遊戯王~デュエルキングを目指す少女の物語   作:魔法使い?

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第26話『いっかいせんこうへん』

 

 

 手札1、フィールドのカード4枚のカイザーに対して、ツバサさんは3枚の手札と2枚の伏せカードを持っている。

 カイザーの伏せは4枚もあるのだが、その中には『道連れ』の為に伏せたなんの意味も持たないカードも混じっているのだろう。

 カード枚数は一緒だが、ライフ差もかなりのもの。私はどっちを応援しているのかわからないがもしかしたら、もうすぐ決着がつくのだろうか。

 

「復活の聖刻印』を発動して墓地の『ネフテドラゴン』を除外。さらにオイラは手札から~『召集の聖刻印』を発動するZEっ。そしてー『聖刻印』の効果オイラは聖刻と名の付いたカードを加えRU。オイラは仲間の『聖刻龍-アセトドラゴン』を加えるZEっ!そしてチェーンする形で伏せてあった『ゴブリンのやりくり上手』と手札の『非常食』を発動っ!!」

「こいつ……」

 

 自分で3枚のカードを一気につかってチェーンブロックを組み立てるツバサさん。

 『非常食』の効果で『召集』と『復活』と『やりくり上手』を墓地置き場にラップを歌いながらゆっくりと置いていく。そして1個ずつ丁寧にチェーンの処理を解決していく。

 

「『非常食』の効果で墓地に送った枚数分×1000オイラは回復ー! そして『やりくり上手』は墓地にある同盟カード×1枚ずつ引くことができるんだZEっ。よって3枚ドロー。そのあとに手札の1枚をデッキの下に置いてしまうけどNEっ」

「いつの間に『やりくり上手』が……。俺様の手札交換のカードで捨てたときにすでに墓地に送られていたのか…!!」

 

 カイザーはツバサさんのプレイング捌きに驚きを隠せない。 

 『やりくり上手』の使い方がうますぎる……。『非常食』にこんな使い方があったんだ。

 チェーンをうまく使って『やりくり上手』を墓地に送ることで効果処理時にはすでにこのカードは墓地においてある。なので、発動した『やりくり上手』はすでに墓地にあるとカウントされる。

 初心者がよくやるカードは破壊しても効果が無効にならないのと一緒でルールの穴を付いた戦術。ほかのもう1枚の『やりくり上手』はカイザーが使った大量の手札交換のカードでおそらくいつの間にか墓地にいってしまったのだろう。

 

 これでツバサさんのライフが初期ライフの2倍以上の数値で10000を超えていることに私は目をとりこにされていた……。

 デッキのサーチ、手札の補充、ライフの回復といったデュエリストの安定行動と言われる行為を1度で全て行ったわけだ。

 これで手札は一気に4枚に変わっていく。カイザーが前のターンに使った情報アドの塊のカード『道連れ』が全く意味を持たないってくらいに増えてしまっている。これから増えた手札で何をするのだろうか。

 

 ツバサ LP8900→11900

 

「準備が整ったことでこれからドラゴン達の入場だZEっ。『復活の聖刻印』が墓地に送られたことによりで『ネフテドラゴン』を復活させる!!オイラは手札から『アセトドラゴン』を通常召喚だZE!! このカードはリリースなしで召喚ができるんだZEっ!! 」

 

 黄金の翼の青い龍が2体。

 『ネフテドラゴン』『アセトドラゴン』は雄と雌を表すように2体ともソリッドビジョンによる映像が対になっている。とはいってもよく見ると冠がちょっと違うだけだが。

 

「この2体をリリースして『ドラゴニック・タクティクス』を発動するZEっ。このカードは自分のデッキからレベル8のドラゴン族を特殊召喚できるんだYOっ。これでオイラは『トライホーン・ドラゴン』を特殊召喚するZEっ!」

 

 その夫婦2体が儀式の為に灰色の石造となり固まる。それが砕けると頭に生えている3本のツノが特徴的な悪魔龍が出現した。

 聖刻龍がリリースされた共通効果でもう1体の『トライホーン』と『エメラルド』のドラゴンも出現させる。

 

