まる私の部長が行うデュエルに集中しようと思う。
しばらくデュエル場を確認すると、最初の第1試合が始まる準備が整いそうになっている。
これから対戦をする者同士が戦いのオーラを沸かせながら向かいあう。
「青眼の白龍高校3年の部長征鳴リュウゴだ。以下お見知りおきを」
「冥界学園高校3年の部長だ。……よろしく」
私達の部長は杖を突いて歩きながらデュエルフィールドまで移動する。
青眼の白龍高校の部長も同様にフィールドまで移動した。2人の自己紹介後、近くまで移動し握手をする。
「……。部長が先鋒を仕切って、後続を楽にするという作戦か。どうやら、去年も今年も冥界高校も俺達と考える作戦は同じようだな。これから先は俺とあんたがどちらかが流れをつかめるかどうかの戦いになる。辛い戦いになるだろう。だが、俺たち青眼の白龍高校が勝ち、ペースをいただいて貰う!!」
「ほう……」
部長が前に話していた、先鋒に強い人を置いて勝利することで後ろの中堅と大将を楽にするという作戦。
だが、相手の部長も去年と同じと言っていたわけだから、最初の1戦は強い生徒同士の勝負となりそうだ。どっちの部長が勝つか。ここからが勝負の勢いをつかむ。
「…………デュエルだ」
「デュエル開始だな。冥界学園高校…。リベンジの時がついにきたぜ! あの時の屈辱、ここで晴らしてもらう!!」
互いの部長はチームにバトンを託す戦いを始める準備、デュエルディスクの支度を整え構える。
審判は他校の先生が務めるようだ。冥界学園でも青眼の白龍の先生ではないのはジャッジによる不正やら買収やら何やらが問題の為らしい。
審判が手を旗を上げると冥界学園高校の私の部長と青眼の白龍高校の部長がじゃんけんを始める。
部長 LP4000
リュウゴ LP4000
「先行は俺が貰う…。ドロー!!」
よしっ! この渋い声は部長だ。
じゃんけんに勝利した私達の部長がドローを始める。そして部長は引いたカードを目で確認せずにすぐに自分のデュエルディスクに置く。
「……。俺は『深海のディーヴァ』を通常召喚…。このカードが召喚に成功した時の効果により、俺はデッキからレベル3以下の海竜族モンスター『リチュア・ディバイナー』を特殊召喚する!!」
人魚が現れ、怪しげな歌を歌うと占いのような水晶の形をしたモンスターを呼び寄せる。
「俺は『ディバイナー』の効果を発動する。カード名を1つ選択。そして自分のデッキトップを確認し、それが選択したカードなら手札に加えることができる。俺は『デーモンの宣告』を選択する!」
「「何をするつもりなんだ…。デッキのカードがわかないのにこれを当てるのか……?」」
デュエルの様子を見ている青眼の白龍生徒達のベンチがざわつく。若い顔をしていた人たちが多かったので、1年生か?
ざわつく様子も気にせず私達の部長は目を瞑りデッキのトップを触る。そしてそのカードを自分の長い前髪を大きく揺らしながらカードを抜く。
「「『デーモンの宣告』……。当てやがった…」」
「「くっ…。偶然だろそのくらい。相手の部長が天変地異コントロールなら必須カードを当てるのは簡単なことだろ」」
結果はごらんの通りで青眼の白龍高校の1年たちは驚いている。
私の部長のチート染みた行為に驚いている青眼の白龍高校の生徒達。デッキのトップを当てる行為は普通ではあり得ないことだろう。
でも部長のすごさはこれで終わるわけではない。これからもっと人間離れした行為をするのだから。
「レベル3の『ディバイナー』にレベル2の『ディーヴァ』をチューニング!! シンクロ召喚!! 『神海竜ギシルノドン』!!」
「っ!!」
2体のモンスターが別のモンスターに生まれ変わる。シンクロ召喚されるのは美しい水のように青く潤う海竜。
元々海竜族のモンスターが珍しい。このモンスターもそこを意識すると美しさがさらに磨きが掛かる。
「さらにだ。俺は手札から『ワン・フォー・ワン』発動…。手札のモンスターを捨てデッキからレベル1のモンスター『フィッシュボーグ-ランチャー』、特殊召喚…」
「チューナーモンスターか。またシンクロ狙いだな」
相手の部長がつぶやく。緑色のカードを使うと魚の形をしたルアーのような機械。チューナーを呼んだということは更なるシンクロに繋げる気なんだろう。
このカードはシンクロ素材とする場合、水属性モンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。だからどんなモンスターを呼び寄せるんだろうか?
