遊戯王~デュエルキングを目指す少女の物語   作:魔法使い?

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第35話『プール回』

「えーっとデッキ構築は、っと……」

 

 私、奈々川ナナは高校デュエル甲子園に出場している今は、とーっても青春日和。

 夜の景色を窓に、パジャマ姿でデッキのカードを広げながら1枚1枚採用理由を考えてデッキの調整中である。

 高校デュエル甲子園最中とはいえ、大会以外のデュエルを見てもとっても参考になったな。

 ミカのストーカーのチェーンバーンを使用するプロデュエリストのリクさんに、サイバー流を使用する私の科学の担当をする先生であるプチモス先生。

 それに今日のデュエルで白熱した戦いを見せた部長と堀内先輩。

 私よりも強いデュエリストであるからこそ、それはとっても重要な経験値であったとともに、デッキの改良の勉強にもなった。

 

「ユウヤーーーー!」

「ちょっ」

 

 部屋の扉からいきなり出てきて、私の方へと飛び出してくる恋人のミカ。

 そのままの勢いでベッドに押し付けられてしまい、ミカの顔が正面と、私の顔と近くなったので赤くなってしまう。

 

「いきなり何するのよ!!」

「何って、あんたの顔を見たくなったから、来ちゃった」

 

 発言が相変わらず可愛いのと、ガードが緩いパジャマ姿のミカに少々緊張しながらも私は平常心を何とか維持しようとする。

 

「もーう。可愛いし、大好きーー」

「きゃっ」

 

 真正面から抱きつきられて、私はにやけ顔になってしまう。

 「可愛い」とか「好き」って言われて、ニヤニヤしない女の子なんているわけないよね。

 でも夏休み最中、部屋には冷房つけてるけど、抱きつかれて余計暑苦しいって言うかなんていうか……。

 

「明日なんだけどさ。プール行かない?」

「プール……」

 

 此間、ミカと一緒に水着を買ったから、やっぱ行くって話になるよなぁ……。

 男装をしている以上、着替える行為が嫌な私は、少々苦い顔をする。

 

「どうしたのー。もしかして、私の水着姿想像したの?」

「ち、ちがうよ。馬鹿……」

「私の水着姿で、悩殺しちゃうから!」

 

 ミカはスタイルがいいから羨ましい……。

 今、抱きつかれて全身が見えるからわかるけど、柔らかい感触と共に、綺麗な体をしている。

 

「私達ずっと一緒だよね。これからもずっと……」

 

 抱きつくのをやめて、ゴロンとベッドを横たわり、私の隣に仰向きで寝っころがるミカ。

 直視するのは恥ずかしいので、私は横目で見る。

 

「当たり前じゃないか。僕はずっとミカと一緒だ。好きな人と一緒にいてこんなにうれしいことはないよ」

「うん……」

 

 あれ? ミカのススリ声が聞こえたけど、泣いているのか……。

 無理やりつき合わさせられて、女と女が付き合っている馬鹿たことになっているけど、この子にとって私は理想な男の子になっている。

 だからこそ、これからもずっとそれを突き通さなければならないと思う。

 

「すーすー……」

「寝ちゃった……?」

 

 安心しちゃったのか、ミカは私の寝顔で普段勝気のミカとは、想像できないほど可愛い寝顔をして寝ちゃっている。

 最近、忙しいとか言ってたから疲れているのもあるんだよな。ここでしばらく寝かせてあげよう。

 

「さて、デッキ構築でもしよっと……。ってあれ?」

 

 私の腕をがっちりとミカの頭が乗っかってて動かせない。腕枕をされてしまっている。

 

「だいすき………」

 

 どうにかしようと頭を動かそうとしても、ミカは私の腕をがっちりとつかんでいて全く話そうとしない。

 寝言でも、私のことを読んでいるので、本当に私のことが好きなんだろうな。

 こんなに好きになってもらって、とっても嬉しいことはない。

 

「まあ、たまにはいいか」

 