「オイラは『トライホーン・ドラゴン』2体でオーバーレイネットワークを構築!! エクシーズ召喚!!」

 

 聖刻から呼んだモンスターは攻守共に0の数値なのだが、エクシーズ召喚をするのには何の問題もない。

 2体の同じモンスターを利用することでツバサさんは簡単にエクシーズ素材のレベルを揃える条件を突破したわけだ。

 

「光に導かし神龍達の真の王よ。オイラの前で怒涛の光となりて姿を現せ!! 『聖刻神龍-エネアード』を特殊召喚!!!」

「何だよ……。こいつは……!!」

 

 巨体な聖刻神龍は唸り声をあげフィールドがら空きのカイザーを見下す。思念の炎と神々しい色を表す金色から壮大のモンスターだとわかる。

 

「こいつの効果! エクシーズ素材を使うことで発動するZE。手札かフィールドのモンスターカードをリリースすることで相手のカードを破壊できるんだZEっ! オイラは手札の『聖刻龍-トフェニドラゴン』と『聖刻龍-セテクドラゴン』をリリースして2枚のカードを破壊!!」

「ぐっ!?」

 

 『エネアード』は己の光の球を食らいそれを力として真っ赤な色の炎を放つ。炎は周囲の霧を発生させてカイザーのセットされている罠カードに突き進む。

 『魔のデッキ破壊ウィルス』に『団結の力』のブラフだ。モンスターが場に存在しないため、2枚とも今のカイザーには全くもって必要ないカードだった。

 

「『トフェニドラゴン』がリリースされたことでオイラは墓地の『エメラルド・ドラゴン』を復活!!」

 

 もう1度バニラ色の何の効果も持たない平凡なカードが蘇生される。『セテクドラゴン』がリリースされたのに聖刻の効果が発動しないのは珍しくこのカードには付いていないからだろうか。

 けれどもこれでさっきと同じ同盟モンスターが2体。これを意味するのはもちろんエクシーズ召喚。

 

「『セイクリッド・トレミスM7』をエクシーズ召喚だZEっ。このカードはエクシーズ素材を取り除くことで相手か自分の墓地かフィールドのカードを手札に戻せるんだZEっ。この効果でオイラは墓地の『セテクドラゴン』を手札に戻すZEっ」

 

 このカードも場にいる聖刻達のように金色に装飾されているドラゴンの形をしたマシーン。

 この効果を使って『エネアード』の効果でコストとなったカードを回収していく。カイザーは歯をかみ締めながら相手のソリティアみたいなプレイングを眺める。

 

「墓地にあるドラゴン族通常モンスター『トライホーン・ドラゴン』と『サファイア・ドラゴン』と『エメラルド・ドラゴン』を除外して『セテクドラゴン』を特殊召喚!!!」

 

 黄色と金色で塗られた砂漠と異邦を表すかのドラゴン。このドラゴンもエネアド神話の9柱神の1体。

 ツバサさんはラップのテンションが最絶頂になり、このカードで更なる絶望をカイザーに与えていく。

 

「『セテクドラゴン』の効果発動するんだZE。1ターンに1度自分の墓地のドラゴン族を除外することでフィールド上のカードを1枚選択して破壊する!!」

「くそっ!! 俺様の『炸裂装甲』が……!!」

「今度は当たりのようですNEっ。やったZEっ」

 

 金色の炎を吐き出し、カイザーのセットされた1枚のカードを焼き払う。

 『炸裂装甲』。相手の攻撃宣言時に発動することでその攻撃宣言したモンスターを破壊できることができるカード。

 

 

「カイザー……。大丈夫かよ……。ドラゴン3体のフィールドに伏せ1枚だけのほぼ丸裸。あんな超攻撃防げるはずがない……」

「カイザー……。負けるのかな……」

 

 補欠担当の私の仲間の宮城がベンチから口にしたので私も私語をしゃべる。

 