「レベル5の『ギシルノドン』にレベル1の『ランチャー』をチューニング!! 魂凍てつく極北の風! 氷結の力で全てを氷尽くせ!! シンクロ召喚!! 現れろ!! 『氷結界の龍 ブリューナク』」
「ほう。禁止カードを使ってきたな」
眩い照明に包まれる体育館の中央に咆哮を浴びせると周り一面を凍りつくす演習をする青き龍。
部長の冷たく冷静に判断をする性格のように、また『ブリューナク』も冷気の風を発生しながら辺りを涼しいイメージを作り上げる。
「俺は『デーモンの宣告』を発動……」
「「ここで『デーモンの宣告』だと…っ!?」」
「ライフを500払う。俺は『サイクロン』を選択……。デッキトップを当てる。これが当たったら手札に加えることができる」
「っ!?」
私達の部長はデュエルで必要の説明だけしかしゃべらない。それがとても不気味で対戦相手の部長に大きなプレッシャーを与えてるように感じる。
謎めいた行為をしている部長に疑問の顔をしている相手。だが、デッキのトップを相手に見せるとその疑問な顔が崩れる。
部長 LP4000→3500
「「……。…どうして…わかったんだ?」」
「『サイクロン』。当たりのようだな…。選択したカードなら俺は手札に加えることができる」
部長はどんなデッキにも当たり前のように入っている『サイクロン』のカードを見せ、自分の持ってるカードの束に加える。
「『ブリューナク』…。モンスター効果だ…。手札を捨てることで捨てた枚数分、フィールド上のカードを手札に戻す…」
「……。フィールド上のカード…? 俺の場にはまだ先行1ターン目だからカードはない……。自分のカードか…っ」
今、手札に引いた『サイクロン』をディスクの墓地ゾーンに置かれていく。
そして『ブリューナク』が自慢の羽根を大きくはばたせ、フィールドで大きく鳴くと突風が起きる。
そのカードはデュエルディスクから吹き飛ぶが部長は目を瞑りながらそれを華麗にカードをキャッチする。飛ばされたカードは…。
「『デーモンの宣告』を戻す…。そして『デーモンの宣告』を発動だ…」
「「狙いは一体なんだ…。何をするつもりなんだ…?」」
「手札に戻されたことでこのカードの1ターンに1度しか使えない制約はもはや、何の意味もなくなった…。俺は再び効果を発動する…。俺が選ぶのは『強欲で謙虚な壺』!!」
「「デッキトップなんてわからないはず…。2回もそう簡単にうまく行くはずなんてないっ!! ありえないぞ!!」」
デュエル前は余裕の表情を見せ付けていたはずの青眼の白龍高校のギャラリーの顔がどんどん乱れる。その部長も焦ってる。
ターンが回る気配のないことからこんなことを思うのは無理もない…。そして私の高校の部長はさらなる恐怖を見せるようにデッキのカードを見せる。
部長 LP3500→3000
「くっ…」
「俺は再び『ブリューナク』の効果で手札を捨て、『デーモンの宣告』を戻し、再び発動させる。そしてその効果で『強烈なはたき落とし』を選択だ…」
「「また当てたのか…。何者だ……。冥界学園の部長は?」」
「『ブリューナク』…。『デーモンの宣告』を手札に戻し再び効果を発動…!!」
「この流れ…。短期間で無限ループか」
「その通りだ」
部長はこの1ターン目でいつの間にループを作りだし、手札交換する方法を作り上げる。
『デーモンの宣告』を『ブリューナク』で何度も使いまわし、ライフと引き換えに手札のカードを入れ替え続ける。
青眼の白龍高校には一部わかっていないらしいが、実は部長は目が見えないことから変わりに他の体の部分が冴えている。
おかげで自分のデッキのトップカードを全て理解しているからこんなことができる。
このコンボは部長しかできない荒業。ワンサイドゲームを作り観客に自分の力を見せ付ける。
部長 LP3000→2500→2000→1500→1000→500
