遊戯王~デュエルキングを目指す少女の物語   作:魔法使い?

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第33話『┌(┌ ^o^)┐┌(┌ ^o^)┐』

 あれから1日経過して。

 あの堀内先輩がイケメンに変わってからこの部室でも変化が起きた。

 今までは、騒がしいカイザーの怒鳴り声とかエッチなビデオの音しか聞こえなかったのに……。

 

『きゃーーー、2年生の堀内さんが部室にいるのよねーー』

『私もこのデュエル部に入部しようかしらーー』

『堀内。ってデュエルがすっごく強いんでしょ。イケメンにデュエル教えてもらえると最高よねー』

 

 この部室の外から無数の女子の声が聞こえるのは、ここにきて3ヶ月経つっていうのに初めてのことだった。

 私も入学当時は堀内先輩同様、イケメンとか言われていた時もあったっけ……。

 でも、私が彼女ができると、すぐに周りは冷めたかのように、騒がれるのはなくなった。

 私も同じ女子だけど、ほんと女子の手のひら返しって早くてよくわからないなーって思う。

 

 で、女子がお目当ての堀内先輩は何をやっているのかというと。

 

「あぁあ。ダルクきゅんとブラマジが愛し合ってるこの本最高だぜ」

「お、おう……」

「奈々川君も、可愛い男魔術師が先輩魔術師に責められている本読むかい?」

「これって、エッチな本なんでしょ。僕、読まないから!!」

 

 外のうるさい女子達の声ももろともせずに、堀内先輩は男同士の魔術師が恋愛していると言っている本を椅子に座って真剣に読んでいる。

 私も誘われたが、ちょっと断りにくいけど、そんなものは興味ないと何事もないように断る。

 先輩は高身長で、ずれることのない直線のような綺麗な姿勢で座ってて、声もなんか高い声で聞き取りやすいこえだから。 

 思わず私も堀内先輩は一人の男として、思わず見てしまう。思わず惚れてしまわないように気を付ける。

 

「あぁあぁああ。ホモの堀内先輩には、ほんと勿体ねえー。何で女の子に滅茶苦茶モテるようになったのに、興味ないんだよーーー」

「なんかすごいよね先輩は。男好きを維持でも貫きとおしているって感じが」

「くっそ。やっぱ世の中は顔なんだよな。顔。俺も奈々川とか堀内先輩みたいに顔が良かったら、今頃彼女ができて童貞を卒業して……」

「でも、僕は顔じゃなくてやっぱり性格がいいとモテると思うんだよね」

「でました。強者の奈々川の余裕な発言。あーー。ほんとむかつくぜ」

 

 宮城が私にモテる定義を話あったけど。恋愛がうまくいく秘訣って顔なのかなやっぱり……。

 男装している私が女子にちやほやされていたのは、かっこいいだとか、頭がいいだとかデュエルが強いだとか、運動ができたとかそういう風に思われていたから、なんとなく宮城が言っているのはわかる気がする。

 でも、私はそうではないと思うんだけどな。顔は関係なしに、性格が優しい一面を持っている人は私は好きだから。

 そういう人と私は将来は結婚したいとか考えることあるけど、女の考えと、男の考えはこの辺りは違いがあるんだな。

 

『きゃーーー』

『私は、デュエル部に入部希望しまーす』

『私も、私もーーー』

『ぎゃーーーーーぁあああ』

 

「なんだこれ……」

 

 今まで外で騒がしい女子達の声が聞こえただけなのに、一人が扉を開けるとものすごい勢いで女子がこの、デュエル部に入ってくる。

 それは今まで少人数だったデュエル部には考えられないことだった。

 それに女子なんてここの部室に入るなんて今までなかったのに。しかも入部希望者という声が多数。

 人数は、15人くらいか……?