「負けてもこれで2戦目だし青眼の白龍高校との戦いは1勝1敗で大丈夫だろう…。それに大将戦には奈々川もいる。オレたち冥界学園高校まだ負けたわけではない」

 

 カズマ君も私達の雑談に加わる。

 確かにここでカイザーが負けたとしても高校デュエル甲子園の戦いは負けてはない。この戦いはマッチ戦同様に3回デュエルするからまだ大丈夫。

 チーム戦だから後ろの仲間がフォローすることができる。少々私にチーム全体の重いプレッシャーを任されることになるけど。

 カイザーにはツバサさんとは全く相性が合わない戦いだとしても私は頑張れる。青眼の白龍高校の最後にはどんな相手が待っているのかわからないけど私はいける!!

 

「………」

 

 仲間がピンチだという状況化に置かれているのに私達のリーダーシップである部長は何も口には言わない。本当に動かないから一瞬部長が死体に見えたけど。

 どうして仲間を大事にしている部長はカイザーに何も指示しないのか。部活動の時もそうだったけど2人の仲はとても悪かった。だからあんな態度を取っているのか…?

 

 

「俺様が負けるだと!! ありえねぇことをいってんじゃねぇよ。糞ガキどもっ!!」

 

 デュエルフィールドから遠く離れているベンチにも関わらずカイザーは私達のカイザーの陰口に気がつき大声を発する。

 それを察知した私達1年生は私語を一斉にストップする。すごい怒ってたからあとで殺されると踏んで急いで止めたのだ。

 

 

「おいおい。ドラゴンのパレードって言ってるわりにはドラゴンじゃねぇ奴が1体だけいるじゃねぇかよ」

 

 悪あがきのつもりなのか、カイザーはツバサさんにデュエルとの勝利とは関係ないことを口にする。

 

「挑発のつもりですKA? オイラの勝利は確定しTA。その話しには乗らないYO」

「はははははは。それでもいいけどよー。俺様はドラゴンがみたいんだよ。俺様も『グラファ』が好きでよー。お前も俺様同様ドラゴン好き同士気があうじゃないか」

「勝ってなこというNA!! 『グラファ』はドラゴンじゃないYOっ」

「わりぃわりぃ……無茶言ってよー」

「……。無茶ではないYO。だったらドラゴンにすればいいんでSYO。『トレミスM7』でオーバーレイネットワークを構築!! エクシーズ召喚!! 『迅雷の騎士ガイアドラグーン』!!!」

 

 カイザーの口車に乗せられて関係ないプレイングをやらされ心の中で飽きれてるのに無理しているんだろうなツバサさん。

 『トレミスM7』が黒の空間に縮小されて吸い込まれる。エクシーズモンスターを1体を素材とした珍しい特殊召喚のシーンを私は見届ける。

 出現したのは龍と騎士が合体し一体の龍となっているモンスター。伝説のデュエリスト武藤遊戯が使っていた『暗黒騎士ガイア』を連想させる。

 

「これでドラゴンがフィールドに集結したZE。満足したKA? カイザー君?」

「ハハハ。おもしれぇ。エクシーズ召喚したのに攻撃力が100下がってんじゃねぇかよ。それに貫通効果が加わっただけか? やってくれるじゃねぇかよ!!」

 

 挑発してわざと相手に無駄な召喚をさせ、私はカイザーは召喚反応系のトラップカードを発動すると思ったがそうではなかった。

 ツバサさんのように『激流葬』のような召喚系の罠があるのならとっくの昔にあるのなら発動していたはず。

 それなのにどうして優位を持った余裕な笑った表情をしているんだカイザーは。

 

「これでとどめをさしてやRU。オイラは『エネアード』でダイレクトアタック!!」

 

 攻撃力3000の赤色の聖刻神龍が口を大きく開け、息を吸い込むと紅色の攻撃を放つ。この攻撃を受けるとライフが2800しかないカイザーは負けてしまう。

 

 

 

「トラップ発動!! 『闇の呪縛』!! 相手フィールド上のモンスターの攻撃力を700ポイント下げて攻撃と表示機変更をできなくさせる!!!」

 