「「だけどループしたことによりライフはたったの500しかないじゃないか…。手札交換してもいいカードを引けなければ無駄じゃないのか?」」
ギャラリーがこんなことを言った。でも、ライフを惜しまずここまでドローしたってことはきっと裏がある。何が。
「俺はカードを1枚セットする…」
「「これでこのターンは終わりみたいだな。次は青眼の白龍高校の部長の番だぜ。部長はドラゴン使い最強レベルだからな。今度は部長がドラゴン達のソリティアを見せ付けてやるよ」」
こんなことをギャラリーが言っていたけど、部長の手付きが止まらない様子だから、これで終わるわけはない。
「いや、このターンで終わりだ。そのソリティアを見る暇もなく! 俺たち冥界学園が勝利をいただく」
「っ!」
得たいの知れない発言に戸惑う相手の部長。カードをセットしたからターンエンドの流れのようだと勘違いしていたけれど違う。
部長は1つの手札のカードを手に取り、それを発動させた。どうやらドローコンボ時に引いたカードなのだろう。
「フィールド上、手札のカードを全て墓地に送り発動…。『大逆転クイズ』!!」
「「…なんだそれは?」」
「俺は今からデッキのトップを当てる…。それが何の種類なのか当てることができたら俺たちのライフは入れ替わることになる…。俺はトラップカードを選択!!」
考える暇もなく1つの回答を取る。カードの種類は3種類ある。けどトラップカードは一般的なデッキなら一番少ないってことはみんな知っている。
けど、部長は悩まなかった。結果は知っているから。そしてデッキの上を引く…。
「トラップカードだ!! これで互いのライフは変動する…」
「くっ……」
リュウゴ LP500 部長 LP4000
さっきまでのライフの差が一気に形勢が逆転された。
あのループのコストとしてライフを減らしてしまったがこれで元通り。だが『大逆転クイズ』のおかげで手札も、フィールドも何もカードを持たない部長。
「「馬鹿じゃないのか。冥界学園の部長は。ライフを500にしても手札、フィールドのカードを全て失ったら何もできないじゃん。次のターン俺らがワンキルだぜ」」
「いや、よく見てみろ」
白龍高校のギャラリーがこんなことを言っていたが、自分の部長はこんなわけではないと後輩に注意する。
そしてその答えは私の部長がカード効果の説明することで、全て終わる。
「俺は『大逆転クイズ』のコストとして墓地に送られていた『黒いペンダント』の効果発動だ!! 500ポイントのダメージ」
リュウゴ LP500→0
「おみごとだ。冥界学園高校」
「………」
まず青眼の白龍高校の最初の試合は私達冥界学園高校が一勝をもぎ取った。
相手の部長の脇を通過して部長は杖を付いてゆっくり歩く。そして部長は清清しい雰囲気を発しながら私達の学校のデュエル部の席に戻った。
「やるじゃねぇかよ。糞部長。お前だったらそれくらいあたりまえだよなぁ!」
「…………」
「無視すんじぇねぇよ!!」
部長はカイザーの隣の自分の席に付き、仲間の私語もスルーする。そして眠るように目を瞑って何もしゃべらない。
仲間の為、自分のデュエルの勝利という仕事の役割を終えると無駄なことは一切しなかった。
「やりましたねっ」
私が喜びの声を上げても部長は何もしゃべることはない。
1勝を勝ち取ることができたのに、何でこんなに盛り上がらないんだろうか。
私達1年が勝利を褒めても何の一言もしゃべる気配がない部長。まるで部長は勝利をするための機械のように他のことでは動かない。
相手チームは悔しそうに部長と仲間の生徒達は向かいあっている。この1戦で負けてしまった青眼の白龍高校の感じは重くなった
敗者の白龍高校の部長が持っているカード『竜の霊廟』『次元融合』『七星の宝刀』『瀑征竜-タイダル』『大嵐』が私には見える。
恐らくだが相手の部長も私達の高校同様、手札はすごく良かったはずだ。私達の部長がワンターンキルできなかったら返しにワンキルされていたかもしれない。
