校長室で私とお母さんは笑顔で向き合ってデュエルを始める。
おそらく、歴代の女性の中でもデュエルキングに近かったお母さん。
私はそんな強敵と今から戦おうとしている。それに、デュエルを教えてもらったのもお母さんだった。
今はどうかわからないけど、世界中で一番強かったと言っていた。これを倒せば、これからの私の自信につながると思う。
「先攻は私からだ!! ドロー!! 私はモンスターを裏側表示で召喚!!」
「ドロー!! お母さんはまずは『星因士ウヌク』を召喚!! 効果によりデッキから『星因士デネブ』を墓地へと送る。そして『ウヌク』でセットモンスターに攻撃!!」
キラキラっとデュエルフィールドが光るとリングを纏った星の騎士が呼び寄せる。
攻撃力は1800として下級でも優秀な数値。明らかに強敵というプレッシャーは高い。
「表になって破壊された『XX-セイバー エマーズブレイド』のモンスター効果だ! デッキより『XX-セイバー フラムナイト』を特殊召喚!!」
「ナナのデッキはユウヤが使っていたXセイバーを使うのか。意外だわ」
「そうさ。お兄ちゃんの形見だもんね、このデッキは。このデッキが私の手足となって戦ってくれる」
『ウヌク』の杖の打撃で私のモンスターが破壊されたが、それは次の展開への布石へとなる。
「そしてお母さんはカードを3枚セットしてターンエンド」
お母さんは3枚の伏せカードを伏せて私に対して牽制。
「私のターンドロー!!」
デッキの上のカードを渾身を込めて引く。6枚になった手札で私はあの布陣をどう突破するか考える。
私は今、最初のターンで引いて温存していた制限カードに指定されている手札の魔法を使用する。
「『大嵐』を発動!!」
「そうはさせないわ。カウンター罠『神星なる因子』! 『ウヌク』をリリースして魔法、罠。モンスター効果のいずれかを無効にして破壊。そしてデッキからカードを1枚ドローする!!」
ソリッドビジョンで発生した嵐が、きらきらとした美しい無数の星へと打ち消される。
これで1対1交換なんだが、強力なカードである『大嵐』を無効にされたことで、私のほうが痛手となっている。だが、私はひるまないで次の手を。
「私は手札から『XX-セイバー レイジグラ』を召喚。『レイジグラ』の効果は発動はしない。そしてXセイバーが2体以上存在することにより『XX-セイバー フォルトロール』を特殊召喚!! その効果で墓地の『エマーズブレード』を特殊召喚する!!」
テラナイトデッキのお母さんよりも、私のXセイバーデッキのほうが展開力は上だと証明したい。
私は無数のXセイバー達を呼び寄せ、お母さんを数で圧倒するつもりだ。その総攻撃力は5500。
「全員でダイレクトアタックだ!!」
これが通れば私の勝ちなんだが、伏せカードが2枚も残っているお母さんには、無謀だっていうことはわかっている。
もちろん伏せカードで止められた。『和睦の使者』。このターン戦闘ダメ―ジを受けなくなるという罠カード。
「『フォルトロール』と『フラムナイト』!! そしてこの2体でシンクロ召喚!! 白金の鎧輝かせ刃向かう者の希望を砕け!『XX-セイバー ガトムズ』!!」
Xセイバーのボスを象徴する赤マントに、自分の力を表す強大な剣。そして全身を鎧で見にまとったその姿。
「『ガトムズ』のモンスター効果だ!! 『レイジグラ』と『エマーズブレード』をリリースしてお母さんの手札を捨てさせる!!」
後攻1ターン目に私は切り札を呼び寄せる。その目的は、お母さんをその攻撃力3100の数値で圧迫するのが目的。
そして、ハンデスという役割。お母さんの手札3枚のうち2枚捨てられる。
「私はカードを3枚セットしてターンエンド」
その3枚は『ブレイクスルー・スキル』と『リビングデッドの呼び声』と『ダメージ・ダイエット』。
これでお母さんの手札は1枚になって、次のターンは2枚で迎えるんだけど、まだ安心はできない。この伏せ3枚でなんとか、私はやりすごすのが目的だ。
『ブレイクスルー』は相手の発動したモンスター効果を無効にできる効果を持っている。これでお母さんのテラナイトモンスターを封じ込めれば……。
「エンドフェイズ時にお母さんは『リビングデッドの呼び声』で『光天使セプター』を特殊召喚!!」
ハンデスしたカードを利用された!!