 残り1枚のカイザーの伏せカードが表となる。ブラフではなかったようだ。黒き鎖が湧き出てきて『エネアード』の動きを止めるべく手足を縛る。

 縛られた『エネアード』は吐いた炎の攻撃をぶれてしまう。

 

「最後の1枚は本物みたいだNE。でもこの攻撃はどうなのかNA? 止められるはずないYO。『セテクドラゴン』ダイレクトアタック!!!」

「ぐっ……」

 

 『セテクドラゴン』が捨て身の攻撃をするべく突っ走ってくる。もちろんフィールドのがら空きのカイザーには守る手段がなくその攻撃を受けるしかない。

 

 カイザー LP2900→100

 

「これでパレードの最後のショーだZE!! 『ガイアドラグーン』でダイレクトアタック!!!」

 

 騎士が槍を向けながら下にいる馬に指示をしてカイザーに突撃されようとしている。この攻撃を受けると負けだ。

 ここにいるデュエルを見ている誰もがカイザーは終わりと心の中で考えていると思う。

 だが、カイザーは全く敗北の顔をせずにいつも通りの強気のカイザーだった。

 

 

 

「ハハハハハハハハハハハハハハ」

「どうしてなんだZE? ライフが減ってないYO……」

 

 カイザーが天井に頭を向けて高笑いをする。

 最後の攻撃を確かにしたはずなのに、カイザーのデュエルディスクの数値が100から変化してない。

 ツバサさんは伏せカードを除去したはずなのに手札から予想外な防御札を使われたことに仰天した。

 

「俺様は手札から『クリボー』を発動していた! こいつはなぁ!! 戦闘ダメージを受ける時、手札から捨てることでそのダメージを無効にできるんだよ!!!」

「……攻撃を全て防いだのKA……」

 

 茶色の丸っこい体に緑色の手が生えた悪魔がカイザーの目の前に現れ盾となった。

 『クリボー』はカイザーの高身長から比べるととても小さい。たとえ小さくてもどんなモンスターであろうがデュエリストの仲間となり共に戦うモンスター。

 このカードもカードを操るご主人のデュエリストの命を守るために消えたのだ。

 

「これでてめぇの糞長かったターンは終わりだよなーーー。次は俺様のターンだ!!!」

「けれども君のライフは100だKE。手札も場も尽きTA。それに比べればオイラのライフは10900あるし、場も鉄壁。これを超えるなんてありえないことなんだZE!」

「ドローーー!!!」

 

 カイザーは声を張り上げてデッキのカードを捲る。

 ギリギリで最後のチャンスを作ったっていうのにこんなにライフも手札のアドバンテージも差を付けられてしまった。

 誰がどう見てもツバサさんの完勝なのにどうして諦めないんだ?

 

 

 そしてカイザーはゆっくりとカードを引いて狂ったように笑いの渦に包まれる。

 

 

 

 

 

 

カイザー

LP:100

手札:0枚→1枚

場 :モンスター

   なし

   魔法・罠

   闇の呪縛(対象エネアード)

ツバサ

LP:11900

手札:0枚

場 :モンスター

   聖刻神龍-エネアード(ORU1)

   聖刻神龍-セテクドラゴン

   迅雷の騎士ガイアドラグーン(ORU2)

   魔法・罠

   なし

 

 

 

 

 

「……。ハハハ。俺様は手札から『天使の施し』を発動!!! 俺様はデッキからカードを3枚ドローだ!!!」

「禁止カードKA…。いいカードを引いたみたいだNE。だけど何を引いても無駄だYO」

「これからてめぇに地獄を見せてやる!!」

「そんなことできるはずはないYOっ!!」

 

 デッキのトップ3枚をカイザーは引く。たとえこの中でいいカードを引けたとしてもそのうちの2枚は捨てる捨てる破目となる。

 例え、3枚の中で凶悪なカードを引いたとしてもツバサさんの布陣には突破できるはずはない。

 

