『決闘!!』
掛け声と共にプロデュエリストとのデュエルが始まる。
このデュエルは負けられない。私の名誉のためと、変態と思われている神崎さんに見下されないようにするためにも。
ユウヤ LP4000
ミカ LP4000
「先行はユウヤからでいいわ。後攻はハンデだからこれで勝てば気持ちいでしょ」
「随分と余裕なんだな」
先行を譲って貰った。舐められてるけど勝てる確立をわざわざ上げてくれたんだ。
先行は有利だ。初手でカードを1枚多くスタートできるから好きなんだよね。私。
「僕のターン!ドロー。僕は手札からモンスターをセット!カードを2枚伏せてターンを終了するよ」
私がセットしたモンスターは『XX-セイバー ダークソウル』。
このカードが墓地に送られた時、エンドフェイズ時にデッキからXセイバーを持ってこれる。
まずは罠と一緒に伏せて神崎さんの様子を見るのがこのプレイングは正しいだろうと判断した。
「ふーーん。私に恐れをなして伏せただけなのね。スレイプちゃん。じゃあ次は私のターン。今引いた『強欲で謙虚な壷』を発動する」
「スレイプってなんだ?」
「奴隷よ。私の奴隷って意味」
「奴隷ってなんだよ」
「あんたにぴったりな身分を与えたのよ」
神崎さんは私を馬鹿にした後、手札をじっくりと睨みながら私に挑発してカードをプレイする。
今発動した『強欲で謙虚な壷』は大変貴重と言われながらプロリーグでも必須と呼ばれる高価なカードだ。
めくれたカードは『ソーラーエクスチェンジ』と『ライトロード・シーフ ライニャン』『サイクロン』……。
「私はこの中から『ソーラーエクスチェンジ』を手札に加える。そして『ライトロード・モンク エイリン』を召喚!」
ソリッドビジョンに現れたのは純粋な正義の色をした白い制服を来た猿のような顔をした少女のモンスター。
「まずは手調べにそのモンスターを潰してあげる。バトルよ!『エイリン』でセットモンスターに攻撃!!このカードの効果で戦闘を行ったモンスターはダメージ計算を行わずにデッキに戻る」
「くっ……」
『エイリン』は大きくジャンプして私のセットモンスターに飛び掛る。
作戦失敗だ。セットしてあった『ダークソウル』がデッキに戻されてしまったことで効果が発動できなくなってしまった。
効果が発動できないのは問題ない。
なにより痛いことは墓地に送られなかったことなので、このカードを蘇生で利用できないことが何よりも私は辛かった。
「『ダークソウル』か。おいしいわね。カードを1枚伏せてターンを終了させるわ。エンドフェイズ時に『エイリン』の効果でデッキからカードを3枚墓地に送る」
「僕もエンドフェイズ時にカードを発動させるよ。『トゥルース・リインフォース』!効果でデッキより『X-セイバー パシウル』を特殊召喚するよ」
『トゥルース・リインフォース』は発動したターン攻撃できない。だが、相手ターンなのでデメリットがなくなる。
『パシウル』は戦闘破壊されない効果を持ってる。
「『パシウル』を守備で出したようだけど、『エイリン』の目の前には無力よ」
「違うな。僕はただ、壁として呼び出したわけではない。このカードはレベル2のチューナーってことに意味がある。僕のターン!!」
私が狙うのはただひとつさ。シンクロ召喚だ。
ユウヤ
LP:4000
手札:3枚→4枚
場 :モンスター
X-セイバー パシウル
魔法・罠
セット1枚
ミカ
LP:4000
手札:4枚
場 :モンスター
ライトロード・モンク エイリン
魔法・罠
セット1枚
「『XX-セイバー ボガーナイト』を通常召喚!このカードの効果により『XX-セイバー フラムナイト』を特殊召喚する」
私がカードをデュエルディスクに2枚を叩きつけると赤いマントを羽織った剣士に続けて金髪姿の小さな剣士が並んで姿を現す。
「次にレベル4の『ボガーナイト』にレベル2の『パシウル』をチューニング!!シンクロ召喚!疾風の剣でフィールドを駆け上がれ!『XX-セイバー ヒュンレイ』!!」
2体のモンスターがレベルを表す星に変わり、その星が交差するように交わって強い光を発する。
その強い光のあとに別のモンスターが出現する。
「『XX-セイバー ヒュンレイ』の効果により伏せカードを3枚まで破壊できる!僕は君のその伏せカードを破壊するよ」
「…。なかなかやるわね」
『ヒュンレイ』が剣から波動を発生させると伏せカードは破壊される。効果で割ったカードは『聖なるバリア-ミラーフォース-』。
あの神崎さんの表情を見るからになかなかいいカードを破壊したと解釈できるな。これはとてもおいしいぞ。
「そしてバトルフェイズに『ヒュンレイ』で『エイリン』に攻撃!!」
『ヒュンレイ』が2つの剣を華麗に使って『エイリン』を粉砕させる。伏せがないから、がら空きでいとも簡単に攻撃が通った。