相手のカードを全て破壊できる『大嵐』で全て吹き飛ばし、デッキからドラゴンを墓地へと送れる『竜の霊廟』で墓地を肥やし、手札交換ができる『七星の宝刀』で手札を整えるつもりだったんだろう。
それに加えてライフを2000払うことで互いの除外されたモンスターを全て特殊召喚できる禁止カードである『次元融合』まで持っていることから、この手札は強い手札だったはず。
1枚だけ見える『瀑征竜-タイダル』から【征竜】デッキで間違いないだろう。水属性の『タイダル』の他にも炎属性の『焔征竜-ブラスター』風属性の『嵐征竜-テンペスト』地属性の『巌征竜-レドックス』がそれぞれ存在している。
私も属性サポートで便利で『巌征竜-レドックス』をデッキに入れているけど、この人は違うかも。相手は征竜ドラゴン大好きの高校な通り、手札からしてドラゴンサポートカード全開のデッキだ。
征竜は自身の効果で墓地のドラゴン族を除外することで復活する効果と、除外されたとき、デッキからドラゴン族をデッキに加えられる能力がある。
征竜自身の展開でモンスターを固め、最後に手札にある禁止カードである『次元融合』で除外されたドラゴンをまとめて特殊召喚を狙われたら、どんなデッキであろうと一瞬でライフを消し飛ばすだろう。
運よく私達の部長はじゃんけんで勝ち、そしてたまたま先攻で勝利することができたから勝つことができたが、もし手札が悪かったら逆にワンターンキルをされていただろう。
互いに強いデュエリスト同士の戦いでも時には初手で決着がつくこともある。運であるかもしれないが、これはどうしても避けられないことだ。
「負けてしまった…。また青眼の白龍高校は冥界学園高校に負けてしまうのか…」
「それに冥界学園高校の部長は何者なんだ……。デッキのカードを全部透視できるみたいに当てやがったぞ…」
「去年も同じこと言ってたな……。冥界学園高校の部長は目が見えないらしい。でも確か知り合いの冥界学園の友達に聞いた話によるとどうやら、デッキのカードを全部匂いやら感覚でわかるらしい…」
「……。あっちの部長は超能力者かよ…」
相手高校の生徒達は私達の部長のデュエル内容について盛り上がっている。
部長のデッキトップがわかってやるプレイングは所見殺してきな意味で、間違いなくびっくりするだろう。
「部長!! 落ち込まないでくださいYOっ。まだ負けたわけではないんだZEっ。これからオイラ達は2回勝利すればいいだKEっ」
「そうだよ!! ツバサの言う通り。俺たちは友情と信頼のドラゴンの使い手の青眼の白龍高校。たった1回負けたくらいで落ち込むほど落ちこぼれてはいないんだ。それに中堅は青眼の白龍高校のエース。ツバサがデュエルするんだぜ!!」
「そうだそうだZEーー。オイラたちはまだ戦えRU! オイラたちは弱かった時期もあったけどみんなとドラゴン達のおかげでここまでやってこれたわけじゃないKAっ…」
「みんな…」
落ち込んでいたチームは1人の発言により全身真っ白なスーツを着た集団、青眼の白龍高校が結束する。
ラップをして盛り上げるのは去年の高校デュエル大会6位の実績を上げた白龍ツバサ。
此間の抽選会で『魔道サイエンティスト』を使ったワンキルをして白龍高校を強敵と見せ付けた人物だ。
その強さに比例するように発言力は力強い。落ち込んでいた周りの雰囲気が一気に回復した。
話を遠くから聞いていると堀内先輩が言っていたように、試合は中堅の私とツバサさんは対決するみたい。
相手チームを見ていて思ったがそれにしてもいいものだな…。部活を通しての絆や友情。
女の私にはわからない物もあるかもしれないけど男らしさを見せ付けるものに感動したかも。でも、それに比べてうちの高校は…。
「あーあー。ちんこ痒いな……」
漫画を見ながら下半身を弄り、ベンチで待機しているカイザー。あっちの高校と比較して全く持って緊張感がない。