杖の形をした光天使モンスターが蘇る? たった攻撃力1800の蘇生? どうしてこのタイミングで?
「『セプター』が特殊召喚に成功したときの効果にチェーンして『スローネ』!! 光天使が召喚、特殊召喚に成功したとき、『スローネ』を特殊召喚させて1枚ドロー!! そして『セプター』の効果で『スローネ』を手札に加える。そして『スローネ』を特殊召喚!! さらに1枚ドロー!!」
今度は椅子の形をした光天使モンスター? たまたま私が残した1枚がこれだったんだ。
それが2体ならんだ? なんだ、この動きは……。罠は伏せたターンに使えないから『ブレイクスルー』が空気だ。
蘇生カードと手札の『スローネ』で場にモンスターが3体が?
「懐かしいと思わない? ナナこの光景? ナナが生まれて初めてしゃべった時に、覚えた言葉は『光天使ブックス』のカードなんだよ。お母さんのデッキに入ってた『ブックス』をさ、うれしがって抜かれちゃってさ。ブックスブックスって発音が面白くて可愛かったのはよく覚えているわ」
「……。いや、全然覚えていないんだけど」
お母さんが言っていたのは、私が生まれて何年かの話なんだろう。こんな昔のことなんて覚えているはずもない。
でも、自分の子供がはじめて発言するということは母親にとって、一番の思い出なのだろうか?
「これでナナのターンが終わってお母さんのターンね!! ドロー!!」
エンドフェイズに手札が1枚だったのにこのドローを合わせて3枚。なんていう動きなんだ。光天使は。
「お母さんは『セプター』『スローネ』『スローネ』でオーバーレイネットワークを構築!! エクシーズ召喚!! 現れろランク4『星輝士 デルタテロス』!!!」
デルタの名前通りに夏の大三角を表しているのだろうか。『デルタテロス』の後ろには三角形の紋章が。
でも攻撃力は2500しかないのか。『ガトムズ』を倒すための強力な効果を持っているのなら、『ブレイクスルー』で封じ込めるばいいだけ。
「『デルタテロス』の効果!! 『セプター』がエクシーズ素材になったモンスターがエクシーズ召喚に成功したとき、相手のカードを破壊できる」
「そうはさせない……。ってあれ?」
『ブレイクスルー』を発動させようとデュエルディスクのスイッチを押したが、発動できずに破壊されてしまう。
「『デルタテロス』が存在するときに、テラナイトモンスターの召喚時には相手はカードを発動できないのよ。ナナ。残念だったわね」
「『セプター』とのコンボか……。なかなかやるな。お母さんは……」
「そして『セプター』の効果によりワンドローするわ」
やはり只者ではないお母さん。今の効果は『デルタテロス』の効果ではなかったから、今度はエクシーズ素材を取り除いたときに使える効果も使えるのか。
「『デルタテロス』の効果。1ターンに1度、フィールド上のカードを破壊できる。お母さんは『デルタテロス』自身を破壊するね」
「どうして?」
まさかの自爆。私のカードを破壊せずに何でこのプレイングを? いや、デュエルキングに近かったお母さんが間違えるはずはない。
「『デルタテロス』の効果、このカードが破壊されたとき、デッキからテラナイトモンスター1体を特殊召喚できる。『星因士 ベガ』を特殊召喚!!」
いや、展開の為にわざわざこのプレイングをしたんだ。展開防御カードを破壊された今の私にとってはとてもまずい……。
「『ベガ』の効果により手札の『星因士 アルタイル』を特殊召喚。そして『アルタイル』の効果により『デネブ』を特殊召喚! 『デネブ』の効果により『星因士 シャム』を手札に加える」
モンスターがあっという間に3体。これは明らかにエクシーズ召喚をもう一度狙っている。
それに……。まだこのターン通常召喚をしていないなんて……。
「『アルタイル』『ベガ』『デネブ』でオーバーレイネットワークを構築!! エクシーズ召喚!! 『星輝士 トライヴェール』!!!」
攻撃力と守備力が『デルタテロス』と反対だ。赤い三角形の紋章が出来ている。対になっていると考えると今度は冬の大三角?