ミカ LP4000→3300
「そして『フラムナイト』でダイレクトアタック!!」
『フラムナイト』は小さな剣ながらも懸命に神崎さんに切りつける。この攻撃も普通に通った。
ミカ LP3300→2000
「僕はカードを1枚伏せてターン終了」
「ちょっとは楽しめそうね。私のターン!『ソーラーエクスチェンジ』を発動。手札から『ライトロード・ウォリアー ガロス』を墓地に送って2枚をドロー。そしてデッキからカードを2枚落とすわ。…ラッキー!!『ウォルフ』を特殊召喚!さらに『ライトロード・マジシャン ライラ』を召喚!!」
どうやらこのカードは前のターンに使わずに温存していたみたいだ。
『ライトロード・ビースト ウォルフ』がデッキトップから落ちてしまう。
この綺麗な流れを狙ったようにこのターンで使いこなすとはプロのセンスといったところだろうか。
それに『ネクロガードナー』。1度だけ攻撃を無効にするカードもさっきの勢いで落ちたな。なんていう強運の持ち主なんだ…。
運も実力の内とかまさにこれのことだろう。プロの強さの秘訣でもあるのか。
ソリッドビジョンにはライトロードの集団を表す白い服装をした正義の力を持った獣に続けて純粋な祈りをあげようとする女性が出現しようとする。
『ライラ』には守備にすることによって伏せカードを破壊する効果を持っている。だったら…。
「『セイバーホール』発動!Xセイバーがいる時、その召喚を無効にする!!」
『ライラ』の召喚を打ち消した。これで1対1交換は成立したけど。
「フフフ」
笑い声が怪しい。神崎さんのことだから相手にうまく罠を回避されたような感じに見える。
召喚を無効にしたことでこのターンの通常召喚権を防いだ。だがしかしこのターンは終わるわけではない。
「その子は囮だったんだけどね。うまく引っかかったみたいね。次は手札のカードを1枚捨てて『死者転生』を発動するよ」
「うまく僕の罠を回避したつもりか!」
『死者蘇生』に似た紋章のカードが発動される。手札のカードを捨てると、あるカードを回収させる。
このカードは伝説とも呼ばれたカード。過去に伝説のデュエリストの武藤遊戯が使ったとか使ってないとか世間では話題になっているけど真実はわからない。
「くっ…。このカード…。いつの間に…」
「じゃあ墓地の光の『ライトレイ ソーサラー』と闇の『冥府の使者 ゴーズ』を除外してこのカードを特殊召喚する!『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』を特殊召喚よ!」
青と金の鎧を着けた光の戦士がこの緊迫したフィールドに現れる。このカードの出現によって場の空気が一揆に重くなったように感じる。
何故なら伝説のモンスターが出現したからだ。この展開はまずい。
「『ウォルフ』で『フラムナイト』にアタック!!」
まず、手始めに正義の野獣が私のモンスターにタックルを仕掛けようとする。
この攻撃もさっきの『ライラ』の召喚みたいに、私にカード効果を使わせる囮なんだけど、使わないよりは使ったほうがマシだ。
「『フラムナイト』の効果!フィールドに存在するとき、1度だけ効果を無効!」
『フラムナイト』は持っている剣を機用に使って『ウォルフ』の体当たりをはじいた。
「でもまだ攻撃は終わるわけではない。『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』で『フラムナイト』に攻撃!!!開闢双破斬!!」
開闢の使者と名乗る戦士は剣を円を描くようにして回しながら金髪の戦士を切り裂く。
神崎さんの『開闢』の攻撃名の響きもあってこのソリッドビジョンの演出がとても美しい物に見えた。
でも見とれている場合ではない。
ユウヤ LP4000→2300
「さらに戦闘破壊したことにより、『開闢』の1つ目の効果発動!もう1度続けて攻撃できる。『ヒュンレイ』に攻撃」
もう一度『開闢』は動き出していく。私のモンスターが次々と消滅させられていく姿があっけない。
守りには自信があったはずなのに全て消されてしまった。カオスソルジャー…。とてつもなく強い…。
ユウヤ LP2300→1600
「あらあら、そろそろ決着が付きそうね。あんたってこんなものかしら? これで終わりだったら他の奴らと変わらないわね」
「まだ、僕のライフは0になったわけではないよ。僕はデュエルキングになるんだ。だからここで負けるわけにはいかない!だから、僕は君より強いってことを証明させてやるんだ!! 見てろよ!!」
「デュエルキングになるか…。そのデュエルの姿勢は大事よ。よく覚えなさい」
私は負けたわけではない。プロとの戦いでこのピンチを味わえるなんてとても嬉しい。諦めるわけにはいかないんだ!