「つぅか。そろそろこの漫画そろそろ飽きてきたな。おい!! 奈々川。部室に溜めてあったエロ本あるだろ。あれ持ってこいよ!!」
「何で…?」
「暇だから決まってんだろ。言わせんなよ」
「僕、次の中堅戦試合あるんだけどな…」
怒り狂うカイザーを気にせず私は次の試合の中堅戦の為に準備に掛かる。次の中堅戦の対戦相手は白龍ツバサさん。
強敵な相手だからこそ気が抜けない。私は置いてあったデュエルディスクを腕に付け、堂々と歩く。
「「きゃーーー。ユウタさーーん。頑張ってーー」」
「「あの奈々川さんが次デュエルすんだってよ…。超見所よ!!」」
「「きゃーっ」」
「嘘だろ…あれ全部奈々川の応援団かよ…。ハーレムじゃん…」
宮城に言われようやく気が付いた。
私の歩く行為に反応して女性軍団の大きな歓声が浴びせられる。これ…。全部私のファン達による応援団なんだろうか……。
私の名前の札まで書かれた旗、それに体育館全体に声援がこだまするくらいに響く。青眼の白龍高校含むここにいる全員が私に釘付けになるほど目立つ。
「堀内チンジはどうしたんだZE? 見渡してもどうやらいないみたいなんだGA?」
「先輩は忙しいみたいなんだ。だから僕が先輩に任されて中堅なんだよ」
待ってましたと言わんばかりにいるツバサさんのいるデュエルフィールドに向かったが、私の登場で残念な顔をされた。
過去に負けた堀内先輩にツバサさんはライバル意識を持っていたらしいが、私の登場が少々不安だったらしい。
「君は堀内チンジの代わりなんだNE。君が堀内チンジの変わりを勤まるかどうか不安だが、変わりってことは君は強いんだNE。それにこの女子の応援から、君はずいぶんと期待されているじゃないか」
「当たり前だ。なんだって堀内先輩を倒したことがあるんだからね」
堀内先輩を倒したのはまぐれかもしれないが、相手が先輩を倒したいとずっと言っていると思うと、これが自分の自信へとつながった。
これを説明をするとツバサさんに安心された。
「デュエルをはじめようZE!!」
デュエルディスクを構えようとした、その時だった。
「「奈々川さんがデュエルディスクを展開した。かっこいいーーー」」
「「デッキを入れたよ。見た?」」
何をするにも女子達に私の行動で騒がれる。いちいち何をやってもこれだと、私はまともにデュエルできる気がしない。
「な、な、か、わーーっ。てめぇ……。女どもにきゃーきゃー言われやがって。気に入らねえ!!」
「ぼ、僕は何もしてないですよ」
それを遠くから見ていたカイザーは怒りの感情をぶつけ、わざわざベンチから立ち上がり、私のほうにいきなり向ってきた。そしてデュエルに取り掛かろうとしている私の作業をとめるように手を掴む。
全部勝手なファンのやっていることだ。なんで私がカイザーに怒られなければならないんだ。
「「奈々川さんに何するつもり?」」
「「私達の王子様に触らないで!!」」
「「やーっ」」
私に関わることをしたせいで女軍団はカイザーに缶を投げつけられ、顔面に見事に命中する。
だが、カイザーはひるまずに女子軍団の前へと進む。
「こんな奴のどこがいいんだよ!! あんなちっこそうなチンチンの奈々川より俺様のほうがでかいぜ。それに俺様のほうがイケメンだろ!!」
「「キモイ…。近寄らないで…」」
「「きゃああああー」」
意味が分からないことを言っているカイザー。もちろん女子全員に嫌われている。
私も女だからここの私のファンの気持ちがわかる。必死な顔がとにかく気持ち悪い。
そして必死な顔をして私に近づいてくる。
「奈々川てめぇ。今まで何人の女を食ってきたんだよぉ!! ああぁん?」
「僕が人を食いなんてするわけするわけないじゃないですか」
「ウソつけ!! ヤリチンやろう。てめえのそのもてっぷりから何人もセックスしてきたんじゃねえのか。てめえの彼女もあのデレデレな顔っぷりから、今日の試合が終わったらこの後セックスするつもりなんだろ」