「『星輝士 トライヴェール』がエクシーズ召喚に成功したとき、フィールド上のカードを全て戻す!! 食らいなさい!! ナナ!!」
『トライヴェール』の登場で、すべてのカードを吹き飛ばそうとしている。
このターンを守りきるために、私はカードを2枚オープンさせる。
「それにチェーンしてカード発動!! 『リビングデッドの呼び声』と『ダメージダイエット』だ!! 『リビングデッドの呼び声』の効果によって私は『レイジグラ』を特殊召喚。そして『ダメージダイエット』によりこのターン私が受けるダメージは全て半分になる。そして手札に戻った『レイジグラ』の効果により、墓地の『フォルトロール』を手札に加える」
私の場の伏せカードと『レイジグラ』が手札に飛ばされてしまう。そして『ガトムズ』はシンクロモンスターのため、エクストラデッキへ。
これだけならなんともないんだけど、お母さんの場になんの意味もないカードとして残っていた『リビングデッドの呼び声』まで回収されてしまった。
「このターンそれで延命したのね。だったらこのターンで大ダメージを与えてあげるわ。『シャム』を召喚。このカードの召喚時に1000ポイントのダメージを与えてあげる」
「だが、それは『ダメージダイエット』で半減になる」
ナナ LP4000→3500
「でもこれは防げないわよ。『シャム』、『トライヴェール』でダイレクトアタック!!」
ナナ LP3500→2800→1750
「ぐっ!!」
2体のテラナイトモンスターたちの攻撃が私に襲いかかる。
なんとかこのターン敗北を免れたものの、それでも初期ライフの半分を失うありさま。
「『トライヴェール』の効果。オーバーレイユニットを1つ使って、ナナの手札を1枚捨てさせる。そしてお母さんはカードを3枚セットしてターンエンドね」
ここで先ほど回収した私の『フォルトロール』を失ってしまう。
お母さんはこのターンだけでいくらアドバンテージを稼いだんだ……。やはりお母さんは私が今まで戦ってきた中でも一番強いと感じる……。
「私のターン!!」
だが、私はひるむことはない。
ここで負けてしまうと弱きになってしまうなら、デュエルキングになるなんて夢のまた夢だ。例え手札が1枚だけだとしても、まだ私にはドローフェイズという可能性が残っているのだから。
ナナ
LP:1750
手札:2枚→3枚 (XX-セイバー レイジグラ、リビングデッドの呼び声)
場 :モンスター
なし
魔法・罠
伏せ0枚
お母さん
LP:4000
手札:1枚
場 :モンスター
星輝士 トライヴェール
星因士 シャム
魔法・罠
伏せ3枚(1枚はリビングデッドの呼び声)
「ナナのスタンバイフェイズに発動させるね。『ソーラーレイ』発動!! フィールド上の光属性1体につき600ポイントのダメージを与える!! よって1200ポイントのダメージよ」
「私は墓地から『ダメージダイエット』を発動!! 墓地のこのカードを除外し、このターンすべての受けるダメージは半分になる」
ナナ LP1750→1150
「墓地からトラップだと!! と、ビックリするようなもんじゃなくて流石に、前のターンに破壊したんだから読めるわね」
「ここで『リビングデッドの呼び声』の発動はしないか……」
『リビングデッドの呼び声』でお母さんの墓地の『アルタイル』を蘇生して、そのモンスター効果でモンスターを4体埋めれば大ダメージを狙えた。
私の墓地には『ブレイクスルー』がある。プロデュエリストだから、墓地の罠カードの存在に忘れるはずがない。おそらく確実に発動できる自分のターンに使うはず。
おそらく、『ダメージダイエット』を使わせたかったんだろう。だが、それは私にとっては好都合だった。
「私は手札から『XX-セイバー ボガーナイト』を召喚!! その効果で『レイジグラ』を特殊召喚させて、『フォルトロール』を回収させる。そして、墓地の『エマーズブレイド』を特殊召喚!!」
「ほうーー」
この展開を不思議そうに見ているお母さん。
何とか『ボガーナイト』を引くことができて、モンスターで4面埋めることができた。これならお母さんの布陣を突破できるかもしれない。