「これで私はこのままターンエンドする。ユウヤ! かかってらっしゃい!」
「僕のターン!!いくよ!! ドロー『強欲な壺』!! デッキからカードを2枚ドローする!!」
「このタイミングで禁止カード……。やるわね」
この高校生活で使用が許可されたカードを使い、私はデッキの上に手を掛ける。
ドローは可能性だ。1枚のカードが2枚になることでその可能性は一気に上がる
あの打点3000のモンスターのプレッシャーがハンパではないな。
簡単に除去できそうな感じがしないが。それに確か連続攻撃のほかに攻撃を放棄することで、除外効果も持っていたな。
私の手札の1枚。本日2枚目の『X-セイバー パシウル』。対ライトロードでは壁という本来の役割が使えずに時間稼ぎにもなりはしない。
でも、私の伏せカードとこのターンのドローの結果によってはまだワンチャンがあるから諦めない!!必ず勝てると信じて!!
ユウタ
LP:1600
手札:1枚→3枚 (1枚はX-セイバー パシウル)
場 :モンスター
なし
魔法・罠
伏せ1枚
ミカ
LP:2000
手札:2枚
場 :モンスター
カオス・ソルジャー -開闢の使者-
ライトロード・ビースト ウォルフ
魔法・罠
なし
「よし!!きた!!まずは『X-セイバー パシウル』を通常召喚!!さらに『ガドムズの緊急指令』発動!!」
私は前のターンに腐っていた1枚のカードを使うために準備していたのだ。
モンスターを倒してくれたおかげで発動条件を満たすことができた。
『緊急指令』は自分の場にXセイバーがいれば墓地のXセイバーを蘇生できるカード。
大量展開が可能なカードだ。これならあのモンスターに勝てる布石ができる。
「また、めんどくさいカードがいっぱい出てきたわね…」
「『XX-セイバー フラムナイト』『XX-セイバー ヒュンレイ』を墓地から呼び出す。そして僕の場にXセイバーが2体以上存在するから『XX-セイバー フォルトロール』を特殊召喚!!」
新たに現れた自分の長身より大きな剣を持つ『フォルトロール』を呼び出す。『フォルトロール』中心にこれで私の場にはモンスターが全部で4体。
これから私の攻撃が始まるわけさ!!これで一気に攻めてやる!