 

「はいはい。押さないで押さないで。並べよ。俺様、カイザー様とセックスデュエルしてくれた人は入部大歓迎だぜ」

『お前は興味ないんだよ。死ねっ!!』

「がはっ……」

 

 カイザーはいつも通り女子に対して気持ち悪いことを言って、いたがいつものことで嫌われる。

 ごつい顔をした、体格がいい運動系女子に腹パンをされて崩れる。

 そのまま女子が並んだ列は、椅子で漫画を読んでいる堀内先輩の所へ、一斉に動いた。

 

『私、最近、堀内先輩のことが気になって、気になって……』

『私もデュエルを教えてください。それとほかのことも』

『一緒に青春したーい。きゃぁあああ』

「………」

 

 無数の女子に次々と堀内先輩は話しかけられるが、堀内先輩は持っている男同士の本で、口を隠しながらその女子を見続ける。

 そして女子の声が止まる瞬間を狙って、堀内先輩の口は動いた。

 

「私は、君たちには興味はないよ。興味があるのは、とってもキュートな男の娘だ」

『なにを言って……』

「私は、女子部員より、ショタ部員を探していたのに。それなのに、デュエル甲子園で忙しいこの時期に、入部希望の女子? ふざけるな」

『で、でも私はイケメンの堀内先輩と一緒に青春を共にしたいのですわ』

『そうよ。今から一緒に私達とデュエル甲子園を目指しましょう』

「すまない……。ホモ以外は帰ってくれないか!」

『え?』

 

 堀内先輩はやはり、女子には興味がないという。

 女子にキャーキャー言われて、どうなるかと思ったけど、無の感情で落ち着いた感じで堀内先輩は対応する。

 そして最後のこの言葉を言うと、今まで声がデカかった女子は急に黙りこんで、騒ぎがなくなる。

 

『きもちわるい。行きましょう』

 

 一人が堀内先輩に言うと、みんな目が覚めたかのように、この荒れた部室からもう一度、一瞬で列を作って去っていく。

 

『だから言ったじゃない。堀内はホモだって。女なんか興味ないんだって』

『キモっ。寒気がしてきたわーー』

『あれみたー。男同士でやっちゃってる、漫画とか小説山積みにしてあるの。すっごいうけたよね』

『ぎゃははははは。マジ、受けるんですけど』

 

 今まで、あんなに堀内先輩のことを行為の目で見ていたはずなのに、部室の外からは面白がって去っている女子達の声が聞こえる。

 悪口を言われた先輩は、死んだような目で声が聞こえる扉をじっと見つめる。

 私には、女子に断って落ち込んでいるのではなくて、悪口を言われて悲しんでいるように思えた。

 

「あ、あの……」

 

 消えたと思っていたはずの、女子が一人突如姿を現す。

 長いぼさぼさの黒髪で大きいメガネをかけた女性。さきほどまで派手だった女性と比べると「地味」というべきか。

 

「君も帰っていいよ。私の悪口を言いに来たのだろう」

「ち、ちがうんです……」

「なら。なんだ?」

 

 手をごにょごにょと動かしながら、聞き取りずらい音量の声で言う女の子。

 何かを言いたそうだけど、必死なように見えたのだが、女子を嫌っているオーラを出している堀内に怯えてなかなかしゃべりにくそうだった。

 

「あ、あの……。わたし、堀内先輩のことが気になって……」

「帰ってくれよ。また馬鹿にするんだろ」

「ち、ちがうんです……」

 

 怒り狂う堀内先輩に少々怯えている女の子。

 それでもなお、それを振り払って懸命に何かを言いたそうだったが、堀内先輩のあの様子だと言えなかったのか、そのまま帰ってしまった。

 

「『トリシューラの影霊衣』……」

 

 落ちたカードを拾う。急いで逃げて行ったので、あの子はカードを1枚、落としていった。

 この子は確か、私と同じ1年生でクラスの毒島さんだったはず。

 

「あれ、あいつって確か、俺と同じクラスのぶすじまじゃなかったか? あだ名ブスコってつけられて、いっつも一人でいるやつ。確か、BL漫画を描いているっていううわさの」

 

 影が薄かったけど、宮城の発言で確か思い出した。

 いつも、教室の陰で一人で絵を描いていた女の子。私は、何の絵を描いているんだろうって気になって声を掛けたけど、絵を隠されて何も言わずに逃げられちゃうし。

 

「しっかし、うけるな堀内。女にモテてどうなるかと思ったけど、ホモを貫きとおしたか。お前、最後にブスに告白されそうになってるのな!! 何あれ、顔面。ゴブリン女じゃねえかよ」

 

 暴言を吐いて気楽のカイザーとは、反対に、何かを考えてるかのように堀内先輩は、何も語らない。

 

「腐女子の毒島が何でこんなところに来たんだろうな」

「ふ……女子???」

「奈々川。お前、腐女子の意味もわかんないのかよ」

 