 たまには一緒に同じ布団で寝てあげるのも、女にとって理想の彼氏らしいか。

 これから私はどうなっちゃうか不安だけど、それでも今は楽しいからそんな不安、かき消されちゃう。

 まだ、寝るのは早いけど、ミカのぐっすりと寝ている姿を見ると、眠くなっちゃったから私も、もう寝よっと。

 

「おやすみなさい」

 

 私はミカの頭を触って、おやすみを告げるとそのまま目を瞑って眠りについた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 そして次の日の朝。

 

「ついたわね……」

 

 隣の駅まで電車で走って、そこから徒歩10分ほどのミカと手を繋いで歩いたら、プールの会場まであっという間についた。

 ミカはサングラスをしているが、その姿は私と生活して初めてのことで見たことが全くない。

 おそらくミカは有名人の為、顔バレしないようにと、顔を隠しているんだろう。

 

 目標のプールまで問題なくついたんだけど、ここにきて、重要なことに気が付いた。

 

「じゃあねーー。ユウヤー。着替えてくるからまた入口のところで会おうねーーー」

「あっ……」

 

 ミカは私と手を繋いでる手を離して、手をバイバイと振りながら女子の更衣室のところへ行ってしまった。

 そういえば、私はどこで着替えればいいんだ……?

 女子更衣室はミカもいるし、私は男の格好をしている以上、使えない。

 それに男子更衣室……。あそこは魔境だ……。あそこって確か、男の人が着替えているんでしょ……。

 男の裸を見ながら着替える……。目を瞑ればいけないことはないが……。

 でも、男の人を見るってキツイものがある……。

 最悪、着替えはどこかでして何とかしても、プールの中に入るには、どちらにせよ更衣室に入らなければならない。

 

「どうすれば……」

 

 そう思った矢先、誰かが私の背中をたたいた。

 

「愛しの奈々川さん。こんにちわーーー」

「清水さん……? どうしてここに?」

 

 派手ではない水着にその下にTシャツを着て、帽子に笛、そしてをプラカードを身にまとっている清水さん。

 この格好で一発で何をしているのか私はわかった。

 

「清水さんここでアルバイトしてるの?」

「ええそうよー」

 

 確か、清水さんは生活はアルバイトとともに親の仕送りで一人で生活しているんだっけ。

 夏休みとはいえ、まじめに働いて、生活のために一生懸命働いてかっこいい女の子だなーって思う。

 

「もちろんお金を貯める目的は奈々川さんと遊ぶための、おもちゃを買うためなのよ。うふふふふ」

「おもちゃ……?」

 

 確か前にも清水さんに絡まれていた男に言われてたけど、大人のおもちゃっていうカッコいい物を買ってどうすんだろう?

 私は意味はしらない。

 

「奈々川さん、もしかして、あたしに会いに来てくれたのーー。うれしいわー」

「いや、そうじゃなくて、彼女と一緒にプールに来ただけなの」

「そうよね。奈々川さんはまじめな女の子だもんね」

 

 彼女っていうと、今までニコニコっとしていた顔が、それに気に入らないのか怒り気味の顔に変わった。

 まあ、清水さんはミカのことは嫌っているみたいだから、それはしょうがないか。

 

「で、奈々川さん、どうやら何か困っているそうだけど」

「そうなんだ。着替えをする場所に困ってたんだ」

「そうよねー。奈々川さんが男子更衣室なんて、猿の楽園に入ったら、奈々川さんひどい目にあっちゃうもんねー」

「いや、ひどい目なんてならないと思うけど」

 

 男嫌いだからってまた大げさなことを言ってるけど、私の為に考えてくれるんだからそれは嬉しい。

 清水さんはプールでアルバイトをしているから、いろいろと知っているのか、答えをくれた。

 

「わかった従業員用の隠し通路を教えてあげるよ。ここなら着替えに困らないと思うからね」

「ありがとう」

 

