遊戯王~デュエルキングを目指す少女の物語   作:魔法使い?

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第36話『ぱぱ』

「買い物はこれでよしっと」

 

 Aブロック決勝まで残り2日で、緊張が未だに無くならない微妙な日にち。

 まあ、なんやかんやで大きな大会の決勝トーナメントまで残り僅かである。

 難なく予選突破して優勝まで頑張るぞ。と意気込みを入れて。

 そんなことはさておき、ミカに任されていた買い物のお使いをちゃちゃっと済ませてスーパーの出口から出て歩く。

 軽い買い物なんで、荷物はそこまで重くはないけど、遅く帰るのは心配させちゃうからさくっとお使い終わらせるか。

 

「なんだか懐かしいなー。こうやって買い物するのは」

 

 帰り道の公園を見て、何となく昔を思い出す。

 お母さんとお兄ちゃんと私の3人で手を繋いで買い物帰りに公園で寄り道したっけ。

 お兄ちゃん、滑り台とか鉄棒で遊ぶのが大好きで、何時間も遊んでお母さんを困らせてたなー。

 なかなかお兄ちゃん帰らないから、私とお母さんは砂場で足し算、引き算の勉強をよく教えてくれたんだよね。

 

「まあ、たまには寄り道をするのも悪くはないか」

 

 私は公園のベンチに買い物袋を置いて、隣に座って空の景色をゆっくり眺める。

 たまには余韻にしたってぼーっとするのも悪くはないな。

 公園で親子で砂遊びをする子供たち。元気に追いかけっこをする小学生たち。

 いろんな人間観察をしながら、じっくりと周りを見渡すと私はブランコを小さく揺らしている一人のおじさんを見つけて、目に留まる。

 

「お父さん……?」

 

 あれは間違いなかった。

 ぼさぼさの髪形と髭や途方に暮れている目つきで、とてつもなくわかりにくかったけど。

 私のように特徴的のあるやせた顔付きに、目の下にあるほくろからあれは間違えなくお父さんだった。

 

「ユウヤか……」

「そうだよ。お父さん!!!!」

 

 目と目が会ったので、どうやら私に気が付いたみたい。

 私はお父さんのことを呼ぶと、お父さんが座っているブランコの隣に座る。

 

「お父さんどうしてここに?」

「すまない俺は逃げてきたんだ……」

「え?」

 

 思い出した。お父さんはユウヤお兄ちゃんを殺して牢屋に送られたはずだった。

 それなのに、どうしてこんなところにお父さんはいるのか私にはわからなかった。

 

「俺は逃げ出したんだ……。俺は嫌だったんだ……。狭い牢獄で毎日、毎日、生活している自分の人生がわけわからなくなってな……。自分が生きているって感じがしなかった……。だから、俺は怖くなって逃げ出してしまったんだ……」

「逃げたの……? どうして……。それって、脱獄じゃん。犯罪なんだよ!」

「ゆるしてくれよ……。ユウヤ……。俺は仕方がなかったんだ……」

「あと、私はユウヤじゃない!! ナナだよ!! 親なんでしょ。どうして名前を間違えるの!!」

 

 私は脱獄をしたことより、実の親の癖に自分の子供の名前を間違えることがゆるせなかった。

 男装してわかりずらいってこともあるんだろうけど、今から数週間前にお母さんと私はあった時は、名前で呼んでくれた。

 それなのに……。自分の都合のいいようにするなんて。

 

「ナナか……。男っぽい服装してたからわからなかったよ。何でそんな恰好をしているんだい? 今の女子はそういうファッションが流行っているのかい?」

「何でって……。どうでもいいように気楽に言って……!!! 私はお父さんが殺したお兄ちゃんの夢だったデュエルキングになる為にこの格好をしているんだよ!! そんな恰好って言わないでよ!!」

 

 今まで、たとえどんな理不尽なことを言われようが、デュエルで追い詰められることがあっても冷静に対処して感情になることはなかった。

 でも、お母さんと一緒に暮らしていた昔と同様に、子供のことは適当にやり過ごす。

 こんな適当なお父さんは、許せなかったんだ。

 

「ははは。笑っちゃうねー。デュエルキング? あの、世界最強とも言われたお母さんが慣れなかったのに、お父さんの血がつながっているお前が慣れるわけないだろ」

「………」

 