 腐った女子って漢字で書いて、腐女子っていうのを何も知らない宮城から教えてもらった。

 どうやら腐女子(ふじょし)とは、漫画やアニメなどのおたく趣味を持つ女性全般を指す言葉として用いらることらしい。

 「婦女子」をもじった呼称らしいけど……。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 セミの鳴き声と共に猛暑が続く。この学校はもう夏休みに入っている。

 次の日のことを前もって考えておいて、私は一人になった毒島さんを狙って、昨日のことを聞こうとした。

 誰もいない教室に私は待ち合わせを取って。あらかじめ毒島さんの下駄箱の中に手紙を入れてい置いて準備をしていたのだから。

「放課後、話があります」っていう内容を添えた手紙を書いておいて。

 

「あ、あの……」

 

 ウサギのような小さな声と同時に、毒島さんを発見した。

 オドオドしていて、挙動不審だったので、相変わらずしゃべるのは苦手な人なんだなと思った。

 

「いやーよかったよー。僕、君と話がしたくって」

「は、は、は、話ってなんですか? わわわわわ。わたしとしゃべるって?」

「はいこれ。『トリシューラの影霊衣』」

「あ、れ? こ、これってわたしのカード?」

 

 私はまず初めに昨日落としていったカードを毒島さんに返してあげる。

 緊張をほぐしてあげようとしたけど、それでも毒島さんの挙動は変わることはない。

 

「それで、僕は毒島さんと話がしたいんだけど、今、時間開いているかな?」

「は、は、は、は、はなしって……??」

「もしかして駄目かな?」

「あ、わわわわわわわわ。だだだだだだ、だいじょぶですけど」

 

 私は毒島さんに近づいて、オッケーかなーって聞いてみるけど、毒島さんはカミカミしまくって緊張しまくっているようだ。

 

「ででで、でも、奈々川さんって、彼女さんいますよね」

「へ?」

「だ、だから、こんなわたしが、どうして奈々川さんと? ここここ、これって、ラブレターですよね」

「あ、ああ」

 

 顔を真っ赤にして何かを懸命に振り切っていたから、なんかものすごい勘違いされていることを私は気が付いた。

 この話の流れからどうやら、私は毒島さんに対して告白しようとそういう雰囲気を作っちゃったのかな。

 それもそのはずだ。だって、私は男の格好をしている都合上、手紙を渡して毒島さんと2人きりの空間を作ってしまったのだから。

 

「なんか勘違いされているけど、ごめんね。別に告白しようとしているわけじゃないんだよ」

「そ、そうですよね。こんな女が、奈々川さんと釣り合うわけないですから……」

「僕も別に特別な人じゃないから、普通に話するだけでいいんだよ。君と同じ人間なんだから」

「で、でも……。奈々川さんは顔がいいイケメンですし……、それに男の人だから……」

 

 やっぱり、毒島さんは男の人が苦手なようで、なんだかしゃべりにくそうだ。

 私もこうなることってわかっていたなら、女の格好に戻ってしゃべってあげればよかったのかな。

 

「昨日、デュエル部に来ていたみたいだけど。きみって、もしかして堀内先輩のことが好きなの?」

「………」

 

 顔を真っ赤にしながら、下を向いて黙り込んでしまった毒島さん。

 これってもしかして図星のように見えたけど、しばらくして……。

 

「ち、ちがいますよ。わたし、堀内先輩のことが気になるだけで、別に好きではないです」

「へ?」

 

 あれれ。昨日のあの行為って告白じゃなかったのかな。

 でもどうして女子の集団が堀内先輩が男好きって言われたら、帰っていったのに毒島さんは残って。

 あれはどういうことだったのかな。

 

「あの……。奈々川さんは、BLに興味がありますか?」

「びーえる??? それってどういう意味」

「ちょっと待ってください。持ってきますから」

 

 英語で何か言われたけど、何の略称後か私はわからなかった。

 すると、毒島さんはその意味を私に教えてくれるらしく、バックから何かを取り出した。

 どうやら漫画のようだった。私は渡されたその漫画を読む。

 

「ちょっ……!!」

 

 私はその衝撃な内容で思わず漫画を落としてしまった。

 ショッキングな漫画だったので私は顔を真っ赤にしてしまう。

 

「そうです。ボーイズラブって意味です。いわゆる男同士が禁断の恋愛している漫画。それをですね。わたしは書いているんです。同人BL漫画家なんですよ」

「ぼ、ぼーいずらぶって……あわわわ」

 