 やはりここでアルバイトしているからも会って、道にも詳しい。

 私は清水さんに案内をされて、プールの裏道を進められて一緒に行く。

 そこは非常用の通路でも使われるようで、やはり人気は私と清水さんしかいない。

 

「はい到着っと。奈々川さんここなら人気のない所で堂々と着替えられるね」

「うん。ありがとう」

 

 到着して無事一番難関だと思っていた着替えをこれなら難なくクリアできると思った。

 

「あの」

「へ?」

「何で僕のことがん見しているんですか?」

「何って、奈々川さんの生着替え見たいじゃないの。綺麗なおっぱい見せてほしいなーって」

 

 清水さんに真正面から見られているけど、私は着にせずにゆっくりと私服を脱いで、徐々に肌を清水さんに見せる。

 

「ハイ終わり」

「え、どうして?」

「どうしてって何も、着替えるのはずかしいから、あらかじめ水着来てるんだけど……」

 

 なんか、がっかりした顔を清水さんはされているけど、私は人に見られるのは嫌だったので前もって水着を中に着ていたのだ。

 いざっていう時に女だとばれてしまうのは困るからね。

 

「じゃあね。清水さん」

「ま、まって……」

「アルバイト頑張ってね」

 

 と、一言添えて、これ以上私と関わってほしくないので、去って行った。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「お待たせ――」

 

 プールの入り口付近で待っていると、ミカが飛び出してきた。

 新品同様の買ったばかりの綺麗な水着を華麗にこなし、豊満な体を自信気に私に見せてくる。

 なんというか、美人ってこういう時、羨ましいわよねー。

 

「あんた、男の子なのに地味な格好してるわね」

「まあ、肌を出すのはあまり好きじゃないっていうか……」

 

 私は水着っていうより、胸を隠す為に白がらの半そでTシャツと、男性用のデッカイ海パンを身にまとっている。

 本当はミカみたいな可愛い女の子用の水着を着たいんだけど、それはかなわぬ夢。

 でも、こういう男性向けっぽいファッションもおしゃれっぽいよね。一度試してみたかった。

 

「場所確保っと」

 

 ここから流れるプールが見えるところを少しだけ移動して、場所取り用のピンクのレジャーシートを敷いた。

 近くにある簡易テントと日傘が近くにあったので、場所を選ぶセンスは、ほんとミカはあるな。

 

「よいしょっと」

 

 荷物を置いてすぐにうつ伏せの格好でレジャーシートを全部占領するミカ。

 水着の紐が見える、ニキビもシミも何もない綺麗な背中を見せつけて、ちょっとだけ緊張してしまうが、我に返る。

 

「ユウヤー。日焼け止め塗ってよーー」

「日焼け止めって自分で、塗るもんでしょ」

「だってー、背中、塗れないじゃないのよ」

 

 美容を保つため、プールでも日焼けを忘れないのはほんとしっかりしてるなーっと思う。

 でも、人の女の子の背中を塗るはちょっと……。なぁ……。

 

「私の背中見て、エロイこと考えてるでしょ」

「ち、ちがうよ……」

「へぇーーー」

 

 なんか、ものすごく勘違いされている。女の子が女の子の背中を見て、そんなこと考えるわけがない。

 でも、そう思われているんなら、私は……。

 

「ひゃぁ……」

 

 私は日焼け止めクリームを自分の手に塗って、ミカの背中に触れると、変な声を発した。

 

「変な声出してるのはどっちだよ」

「うるさいわねー…。びっくりしただけよ」

「ほんとにそうかな? それそれ」

「ひゃ、ひゃぁあ」

 

 さらに、私はミカの背中をゆっくりと手を動かすと、さらにさらに変な声を発する。

 なんか、いやらしい声に聞こえたが、それでも私は面白ったのでミカにもう一度触る。

 

「それそれーーー」

「ひゃぁあああああ」

 

 なんか、ミカの悲鳴で周りが集まっている気がする。

 これ以上は、いろいろと変な意味でまずいのかもしれない。

 

