「もっと強くなりたい……」
私は机いっぱいにカードを広げて、持っているデッキとにらめっこをする。
デュエリストである以上、デッキを常に構築するのは当たり前のこと。
40枚以上からなるデッキから、常に細かいカードの枚数、採用するカードの理由、強力なコンボを考えることなど。
昨日のデュエル……。
青眼の白龍高校の試合……。部長とカイザーが何とか勝利をもたらしてくれたけれども、本当は私達がぼこぼこに負けていたのかもしれない。
対戦相手の手札を見ていると、私は正直言って自身がないのだ。本当は私達が負けていたということいに。
試合に勝ったはずなのに、どうしてもすっきり勝ったと自覚がない。
「ユウヤーー。どうしたの? 冴えない顔をして」
綺麗なピンク色の長い髪を揺らしながら、デッキ構築に真剣な私の前に現れる私の彼女のミカ。
「昨日のデュエルをみて、僕は考えてたんだ。カイザーと戦った白龍ツバサさん……。本当は僕がツバサさんと戦う予定だったんだけど、ツバサさんのデュエルを見ていたら、あんな強いデュエリスト、僕には勝てるわけがないと……」
「それでもあなたのチームは勝ったんじゃん。ストレート勝ちで圧勝。デュエルは結果が全てなんだから、深く考える必要なんてないわよ」
「いや、違うんだ。ツバサさんとのデュエルを僕はイメージトレーニングをしたんだけど、どうしても勝てる自身がなかったんだ。相性、戦略、カードパワー、いろいろ考えたんだけど、どうしてもだめだったんだ」
「うーーーん。でもユウヤは入学前より強くなったんだから別にいいんじゃない?」
「もっと強くなりたいんだ。デュエルキングになるっていう夢があるから。どうしても自分の今の腕に自身がないんだ……」
「まだあんたは強くなりたいんだ」
「強くなりたい……」
学校では学年2位の生徒として、クラス中の人たちに羨ましがられているがそれでも今の自分の腕には満足できていない。
今ここにいる学年1位のミカにはまだ遠く及ばない存在だし。私と同じ学年2位の清水さんだって勝てる自身がない。
清水さんとミカのデュエルをしていた時に、思ったことなんだが、私が大好きな同性愛者の清水さんはわざと私と同じ順位にしている気がする。
私はまだまだ強くなれる。女子にキャーキャーされて浮かれている場合なんかではない。
「うーーーん。そうねーー……」
考えているように急に黙りこむミカ。しばらくたって勢いよく言葉を口にした。
「だったらデートしよっ!!」
「なんで!?」
「いいからしようよ」
「だからなんで? 遊んでいる暇なんてないのに」
「そうかーー。強くなりたくないんだ?」
「デートとデュエルの腕がどこに関係あるんだよ」
「嫌なの?」
「嫌じゃないけど……」
しつこいミカの「デート」発言になんか断りきれない流れに。
ミカから見れば男と女がデートするって普通のことなんだけど、私から見れば女と女同士がデートするっていうおかしなことなのに、何で、私は断りきれなかったのだろう?
「デート。デート! ユウヤとデート♪ きゃーーー。ユウヤにいきなりプロポーズされちゃったらなんて答えればいいかしらーー」
「プロポーズって僕たちまだ付き合って3ヶ月目じゃないか。それにまだ僕たち高校生でしょ」
「えーー。私達って結婚前提に付き合ってるんじゃないの。そろそろいいじゃないの?」
「結婚前提って……。いつ言ったんだよ……」
相変わらず一人だけテンションが高いな。ミカは。
それが彼女のいつも通りのスタイルなんで、暗かった私もつられて元気になる。
◆◆◆
「うふふふ。ユウヤーー。可愛い。本当に女の子みたい」
「かぁーー……」
顔を真っ赤にしながら私とミカは手を繋いで都会の商店街を歩いていく。
私はなぜか、ミカの来ている私服である白のワンピースを着せられている。
スカート丈はひざ下で、靴はヒール、自分でも自然と露出している足に目が行ってしまう。男を演じているはずなのにこれではまるで女の子であると。
ミカに可愛いと言われて余計に恥ずかしくなる。
「ミカだって何なんだよ。その恰好は?」
「えーー。似合わないかしら?」
「いや、かなり似合っていると思うけど……」
私より身長が高いためミカの素敵な黒のスーツに私はドキッとしてしまう。
スーツから微妙にはみ出て見えるワイシャツ姿がとてもセクシーで、ネクタイはギリギリ派手に見えない赤がとてもおしゃれ。
女っていうより、男をイメージしたもので、可愛いっていうより落ち着いたクールな大人の男性をイメージしたもので、私は違う意味で反応してしまう。
「こうしてみると私達、本当の男の子と女の子のカップルよね」
「なんで性別が反対になっているんだよ!!」
「何って。あんたの女装大好きな趣味に合わせてるだけよ」
なぜか私は女装が趣味になっているし……。
やっぱり初めてあったときに、ミカに女物の下着を見られてしまったのが印象ついてしまったのかな……。
でも、これで私が女っぽいことをこれから、自然に起してしまったとしてもこうやって適当な理由を付けて逃げられると思えばいいのかな?