 毒島さんは今までカミカミだったのに、この説明だけはイキイキしてて、わかりやすかった。

 今まで知らない世界だったので、私は鳥肌が立ってしまう。

 男同士がキスしたり、抱き合ったり……。

 

「わたし、BLよりGL好きな男、全員気持ち悪いと思ってるんで。でも、奈々川さんは、女の子と付き合ってる健全な男子だからどっちも興味はありませんよね」

「え? 女子と」

 

 GLってガールズラブって意味だよな……。私が男装しているせいでややこしくなってる。

 なら最近、私は2人の女の子とキスされてしまったから、あれは反対でガールズラブってことなんだろうか。

 毒島さんに嫌われないように黙って置こう。ちょっと同様してしまってるけど、隠しとく。

 

「だから堀内先輩のことが気になるんです。同じBL好き仲間として、お友達になりたくって。前から堀内先輩とはしゃべりたかったんです。それなのに……。男らしくなっちゃって……」

「うん……。でも、堀内先輩のことが気になっているって言ってたけど、本当に思いを伝える気はないの…?」

「わたし、ネクロスっていうデッキを使うんですけど、デュエル弱いし、それに周りに言われているようにブスなわたしが、イケメンの堀内先輩とは釣り合うはずはないじゃないですか!!」

「そうなんだ……」

 

 恋愛に対して諦めモードの毒島さんを見てちょっとがっかりした。

 堀内先輩のことが気になって、恋愛話をするのかなーって思ったんだけど……。

 でも、違う意味だけどまあいいか。

 

「それで、君は堀内先輩と友達になりたいってことでいいんだよね」

「そ、そうなんですよ……。同じBL友達としていろいろとお話ししたいんです。ホモ話できる人は先輩しかいないんですから」

「お、おう……」

 

 毒島さんも、なんか昔の清水さんに何だか雰囲気が似てて、人としゃべるのは苦手なタイプっぽいんだよな……。

 だからこそ、人の役に立ちたい私は毒島さんに是非力になりたい。

 

「わかったよ。僕から堀内先輩に、君とうまく友達になれるようにアドバイスしてあげるよ!」

「あ、ありがとうございます。なんて、お礼を言ったらいいのか……」

「別にお礼なんていらないからさ。ばしっと決めていきなよ」

「あわわわわわ」

 

 私は毒島さんに気合を入れる為に肩をたたいてあげたが、毒島さんは顔を赤くして緊張している模様。

 何でだろうと思ったけど、これって男の格好をしている私が近寄ったせいで緊張させてしまったんじゃ……。

 もうちょっと気を配ればよかったなーと後悔した私だった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 それからそれから、毒島さんのアドバイスをした後、すぐに私はデュエル部の部室へと戻った。

 今日のデュエル部には、カイザーを除く堀内先輩と宮城と部長と私の4人だけ。

 昨日の女子軍団に散々コテンパンにやられたから、カイザーは来ないんだろうな。

 

「あ、あの……」

 

 扉を開けて、この男だらけの空間へとやってくる毒島さん。

 相変わらずオドオドして不安だけど、うまくやってくれるかなー……。

 

「また来たぜ、ブスの毒島。ぷっ……」

 

 宮城が悪口を言って、毒島さんはちょっと涙目になってひるみそうになったけど、それでもなお、おびえずに突き進む。

 

「わわわわわ、わたし!! 堀内先輩に話があるんです!!!」

「だから、私は女に興味がないって言ってるじゃないか。帰ってくれないか?」

「違うんです……」

 

 宮城に続き、堀内先輩にも哀れの目で見られて毒島さんを帰らせようとするが、

 それでも堀内先輩と友達になろうと必死なのか、逃げようとはせずにここにとどまった。

 

「せ、先輩が今、見ているBL漫画あるじゃないですか?」

「ん…!?」

「こ、これ……。わわわわわ、わ、わたしが、書いてあるんですよ。ダルクきゅんとブラマジ先輩の禁断の恋」

「おっ。おぉおおおおおおおおおおおおお…!!!!」

 

 哀れのような目でいた堀内先輩が、急に立ち上がって尊敬のまなざしのような目へと変わった・

 

「君は、この同人作家の腐露魔術師先生なんだね!!」

「そ、そうなんですよ……」

「うぉおおおおおおおおおおおお。私、君のファンなんですよ。新刊のイクっ♂ナイト♂デュエル☆も見ました!!」

「は、はい……。ありがとうございます」

「握手とサインください」

 