「はぁはぁ……」

「大丈夫?」

「大丈夫なわけないでしょ。あんたのボディタッチ、うますぎて気持ち良すぎ……。私、少しだけ……」

「少しだけって何よ」

「いや、別になんでもないわよ……」

 

 背中を触る行為をやめたら、息切れをしながらミカは少々疲れ気味のもよう。

 背中にある水着の紐がずれているのが、気が付かないほど、夢中になっていたので直してあげた。

 「少しだけ」って何なのかわからないけど、ミカは何を考えていたんだろう。

 

「あんたって最近、私のこと慣れてきたわよね。体を触るのにも慣れたっていうか」

「いや、別に慣れてはいないよ」

 

 と、言うのは嘘。

 もちろんミカの言う通りでずっと一緒にいたせいで、中学校生活の時と同じ、友達感覚っぽい感じで慣れちゃっている。

 恋人同士って実際も同じようになれちゃうのかなー。私は初めはミカと一緒に手を繋ぐだけでもテンパっちゃったのに。

 

「さて、いろいろと準備できたわけだしプールにいくわよ」

「うん!!」

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 私達は、今まで忙しかった日を忘れるかのように流れるプールで何時間も遊んだ。

 くるくるくるっと回るだけなのに、くだらないおしゃべりとか、冗談とか、ボディタッチだけでもとても面白かった。

 途中にいつの間にか、お昼に入って普段は食べない屋台で、フランクフルトを食べたり、デザートにかき氷を食べたり。

 食べたら、あらかじめ作って置いた自分たちの陣地であるレジャーシートでイチャイチャタイム。

 イチャイチャといっても、学校の話とか、同じ生徒達の話とか、デュエルの話とかいっぱいした。

 休憩が終わるとまた、流れるプールで遊んだけど、飽きちゃったので、途中から普通のプールで遊んだよ。

 あらかじめ持ってきていたのか、ボールを膨らませて、ビーチバレーをやった。

 私はスポーツには自信あったんだけど、ミカも意外にもバレーうまかったなー。

 綺麗な体を維持する為に家で運動も少しやっているみたいで、スポーツも得意なんだね。

 

 今まで見たこともない表情を私にだけ見せてくれるミカ。

 学校では人に対して威圧の表所を見せるのに、私にだけ心を許したかのような可愛い顔をしてくれた。

 そしていつの間にかあっという間に景色は夕方になり……。

 

「いやー。楽しかったねー。いっぱい遊んじゃった」

「ありがとうね。ミカ。僕のためにこんなプランを用意してくれるなんて」

「べ、べつにあんたの為にやったわけじゃないんだからね。勘違いしないでよ」

 

 こういうのはツンデレ? っていうのだろうか。

 いつも強気な女の子が好きな子にだけ、可愛い顔をする。なんて素敵なことなんだろうか。これこそが恋。

 

『うぉおおおおおおおおおお。お前たちはぁああああ。確か!!!』

 

 突如ごつい雄叫びのような声が聞こえる。

 その雄叫びと共にその主は登場する。大きな身長に、本当に人間なのか?と思うくらいの上半身裸から見せる筋肉。

 パンツ一丁でそれを見せつけるかのような姿だったので、あれは自慢しているといってもいい男の人。

 しかもそれは1人ではなく、複数。筋肉モリモリの人がなんであんなに……。

 なんかちょっと怖い……。

 

「お前は確か、冥界学園の生徒だな」

「そうですけど……」

 

 なんか、顔付きとか、筋肉の付き方で見たことがある人だなーって考えてたら、突然思い出した気がした。

 

「あ!! 君は確か、決闘筋肉高校の岡山ニクタロウさん!!」

「ユウヤ。知ってるの?」

 

 思い出したぞ。あの高校デュエル甲子園でトーナメント表を作るための抽選回で青眼の白龍高校に挑発して、デュエルを仕掛けて負けた人物。

 どうしてこんなところに……。と、思ったけど、それは私達と同じでプールに遊びに来たのよね。

 