「『フォルトロール』には墓地のレベル4以下のXセイバーを蘇生する効果を持っている。僕は『ボガーナイト』を特殊召喚するよ」
一応、プロだから私のカード効果は知っていると思うが親切にカードの説明をする。私はさらなる展開をしようと心見たのだが、
「そうはさせないわ!!手札の『エフェクト・ヴェーラー』を墓地に送って1ターンだけそのモンスターの効果を無効にする!!」
「手札誘発のカードか!!」
神崎さんの罠がないからって展開が簡単にできると思ったが、手札から発動できるカードが隠れてあったことでこれで展開は止まってしまったな。
もっとモンスターを並べる予定だったのだが。
でも、プラス思考で考えると僕も神崎さんと同じく『エフェクト・ヴェーラー』を使わせたと考えるべきか。
止めてくれたおかげでこれで別の展開が可能になった。
「レベル6の『XX-セイバー エマーズブレイド』にレベル3の『XX-セイバー フラムナイト』をチューニングするよ。剣の主の王よ。我が元に降臨して巨大な剣を抜け!シンクロ召喚!現れろ『XX-セイバー ガトムズ』」
光の先に現れたシンクロモンスターはXセイバーの総司令官と言ったモンスターだ。私の切り札でもあるカードである。
攻撃力はあの『ブルーアイズ』も超える3100だからな。私の場を荒らしつくしてきたモンスターなんか簡単にケチらせられる。
「厄介なモンスターを……」
「さらにレベル6の『Xセイバー ヒュンレイ』にレベル2の『X-セイバー パシウル』をチューニングして『ギガンテック・ファイター』を特殊召喚!このカードは墓地の戦士族1枚に付き攻撃力が100ポイントアップする」
私はシンクロを経由して大きな巨人のモンスターを呼び出す。
このカードはシンクロ召喚初期に生まれたカードだからこそ、シンプルで強い。
打点勝ちをするために呼んだのだが、こんなところでこの効果を使えるとはな。
戦士族のカードは神崎さんの墓地には『エイリン』『ネクガ』。さっきライトロードの効果で墓地に落ちた『ライトロード・パラディン・ジェイン』。
私の墓地には『フラムナイト』『パシウル』『ヒュンレイ』が存在している。
よって5枚だから元々の攻撃力に600プラスして3400だ。
「バトルフェイズ!『ギガンティック・ファイター』で『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』に攻撃!!」
大きな巨体を生かして手のひらを広げるとそのまま伝説の戦士をいとも簡単に破壊するソリッドビジョンが映し出される。
ミカ LP2000→1600
「さらに『XX-セイバー ガトムズ』で『ライトロード・ビースト ウォルフ』を攻撃する!!」
「これは止めないと辛い展開になりそうね。私は墓地の『ネクロ・ガードナー』を取り除いてその攻撃を無効にするわ」
大きな剣で正装服を着た獣のモンスターに切りかかろうとしたが、突然現れた幻影の戦士に阻まれて盾で攻撃を受け流されてしまった。
さっきから伏せカードがないのに手札、墓地のカードを駆使して私の攻撃を防いだのはすさまじいな…。でもこれで神崎さんのカードは手札が1枚だけ。
その隙を狙ってさらに絶望に追い込んでやろうか。
「メインフェイズ2に入る。『XX-セイバー ガトムズ』の効果発動!フィールドのXセイバーをリリースすることで相手の手札をランダムに捨てることができる。僕は自身をリリースしてその唯一の手札を墓地に送らせてあげるよ」
「……。これでいいんでしょ」
自らの自分の命を犠牲にハンデス効果を発動した。何も弱い台詞を吐かずに手札を捨てる神崎さん。
捨てたカードは『ライトロード・エンジェル ケルビム』。ライトロードをリリースすることによって相手のカードを2枚破壊できるカードだ。
『ウォルフ』を『ネクガ』で守り、場に残していたってことは次のターンのコストとして返されていただろう。随分と危なかったな。
「カードを1枚セット。僕はこれでターンエンド宣言するよ」
これで手札は0枚。プロデュエリストを大きく追い込むことができた私は、この状況を返せる分けがないだろうと勝利を確信した。
「私のターン!!」
黙々とカードを手札に加える。今まで有利だったのに神崎さんは一気に不利になったんだ。状況は変わりない。
さらに戦士が墓地に送られたことによって攻撃力3400になったモンスターが制圧するなんて普通のデッキでは返しが無理に近い状態なのにどうしてそんなに冷静なんだろう。
「私は手札から『強欲な壺』を発動!!」
「はっ!! このタイミングで!!」
「禁止カードっていっぱい種類があるのに、私もあんたと同じ『強欲な壺』を使うってなんか不思議よね。なんか運命を感じない?」
「感じるわけないじゃないか!!」