 今まで見たことがない堀内先輩のテンションの上がりっぷりを私ははじめてみた。

 男子に尊敬の目で見られるっていうことはなかったようで、握手をされて毒島さんは、されてしまって何だかうれしそうだ。

 筋肉がいっぱいついてる男らしい腕に握手をされて、毒島さんの顔は真っ赤で今にも、破裂しそうだ。

 でも、男同士で恋愛している漫画は興味ないので、私と宮城はドン引きして何とも言えない雰囲気に。

 

「あ、あの……。わ、わたし……」

「なんだい?」

 

 緊張しながらも毒島さんは、堀内先輩に何かを言おうとオドオドしながらも言った。

 周りの空気は凍りついて静かな物だったので、その声だけは周りにはっきりと聞こえた。

 

「わ、わたしと友達になってください!!!」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 あれからあれから、堀内先輩と毒島さんは一緒にいることが多くなった。

 相変わらず男同士で何かをしているボーイズラブ関係のことで、部室で話すことが多かったので、周りはドン引きしていたが

 これにて、毒島さんが願っていた堀内先輩と友達になるということが叶ってよかった。

 

『あいつ最近調子乗ってるよねー』

『ブスのぶすじまの癖にイケメンの堀内先輩と一緒にいてむかつく』

 

 それでも毒島さんと堀内先輩の関係をよく思わない人が多かった。

 大半は女子による悪口で、トイレや非常口の裏など、影に行われていたが、声が大きかったので私には十分聞こえた。

 そして事件は起こる。

 

『最近、毒島むかつくんだよ!!!』

『調子に乗りやがって!!』

 

「や、やめてください」

 

 夏休みの為、生徒は部活をやる人以外いない学校。

 集まっているのは、ラケット、ボールやユニフォームを持っている人達。

 ユニフォームから見て、テニス部、バスケ部の人達だろうか。

 その人達が、毒島さんの周りを囲んで何かをやっている。

 私は女子に気づかれないように非常口の裏の影で隠れている。

 

『ブスの癖に堀内先輩と一緒にいやがって』

『死ねよ』

『ねえねえこいつの髪の毛を切って、さらにブスにしない?』

『きゃははははは。それ、チョー傑作』

 

「い、いやです……」

 

 ハサミを持って、毒島さんの周りを囲んだ。

 一人は毒島さんの髪の毛を乱暴に押さえつけながら、逃げられないようにし、またもう一人はハサミを持って毒島さんの髪の毛をハサミで切りつけようとする。

 

『ぎゃははは。うっけるーー』

『ブスブスブス。何でお前、生きてるの? 生きてて恥ずかしくないの?』

『お前、男同士でセックスしている漫画書いてるんだろ。きもっ……』

 

 それは誰からどう見ても毒島さんは、女子達にいじめているとわかるものだった。

 この女子達は私のデュエル部の部室やってきてきた、堀内先輩のことが気になってやってきた人物と同一人物。

 その女子達に、毒島さんが堀内先輩と一緒に仲良くやっているっていうことをよく思わないと、思っている人達なんだろ。

 

「奈々川君は出なくていい」

「っ!?」

 

 私は毒島さんのいじめを止めようと影から飛び出そうとすると、何者かが私の肩を触って前へと出た。

 

「ずいぶんとひどいいじめをやっているようじゃないか…」

 

 横幅が筋肉で広がってるガタイのいい背中。鍛えられた腕が私の前へと現れる。

 

「堀内先輩……。どうしてここに……」

「集団でか弱い一人の女の子をいじめるなんてほんとどうにかしてるな。きみらは……」

 

 毒島さんを守るかのように、いじめ集団の前へと威圧するかのように立ちふさがる堀内先輩。

 

『どうして? 堀内先輩が……。ブスの毒島の味方……?』

「君たちもブスの癖にさ、ブスブスブスって何様のつもりか? 一度、鏡見た方がいいよ」

 

 堀内先輩は女子の集団に点々とした口調で挑発する。

 もちろん憧れだった男に言われたショックなのか、女子は何人かは固まってしまう。

 

『堀内さんとブスのブスジマの関係はなんのよぉおおおおおおおおお』

「なにって、彼女さ。私の彼女をいじめるな!!!」

『嘘でしょ……。何で気持ち悪い女と付き合ってるの……。うちらのほうがマシなのにどうして……。イケメンって美人の女と付き合うのが普通じゃないの……』

 