「たしかに、俺は青眼の白龍高校にワンターンキルされて、強さの壁を見せつけられたさ……。でも、あの後、俺達は諦めずに毎日腹筋500回背筋400回ダンベル上げ120回懸垂300回を繰り返して、肉体を期待上げた」

 

 だからデュエルと筋肉はどう関係あるんだよ……。と、突っ込みたがったが、それを言うと怒られそうなので言わないようにした。

 

「そのおかげで俺達は今まで勝ち上がってきた。どうやらこの調子で勝ち進むと冥界学園高校にあたるらしいな」

「あ、そういえばあと1戦で戦うことになるんだっけ」

「そうだなお前たちは俺達が負けた因縁の青眼の白龍高校を倒してくれた……。復讐できる相手はもういない……。だからお前たちを倒すことで、俺達はリベンジになるんだよ」

 

 なるほどな。私達の学校をライバル校として見てくれているのか、これは男の戦いとかいう熱き展開になってきたような気がする。

 

「さて、あいさつしないとな」

 

 ニクタロウさんの後ろからさらに身長がデカい生徒が前へと出てくる。おそらく部長だろう。

 

 

『我ら 決闘筋肉高校の7ツ星!!!』

 

 部長が前へと出てきたと同時に後ろに6人も前へと出てくる。自己紹介か何かをするつもりなんだろうか。

 

「「真のプロテイン使い 岡山ぁああ!!!!」 」

 

 そういうとニクタロウさんは、袋から何かを取り出して口にした。

 

「「すべての筋肉は我が手の中! 伊藤ぅう!」 」

 

 ガッツポーズのような恰好をして、私達に見せつける。

 

「「うなる拳が壁をも砕く! 田中ぁああ!」 」

 

 地面に向かってパンチを入れる生徒。

 

「「ジャジャーン! 俺 志村ぁああ!」」

 

 両手でダブルピースをして空中へと飛び跳ねる男。

 

「「機械族モンスターすら瞬間破壊! 高速パンチの使い手 木村ぁああ!」」

 

 シュッシュッシュと声を出して、早いパンチを見せつける生徒。

 

「「決闘筋肉高校の面白き剣 加藤ぉおお!」」

 

 変顔をしながら謎のポーズをする男。

 

「「そして俺が決闘筋肉高校を統べる者 山本だ!」」

 

 そして前へと出てくるのは、3年生の部長だろうか?

 

「何あれーーー。うっけるーぅ。戦隊物のつもりなの? 男子ってああいうもの大好きよねー」

「お、おう……」

 

 ミカにそう言われたけど、女の私達に受けないってことは、男にはああいうごっこ遊びが好きなんだろうか。

 戦隊シリーズっぽいことをやられて、全く意味不明と感じた私達は何も言えない。

 

 

『君たちも自己紹介しないよ』

「冥界学園高校の奈々川ユウヤ。あと、隣にいるのは僕の彼女の神崎ミカだよ」

 

 決闘筋肉高校と違って、私は普通に自己紹介を終える。

 

「彼女ってあの、プロデュエリストの神崎……ミカ……」

「そうだけどなによ」

「一瞬すごいと思ったけど、別にどうでもよかった。興味ないからさ」

「あ、あのねー……」

 

 有名人の癖にああいう態度をとられてミカは少々むかついている模様。

 

「俺とデュエルをしてくれないか? 君とその女、どっちらか強い方が俺とデュエルだ!!」

「ユウヤ行きなさいよ」

「え? 僕……?」

 

 私よりミカの方がデュエルは強いんだけどさ、活躍の場をくれるみたいでデュエルを譲ってくれた。

 隠してあったデュエルディスクを私は取り出して、決闘筋肉高校の前へと出る。

 

「どうやら君が強いんだねー」

「おう。冥界学園高校1年。学年2位の奈々川ユウヤがね」

「だったら俺が戦うよ。決闘筋肉高校の筋肉ランキング52位の岡山ニクタロウが」

「52位……」

 