「バトルフェイズだ!! 『エマーズブレイド』で『シャム』に攻撃!! そして『エマーズブレイド』が破壊されたことにより、デッキから『X-セイバー アクセル』を守備表示で特殊召喚!!」
「自爆特攻? これで何をするつもりなの?」
「いいから見ててよ。お母さん!!」
ナナ LP1150→1100
「『XX-セイバー レイジグラ』で『星輝士 トライヴェール』に攻撃!!」
「この自爆特攻。痛いはずなのにどうして……? 狙いは……。いや」
ナナ LP1100→1000
「『アクセル』の効果。このカードが存在し、Xセイバーが破壊されるたびにワンドロー!!」
私は目を瞑ってドローする。私の手札は1枚だけ。それはこのターンでは使い道が限られているカード。
ここでこのカードが来ないと負けるからこのプレイングを取った。結果は。
「よしっ!! 来た!! 『セイバーリフレクト』!! Xセイバーが存在し、自分が戦闘ダメージまたは効果ダメージを受けた時、受けたダメージの数値分だけ自分のLPを回復し、その数値分だけ相手にダメージを与える。そしてそのあと、『フォルトロール』を手札に」
私はデッキの中から宣言したカードを勢いよく抜き取る。お母さんは私の顔を見ながら驚いた顔をしている。
ナナ LP100→1100
お母さん LP4000→3000
「……。『アクセル』の効果はダメージステップ。ドローした『セイバーリフレクト』はすぐにそのあとに打てるという相性の良さ……。ここで躊躇いのないプレイング……。運だっていうのにナナは考えてやっていた」
「いや。たまたまだよ。このカードかなって思ったんだ。うちの部活の部長でさ、ありえないとは思うけど、自分のデッキトップの上が分かる人がいるんだよ。匂いとか、雰囲気でわかるってそれで教えてもらったんだけど。これはどう見ても運だったね」
部長の得意な特技を私は練習をしていた。
大会期間中、いくつものデュエルを見ていたが、やはりバーンダメージがキーとなるデュエルが多いため、『セイバーリフレクト』はわかるようにと、デッキトップの上が引けるようにと練習していた。
でも、微かな匂いでわかるって部長が言っていたけど全く違いがわからない。これは正直当てたのはたまたまだったな。正直、デッキシャッフルとかで変わるから引きたいときに引くのは無理に近い。
「『ボガーナイト』で『トライヴェール』に攻撃!!」
「自爆特攻? でもそんなことをしたら……」
「そうさ。破壊されたことにより『アクセル』の効果でワンドロー」
ナナ LP1100→1000
「これで『シャム』のバーン効果の射程圏内となった。ワンドローしてもいいけど、これでお母さんはやりやすくなった。いい? ナナ。たった100のダメージでも場合にとっては相手を有利にさせるのよ」
「いや、わかってるさ。手札はお母さんに知られている2枚だけ。このままだと、私はお母さんに勝てる気がしない。だから希望の為にドローに託したんだ」
昔を思い出す。このプレイングは間違いだっていうお母さんがデュエルを教えてくれたこともあったっけ。
でも、これは間違いではない。今、私が手札の束に新たに加えたものには、いいカードを引けたからだ。
「『フォルトロール』で『トライヴェール』に攻撃!!」
お母さん LP3000→2700
「だけど、『トライヴェール』が破壊されたことにより、墓地からテラナイトモンスターを復活できる効果があるわ。これで『アルタイル』を蘇生する。その効果で『デネブ』を復活。『デネブ』の効果によりデッキから『星因士 ベテルギウス』を手札に加える」
「……。破壊されてもモンスターがわくのか……」
「ここでナナの墓地にある『ブレイクスルー』を使えばお母さんの展開を止められるはずだった……。でもしなかったことはメインフェズ2で『フォルトロール』を使って展開を始めるつもりってことか。『ガトムズ』でお母さんの手札を減らすつもりね。だったら!! 永続罠!! 『神星なる波動』!! 相手のバトルフェイズに使えるカード。『ペテルギウス』を特殊召喚。効果は発動はなしよ」
削ったと思ったのにモンスターが4体に増えている。これがテラナイトデッキの力。それに元デュエルキングに近かったお母さんの力……。