 馬鹿にされて我慢できずに、かっとなってそのままビンタをしようと思ったが、お父さんは少しだけ目を描く動作をしたのでやめた。

 その動作の後、暗い顔をしながら何かを話してくれた。

 

「……お父さんとお母さんの出会いって聞いたことないだろ。話してやるよ」

「うん」

 

 前に英雄騎士高校に遠出したときにも、出会いについてお母さんは話してくれたけど、どうやらお父さんも話をしてくれるみたいなので、

 私は知らないふりをしてもう一度聞いてみることにした。

 

「お父さんの昔はな。お母さんとは反対でデュエルの腕は恥ずかしながら中よりちょっと下くらいの腕っぱしだったんだよ」

 

 それは前から知っていることだ。お兄ちゃんがデュエルが弱いのはお父さん似だってことはわかっている。

 

「それなのにさ、子供のころに見たデュエルキングが憧れちゃってねーー。とてつもない声援と応援と、歓迎の嵐から登場するデュエルキング……。それに俺は憧れてプロデュエリストを目指したんだ」

「お母さんと同じ……」

「ああそうさ。でも、成績は駄目だったね。対してデュエルは強くないのに、連続で負けまくっていろんな人から伐倒の嵐さ。ほんとひどかったねー」

「………」

「もう負けまくってあらゆる人からデュエルやめろとか言われたねえー。そんな時にお母さんと出会った」

 

 ここまでの話はお母さんが話をしてくれた時と全く同じだ。

 

「俺は、許せなかったんだ。俺とは反対に、超最強の美人デュエリストとテレビや雑誌で注目され、連続連勝記録をたたき出して周囲から浮かれていた存在が!」

「え?」

「ある日、お母さんとデュエルマッチが決まったさ。もちろんデュエルの流れはお母さんの圧勝だった。そんな時、俺はイカサマをしたんだ……」

「ウソでしょ……。そんなことあるわけ……」

 

 お母さんが話をしてくれたのは、お父さんは、奇跡のディステニードローで逆転したって聞いたはずなのに。

 それなのにどうして……?

 

「時期デュエルキングとか言われてたお母さんは最弱の俺に負けたわけだから、このあとすごい仕打ちを受けたんだ……。俺はそんなするつもりはなかったのに……」

「さいてい……」

「ああ最低さ。この後、俺はお母さんに惚れてしまってさー。しつこいほどお母さんに好意を寄せて貰おうと、しつこく追い掛け回したんだよね……。ちょうど周りからの嫌がらせを受けていたからさ、俺はそれを助けるヒーローになった。俺みたいな平凡なデュエリストがあんな美人に生涯付き合えるはずなんてないからああするしかなかったのさ」

「全部嘘だったのね……。お母さんは奇跡的な出会いとか運命の人とか思っていたはずなのに……。それなのにどうして」

「お母さんから聞いていたのか……。でも、こうしてお母さんと結婚したから、今こうしてお前はここにいるのじゃないのか?」

 

 こんな無理やりのような形で付き合うことになったのに、お母さんはいい話に持っていこうと私に話をしていたなんて……。

 それなのに、お父さんは全部本当のことを話して台無しにした……。

 

「俺は人殺しだ。ずっと今まで、牢獄の中でナナを殺していたと思ってたが、ユウヤを殺していたんだな。子供の名前も間違える親なんて屑当然だよ」

「でも、こうして私と話してくれるってことは、子供のことを心配しているんでしょ」

「……。当たり前だ!! 子供のことを心配しない親なんていない……」

「お父さんは屑っていうのはわかってる……。でも、お父さんは私と血はつながってるんだよ。離れていたってこの関係はなくなることはない!!」

「つながっているか……」

 

 お父さんは死んではいない。だからお父さんは生きている限り牢獄で離れていようと、こうして、私との親子関係は何があったとしても切れることはない。

 

「だから自首してよ……」

「それはできないな。もうこれ以上あのつまらない牢獄で暮らすのはごめんだ。ナナ、今どこで暮らしているんだ? お母さんと一緒か? だったら、俺はお母さんに謝って関係を取り戻す。お母さんだったら警察から俺をかくまってくれるだろうしな」