 筋肉ランキングって何よ……。それにまた52位っていうまた微妙な数値が……。

 

「さあデュエルのはじまりさ」

 

 デュエルディスクをお互いに構えてデュエルを始めようとする。

 見せつけてくる筋肉がものすごい怖いけど、あれは只の飾り。デュエルとは関係ないものだと言い聞かせる。

 

「「デュエル!!」」

 

「先攻は俺から行かせてもらう!! ドロー。まずはフィールド魔法。『チキンレース』。このカードがフィールドゾーンに存在する限り、相手よりLPが少ないプレイヤーが受ける全てのダメージは0になる。」

 

 いきなりフィールド魔法か。どんなテーマデッキを使うのか?

 でも、岡山ニクタロウさんって抽選会でデュエルをやっているところを見たことあるけど、瞬殺されて一度もカードを使うところは見えなかったから、まともにカードを使うのは初めてなんだよな。

 

「フィールド魔法の効果により、お互いのプレイヤーは1ターンに1度、自分メインフェイズに1000LPを払って以下の効果から1つを選択して発動できる。俺はデッキから1枚ドローするを選択だ!!」

 

 ニクタロウ LP4000→3000

 

 デッキから自分の太い腕を使ってデッキのカードを引き抜いた。さて、これから何をするつもりなのだろうか。

 

「よしっキーカードが来たぜ。俺は手札から『友情 YU-JYO』を発動!!」

「えっちょっとまって?」

「カード効果によりこれから相手プレイヤーに握手を申し込む」

 

 私の一番のトラウマカードを使われて、動揺気味だが、これって確か必ずしも握手に応じる必要性はないカードだったな。

 

「僕は拒否するよ」

「だがしかし、『友情 YU-JYO』の効果により、『結束 UNITY』を見せることで相手は握手を拒否することができない」

「いやぁああああああ」

「なんて、声を出すんだよ冥界学園高校早くしろ!!」

 

 最悪な事態を想定したけど、結局相方のカードを持っているってオチ。

 鍛えられた筋肉をマッスルポーズをした後、腕をぐるぐるとまわして腕力に自信があると言っているようだ。

 私はあんな化け物のような腕と握手をするのか……。

 

「わかった。わかりましたからー」

 

 私は決闘筋肉高校の生徒達の前へとやってきて、腕を差し出す。

 

「さあ握手だ」

「ぎゃあああああ。痛い、痛い、痛い、痛い!!!」

 

 ただ握手をしているのに、ものすごい力だ。手を無理やり潰されるような痛みに私は絶唱する。

 

「お前の手、柔らかすぎて女みたいな感触してんのな」

「痛い。痛い!! ギブギブギブ!!! 僕、もう無理だよ。手、痛くて死んじゃう……」

「ああ。それってサレンダー?」

「え?」

「やったぜ!!! あの冥界学園高校を倒すことができるなんてな」

『ニクタロウすげぇえええぞ。冥界学園高校で2位とか言ってたやつを1ターンキルで倒すなんて!!!』

 

 別に、サレンダーしたってわけじゃないのに決闘筋肉高校たちはなんだ、あの盛り上がりは……。

 デュエルディスクも片付けされて、デュエルは私の敗北で終わってしまっている。

 こんなのデュエルじゃない……。私のデュエルはみんなを……。

 

 思ったんだけどどうして、『友情 YU-JYO』って禁止カードに指定されないんだろう?