ここの展開を封じ込めなかったのはお母さんの1枚だけのこってある伏せカードの『リビングデッドの呼び声』を止めるために、温存。
「メインフェイズ2だ!! 『アクセル』『フォルトロール』の2体存在している。手札から『フォルトロール』を特殊召喚!! そして『セイバースラッシュ』だ!! 場のXセイバーの数だけ相手の表側のカードを破壊する。よって3枚『アルタイル』『デネブ』『ウヌク』を破壊!!」
私のセイバー達は剣をXになるように華麗に振るいお母さんの『シャム』を除くテラナイトを一掃する。
「『フォルトロール』効果だ!! 墓地の『フラムナイト』を蘇生!! そして『フラムナイト』『フォルトロール』でシンクロ召喚!! 現れろ!! 『ガトムズ』!! そしてモンスター効果により『アクセル』をリリースしてお母さんの残りの1枚をハンデスする」
もう一度私の切り札を呼び寄せる。手札を0にして、これでお母さんの返しを乗り越える準備は完了した。
だけど、残っている『リビングデッドの呼び声』と『シャム』でまたエクシーズ召喚を狙われてしまう。
どちらにせよ、私の方がデュエルは不利だ。
「私はカードを1枚セットしてターンエンド!」
『リビングデッドの呼び声』を伏せる。
「お母さんのターンね。ドロー。『リビングデッドの呼び声』発動!! 『アルタイル』を蘇生して『デネブ』を復活。『星因士 シリウス』を手札に加える。『デネブ』『アルタイル』『シャム』でエクシーズ召喚!! 『星輝士 デルタテロス』!!」
「ふぅ……」
またお母さんも切り札を呼び寄せる。私は溜息をついて、とりあえずはこのターンは生き延びられると安心できた。
『シャム』と『トライヴェール』は1枚済みなのだろうか。これらが2枚目があったら私はきつかった。デッキの枠的に入っていないのだろうか。
「お母さんのデッキは光天使も入ってるからテラナイトモンスターたちは『デルタテロス』を除いて全てほぼピン刺しなのよ。でも、安心してるところわるいけどお母さんはもっと攻めるわよ。『デルタテロス』の効果で、『ガトムズ』を破壊!」
「ぐっ」
『デルタテロス』は剣を振りかざすと光の光線を発射させて『ガトムズ』を破壊させる。
「そして『シリウス』を通常召喚。このカードがね。召喚に成功したとき、墓地のテラナイトを5枚デッキに戻すことで、カードを1枚ドローできる。『ウヌク』『ベガ』『アルタイル』『デルタテロス』『トライヴェール』を戻す。そしてワンドロー。今引いたフィールド魔法『星守る結界』! 発動!!」
校長室がフィールド魔法により幻想的なプラネタリウムにへと変わる。
「さて、バトルと行きましょうか。『星守る結界』の効果により『デルタテロス』の攻撃力は2900となった。『フォルトロール』を撃破。そして『シリウス』でダイレクトアタック!!」
「そうはさせない『リビングデッドの呼び声』!! もう一度私の前に現れて『エマーズブレド』!!」
ナナ LP1000→500
私の前へとX状に剣を持って現れるイナゴの剣士『エマーズブレイド』。
「これは読めたわね。リクルーターか。このカードを使わないと守れないからねーー。お母さんはこれでターンエンド!」
「私のターンドロー!!」
『デルタテロス』が破壊されたら、その効果により前のターンにデッキに戻った『アルタイル』が特殊召喚され、お母さんの墓地の『シャム』が現れ、私は負けてしまう。
このターン『デルタテロス』を破壊したとしても、まだ、温存できた墓地の『ブレイクスルー』があるから大丈夫だ。
でも『星守る結界』には確か、手札のテラナイトカードを捨てることで、テラナイトエクシーズモンスターの受ける攻撃を守れる効果を持っていたっけな。
『デルタテロス』の突破は難しいか。
ナナ
LP:500
手札:0枚→1枚
場 :モンスター
XX-セイバー エマーズブレイド
魔法・罠
リビングデッドの呼び声
お母さん
LP:2700
手札:1枚
場 :モンスター
星輝士 デルタテロス
星因士 シリウス
魔法・罠
リビングデッドの呼び声 (対象なし)
星守る結界
神星なる波動
「よしっ。手札から『貪欲な壺』を発動!! 墓地の『フラムナイト』『アクセル』『ボガーナイト』『フォルトロール』『ガトムズ』! この5枚をデッキに戻してワンドロー!!」