「きたぜ」

「いいたのですKA?」

「俺様が捨てるのは『暗黒界の軍神 シルバ』『暗黒界の武神 ゴルド』。このカードは捨てたときに特殊召喚できる!!! そして俺様は『暗黒界の導師 セルリ』を通常召喚!!!」

 

 青空色の導師、銀色の軍神と金色の武神の暗黒界一族3体がカイザーのフィールドに姿を現す。

 そうか。暗黒界は全てカード効果で捨てられたら発動できるカード群。『天使の施し』のリスクで2枚捨てる効果も、有利をもたらすこととなるのか。

 

「そして俺様はその3体を手札に戻し、『グラファ』を特殊召喚だ!!!」

「またそのモンスターKA……。たかが攻撃力2700のモンスター3体だけじゃないKAっ!!」

 

 この3枚の暗黒界はもちろんカイザーの切り札の『グラファ』を呼び出すための土台に過ぎない。

 3体は墓地から這い降りる暗黒の龍神に体を掴まれ、宙に浮かされて特殊召喚の為の準備の為に利用される。

 

「言ったはずだよなーー。これから俺様はてめぇに地獄を見せてやるって!」

「っ!?」

「ひゃっひゃっひゃっ。そんなに勝ち誇った面見せやがって、うっぜーから今からぶっ殺してやるよ。俺様は『暗黒界の龍神 グラファ』3体でオーバーレイネットワークを構築!!」

「『グラファ』3体でエクシーズ召喚だTO!!」

 

 カイザーの姿を具体化したようなエースカードの黒い悪魔3体が黒い空間に吸い込まれていく。

 

 

「俺様は『超銀河眼の光子龍』をエクシーズ召喚!!!」

「本物のドラゴン……。綺麗だ……」

 

 ドラゴン好きな青眼の白龍高校の生徒がカイザーが出したモンスターを珍しい物を見ているように釘付けとする。

 『青眼の究極竜』のように3つ首をイメージして、羽の部分に顔が存在し、銀河のような光が反射して美しい赤い龍を演出している。

 

「こいつは1ターンに1度、エクシーズ素材を取り除くことで相手フィールド上のオーバーレイネットワークを全て吸収する。その吸収した数分攻撃力が500ポイント上がる。さらに吸収した数分攻撃が可能なんだよ」

「攻撃力6000の3回攻撃……!!!」

「死ね!! くたばりやがれ!!!!! ハハハハハハ。俺様は最強だ!!! ハハハハハハハ」

 

 爆発するように『超銀河眼』は光を発射させ拡散していく。光は体育館全体に広がってツバサさんのモンスターに包み込む。

 まるでソリッドビジョンなのに私は太陽を直視したみたいでどんなことになったのかわからなかった。

 私の目のくらみが直ってフィールドを確認するとツバサさんのライフが大幅に減っている。

 

 ツバサ LP11900→1600

 

「オイラのドラゴン達がたった手札1枚で全滅……!?」

「どうだよ? いい加減目覚めたか? てめぇの実力はこんなもんだ。この体育館にいる最強のデュエリストは俺様なんだよ!! 奈々川でも堀内でもなく部長でもなくな!! てめぇの目でしっかりと焼け付いておけよ!!」

「……オイラのライフはまだ残っていRU。次のターンで何とかなるはずなんDA……。青眼の白龍高校の代表としてオイラは負けるわけにはいかないI!!」

 

 

 

 その後、思い切りよくツバサさんは諦めずにカードをドローするが、そのドローカードを見てすぐに右手をデッキに置いた。

 降参の意を示すサレンダーだ。ノーガードで負けるのは自分のプライドが許さなかったのだろう。

 

「「中堅戦勝者!中里カイ!! 先に2勝勝利したことで冥界学園高校が2回戦進出です!!」」

 

 

 審判の札が上がって長かった青眼の白龍高校との試合が終わりの合図を示す。

 

「見たか!! 女ども!! 俺様が勝ったぜ!! どこからどう見ても奈々川より俺様は王子様だろ!! 約束通り俺様とエッチしろっ!!!」

 

 カイザーは勝利の嬉しさのあまり、勢いをつけて振り向きながら厳つい声で言った。

 

