遊戯王~デュエルキングを目指す少女の物語   作:魔法使い?

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第37話『Aブロック決勝戦先鋒戦』

 ついにここまでやってきた。Aブロック決勝戦。極東高校との戦い。

 私達は極東高校の学校の体育館までやってきてそこで高校甲子園の試合を見ている。

 早速始まる1回戦。今まで私達は全部の試合はストレート勝ちで勝ち進んできた。

 だから、今回も部長とカイザーの力のカードパワーの暴力で圧勝してきたわけだから。

 今日も、難なく突破して2勝できるといいなー。

 

「先攻は俺から行かせてもらう。ドロー!」

 

 まずは先鋒の部長から。

 先攻は極東高校の対戦相手からのようだ。小柄な格好でちょっと猫背で、茶髪にピアスをしていてちょっとだけ怖い人だけど。

 名前は確か、雷王。ライオウさんだっけ? でも、普通にデュエルをしているっぽいから別に怖い不良ってことはなさそうだ。

 

「俺はライフを2000払い。手札から『終焉のカウントダウン』を発動。発動後、20ターン後俺の特殊勝利が確定する」

 

 特殊勝利……。確か同じようなカードでエクゾディアとかウィジャ盤とか存在していたっけ。

 どれも勝利条件がキツイものだった。この人も、その特殊勝利条件を達成する為にデッキを組んでいるのか。

 

「カードを1枚セットしてターンエンド」

「俺のターン行かせてもらおう……」

「『覇者の一括』。このターンのバトルフェイズをなくす」

「俺は『霞の谷のファルコン』を通常召喚……。このままターンエンド」

 

 このターンのバトルフェイズをなくしたことで、ターンをこのまま稼いだわけか。

 これで残りターン18ターン。部長は感情を見せずにそのままターンを渡した。

 

「俺のターン『ゼロ・ガードナー』を召喚してターンエンド」

「俺のターンドロー!」

「この瞬間、『ゼロ・ガードナー』をリリースしてこのターンのダメージは一切ゼロになる」

「ターンエンドだ……」

 

 16ターン経過。

 

「俺のターン!!! カードを1枚セットしてターンエンド」

「俺のターンドロー……」

「この時、『魂の氷結』自分のライフポイントが相手のライフポイントより2000以上少ない時に発動する事ができる!!」

「カードを1枚セットしてバトルフェイズに入る……」

「残念だな、『魂の氷結』の効果により相手の次のバトルフェイズをスキップする」

「ターンエンド……」

「これで、残り、14ターンだぜ……くくく……」

 

 どうやら相手の使用デッキは相手のバトルフェイズを片っ端から封じ込めるカードを片っ端から積んでいると間違いはないだろう。

 これでターンを稼いで『終焉のカウントダウン』の勝利条件を満たすようだな。なんかいやらしい戦法だ……。

 このデュエルすごい時間かかりそうだなと思っているとき、私の隣に座っている宮城が話しかけてきた。

 

 

「なんかすっげーひまだよな。デュエル糞つまんねー」

「まあ、そういう戦法だからしょうがないよ」

「お前このデュエル見てて楽しいか?」

「いや、楽しくはないと思うよ」

 

 まあ、正直言うと感想は誰もそう思うよな。モンスター同士の派手に戦闘を行うのがないからさ。

 そんなやり取りをして、話をしていると、極東高校のある生徒もこっちにやってきて、私のほうへと話しかけてきた。

 

「お前ユウヤだよな……」

「誰?」

「誰って、ボク、笹川ヒロシだよ」

「ヒロシ君か?」

「そうそう。お前冥界学園高校の生徒だったんだな」

「ああ、一応、僕は大将戦に選ばれているから、デュエルすることになってるんだ。でも、先輩たち強すぎて大将戦でなかなかデュエルできないけどね」

「そいつは驚きだ。ボクも極東高校の大将戦に選ばれているんだよ。もしかしたらデュエルするかもしれないな」

 

 短い黒髪に身長が私と同じ160センチくらいの男。

 適当に知っていることにしたけど、私はこの人は全く持って知らない、赤の他人だ。

 おそらく中学生時代のお兄ちゃんの元友達だと思うんだけど、思い出せない。

 