共通点を探され、それを言われて嬉しがる神崎さんの顔はまさに恋する発情した乙女の顔をする。
私も恋愛をしたらこんな顔をするのだろうか。
今まで神崎さんに興味がなかったのに、このときの顔だけなぜかグッときそうになったが何とか我に返った。
『強欲な壺』はレアカードではない。一般に支給されすぎて、もはや誰でも簡単にこの強力カードを使えるのが現状だ。
禁止カードを使えると入学前に言っていた。でも複雑な禁止カードはすぐに使えるわけではない。
それに禁止カードなんて高額カードばっかりだから持っているはずもない。
だからこそ誰でも持っていて、とりあえず適当に使えば強いこのカードを私は入れた。
おそらく彼女も同じ理由だろう。
このピンチの状況で2枚ドローはまずい気がする……。
ユウヤ
LP:1600
手札:0枚
場 :モンスター
ギガンティック・ファイター
魔法・罠
1枚
ミカ
LP:1600
手札:0枚→2枚
場 :モンスター
ライトロード・ビースト ウォルフ
魔法・罠
なし
「どうやらここで終わりのようね」
2枚のドローを見て神埼さんの表情は暗くなることはなかった。おそらくいいカードを引いたようだ。
「君は何を言っているんだい?手札1枚でこの状況を打破できる手段なんてありやしないよ」
手札のカードを見て急に表情が明るくなった神崎さん。
こんな状況で逆転されるなんてありえない。絶対にないと私は確信していたのだが、その幻想はすぐに壊される。
「ライトロードが墓地に4種類ある時、このカードは特殊召喚できる!!『裁きの竜』を特殊召喚!!このカードはライフを1000払うことにより、このカード以外のフィールドのカードを全て破壊する。裁きの光!!」
「嘘でしょ……!」
「これで私の勝ちよ!!」
ミカ LP1600→600
神々しい髭を生やした竜がフィールドの中央で大きく雄たけびを上げるとフィールド上に稲妻が走った。
私の場の巨人のモンスターが吹き飛ばされていく。
「それはどうかな?」
「何っ?」
「それにチェーンして『和睦の使者』を発動!! このターン。僕が受ける戦闘ダメージは0になる」
「へーー。これで私の勝ちだと思ったのに防ぐんだ。やるじゃん」
ぎりぎりだがなんとか防いだ。
まさか戦闘に体性を持っているカードを破壊して、罠まで無理やり突破して止めを刺してくるとは思わなかった。
「僕はまだ負けない……。絶対に勝つんだ」
「私はこれでターンエンド。『裁きの龍』の効果でデッキからカードを4枚墓地に送る。これを突破してみる? あんたにそれができるかしら?」
私はこんなところで負けたくない。
手札、フィールド共に0。絶対絶命な状況。それにまた『開闢』に続いて攻撃力3000のモンスター。
神崎さんに勝たなければ……。このデュエルぎりぎりだがとても楽しい。プロとの駆け引きがこんなに楽しいとは。
こんなに楽しいデュエルは初めてだ。
「僕のターンドローー!!」
私は目を閉じてデッキに触れる。このドローにすべてをかければ可能性がある。私は絶対に勝つ!!
「よし!!」
私はドローカードを見てガッツポーズする。
「奇跡のカードを引けたかしら?」
「ああ!」
「あんたのこと女みたいって馬鹿にしてたけど、男の子らしい一面あるじゃないの。さあそのドローカードを見せなさい」
「見せてやる!! 僕は手札から『死者蘇生』を発動!! 効果により墓地の『ギガンティック・ファイター』」
「ここで『死者蘇生』!!?」
再び巨人の戦士を呼び寄せる。攻撃力は互いの墓地の戦士族の数だけ攻撃力が上がる。
攻撃力はさっきの『裁きの龍』の墓地肥やし効果でさらにプラスされた。
「『ギガンティック・ファイター』で『裁きの龍』に攻撃!! いけーーーっ!!」
巨人は大きな足で『裁きの龍』を踏み潰そうとする。
その攻撃力は3600。神崎さんのライフは600だからちょうど止めを指すことができるこれで決まりだ!!
「それはどうかしら?」
ユウヤ LP1600→0
「どうして……」
神崎さんのライフではなく、自分の付けているデュエルディスクのライフポイントの表示は0を示した。
『裁きの龍』ではなく『ギガンティック・ファイター』が返り打ちに合い、消滅している。
『裁きの龍』の攻撃力を上回っていたはずなのにどうして?
「『オネスト』を発動していた」
「『オネスト』!?」
「戦闘を行うダメージステップ時にこのカードを手札から墓地に送ることで、エンドフェイズまで光属性モンスターの攻撃力は、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分上がるわけ。これで『裁きの龍』の攻撃力が6600になって返り打ちにしたわけ」
「そんな……」
『エフェクト・ヴェーラー』に続いて手札からのモンスター効果!?