絶対的な状況。私はいいカードを引く。そして2枚をデッキの上からめくる。
「さらに『カップ・オブ・エース』!! 今からコインを落として表か裏かを当てる!! 当たったら、私は2枚ドローができる。外れたらお母さんが2枚ドローすることになるけど」
「運任せにするなんてあなたらしくないわね」
「いや、運じゃないさ、私は当てるんだから!! 私は表を選択する!!」
ソリッドビジョンのコインが宙へと回る。その結果は、
「よしっきた!! 2枚ドロー!!」
「ナナらしいわね……。なんだか思い出すわ。無理な賭けはお母さんもナナと同じくらいのとき、したことあるもの」
「私は『死者蘇生』を発動!! 『レイジグラ』を蘇生。そして『フォルトロール』回収。さらに『フラムナイト』蘇生。『フォルトロール』と『フラムナイト』で再び『ガトムズ』を特殊召喚だ!!」
もう一度、私の目の前に力強く表れる『ガトムズ』。お兄ちゃんの切り札でもあったこのカード。
「さらに『剣の煌き』を『ガトムズ』に装備だ!! 『ガトムズ』の効果!! 『レイジグラ』をリリースしてお母さんのその手札を墓地に送る!!」
手札のカードをたたき切る。送ったカードは場にあるものと同じ『神星なる波動』。
『星守る結界』の攻撃無効のコストのために取っていたカードか。
「バトルだ!! 『ガトムズ』で『シリウス』を攻撃!! 」
「……っ!?」
お母さん LP2700→1200
ここで『ガトムズ』が大きな剣を振り回し、モンスターを一刀両断。大幅にライフを削る。
そして、その勢いで巨大な剣を宙に浮かし、『デルタテロス』に降ろそうとする。
「まだだ!! 『剣の煌めき』の効果で、相手モンスターを破壊したとき、相手のカードを破壊できる」
「『デルタテロス』が破壊されたとき、デッキからモンスターを呼び寄せる。『アルタイル』来なさい!!」
「墓地から罠を発動する!! 『ブレイクスルー』だ!!」
ここでモンスターを呼べるのは読めた。
私は『エマーズブレイド』で自爆特攻をして『ボガーナイト』を特殊召喚して『アルタイル』を撃破する。
これで、お母さんの場をがら空きにしたわけだ。次のターンはとてもつらいはずだ。
私はカードを1枚セットして次のターンへとしのぐ。ライフはもうたった100だ。いつ負けてもおかしくない。
ナナ LP500→100
お母さん LP1200→1000
「お母さんのターン!! ライフを払って『早すぎた埋葬』を発動する。対象は『シャム』ね」
ここで禁止カードを引くのか。墓地から『シャム』が復活して私はこのダメージで敗北してしまう。
だったら、私はそれに対抗するべく、罠を発動させる。
お母さん LP1000→200
「『ラストバトル!!』 このカードの発動時に私のカードを選ぶ。『ガトムズ』を選ぶね。そして選んだカード以外の互いのフィールド上のカードと手札を墓地へと送る」
「ナナも禁止カードねー。なるほどねーー。それで装備魔法をどかしたのね。これで、『シャム』は復活しないからね」
「そしてお母さんはデッキからモンスターを1体特殊召喚してもらうよ。『ガトムズ』と強制戦闘が始まる。戦闘ダメージはないけどね」
「だったら、お母さんは『シリウス』を選択するわ」
「そしてバトルだ!!」
もちろん結果はわかっている。攻撃力3100の『ガトムズ』に、1600の『シリウス』は勝てるはずもない。
あっけなく戦闘は終わてしまった。
なぜならお母さんのデッキはレベル4を重視に使い、エクシーズ召喚を狙うデッキだ。下級しか入ってないはずなので勝てるはずもない。
これでお母さんはターンエンドしたら『ラストバトル!!』の効果で、私は勝利へとなる。
「『シリウス』のモンスター効果発動!!」
「ウソでしょ……。モンスターを破壊したのに……」
「強制戦闘までは『ラストバトル!!』の処理なのよ。この戦闘の後に、特殊召喚時に発動する効果が発動する。その効果で『デネブ』『シリウス』『プラキオ』『アルタイル』『デルタテロス』をデッキに戻しワンドロー」
「ここで、この状況を覆すカードを引かれたら……」