「久しぶりだな。オイ、こんなところで会うなんてな」

「お、おう」

「こんなところで会うなんてなんかの縁だ。ここじゃ、ちょっと話しづらいか。ジュースでも買いにでもいくか」

「うん」

 

 この人……。さり気なく私の肩を触っているセクハラをしているのは気に入らない。

 まあ、私のことユウヤだと思い込んでいるんだから、男同士のスキンシップだと思って、そこは気にしないようにする。

 そして、私達は部長がデュエルをしている体育館から去って行って、極東高校の体育館の外の隣にある自動販売機に移動する。

 

 ヒロシ君は、自動販売機に到着すると1000円札を入れて、ボタンを押そうとする。

 

「久しぶりにあったんだ。ジュースおごってやるよ」

「じゃあ、僕はこれで」

 

 私は一番好きな飲み物であるペットボトルのお茶のボタンを選んで、おごってもらったものをすぐに開けて飲んだ。

 ヒロシ君も同様に、ペットボトルのコーラのボタンを押してすぐに口にした。

 

「はぁーーー。炭酸やっぱうめえぜ。でも、思ったんだが、どうしてお前も炭酸選ばなかったんだ?」

「お茶が一番好きだから……」

「ウソつけよ!! 久しぶりに会うからって遠慮しただろお前。だからって一番安いお茶を選ぶことはねえだろうよ」

「ごめん……」

 

 お兄ちゃんだったら、炭酸を選んでいたのだろうか……。

 ここは私の好みを選ぶんじゃなくてよーく考えておけばよかった気がする。

 

「まあ、久しぶりに会えてうれしいよ……。奈々川家は崩壊したと思ったからさ」

「事情があって離れ離れになっちゃったけど、崩壊はしてないよ。またいつか家族は再開すると思ってるからさ」

 

 やっぱり心配してくれるのか。でも、大丈夫。また再開すると私は願っているのだから。

 

「言いにくいことなんだけど……」

「なんだ……?」

「ボク、お前の妹のナナちゃんのこと……。好きだって前に話をしてたじゃん……」

「……えっ……!?」

 

 衝撃のことをヒロシ君は口にした。

 私は中学時代モテないとか思っていたのに、実際は好きだって思ってくれてた人がいたってこと……?

 男の人に女の私のことを生まれて初めて好きだとか真正面で言われて、思わず照れくさくなってしまう。

 

「そんでさ、お前、ボクのためにナナちゃんのことをいつでも忘れないようにって、いいものくれたじゃん」

「うん……」

「それ、ボクの大事な宝物だったんだよね」

 

 お兄ちゃんいつの間に、私には内緒で何かをヒロシ君に渡していたんだ。

 宝物で、いつでも私のことを思ってくれるってことは写真なのかなっと私は思った。

 

「それ、覚えてないんだけど、何だったの?」

「忘れちまったのかよ。まあ、2年前の話だから無理もないか。毎日弄ってたら黄ばんじまってよー」

「黄ばんだ?」

 

 毎日触って、黄ばむってことはあるのか? 緊張の汗とかなんかでああなっちゃうんだろうなと私は考えた。

 

「この大会終わったらでいいからさ、また、くれないかな?」

「ああいつでもいいよ。っていうか、今でもいいよ」

「まじかよ! はええよ」

 

 写真だったらすぐにでも、私は男装からいつもの女の私に戻っちゃえば、取り直すことができるからな。

 早いも何も、一瞬で終わるからね。

 

「だったら、これはもう使わないから返すね。いつでも見れるように、ボク財布の中に畳んでしまってあるんだ。ちょっと待ってな」

 

 財布の中にしまってるって、結構いいところに大切にしまってあるんだなーと私は思った。

 ヒロシさんはポケットから財布を取りだし、お札入れのところから縞々模様の何かを取り出す。

 それは衝撃な物だった。

 

「あった。ナナちゃんが履いてたっていう縞パンツ。毎日、頭に被って匂い嗅いでたらよぉ、ボクのよだれで黄ばんじゃって……」

「はっ!?」

「また、ナナちゃんの履いていたっていう、パンツくれるんだろ、今度、パンツだけじゃなくてブラジャーもほしいなー」

「あげるわけないだろ!! あと返せ!!」

 