「ここって有名な服屋がいっぱいあるらしいわよ」
「でもどうして……。デュエルとここはどこが関係あるの?」
「いつでもどこでもデュエル、デュエルってユウヤは安定のデュエル脳ね」
「僕のデュエルの腕を上げてくれるんじゃなかったの?」
今すぐにでも、私は強くなりたいはずなのに、ゆっくりマイペースにミカと呑気にもデートなんて。
デュエルが強いミカから、デートを通してデュエルを強くしてくれると思ったのに、この言回しから嘘っぽい気がする。
どうして私はデートとデュエルは関係ないのについてしまったのだろう。
「ユウヤ、いいから早くいくわよ」
「ちょっと待ってよ神崎さん!!」
腕をひっぱられる感じで私はミカにつれていかれる。
デートって男がリードするものだとずっと私は解釈していたはずなのに、どうしてミカにリードされているんだろうか。
私は男の子になったんじゃなかったのか……? 私がリードするべきではないのだろうか。
◆◆◆
「わぁ……。可愛いお洋服がいっぱいあるー」
「女物の服を見て可愛いってどういう神経をしているのかしら。やっぱりユウヤは変態じゃん」
「違う!!」
おしゃれな可愛いふりふりの服がいっぱい置かれている服屋に私達は到着する。
久しぶりに可愛い素敵なお洋服を見て、思わず自分が男の子だっていう設定を忘れてしまうほどに、素の女の自分を出して目をぎらぎらにして興奮していたら思わずミカに突っ込まれる。
「だったらこれ着てみる? ユウヤにとっても似合うと思うよ」
「いや、……。遠慮しておくよ」
「どうして?」
「だってまた僕をからかうつもりだろ」
「からかうも何も。あんたって女物の服を見てノリノリじゃないのよ」
もう少しでミカに釣られるところだった。
こっちはこっちでプライドがあるっていうのに、またミカに突っ込まれて馬鹿にされるところだった。
「見てみてーー。ユウヤー。こっちには水着があるよ。これ可愛い。着てみたいなーー」
「もう夏の季節かーー」
「プールに行ってみたいね」
「そうだよね」
今度は普通の女の子らしく水着コーナーに移動するミカを見て考える。
夏と言えばプールと海なんだけど。私の中学生時代は、デュエルの勉強ばかりで忙しかったから仲が良かった友達と全然いけなかったな。
でもそんなことより、私はミカとの約束「デュエルの強くなりたい」ことばかり気にして頭があまり働かない。
「これ試着してみるからちょっと待っててね。覗いても別にいいのよ」
「のぞかないよ」
ミカは冗談のつもりなのだろうが、男の人に覗いてもいいってどういうことなんだろうか。カップルは普通にデート中にそういうことをやるんだろうか?