「うん正解。ここでモンスターを出せれたら引き分けになるね。しかもこのターン通常のバトルフェイズも行われるからナナの場の『ガトムズ』を破壊できたらお母さんの勝ちが決まるわねーー」
お母さんは目を瞑ってドローをする。クールな男性っぽい落ち着いた手付きでデッキの上を触る。
ピンチだっていうはずなのに、これがデュエルが強いプレイヤーの力なのか? 私はもしかしたらと思ってしまう。
そして引いたカードを見て、お母さんは私を見てニコニコっとした表情で笑った。
「『ソウルチャージ』発動。墓地のモンスターを可能な限り特殊召喚する!! 『シャム』を蘇生!!」
「私の負け……?」
弓を持った聖騎士である『シャム』が蘇る。特殊召喚時に1000ダメージを受ける。この効果で私は負けてしまうと思って目を瞑った。
だが、
「『ソウルチャージ』の効果。特殊召喚したモンスター1体に付き1000のダメージを受けるわ」
お母さん LP200→0
「私が勝った……?」
「いやーーー。まさかナナがお母さんを超えちゃうなんてねー。最後の最後の引きは弱くてびっくりしちゃった。あと何年か若かったら若さパワーで引きも強かったはずなんだけど」
「全然そんなことないよ。お母さんはまだ若いって…」
私はあのお母さん相手に勝ったことに、手が震えている。
デュエルキングにもっとも近かったお母さんを倒すなんて、今でも自分は理解していなかった。私の腕はまだまだって思っていたのに。
「でも、高校デュエル甲子園の大会では負けないからね。お母さんが教えてあげてるこの英雄騎士高校って昔じゃほんと弱かったのよーー。1回戦敗北ばかりしてた。でも、校長先生でもあるお母さんの教えもあって1回戦は勝てるようになったもん」
「わかってるさ、このデュエルは大会とは関係ない。でもね、私も負けないから。お母さんの教えている高校も倒して、絶対に勝ち進んで見せる」
「……。ありがとう……。これからどうする? お母さんと一緒に暮らす?」
お母さんは涙を浮かべそうになる。この感動の展開での反動のように見えたのだ。
「ようお袋久しぶりだな!!」
私は自分の意思とは関係なしに手を上げて、言おうとしてもないこの言葉を言った。
「そのやる気のなさそうな目つきと、その言葉使い……。ユウヤなのね……」
「ああそうだ。お袋。ナナとほんとそっくりだな。わざわざ弱いデュエリストの相手を全力でするって」
「ぐず……」
「俺は死んでしまった。でもよ。魂だけはこうしてナナの近くで生きている。だからよ。安心してくれ。ナナは一人ぼっちでさみしいってことはないからよ」
「一人ぼっちじゃないか……。ナナは明るくて友達いっぱいだったもんね。内気な性格のユウヤと違っていつも楽しそうにしてるし」
「内気っていうなよ。別にボッチなわけじゃなかったしよぉ」
ユウヤお兄ちゃんは私の体を勝手に奪い取って、お母さんと会話を始めてしまう。
腕を組んで取っても偉そうに上から目線で……。でもお母さんはユウヤお兄ちゃんと会えて、とっても嬉しそうな泣き顔だ。
「でも、こいつはお袋と暮らすわけにはいかないな。だってナナは大切な人が出来たのだからな。それに、お袋だって校長やってんだから、忙しいだろ」
「大切な人か……。お母さんも校長先生になって、この学校の生徒達はみんな家族みたいなもんだからね……。人気者の校長先生のお母さんは離れるわけにはいかないものね」
照明がついている天井を見上げながらお母さんは嬉しいのか悲しいのかわからない複雑な笑顔をしている。
お母さんのあの優しい性格だから、生徒を捨てるっていう考えは全くないんだろう。
「そうそう。うっけるんだぜ。ナナの大切な人って。女なんだぜ。お袋も高校生時代、彼女いたんだっけ。ほんとにてるよな」
「お、女って……。ナナは……」
「しかもナナは彼女と結婚するって言ってたな」
「お幸せにねっ。お母さん応援してるから」
娘が女と女が結婚するっていう話を止めようとしないで、お母さんはニヤニヤっとした表情で見つめてくる。
これは誤解だっていうのに……。なんで喜んでいるんだお母さんは。
◆◆◆
そして大会日へと変わる。お母さんの教えでもある英雄騎士高校との試合。
私とカイザーの活躍により、ストレート勝ちで勝利を収めた。