 少しでも期待していた私は馬鹿だったと思った。

 持っていた物、それは私が中学生時代お気に入りで履いていた縞々絵柄のパンツ。

 ある日を栄えに家から急になくなって、どうしたんだろうと思ったら、こうしてまさかの再開を果たす。

 気持ち悪いと思った私は、ヒロシさんの手からパンツを奪い返して、それをすぐに私のリュックの中にしまった。

 これはもう使えないから、あとで捨てようと思った。

 

「なんでだよ……。ボク、ユウヤと親友だよね……。親友の為なら何でもしてくれるって言ったよね」

「あ、あのねえ……」

 

 親友とはいえ、いくらなんでも、妹の物を勝手に盗んで、友達にあげるなんてどうかしている。

 死んでしまったお兄ちゃん、死ぬ前によけいなことをしやがって……。

 

「でも、うれしいと思うよ。ナナの為にこんなに思ってくれるなんてね」

「当たり前じゃないか。ほんとすっごい大好きだったんだからさ」

 

 正直パンツを盗まれて、毎日嗅がれていたなんてあんなことされて、いい思いをする女子はいない。

 引くほど嫌だったけど、ここはユウヤをなりきって、いい話まで演じてみせる。

 

「で、ナナの何処が好きだったの?」

「何って言ったって、リスのように可愛いに尽きる。そのギャップだけでもいいんだけど、困っている人を見かけたらどんな人にも優しくてさ、デュエルも滅茶苦茶強くてさ、あとバスケやってたでしょ。素早い動きで敵を交わす姿を見て、双子のユウヤと違って運動神経抜群ですっげーって思った」

「うん」

「一目ぼれだったなー。ボク、体育の授業のときにさ、ボールを取りに行こうとしたらナナちゃんに渡されたんだけど、直視できなかったよ……」

 

 これを聞いて、純粋に本当に私が好きだったんだなーって伝わってくる。

 でも、私はヒロシ君と出会ったってこと全く覚えていないんだけど、本人は覚えているってことは、小さなことでも記憶に残っているんだね。

 ヒロシ君の好きなだったナナは目の前のここにいるんだけど、ネタバレしちゃうのは男装している意味がなくなっちゃうから、また今度にするか。

 

「「おい。ヒロシ、カレーパン買って来いっていう約束忘れてるんじゃねえだろうな!!」」

 

 思い出に浸っていたこの時間を引き裂くように、誰かが私達に話しかけてきた。

 私のデュエル部の部員のカイザーと堀内先輩と同じくらいの巨大な身長に、ピアスや髪を赤や金色などの派手な色に染めている生徒が多数。

 怖い人達がここにきて、私はビビッているけど、ヒロシ君は慣れているかのように接していった。

 

「忘れてませんよ。先輩。この袋の中にカレーパンは入っていますよ。それと鬼塚先輩の頼みだった焼きそばパンもここにね」

「そうか。サンキュー」

 

 ヒロシ君、あんな怖い連中とつるんでいるのか?

 あの人たちはヒロシ君の先輩だよな……。とてつもなく怖いオーラが漂って嫌な感じが、本能的にするけど。

 

「で、お前がぼこして、ほしいって言っていたやつってどいつだ?」

「どいつって何も、鬼塚先輩。目の前のこいつですよ。ほんと、むかつくやつでさー」

「え……?」

 

 今まで親友の再開とかで、話をしていたはずなのに、私を怖い人達が標的にしている……?

 この行為が全く私には理解できなかった。

 

「食らえ……!!」

「ガハっ……」

 

 突如、金髪の男に腹パンをされて、強い痛みの中、私はそのまま意識を失った。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 あれから私はどのくらい意識を失ったんだろう……。

 真っ黒の視界から突如目を覚まして、私は自分の置かれている状況を確認する。

 マットやら、跳び箱やらがそこらじゅうにおいてあるようで、どうやら倉庫のような場所に私は閉じ込められた。

 おそらく高校デュエル甲子園の試合が行われているアナウンスが聞こえたので、試合会場の体育館からは離れてはいないだろう。

 

「え?……」

 