「ユウヤー。私の水着姿? どう? 興奮した?」
試着コーナーから出てくるミカ。花柄のピンク色の水着を着て、三角ラインのビキニがすごく似合っている。
相変わらず体のラインがとてもきれいだ。くびれたウエストに、引き締まったヒップ、それに形の綺麗なバスト。
女の私がとっても羨ましいと思うほどの、美しい体をしている。
目を合わすのがとっても恥ずかしい。
「私の体はユウヤのものなんだからね。好きにしてもいいのよ」
「好きにしろって言われても……」
「なんか微妙な反応ねーー」
好きにしろと自身気にでミカに言われたが、女性である私はどんな反応をすればいいのかわからなかった。
「あんたの分もあるのよ」
「えっ? 僕の分の水着も?」
私もミカみたいなおしゃれな水着を選んでくれたのかと思って、近づいてみるが、
「じゃじゃーーん。メンズコーナーで一番人気ある海パンよ」
「ふぁっ!!」
ニコニコと笑っているミカに、膝まで伸びている水玉模様のサーフパンツを渡される。
まさかこれを着ろと私に言っているのだろうか。
男の人は女の人と違って、確かプールの日は胸を隠す衣はなく、パンツ1枚の格好だったはず。
私はイメージをする。これ1枚でミカと一緒にプールに遊びに行く妄想を。
膨らんでいる胸を周囲にさらしながら、パンツ1枚で歩くなんてありえないぞ。
こんなのミカはともかく、周りに女だということをばらしてしまうことになる。
ってかばれるっていうより、私は只の変態になってしまう。
「あのーー。神崎さん。やっぱり僕はプールにいかないことにしたよ」
「なんで?」
どうして当たり前のことに気が付かなかったのだろうか。
男装している私が、性別を簡単にばらすこととなるプールにいくってことはできないはずなのに。
私は断るとミカに疑問な顔をされた。
「ユウヤ。これ忘れてるよ。黒のトップス」
「どうして……?」
ミカに黒のシンプルなデザインの長袖を渡される。ミカの右手に最初から持っていたので、私に海パンの他に渡す予定だったようにみえる。
「なんでって、私があんたにパンツ1枚でプールに入らせるわけないでしょ」
「……?」
「だってあんたって人に見られたくない傷があるって前に言ってたでしょ。私はあんたが傷つく姿を見せたくないのよ」
わざわざ私に気を使ってくれていたのか……。
前に私はミカと一緒にお風呂に入ったという危機から、女だとばれたくないと一心でついた嘘。
嘘のはずなのに、私のためにわざわざ覚えていてくれたんだ。
親切なミカの優しい対応に、ほんのちょっぴりうれしかった。
「大会中の合間に絶対にプールにいくからね。楽しみにしててね。ユウヤー」
「うん」
「絶対に大会負けるんじゃないわよ」
「わかっているよ」
私とミカとの約束。
それは小さなことなのかもしれないけど、私は絶対に負けられない理由ができた。
こうして彼女といる時間がとっても充実していて、とっても楽しくてわくわくするんだ。
◆◆◆
「ほしい物があったから結局いっぱい買っちゃったね」
「何だか、いつも申し訳ないな」
買い物袋いっぱいを両手に抱えながら、ミカと私は自宅の帰り道を歩いていく。
今日はいっぱい買い物をした。わざわざ遠出してまで洋服まで買ってもらって、今度プールに行くためにきる水着まで。
それにその他もろもろ。足らなかった生活用品もそこに含んである。
「ユウヤ、飴ちゃん食べる?」
「うん」
手に渡してくれた飴をさっそく口にする。
ミカが食べている全く同じイチゴミルクのキャンディーを貰った。
さみしかった口の中に、昔懐かしいような蕩けるイチゴ味が口の中に広がっていく。
「それでデュエルが強くしてくれる約束は?」
「あんたもとっくに気が付いているんでしょ」
「え?」
「全くあんたはわかってないのねーー」
今日は全くデュエルをしていない。
そればかりか、デート中はカードを弄ってもいないし、デュエルの話なんて全くしていない。
約束をしていたはずなのに、ミカはとっくの昔に約束を果たしたみたいに偉そうな目線で私を見ている。
「それってどういう意味なの?」
「どういう意味も何も。あんたの思っていることは全て私にばればれなのよ」
「ばればれって?」
一瞬、私の全てがばれていると聞いて、「私が女」だということをばれるのかと思ったが、違ったようだ。
別のことをミカは話してくれた。
「あんたって悩み事があると、解決するまで一日中悩みこむ癖があるのよ。いつもはマイペースでニコニコっとしてて明るいキャラクターなんだけど、悩みがあると一日中、ぼーっとして机の上で考えごとをする。今だってそうでしょ。デュエルが強くなりたいってずっと悩んでたからデート中もほんの少し暗かったもん」
「どうして……」
「どうしてって何も、私はユウヤの彼女なんだもん。そのくらいわかるわよ」