「ほんと最低……。さっさと自首しなさいよ」

 

 少しでも改善の余地があると思っていた私は馬鹿だった。

 やっぱり屑は屑。少しも反省の色はないみたいで、どこまでも私達家族を馬鹿にするんだ。

 

『見つけたぞ!!!』

 

 大人の声が聞こえると一斉に、背広タイプの制服を着た警察官が一斉に私の周りを囲む。

 どうやら脱獄をしたお父さんを捕まえようと円になっているんだ、ということがこの騒ぎでわかった。

 

「ちっ。セキュリティのデュエルチェイサー」

「近所からの通報があったんでな」

 

 いわゆる犯罪者達からの身を守るために街の治安維持を管轄する、警察みたいなもの。

 その人達が、ここにやってきたのだから、頑張って逃げようとするお父さんはもう終わりだと思った。

 

「く、くるな……。こいつがどうなってもいいのか……?」

「お、お父さん……?」

 

 実の娘である私に、どこで用意したのかわからないけど、カッターのような刃物を私に向けてセキュリティに脅しをかける。

 

「高校生を人質に取ろうとするとはな。汚いぞ。奈々川ユウジ!!」

 

 人質を取られながら、お父さんは子供より、自分のことしか考えていないと考える。

 だから、家庭環境が壊されたと思うと、私は悲しくなり、涙をこぼしそうになってしまう。

 

「ナナ!! デュエルディスクをよこしやがれ!!!」

「きゃっ……」

 

 私を振り落とし、リュックの中に隠し持っていたデュエルディスクをガサツに奪い去る。

 そしてデュエルディスクから私のデッキを抜き出して、ポイっと空中に投げつけた。

 投げつけられたデッキは砂の上へと散らばっていく。

 

「お兄ちゃんのデッキが……」

 

 ユウヤお兄ちゃんの形見のデッキが見るも部様になっているのにもお構いなしに、お父さんはポケットから自分のデッキを取り出した。

 逮捕された時に、デッキは没収されると思っていたけど、こうして持っているっていうことは、何らかで取り返したのだろうか。

 お父さんの意識は別の方へ行ったので、私はその間に落ちたデッキを拾おうとする。

 

「ほうデュエルするとはな……。だったら、デュエルチェイサー090の雪平マナツが相手をして差し上げよう。デュエルで貴様を拘束してやる!」

「さて、外に出て久しぶりのデュエルだが、まあ楽勝だろう」

 

 たくさんの警察の中から、一番落ち着いた雰囲気の人がお父さんの前へと現れる。

 おそらく、この中で一番お偉いさんっていうことなんだろうか。

 

「「デュエル!!!」」

 

 

「俺から行かせてもらうぞ。ドロー。手札から『切り込み隊長』を召喚。その効果により、手札からもう1枚の『切り込み隊長』を特殊召喚する!! カードを3枚セットしてターンエンド」

 

 長い剣を持ち、赤いマントを覆った武装した戦士が2体セキュリティの前に出現した。

 大半のカードにもイラストが乗ってる戦士族の代名詞たるモンスターと言ってもいいこのカード。

 しかもカードをガン伏せか……。セキュリティらしく守りが堅いともいえる。

 

「俺はこれでターンエンドだ」

「俺のターン……!! ドロー」

「この瞬間永続罠。『魔封じの芳香』このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、お互いに魔法カードはセットしなければ発動できず、セットしたプレイヤーから見て次の自分ターンが来るまで発動できない!!!」

「ガチガチのロックカードかよ……。さすが汚い手を打ちやがるぜ」

 

 一度セットして次のターンに回らないといけないので、魔法カードの発動を1ターン遅らせるテンポアドをとれるのが強みのカード。

 

「ならば、モンスターで突破するまでだ! 俺は『聖騎士の三兄弟』を通常召喚する!! このカードが召喚に成功した時、手札から聖騎士モンスターを2体まで特殊召喚できる! 来い! 『聖騎士ベディヴィエール』『聖騎士ボールス』」

 

 お父さんの場に攻撃力1200、1600、1700と打点の戦士族モンスターが続々と場に現れた。

 