「いねぇ……」

 

 が、私のファンは私がデュエルしないと聞いてとっくの昔に帰っていった。気持ち悪いカイザーにはもちろん興味がないご様子で。

 

 

「ホラよ。勝ってやったぜ。雑魚ども!! 」

 

 無事勝利を果たしたカイザーは私達が待っている待機所に戻ってくる。

 カイザーは手を頭に乗せて後ろで組み、口笛を吹きながら椅子に座って余裕綽々なテンションでいる。

 

「やったよ。これでまずは難関の第一試合を突破だね!!」

 

 私は勝利のあまりこの貴重な勝利に思わず声が出てしまう。

 

「でも、確か、青眼の白龍高校ってめちゃくちゃ強いんじゃなかったのか?」

「そうだったよね……。でも、僕たちが勝ったんだ。喜んでいいと思うよ」

 

 宮城がこんなことを言う。

 青眼の白龍高校は、私が見た今までのデュエリストたちの中でも一番って言ってもいいほどの強い相手だったと間違いないだろう。

 

 でも、先鋒の部長と中堅のカイザーの活躍によってストレート勝ちで、チーム戦は特に苦戦しないで勝ったんだ。

 大将になった私が出るまでもなく。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「ごめんYO……。みんな……。オイラ勝てなかっTA……」

 

 私達の近くにあるベンチから声が聞こえるほうを私は振り向く。

 ツバサさんはカイザーとは反対に辛そうな顔をして自分の青眼の白龍高校のベンチに戻る。

 

「オイラが最後に引いたカードは、『聖刻龍-トフェニドラゴン』。あの時、口に乗せられて『ガイアドラグーン』をエクシーズ召喚しなければ『超銀河眼』は2回しか攻撃できなかっTA…。『トレミス』か『エネアード』『セテクドラゴン』のうちどれでもいいから1枚残っていればオイラは勝っていたのNI……」

 

 このツバサさんの発言で驚く。言い回しから、カイザーは負けていたのか?

 変な挑発に乗せられてしまったことであんな結末を迎えてしまった。

 プレイングの1つや2つ違っただけでも全く違うデュエル展開になるのは珍しくない。たとえプレイングをミスをしても時には勝利することもよくあることではない。

 

「そのくらいどうってことないよ。でもツバサさんはよくやったぜ」

「ツバサは俺たち青眼の白龍高校代表の選手として頑張ってくれた!! 精一杯やってくれたんだ! くいはないよ!!」

「みんな……。ありがとうなんだZE……」

「いつかリベンジしてやる!! 冥界学園高校!!」

 

 喜ぶ私達とは違い、敗者であった私達のライバルとして戦ってくれた青眼の白龍高校は涙を堪えながら負けたことの悔しさを胸に締める。

 そして冥界学園高校の私達のいるベンチに別れのお辞儀をする。このまま今日の相手をしてくれた学校はリベンジをすると言葉を残してここから立ち去った。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「終わりー。毎年苦戦すると思っていた青眼の白龍高校を倒したことだし、これで事実上の決勝戦は終わりー。あとは消化試合だけだな。マジで今日の相手は雑魚だったな」

「えっ!?」

 

 私は一瞬だけ適当みたいなことをカイザーがしゃべったことに理解できなかった。

 32組の高校デュエル甲子園予選大会は1勝勝利したことで、私は今日みたいにサクサク勝ち進んで毎年のように全国大会に進める?