 周りが衝撃で立ち止まっている。それは私にも衝撃的なことだった。

 毒島さんも口をあいたままの状態で顔を赤くしながら立ち止まっている。

 

「か、彼女なんですか? わわわわ、わたしって……」

「安心しろ。私が、あいつらをボコボコにしてやる」

 

 あの女に興味がないとずっと言っていた堀内先輩が毒島さんのことをかばうことは驚きだった。

 

『ぶすじま、いつのまに、堀内さんと……。なんで、どうして……』

『嘘でしょ……。何で、ブスの癖に堀内先輩と付き合っているのよぉおおおおおおおお!!』

 

 女子集団も2人の容姿の差に、驚きだったのか、口を振るわせながら騒ぎになっている。

 

「それは簡単。私と毒島は趣味があったんだ。男同士の恋愛好きっていうね。それは夢見がちな叶わぬ夢だった……。でもね。こうして趣味があったんだ。これは何かしらの縁しかないって」

『男同士の恋愛……。きもっ……』

「毒島をいじめるやつは、デュエルでもリアルファイトでもかかってこいよ。私が相手してやるから」

 

 堀内先輩の大きな背中しか私は見えなかったが、それでもその言葉は女から見てもかっこよかった。

 高校デュエル甲子園7位と柔道でも右に出るものはいない、堀内先輩は何人も束になっても勝てる人はごく一部のしかいない。

 そんな化け物の堀内先輩に勝てるはずもないとわかっているのか、女子達は黙りこんでしまう。

 

「私が女が嫌いな理由教えていなかったな。何かあるとぎゃーぎゃーメスゴリラみたいに口うるさいし、人の顔だとかで容姿だけで男を見ない。私は覚えているぞ。そこのテニス部の女。1年前に私のことをデブだとかキモイだとか罵ったことあるじゃないか。私は忘れてはいないぞ」

『私、そんなこと言った覚えなんてない……』

「そりゃそうだよな。私は振られたストレスで極端に体重を増やしたり減らしたりする男だ。顔もコロコロ変わるもんでね」

『う、うそ……』

「次に、毒島をいじめたらな……。君たち、ぼこぼこどころじゃすまないぞ!! 女だから……!? そんな女優先するこの世の中なんて糞くらえだ!!」

 

 堀内先輩の体は1年前に好きな人に振られたショックで20キロも太ったって言ってた。

 その後、カイザーにキモイだとか愚痴を何かしら言われていたわけだから、女子にもさんざん悪口は言われていたんだろう。

 でも、また男と思っている私に振られたストレスで今度はイケメンになったわけだから、今度は女子に好意を寄せられていた。

 コロコロ変わる。そのことが堀内先輩は気に食わなかったんだ。

 

「行くぞ。毒島」

「は、はい」

 

 堀内先輩は長い手を毒島さんに差し出して、それに緊張しながらも毒島さんは手を握り締める。

 200以上ある堀内先輩の高身長を背に、女子達の集団の前から立ち去った。

 

「ありがとうな。奈々川君。君のおかげで素敵な女の子と一緒にいることができた」

「いや、僕は何もしてないよ」

「奈々川さんのおかげで堀内先輩と仲良くすることができました。ほんとうにありがとうございます」

 

 私の前で真剣な目をしている堀内先輩とオドオドしながら涙目の毒島さんに頭を下げられて、お礼を言われる。

 

「あんな思いをするのは初めてだった。私は……。男好き……。それだけで私はいろんな人に避けられてきた……。ようやく心を通じる人がくるとはな……」

「わ、わたしもそれは同じ気持ちです……。腐っているわたしは、いろんな人に気持ち悪いと言われていましたから……」

 

 あの男好きだった堀内先輩が女子と一緒に手を繋ぐっていう光景が正直、夢だと思っている。

 でも、あんなにイチャイチャと男の子同士の恋愛のことで盛り上がっているんだ。

 毒島さんと堀内先輩は互いの趣味が合っているからこんなにも、仲がいいんだと。

 イケメンとかブスとかって人を決めつけるのはよくないと思う。

 本当の恋愛はこうやって2人のことを知って、身心共に共感するからああやって結ばれる。

 これが理想の恋愛だと私は思う。

 

 いつまでも2人が仲良く付き合えるといいなと私は、堀内先輩と毒島さんの歩く姿を見ながら、心の中から応援した。

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