「ほう。大量展開か」

「この瞬間、『聖騎士ベディヴィエール』のモンスター効果だ! このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。デッキから「聖剣」装備魔法カード1枚を墓地へ送る効果を使用する!」

「永続罠。『デモンズ・チェーン』! その効果を無効だ」

 

 落ち着いた感じで罠の発動を狙っていく、雪平警察。ガチガチの罠カードで相手の動きを止めてじわじわ削るタイプのデッキなのか。

 

「これで、お前はこのターン何もできないようだな。この布陣の前では。『切り込み隊長』は他の戦士族の攻撃を封じ込める効果を持っている。2体いることで互いを補い、2体は攻撃できなくなるんだよ」

「ああ、そうだよ。俺のデッキは装備魔法を軸として動くデッキだ。こんなにガチガチにロックされては何もできない。俺はカードを2枚セットしてターンエンド」

 

 果たしてこの中に罠カードは何枚あるんだろうか。

 聖騎士デッキは装備魔法を中心で動くデッキだ。それを封じ込まれているってことは魔法カードが大半を示すと思う。

 

「俺のターンドローだ!! 俺はフィールド上の『切り込み隊長』を手札に戻し、『A・ジェネクス・バードマン』を特殊召喚!! さらに『切り込み隊長』を通常召喚し、手札の『ソード・マスター』を通常召喚だ!!」

 

 これでレベル3のモンスターが4体……。チューナーモンスターが混じっているってことは間違いなく、シンクロ召喚を狙うのか。

 

「俺はレベル3の『切り込み隊長』にレベル3の『A・ジェネクス・バードマン』をチューニング!! 来い! 『ゴヨウ・プレデター』!! 」

 

 モンスターを縛るための長い紐に巻きつけられた十手を持った歌舞伎のモンスターが私達の前へと現れる。

 

「これだけで終わりじゃないぞ。さらにレベル3の『切り込み隊長』にレベル3の『ソード・マスター』をチューニング!! シンクロ召喚!! 『ゴヨウ・ガーディアン』!!」

「レベル6で攻撃力2800だって? インチキもいい加減にしろよ!!」

 

 聞いたことがある。デュエルチェイサーズ所属の為か、セキュリティで支給されている中でも強力なカードを使用しているって。

 ステータスも普通よりも高めに設定されているってことは、能力もきっと強力な効果を持っているはず。

 

「バトルフェイズだ!! 『ゴヨウ・プレデター』! 『ゴヨウ・ガーディアン』で『聖騎士ベディヴィエール』『聖騎士ボールス』それぞれに攻撃!!」

「ぐあぁあああ」

 

 お父さん LP4000→2100

 

 十手に巻きつけられた聖騎士達は一斉にワイヤーに絡まれていく。

 

「さらに、『ゴヨウ・プレデター』は戦闘で破壊したモンスターを攻撃表示で特殊召喚できる。だが、この効果で特殊召喚した場合、与えるダメージは半分になるがな。それと『ゴヨウ・ガーディアン』も特戦闘破壊したモンスターを守備表示で特殊召喚する効果も持っている」

「そんな……。ばかげた話があってたまるか」

「それがあるんだよ。『聖騎士ボールス』で『聖騎士の三兄弟』に攻撃!! 食らえ!!」

 

 お父さん LP2100→1850

 

 あっという間にお父さんの場ががら空きなんて……。

 それにセキュリティの雪平さんの場はお父さんから奪ったモンスター含めて4体の場に……。

 だからさっきの前のターンに、お父さんがモンスターを展開した後に、奪う目的で『デモンズ・チェーン』を使ったんだ……。

 

「メインフェイズ2に入る。俺は奪った『聖騎士ベディヴィエール』『聖騎士ボールス』でオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚!! 来い!『H-C ガーンデーヴァ』!!」

「そのカードは確か、戦士族縛りのあるエクシーズモンスター……。俺から奪ったモンスターをうまく使いやがって……」

「ご名答。ありがたく頂いたよ。俺はこれでターンエンド」

「俺はこんなところで捕まるわけにはいかない……。俺のターンドロー…!!」

 

 デュエルに負けまいと必死になるお父さん。

 ここまで追い込まれているのに、まだあきらめない精神があるとは。それほど牢獄行きが嫌なのだろうか。

 