「……」
ミカは私をいつも必要以上に見ていてくれている。私が相当落ち込んでいたことをミカはずっと考えていてくれていたんだ。
「デュエルが強くなりたいって焦る必要はないのよ。ユウヤはプロの私が認めるほど相当強いんだから、そんなに無理に極端に強くなりたいなんて思わないことね」
「………」
「何だか自身がなさそうな顔ね。これからいつも通りにデュエルの特訓をしていけばいいんだから。毎日、毎日地味だけど少し練習していけば人は成長していく。私だってプロデュエリストになる前は大変だったわー。毎日デュエルの特訓しているのに、全くデュエルが強くなったって感じなかったもん。でもね。頑張った結果、成長のあかしが少しずつでてきたの。こうして私は少しずつ強くなれた」
ミカを見ていると足を止め、持っている買い物袋をごそごそと漁る。
すると出てきたのはカードパックのボックス2箱だった。やる気がなかった私はそれを見ると急にその箱が気になって、気になって死んだような目が覚める。
「通称バトルパック。デュエルモンスターズの発売周年を記念して発売されたパック。収録されるカードは単体でも使えるカードがほとんどで、シールド・デッキ形式で遊ぶことを目的としたパックなの。まあ、ほとんどは採録が豪華だからそっち目当てで買っていくデュエリストが多いんだけどね」
「しーるどけーしき?」
「うん。シールド形式。未開封のパックをゲーム直前で開封し、封入されていたカードのみを用いてデッキを構築し対戦する遊び方」
「そんな遊び方があるの!! すごいよ」
「まあ、たまには変わった遊び方をしてユウヤと夜のデュエルを楽しみたいしね。一応初心の心も大切よ」
「夜のデュエルって言わないでよ!!」
夜のデュエルと学校でいうと、エッチな話にもっていく友達がいるから、夜中にデュエルすることをそういう呼び方でいうのはやめてほしかった。
でも、やっぱりデュエルのことをミカは考えてくれたんだ。何も考えてはいないんだと少しでも思った私は馬鹿だった。
こうして丁寧に考えてくれるミカはやっぱり好きだ。
「ありがとうね。ミカ大好きだよ」
「べべべべ、別に。あんたの為にいつも通りにやっただけよ」
私が、感謝の気持ちを表すと声を震えながら返事が返ってくる。
強気な性格がまれに崩れることがあるのが、ミカは見ていて可愛いな。
「私も大好きだよ」
そういうとミカは買い物袋を地面に落として、私に一目散に抱きついてくる。
ミカの柔らかい部分が私の体にいっぱい当たって、この行為は女の私でも、毎回ドキドキするほど恥ずかしくなってしまう。
「「好きってどういうことだよ!!」」
「え?」
私とミカだけの空間を切り裂くような、後ろから聞こえる若い男の声に私とミカは足を止める。
髑髏のTシャツ。ロングヘアーの茶髪で身長180センチくらいで、チャラチャラしたようなネックレスを身にまとった男性が現れる。
「誰だよ。こいつは!!!」
「何って私の彼氏のユウヤよ。どうカッコいいでしょ」
「ふざけんなよ!! お前!!」
ミカが目の前の男性に慣れた口調で話すありさまから、ミカの知り合いのように見える。
私は2人の会話に入ってこれない。
「彼氏ってなんだよ。どっからどう見ても、女だろうよ。さっき好きって言ったよな? なんでお前は女と付き合ってるってことか?」
「いや、私の彼氏よ。今は女装してるだけで本当は男の子だもん。もとからこの子は女の子っぽい顔をしているのよ」
「たしかによーく見てみれば男としても見えなくもないが……」
茶髪の男性が私のことを足から頭まで、ゆっくりと目線を動かしながら見てくる。
チャラチャラした男は全くもって私のタイプじゃないから、この手の男は私は嫌いだ。
「つーか。何でこいつ、女装してんだ? それにミカ。お前もなんで、スーツ着て男っぽい恰好してるんだよ」
「なんでって彼氏の趣味に合わせてるだけよ」
「はっ?」
そんなことを茶髪の男にミカは話すと、私の顔を見ながら驚いた顔をしている。
これは本当は女装じゃなくて、女性である私本来の姿なのに……。ミカに初めてあった勘違いからどうして私は女装大好きな男って勘違いされている。
恥ずかしい……。
「彼氏の性癖にわざわざ付き合う何てな。ミカちゃんは彼氏にもう調教済みでしたか……。おぅ」
「いや、私がユウヤを調教してんのよ」
「ウソだろ」
私は思わず「えっ」と声を上げてしまった。
とりあえず私は変態じゃないことを茶髪の男に説得をしたいのだが、この流れから言えるはずはない。
「ところでミカ、そこの男の人とどういう関係なの?」
疑問に思ったことをミカに言ったはずなのに、男が先に答える。
「何って俺はこの女の元彼」
「ウソに決まってるでしょ」
茶髪の男が、ミカの元彼?