 でも、対戦相手に「雑魚」呼ばわりしたカイザーに私は少しだけ腹がたったので、ベンチでツバサさんがしゃべっていた本当のデュエルの結果を話す。

 

「本当はツバサさんにカイザーは負けていたんですよ。カイザーの運が良かったおかげで勝てたから」

「ああん!! 何言ってんだよ!!」

 

 反抗的な私の行動にカイザーは威圧を持ちながら徐々に近寄ってくる。

 

「でも、本当のことを言ってるだけじゃないですか。カイザーの挑発に乗らないで相手が最後に無駄、エクシーズ召喚を行わなければ相手のモンスターは1体だけ残ることになってた。あのモンスターのうち一体でも残っていればツバサさんは勝利できたんだ。全て除去効果持ちのモンスターだったわけだから、確実に次のターンに返されていた……」

「てめぇ!! 俺様の華麗な勝利にケチを付けんのかよ!! ああん!!」

 

 私の顔すれすれぐらいに、怒り狂ったカイザーは言葉を強くして言い返してくる。

 それはつばが、勢いを持って私の顔に掛かるくらいに。つばが顔に掛かって汚いけど、ここでひるんだら女の私は、負けてしまうと思って、ひるむわけにはいかない。

 

「おまえ、どっちを応援してんだよ。奈々川。カイザーは俺たちの仲間だろ!! 試合に勝ったのに、なんでこんなことを言うんだ?」

 

 宮城に言われた。確かに、カイザーは私達、冥界学園のデュエル部のチームメンバーとしての仲間。

 でも、侮辱するような言い方だったので、私はカイザーはとても気に入らない。

 

「いや、奈々川の言う通りだ……」

「……っ!?」

 

 私達が喧嘩をしていると、脇から部長が入ってくる。

 

「ちょっとこっちにこい。中里」

「なんだてめえは」

 

 カイザーは部長は、さっきまで大量にいたデュエルの応援や青眼の白龍高校から離れ、人通りが少ない体育館裏へと連れて行かれる。

 私も気になり、影で隠れてついていく。

 

「たしかに中里……。お前は負けていた。対戦相手の白龍ツバサ……。あいつはめちゃくちゃ強かった。お前の代わりにデュエルする予定だった奈々川でも勝てないってくらいにな」

 

 その発言で私も驚く。私が本当はこのデュエルをしていたら負けていた?……。

 

「あの白龍ツバサはエンターテイメントデュエルをもっとーに、対戦相手を楽しませるのが好きなデュエリストだ。あいつはドラゴン好きなデュエリスト通りにすべては行動するからな」

「何がデュエルが楽しいんだよ!! デュエルはどんな形でもいいから勝たなければ意味がねえんだよ。俺様はここいる中でも一番強いって証明できなければ意味がねえ」

「……」

 

 カイザーと部長が対立する。

 2人の考えは、部活でも全く合う気配はなくいつも口げんかをする。私達は同じチームメイトなのに……。どうしてこんなにも相性が合わないのだろうか。

 

「おい。中里。お前のそのデッキを見せろ」

「……!!」

 

 部長はカイザーの許可を得る前に強引にデュエルディスクのデッキを抜き取り、カードの束をめくっていく。

 そして1枚のカードで止まった。

 

「このカードはなんだ」

「なんだって『天使の施し』だろ。部長よてめえ。目が見えねえからって変なこと言ってんじゃねえぞ」

 

 それは『天使の施し』。さっきのデュエルでカイザーを一発逆転の勝利を導いてくれたカード。

 そんなのはさっきまでデュエルを見ていた部長でも知っているはずなのに……。部長の様子が変だ。

 

「いや、そんなことは聞いていない。だったらこれはなんだ」

「……『天使の施し』が2枚!! どうして……」

 

 私は思わず驚きながら声が出てしまう。だが、少し声が大きかったので周りを気にして、今のがばれてないか確認する。

 禁止カードに指定されていて、デッキに1枚しか入れられないはずなのにカイザーのデッキには2枚も入っている。

 どうして……。

 

「1枚は角がボロボロに折れて、カードもしわが入ってるな。このカードは中里……。お前はもう10年近く使っている大事なカードなんだろう」

「だからなんなんだよ。何が言いたいんだ。糞部長!!」

「だが、もう1枚はなんだ。新品同様カードに一切傷がなくとても綺麗なカードだ。それにこのカードは女の匂いがするな。これはどうした!!」

「はぁ!! 女の匂いだと!!」

 