「俺は『聖騎士モルドレッド』を加えて召喚!! さらにセットされてあった『聖剣ガラティーン』を『モルドレッド』に装備する!!」

「ほう。これが前のターンにやりたかったことか」

「これで準備は整った。装備カードを装備してある『モルドレッド』は効果が発動できる!! 1ターンに1度、自分フィールド上にこのカード以外のモンスターが存在しない場合に発動できる。デッキから「聖騎士モルドレッド」以外の聖騎士と名のついたモンスター1体を表側守備表示で特殊召喚し、自分フィールド上の装備魔法カード1枚を選んで破壊する!! 『聖剣ガラティーン』を破壊し、来い!! 『魔聖騎士ランスロット』!!」

「レベル5のモンスターか……。『H-C ガーンデーヴァ』は1ターンに1度、相手のレベル4以下の特殊召喚を止める効果があるが、これではできない……」

「『聖剣ガラティーン』は破壊されたとき、1ターンに1度だけ、装備し直すことができる。再び『魔聖騎士ランスロット』に装備して、攻撃力1000アップ!! そしてセットせれてあった『天命の聖剣』も装備」

 

 ランスロットに装備して、攻撃力3000まで伸びることになった。

 牢獄で久しぶりにデュエルのはずなのに、慣れたような手つきだったからきっと、プレイングは覚えているんだろうか。

 

「バトルだ!! 『魔聖騎士ランスロット』で『H-C ガーンデーヴァ』に攻撃!!」

 

 雪平 LP4000→3200

 

「メインフェイズ2に入る。『魔聖騎士ランスロット』をリリースしてデッキから『聖剣 EX-カリバーン』を手札に加える。そして手札の『聖騎士ガウェイン』は自分フィールド上に光属性の通常モンスターが存在する場合、このカードは手札から表側守備表示で特殊召喚できる」

 

 邪魔だった『H-C ガーンデーヴァ』がいなくなったことで、レベル4のモンスターが特殊召喚できるように。

 『聖騎士モルドレッド』は今は装備魔法が装備されてはないので、通常モンスター扱いだ。

 おそらくお父さんはメイン2でフィールドを固めるつもりだろうか。

 

「そしてレベル4の『聖騎士モルドレッド』にレベル4の『聖騎士ガウェイン』でエクシーズ召喚!! 来い! 『聖騎士王アルトリウス』!!!」

 

 戦場の為に、自分の体重の何倍もあろう鎧と剣を身にまとった聖騎士。

 その英雄のモンスターを使っている姿を見るとお父さんのプロデュエリストだったころを思い出す気がした。

 

「このカードがエクシーズ召喚に成功したとき、墓地の聖剣装備魔法をこのカードに3枚で装備することができる! 『聖剣ガラティーン』『天命の聖剣』を装備!! さらにこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除いてこのカードに装備されたカード1枚に付き魔法罠カードを破壊する!! 俺は『魔封じの芳香』とお前のそのセットカードを破壊だ!!」

「俺が破壊されたのは『ミラクルシンクロフュージョン』。セットされたこのカードが相手のカードの効果によって破壊され墓地へ送られた時、自分はデッキからカードを1枚ドローする」 

 

 今までお父さんを苦しめていた『魔封じの芳香』がなくなったことにより、これで本来の聖騎士デッキの動きができるようになった。

 理想的な動きで、これでセキュリティを倒すことができるのかもしれない。

 

「そして手札の『聖剣 EX-カリバーン』を『聖騎士王アルトリウス』に装備!!」

「俺のターン!」

 

 

 

 

 

お父さん

LP:1850

手札:0枚

場 :モンスター

   聖騎士王アルトリウス

   魔法・罠

   聖剣ガラティーン

   天命の聖剣

   聖剣 EX-カリバーン

雪平

LP:3200

手札:0→1→2枚

場 :モンスター

   ゴヨウ・ガーディアン

   ゴヨウ・プレデター

   魔法・罠

   なし

 

 

 

 

 

「『聖剣ガラティーン』。装備モンスターの攻撃力を1000上げる効果。これで『聖騎士王アルトリウス』は攻撃力3200となった。そして『天命の聖剣』。装備モンスターは1ターンに1度だけ、戦闘及びカードの効果では破壊されない。『聖剣 EX-カリバーン』。装備モンスターは相手の効果の対象にならない」