いや、そんなはずはない。私がミカと初めて会ったときは「生まれて初めて人を好きなった」とか、私ミカと一緒にお風呂に入ったときに胸を当てながら「こんなことをするのは初めて」って言ってたっけ。
私に対して男慣れな行動をとるのは、強気なミカの性格からだと思っているが、たまに私に強気にでる行為で、緊張した様子を見せるミカは恋愛については初めてに決まってる。
「この男、赤星リク。ただのストーカーよ。私が中学のときからプロデュエルで活躍しているときから絡んでくるんだけど、しつこいのよね。ほんとむかつく」
「俺はミカちゃーん。あなたのことが好きなんだ。こんなひょろそうな男と付き合うのなんかやめてこの俺と付き合ってくれないか。それにミカちゃんと5つ俺の方が年上なんだぜ。こんな将来性がない男と付き合うのはやめてさ、俺のほうにこない」
「馬鹿じゃないの。キモっ。このロリコン!! 私はあんたみたいな男が一番嫌いなのよ。こんな何するかわかんないような男なんかとね」
いつも通りに気に入らない相手には容赦なく煽っていくミカ。
この男は私と5歳離れているってことは20歳のプロデュエリストか……。この男もまたミカと同じレベルのデュエリストってわけか。
「私はもうユウヤと結婚することになってるの。もう私と関わらないでくれる?」
「何でだよーーーーーーーーーー。だって俺はプロデュエリストでもミカちゃん、君と同じ好成績を上げている超エリートなんだぜ。それなのに、無名のこの男と付き合っているってどういうことだよ」
「ユウヤはかっこいいし、優しいからだいすきなのーー。もう一緒にキスもしたこともあるし、お風呂も一緒に入ったこともあるし、一緒に抱きつきながら寝たこともあるし、夜のデュエルも何回も経験済みなのよ」
「ちょ、ちょっと……。それを人前で言うのは恥ずかしいからやめてよ……」
「いいじゃないのよ。もう私達の関係はこんなにも発展しているんだし」
ミカが言っていた1つ、1つの事実は紛れもない真実。私達だけの関係を目の前にいる男に言われて、私は思わず恥ずかしさのあまり顔が赤くなってしまう。
「ゆ、ゆるせん……そこのお前ーーーーーーーー!!!」
怒りながらこっちを見てくる茶髪の男、リクっていう人だっけ? ミカのせいで怒りは私に向けられている。
「ユウヤ。こっちきてー」
「何?」
こんな時でも、ミカは私の顔を見ながら、可愛い顔をして私を呼ぶから緊張してしまう。なんだろうと私は疑問に思いながらゆっくりとミカのほうに近づく。
すると突然ミカは私の背中を両手で捕まえて、私の体はミカのほうへと移動して……。
「「チュッ!!」」
「え、えっ……」
一瞬のできごとだった。その音と共に唇と唇が突如触れあう。
あれ……。唇と唇……が触れた……?
「うふふふ。ユウヤとキスしちゃったーー」
「かぁ……」
火照った顔をしながら満足した顔をしているミカ。私もその顔で、今の出来事に気が付き私もミカと同じ顔をしてしまっている。
私とミカが今、やったことはキス……? 前にもミカにキスをされたけど、それはほっぺただった。昔お母さんにも寝る前にされた御休みのキスのような軽い感じだったから、それはファーストキスには含まないと思っていたのに……。
でも、今やったとのは紛れもない唇と唇が触れたキス……。これが私のファーストキス……?