光属性デッキには『オネスト』の存在があると私は勉強していたはずだったのに、警戒しなかったおかげでこんな結末に…。
おそらく『強欲な壺』で『裁きの龍』とともに引いたカードだ。なんて強運の持ち主なんだ。あの子は…。
「これであんたは私との契約成立ね!!」
「う…うぅ……」
「あなたデュエルに負けたぐらいで泣いちゃうって何? そんなに私との契約が嫌だった?」
「違うんだ…。デュエルで負けたのが悔しくて…」
これで神崎さんの言いなりになったことよりも、悔しさのあまり私の目には涙が浮かび上がりそうになった。
勝てると自信があったっていうのに…。くそ…。くそぉ……。何で……。負けてしまうんだ…。
「僕は……負けたくなかったのに…」
悔しい……。でもこれが現実だ。
「ユウヤ!!何で、男の癖に泣いてるのよ!たかがデュエルで負けたくらいで…」
急に泣き出した私に心配したのか優しい心遣いで神崎さんは接してきたけど…。
泣いている私にはぜんぜんその表情に気が付かない。
「……。泣いてないよ……」
「おもいっきり泣いてるじゃないよ。ユウヤ…」
「ち、違う…」
「いいからこれ渡すからさっさと泣き止みなさいよ。私が泣かしたみたいで誰かに見られたら恥ずかしいでしょ」
女の子らしいピンク色の『ハネクリボー』のキャラクターが描かれているハンカチを私に渡してくれた。
そうだ…。私は今は女の子じゃなくて男の子の格好をしているんだった…。こんなところでくじけるわけにはいかない。
『僕は男の子』なんだと自分に言い聞かせて、今は必死に涙を堪えるべきだな。
「……。ありがとう…」
「遠慮はいらないわ。でもこのくらいで泣くのはこれからはやめなさい。もっとひどい負け方をしたとき、立ち上がれなくなるわ。私だってプロリーグで挫折しそうになったことある…。自分の強さが突然無力だって感じちゃったからね。それでも私は堪えて自分なりに頑張ったから今の私がいるの。私のファンに何度も励まされてようやくこの道にたどり着くことができたもの。私だってユウヤを応援するわ!だから頑張ってよ」
神崎さんに言われてようやく私の甘えだった性格に目を覚ました気がする。
流石、プロデュエリストで数々あ困難な経験を積んだだけある。私の幼稚な考えと比べてとても大人だ。なんだかカッコいい。
性格がチャラチャラしていたから、悪い人だと思ったけどそうではないみたいだ。
「本当にありがとう…。僕、勇気が出てきたよ。それに君のおかげでこの学校での目標もできたんだ。あと、次デュエルするときは絶対に負けないから」
「べ、別にあんたのために励ましてあげたわけじゃないんだからね!」
「…神崎さん…」
この学校に来てから最初に久しくなれた嬉しさのあまり、興奮した私は、無意識の内に自分の性別を忘れて神崎さんの胸に跳びついた。
よくある女の子同士でする仲良しの証のハグ。私が中学生の頃よくやったあれを神崎さんにやった。
「ユウヤ…」
神崎さんの体から直接、体温を感じるよ。あったかいなぁ…。神崎さんもやっぱり普通の女の子なんだね。
「ちょっと待った~~~!私との約束忘れてない!?」
「えっ!?」
神崎さんは抱きついている私を切り離すように手で押し返すして体同士のくっつきから離れさせた。
そういえば何かデュエル前に賭け事をした気がしたけど。
「ユウヤは負けたんだから今日からあなたは私の契約者であるとともに彼氏なのっ。よろしくね!!」
「…う…うぅ…」
「さっきいきなり私に抱きついて来てエッチなこと考えてたんでしょ。男の人に抱きつかれたのは初めてよ……。何でそんな悲しそうな顔をするのよ」
「エッチなことなんて考えてないよ!誤解だ…。それに彼氏なんかじゃない」
「いいのかなーー。あんたの秘密ばらしちゃって!! 女装癖の変態」
「それだけはやめろーーっ!!」
何だか初対面の印象とは違い、神埼さんと仲良くなれそうな雰囲気がする。
口はちょっと悪いところはあるけど、優しい一面がある。でも彼氏だけは嫌だ
「じゃあまずは始めに手を繋いで帰りましょうね。ユウヤ」
「はぁっ!?」
嫌だったが、断ったらばらされると思ったので素直に神崎さんの言いなりになるしかない。
手を繋いでこのまま学校の校門を出た。私達は有名人なもんだから周りの視線がみんなこっちを見ていて痛すぎる。
私は人生で初めて彼氏ではなくて彼女が出来た。なんかもう、いろいろと最悪だ。
「私と付き合うこと。絶対に後悔なんてさせないんだから!!」