「ほう。これでガチガチに守りを固めたつもりなんですか」

 

 お父さんの強気の状況説明をも、もろともしない雪平さん。

 フィールドの状況はどちらが有利と聞いても、これははっきりしないと思う。

 

「俺はチューナーモンスター『ジュッテ・ナイト』を召喚。レベル6の『ゴヨウ・ガーディアン』にそのままチューニング。シンクロ召喚!! 『ゴヨウ・キング』!!」

「またゴヨウモンスターだと……!! でも攻撃力は2800しかないじゃないか。これでは俺の『聖騎士王アルトリウス』は倒せないぞ!!」

「ほう。だったらこれならどうです? 『ミラクルシンクロフュージョン』を発動。自分のフィールド上・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから除外し、シンクロモンスターを融合素材とするその融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。『ゴヨウ・ガーディアン』『ゴヨウ・プレデター』で融合!! 来なさい。『ゴヨウ・エンペラー』」

「そんな……。さっき破壊したのに、もう1枚引いたのか……」

 

 フィールドに2体のゴヨウモンスターがフィールドを覆い尽くす。

 この光景は、デュエル外でも犯罪者を逮捕すると言っているのと、同じような解釈で間違いはない。

 

「バトルといこうか。『ゴヨウ・キング』で『聖騎士王アルトリウス』に攻撃! このカードはダメージステップ終了時まで、自分フィールドの戦士族・地属性のシンクロモンスターの数×400アップする。よって攻撃力は同じ3200」

「相打ち狙いか……だが、戦闘破壊ではされない」

「これは囮ですよ。本名はこっち。『ゴヨウ・エンペラー』で『聖騎士王アルトリウス』に攻撃!!」

 

 お父さん LP1850→1750

 

「だが、『神聖騎士王アルトリウス』はフィールドから墓地へ送られた場合、自分の墓地のレベル4以上の「聖騎士」モンスター1体を特殊召喚できる効果がある。蘇れ!『聖騎士モルドレッド』!!」

 

 守備表示で壁を作るお父さん。だけど、こんなにフィールドを荒らされてしまって、それでも残るのはたかが1700のモンスターだけ。

 

「もちろん『ゴヨウ・エンペラー』は破壊したモンスターを奪う効果を持っているさ。『神聖騎士王アルトリウス』のコントロールを得る。そして残ったその『聖騎士モルドレッド』も破壊して差し上げよう」

「ぐっ……。だが、俺のライフは残った。次のターンで。必ず逆転してみせる」

「いや、そいつは無理な話だ。『ゴヨウ・エンペラー』は奪ったモンスターでも戦闘破壊した場合、コントロールを奪うことができるんだよ。『聖騎士モルドレッド』俺の場に来い! そして残りのライフを削れ」

「うわああああ」

 

 お父さん LP1750→50

 

 

「俺はこれでターンエンド」

「ぜえぜえ……」

 

 何とかライフは残ったとはいえ、お父さんの場、手札は0だ。

 それに加えてセキュリティはゴヨウモンスター達と、奪った聖騎士モンスターが多数。この状況、逆転できるのはとてつもなく無理がある。

 

「だが、俺は諦めない……。後ろに娘が見ているからな……」

「お父さん……!?」

 

 こんなにボロボロにされているのに、私のことを気に掛けているのか……。ずっと自分のことを考えている人だと思っていたのに。

 

「ヒントをやろう。『ゴヨウ・エンペラー』は破壊されたら、奪ったお前の全てのモンスターのコントロールは、戻からな。こいつを優先で破壊したらまだ逆転のチャンスはあるぞ」

「破壊できたらか……」

 

 何で、敵にヒントをやるのかと思ったけど、余裕を与えてさらに絶望を与えようというのか。でも、お父さんは……。

 

「見てろよ……。ナナ……。最後まであきらめない姿を……」

「お父さん……?」

「お前の母親も同じだった。どんなに追い込まれようとも、最後まで決してデュエルは諦めるってことはなかった。そして最後は必ず逆転した。そんなカッコいい姿に俺は惚れてしまったんだ……」