 

「ユウヤーーーー!! 何でモブみたいなやつに、負けてんの?」

「だ、だって、筋肉モリモリの男の人、ものすごい力強かったんだもん」

「よしよーしいい子だもんねー。だいじょうぶだいじょうぶ」

 

 馬鹿にされたみたいに、頭をなでなでとミカにされていく。

 なんか、ものすごい惨めなんですけど。

 

 

『きゃぁあああああああ。誰か私の子を!!』

 

 大人の女の人が悲鳴を浴びる。デュエルに夢中で気が付かなかった。

 その声の場所を振り向くと、プールで子供が人ごみに離れた場所でおぼれているのだ。

 デュエルのことは忘れて私は、プールに向かって助けようとしたその時だった。

 ニクタロウさんはすぐにデュエルディスクを地面に投げて、プールに飛び込んだ。

 

「待ってろよ!! すぐに助けてやるからな!!」

 

 無駄に鍛えられた肉体を生かして素早い手足の動きで泳いでいく。そして子供の所へあっという間にたどり着いた。

 

「無事だ!!! 意識はあるぞ!! 誰か。人を呼んでくれ!!!」

「水は無理に吐かせないほうがいいぞ。気道を無理に逆流されるからな」

 

 ニクタロウさんの素早い救出により、何とかプールの外へと子供を逃がすことができた。

 同じ決闘筋肉高校の人が、溺れていた子供をタオルで拭いて冷えた体を温める応急手当をする。

 肉体を鍛えて、あのチームメンバーの連帯ができたからこそできた、救出劇。

 女の私では、今のあの状況は、絶対テンパってしまって、こんな手際のいい手当なんてできるはずはなかった。

 

 決闘筋肉高校の生徒達って、ふざけている学校とか力でねじ伏せる高校とか勝手に思い込んでいたけど、今のこの状況を見る限り、悪い高校っていうわけではなさそうだ。

 

「このまま、安静にしとけよな」

 

 レジャーシートの上で子供にやさしい言葉を掛けて、安心させているニクタロウさんの前へと私は来る。

 

「ああ。冥界学園高校の生徒か」

「なんかごめんなさい。何もできなくて……」

「いや、ああいう救護は普通の人はできなくて当然だ。だって俺達決闘筋肉高校は救護の授業もやってるからああいうのには、慣れているんだよ」

「へ?」

 

 ただやみくもに鍛えてデュエルに備えている学校とかアホな考えをしてたけど、実際は違うんだな。

 人を救う為に、高校卒業後にそういう進路を考えている生徒がいる学校ってことか。

 

「俺、人の名前覚えるの苦手だけど、お前、奈々川ユウヤだっけか?」

「はい」

「今日、お前たちと会えて良かったぞ。デュエルもできたしな」

「あれってデュエルというべきなのか……」

「俺達はここまで来たからには優勝を目指す。だからお前たちも絶対に負けるんじゃないぞ。ライバルだからな」

「当たり前だろ。僕はニクタロウさんにあんな形でデュエル負けちゃったんだから、リベンジしないとなって。今度は負けないからな」

「いいことを言うな。ああそうだ。Aブロックの決勝で会おうぜ!! 冥界学園高校の奈々川ユウヤ!!!」

 

 これが男同士の青春ってことでいいのかな?

 今日、プールで偶然にも出会って、互いに因縁を作ることができたのだから。

 今回のデュエルは負けちゃったけど、これでデッキ改造の案とか私のプレイングとかもっともっと磨いて、決闘筋肉高校にリベンジしないと。

 私達はプールがお開きになる5時まで、夕方の景色を眺めながら進路とか学校の話を続いた。

 

「最後に男の友情のあかしとして握手しようぜ」

「いいよ」

「いくぞ!!」

「痛い、痛い、痛い、ギブギブギブギブ!!!」

「お前の手、貧弱すぎ、もっと鍛えたほうがいいよ。このままじゃ女より弱すぎて、雑魚すぎるぞ」

「は、はい……」

 

 実際は女なんだよな……。

 男らしく生きているはずなのに、女より力弱いって言われちゃうとは……。

 これからは『友情 YU-JYO』対策とか、緊急時にすぐに救護に迎えるように、私も決闘筋肉高校みたいとは言わないけど、鍛える必要があるな。

 まあ、気楽に頑張ろうっと。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 そして次の日、決闘筋肉高校は負けた。

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