「ゆるせん………」
「どう? 見たでしょ。これが私とユウヤとの関係よ。もう私達の体は相性抜群なのよ。誰にも邪魔されないくらいにラブラブってわけ」
今のキスの動揺のあまり、動けない私とは違ってミカは強気に茶髪の男を諦めさせようと挑発させる。それでも茶髪の男はひるむことなく。
「何がキスだ。それってお子様キスって言うんだよ。唇と唇が触れ合うなんて、いまどき幼稚園生でもやってるキスさ。こんなの誰だってできるぜ」
「だから何? 何が言いたいのよ。あんたは?」
「俺がミカちゃんと付き合えば、もっと君が知らないことを教えてあげるぜ」
「いや、私ももっと知っているんだけど」
リクって人とミカが話している、私がさっきされていたあれがお子様キスってどういうこと?
そのキスでも私はすごくドキドキして、今もなお冷静な判断ができないってくらいにされたっていうのに。
「ユウヤーー。こっち向いて」
「……っ!? 近いよ……」
またミカが私のほうへとやってきて顔を合わされた。顔の近いがとても緊張して目を合わせるのがとても恥ずかしい。
そして再びミカは私の唇めがけて……。
「んんーーっ」
今度は唇と唇が触れ合うってことじゃなくて、ミカの唇から私の口の中に生温かくてジメジメしたものが侵入していく。舌だ。
「んっ……。やめっ……」
「ちゅっ。ちゅっ」
強引な展開に焦る私は、逃げようとしたいがミカの手は私の背中をがっちりとつかまれていて身動きが取れない。
そしてミカの柔らかいマシュマロみたいな胸が、私の男装するためにサラシを巻いている胸にあたっている。
体と体が触れ合うだけでもおかしくなっていくのに、ミカの舌がどんどん伸びて、私は逃げようとしている舌めがけて動き回ってくる
「ちゅっ」「ちゅっ」と恥ずかしい音を立てながら、歯茎、頬と続けて舐めて、最後に舌と舌を合わせられた。
静かに絡み合わさって、ミカの体温が舌を通して伝わっていく。ミカの舌から私がさっき舐めたイチゴ飴の味が、私の口の中に広がる。
「はぁ……はぁ…」
「ハァ……」
ようやくミカの口が離れると同時に、ミカと私の舌から唾液が糸となって出てくるのがわかる。
認めたくなくてもこれが、私達が今までやっていたことを表す証。
あれから何分間続けたのだろか。短いはずだったのに、私には体感的に数十分も続けていたような気がする。
ミカによって呼吸をほとんど止められていたのが苦しくて、ようやく息を解放されたのが気持ちよかった。
解放されたはずなのにどうしてなんだろう。体中が火照ったように暑くて冷静にいられなくなって、心臓がどっくんどっくん波打って私はまともにいられない。
「ユウヤーー。御馳走様でした。ユウヤのお口の味、私がさっき上げたイチゴ味の飴ちゃんの味がする」
今の好意にうれしそうにしているミカと違って、私は今の行為で体中に力が抜けてしまって蕩けてしまい、地面に膝を付けて立てなくなってしまった。
舌と舌がまじあうのもこれもキスだっていうのか……。最初にやったお子様キスと違って今のキスはこんなにも体がおかしくなってしまうものだったんだ。
「うぅ……。もう僕、お嫁にいけないよ」
「お嫁って何よーー。私がユウヤのお嫁さんになってあげるからね。うふふふふ」
思わず女の台詞を言ってしまったが、ミカは台詞を変えて言い直してくる。もう私は男装している以上、この子とずっと一緒にいるしかないのか……。
私が大事にしていた初めてのキスがこんな形で終わってしまうなんて……。
ミカは男と女同士の理想の恋人のキスなんだろうけど、私はミカとは違って女の子同士のキスになってしまった……。
ファーストキスは人想いに優しくて、誰にでも考えを変えない王子様とするって決めていたのに……。
◆◆◆
「「デュエル!!!」」
しばらく私は、あのキスの反動で体中がまるで電池切れのようになってしまって、地面に座ってしまった。
余韻にしばらくしたっていて、この後の記憶は全く覚えていない。
ぼやけた視界のなか、デュエリストの掛け声が聞こえると茶髪の男の人と、ピンク髪の女の子がデュエルディスクを構えてデュエルの準備をしている。
何で、2人はデュエルすることになったのだろうか。 ……たぶん恋絡みだったんだろうけど……。
でもどうして私は、ミカの顔を見ているとこんなにも胸がドキドキしてしまうんだろう。