「ば、ば、ば……。馬鹿じゃないの?」
カイザーの発言に私は噛み噛みで答える。
どうしてカイザーはそんな発想が出てくるのだろうか。
「奈々川…。俺様とデュエルの順番代わりやがれ…!!」
「……。僕が中堅なのに……」
「俺様の言うこと聞こえないのかよ!! お前は俺様とチェンジして大将になれ。言うこと聞こえないってんなら、てめえのチンチン潰して二度と勃起できないようにさせてやろうか!? ああぁん!!」
「わかったよ…」
今までに見たことがないほど、感情を荒ぶりさせながら狂うカイザー。これに反抗したら本当に殺されるんだろうなと思い私はこの場を引いた。
これを見ていた遠くにいるミカには変な顔をされた。
最初に私はミカに中堅だから必ずデュエルできるって言ったのに……。遠くで見ていたミカはなんて思っているんだろう?。
「女ども!! 俺様がこのデュエルに勝ったら奈々川のファン止めろ!!」
「「何言ってるの? こいつ…」」
「そして君達がこの俺様、カイザーのファンになってくれたら、全員俺様のハーレムにしてやんよ」
「「マジキモイ…。あいつさっき遠くから見てたけど、前のデュエル中にエロ本見てたよね」」
「「うわぁ……。ひくわぁ……。エロ本の見すぎで頭いかれてるんじゃないの?」」
「「あんな男、気にしないで行きましょ…」」
「待てよっ!!」
カイザーの気持ち悪い発言に次々とファンたちが散っていく。
だが、カイザーはツバサさんが立っているデュエルフィールドに移動。
「何があったんですKAっ? どうしてオイラの対戦相手は人気物の奈々川って人じゃなくて君になったのかNAっ? 君、2年生のでSYO? 去年の大会にはいなかったじゃないKAっ」
「ちっ。うるせぇっ!!」
対戦相手がまた変わったことでツバサさんはガッカリされた。カイザーは舌打ちをしながら感情をイライラにしていて、とにかくデュエルでその鬱憤を晴らしたいように見える、
「本当は高校デュエル大会4位の堀内チンジと戦いたかっTAっ。でもいないみたいだから仕方ないNEっ。代わりにいる人気物の奈々川って人じゃなくて君なのかNAっ?」
「黙れっつってんだろ!! 去年の大会は俺様が出る幕はなかったからでなかったんだ。それに俺様はこの学校で最強の人物だから足手まといの堀内も奈々川もでる必要性もねえよ」
「そうなのKA…? オイラには君が弱そうに見えるんだGA…?」
「この天才最強の俺様が弱いだと……? てめぇは二度とそんな面できないように痛みつけなければいけないようだな!!」
ツバサさんにカイザーは最強だと嘘を付きながら手をグーで握り締めている。ナルシストっぽく自分に嘘をつくのは痛いから止めてほしかった。。
「それは本当ですKA? オイラは強い人とデュエルできればそれでいい。オイラはどんな相手だろうと勝つからNEっ」
「だから、そのうざってー下手糞なラップ止めろっってんだろ!!」
「オイラのラップを否定するだTO…」
「雑魚高校は早く帰れ!!」
「仲間を否定することはゆるさないが…、ラップを否定するのはもっと許せないYOっ…」
仲間を否定されて怒りの感情になるツバサさん。でも、ラップのほうを否定されて、仲間より大事っていうのが謎だが?
「オイラとデュエルしROっ。ヘナコチョカイザー!! そのリーゼントをヘシよってやりたいZEっ」
「俺様を馬鹿にするとか言い度胸してんじゃねぇか!! 下手糞ラップ野郎…。ここから先は俺様の時間だ!! 邪魔する奴はぶっ殺す!!」
互いに自分の意思やプライドを胸に秘めて、チームの勝敗の為に掛けた戦いが始まろうとしている。
カイザーは首を曲げてだるそうにデュエルディスクに自分のデッキを入れる。
対するツバサさんもエアラップをして愉快に踊りながら手持ちのデュエルディスクにデッキを差し込んだ。