 部長が女の匂いと聞いて私は焦ってポケットの中を探す。

 ないのだ。私がミカから大切にもらっていた『天使の施し』が。まさかと思って確認するとカイザーが持っているカードが、私のカードっぽい気がする。

 でも「女」という言葉を聞いて部長がカイザーに私のことをばらすのではなかろうかと、心臓に負担がかかる。

 

「甘い果物の香水の匂いがするな。おそらく奈々川が彼女からもらったカードなんだろう。でもなぜ中里…!! お前が持っている!!」

「別に勝手だろうよ。デュエル前に落ちてたのを拾ったんだよ。俺のだと思って間違えて拾っちまったんだよ。馬鹿じゃねえの」

「間違えるはずがない。2枚のカードは新品と中古。全くの違いがある。お前のそのカードの使い具合からして間違えるはずはない」

「だからなんだってんだよ。ああん!!」

 

 やはり私のカードであったか。部長は目を瞑りながら冷静に話すのに対し、カイザーは力任せな発言をして対立する。その2枚のカードで部長とカイザーは大ゲンカをしてしまう。

 

「明らかにイカサマだ。禁止カードを2枚を入れるという行為はデュエリストとしての失格な行為だ。デュエルに勝ったとはいえ、冥界学園高校の恥だな」

「だからどうしたってんだよ。俺様は勝った。俺様は雑魚のおめえらの為に勝ってやったんだよ。殺すぞ!!」

 

 この発言で、カイザーは部長の目の代わりをしている杖を足で蹴っ飛ばし、部長の胸蔵をつかむ。

 だが、この暴力沙汰の行為でも目を閉じたまま全く驚く気配をしない部長にカイザーは、すぐに手を降ろす。

 

「やーめた。てめえのその澄ました態度マジでやる気なくなってくるぜ」

 

 カイザーは部長に背を向けて、あきらめた顔をして歩いていく。そして影で隠れている私に連れ違う。

 カイザーのイライラしている態度から、部長の恨みの矛先を私に向けて殺されると思ったが、

 

「ほらよ。てめえの女のむかつくカードを返すぜ」

 

 『天使の施し』のカードを渡そうとしたので、私は手を伸ばすがそれと同時にカイザーはわざとらしく手を放して、カードを土の上へと落ちてしまう。

 

「カイザー先輩……。なんでイカサマなんかしたんですか?」

「てめえも俺様がイカサマしたっていうのかよ!! これはイカサマじゃねえよ。俺様は負けるかもしれねえ中堅のてめえの為に勝たせてやったんだからありがたく思えよ」

「………」

 

 カードを拾っていると、カイザーに怒鳴ったようにこう言われて立ち去った。

 どうしてカイザーはこんなにも勝ちにこだわるのだろうか。たとえさっきの試合負けたとしても、大将戦に変わった私を信用して回してくれればよかったのに。

 

「奈々川……。さっきの中里の話を聞いていたのか……」

「そうですけど……」

 

 部長にも気づかれ私の目の前へと姿を現す。低い声だったので何だか自信がなさげのようにも聞こえる。

 

「お前にも話がある。さっきの試合の中堅の青眼の白龍高校の生徒の白龍ツバサは強敵だった。デュエルが強いお前でも瞬殺されるっていうくらいにな。それに3回戦の大将戦の相手【竜星】使いの幻龍リュウゴも中堅同様にドラゴン使いのプロだった。もちろんこの相手も勝てるか勝てないかのギリギリのラインだったはずさ」

「………」

「とにかく何かを犠牲にしてまで勝つ必要はないんだ。この大会はチーム戦なんだから。自分の腕で全てを解決をするとは思うな。ときにはデュエルを諦めて後ろの仲間に託してもいい。それがチーム戦なんだからな」

 

 ……。部長は下向きで悲しそうに私に伝えているような気がする。

 大会の初戦は何とかストレート勝ちしたけど、なんだがモヤモヤした心残りがする。私とカイザーが勝てない相手をずるをして倒してしまったことが。

 どうしてカイザーとは同じデュエル部の仲間なのに、心が通じ合えないのだろう。カイザーのあの性格から一生仲良くなれないような気がした。

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