「お母さん……?」

「だから、俺も最後まで、あきらめない……!! こんなときにこんなこと言うなんて、頭おかしいとか言われると思われるけどな……。だが、俺は引く。俺の、たぁあああああああああああああああん!!!」

 

 私は聞いたこともないお父さんの力強い大声と共に、勢いよくデッキからカードを引き抜く。

 そして引いたカードを確認すると、考えるふぶりも見せずにすぐに使用した。

 

「これが俺の最後のカードだ。『ソウル・チャージ』を発動!! 墓地からモンスターを可能な限り特殊召喚する!! 現れろ『聖騎士の三兄弟』『聖騎士ベディヴィエール』『聖騎士ボールス』『聖騎士ガウェイン』『魔聖騎士ランスロット』!!!」

 

 このデュエルで使われた聖騎士モンスターがお父さんの前のフィールドに埋まっていく。

 私は、この光景を思い出す……。お母さんも私とデュエルをしたとき最後のドローで『ソウル・チャージ』を使用した。

 どうして私は涙が止まらないんだろう。何で、お母さんとお父さんが合わさって見えるんだろう……?

 

「『ソウル・チャージ』の効果だ。この効果で特殊召喚したカード1枚に付き1000ポイントのダメージを受ける!! ただでは死なない。俺の散りゆく姿を見ろナナ!!!」

 

 お父さん LP50→0

 

 デュエルで負けてしまったお父さんを見ながら、私は私服で止まらない涙と鼻水を拭きながら、じっと見つめる。

 相手の圧倒で勝てなかったのに、心を動かされるのはどうして……?

 

「俺の負けだ。好きにしろ……」

 

 負けを認め、すべてを諦めたかのように、発言をするお父さん。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 デュエルで負けたお父さんはセキュリティに囲まれてあっという間に手錠を掛けられてしまった。

 それでもお父さんはデュエル前で見せた、抵抗をするっていうことは全くなかった。

 私も雪平さんに保護され、何とか荒れた状況はなくなった。

 

「一発殴らせろ!!!」

「っ!?」

 

 私の意思とは関係なしに、体が勝手に動いて、お父さんの顔を思いっきり殴った。

 

「ユウヤか……」

「ああそうだよ。お前に殺されたユウヤだよ。今は、ナナの体を使ってお前に会いに来た」

 

 どうやらユウヤお兄ちゃんが私の体を勝手に奪って使っているみたい。

 言葉も私の意思ではなく、お兄ちゃんが話しているようだったので。

 

「俺を呪いにきたのか」

「いや、親父は俺を殺してはいない。俺は親父に暴力されて殺されかけたのは事実だけどな。まあ、そのあといろんなことに追い込まれて自殺したんだ……」

「そうか……。でも、俺がお前を追い込めたのは変わりはない……。本当にすまなかった……。でもうわぁぁあん……」

 

 衝撃の事実だった。お父さんはお兄ちゃんを殺したと思っていたのに、実際はそれは違っていたのか。

 嫌な過去だったので、私も実際は覚えていないので、被害者であるお兄ちゃんが話をしたのでこれで事件の真相は明らかになった。

 お父さんはこのことを知って、今まで泣いたことを見せたことがないお父さんは、男泣きを見せた。

 

「『ソウルチャージ』。受け取ってくれ……。お父さんがお母さんと出会うきっかけとなったカード……。対して強くないカードだけど、きっと役に立つ気が来るはずだ」

「ありがとう……」

 

 お兄ちゃんはまた、どこかにいなくなり、私の意思に戻り、お父さんからカードを受け取る。

 このカードは禁止カードとはいかないが、使いどころではそれに匹敵するカードでもある。

 お父さんとお母さんのつながりのカードってことは、このカードは私は生涯の宝物になるカードであろう。

 

「すんだか?」

「ああ。もうこれで、思い残すことは何もないないしな。脱獄してすまなかった……」

 

 雪平さんによって連れられるお父さんの後ろ姿を私は見届ける。

 

「また、いつか一緒に暮らせるよね。私、待ってるから」

「ああ」

 

 こうしてお父さんとの別れが終わった。

 またいつか暮らせると思ったのは、私が大人になったら刑期が終わって会えると思ったからだ。

 車の中に連れて立ち去るのを私は、最後まで見送っていった。

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