 ガタイのいい男達が、第2ボタンまで開けたり制服を雑に来ていていわゆる不良達っていうのが、私を見ている。

 私はお腹の痛みもあるが、その光景の恐怖のあまり、倒れているままそのまま動けない。

 

「やあ、気分はどうだ?」

「ヒロシ君!?」

 

 さっきまで、仲良く恋話をしていたはずのヒロシ君が、どうしてあっち側にいるのかは私にはわからなかった。

 

「僕たち、親友だよね?」

「親友……? 何寝ぼけたこと言ってんだよ。ボクがお前の親友のあるわけねえだろ。ボケナス」

「えっ……」

 

 寝返られるこの光景に、私には理解ができない。ヒロシ君はユウヤお兄ちゃんと親友だったってさっきまで仲良くやっていたのに。

 それなのにどうして……?

 

「ボクはお前のことが昔から気に入らなかったんだよ。同じパシリの癖にさ」

「パシリ……?」

「覚えているだろ。お前も。デュエルが貧弱だったボクとお前は中学生時代からずっと先輩のパシリだったんだよ。先輩たちの犬だったんだよ。覚えてねえのかよ」

「そんな……」

 

 もちろん私の記憶ではない。

 でも、お兄ちゃんはパシリとして中学校時代、いじめられていたのだとしたら、これは本当の事実。

 

「ボクはお前が気に入らなかった。ボクらは水をぶっかけられ、かけなしのおこずかいを全部奪われ、リンチで顔面ぼこぼこになっていたんだ。それなのに、どんなに先輩に暴力をされようが、お前はずっとヘラヘラしていた。妹の為に俺は犠牲になるとか恰好つけてさ。ボクが好きだった人の為に恰好つけるなんて、ゆるせなかったんだ」

 

 私の為に犠牲になっていた……。そんな残酷な中学生時代だったのか、お兄ちゃんは……。

 

「お前はな、妹に手を出さないようにって必死で犠牲になるように恰好つけやがって……。毎日ナナちゃんと何もなかったかのように接していた。そいつがボクは……。だから今からボクはお前をもっと残酷な目に会わせてやるんだ」

「そんなのナナは望んでいない……。目を覚ましてよ!! 暴力で解決なんて、そんなの間違ってる」

 

 これから、私はあの集団の不良達の暴力にやられる……。そんなの女の私が耐えられるはずはない。

 恐ろしいどころではない、怖さから、私はそれでもなお、逃げようとできない。

 

「鬼塚先輩やっちゃってくださいよ。こいつの泣き顔見たことがないからさ」

「へいへいヒロシ君。まじめ君なのに、ひどいことを言うんだね。でも、お金をくれるならやっちゃうよーーー」

 

 鬼塚という一番髪形とか服装で目立っている不良は、この中で一番のボスなんだろうか。

 私を背にして制服を急に脱ぐ出して自分の肌があらわになる。

 背中なんだあれ……。蛇の形をした3つ首を胴体につながっているドラゴン。

 あれはデュエルモンスターズのカードでもある『ヴェルズ・ウロボロス』が背中に描かれている。

 刺青……。

 

「いや……」

 

 刺青とはたしか、刃物・骨片などで皮膚に傷をつけ、その傷に墨汁・朱・酸化鉄などの色素を入れ着色し、文様・文字・絵柄などを描くものだと聞いたことがある。

 その描かれている者の恐ろしさに、私はより恐怖心が増えてまた、動けなくなってしまう。

 

「こいつ俺のタトゥーで超ビビってんじゃねえかよ。うっけるー」

「あ、あぁあ……」

「さて、どんないじめをしようかねーー。びびりちゃん」

 

 私の胸倉をつかんで、宙へと浮かされ私の視線は、顔中傷だらけでスキンヘッドの世にも怖い男の顔が目の前へと出てくる。

 

「しっかしこいつ女みたいな綺麗な顔してんなー」

「鬼塚さん、そいつ昔からそんな顔してんっすよ。性格も女っぽいしさー。双子の妹と同じ顔でほんと腹立ちますぜ」

 

 女みたいなんかじゃない……。私は本物の女なんだよ。

 男の人はやっぱり怖い……。この時、男嫌いの清水さんが前に言ってたように、力ずくで物事を解決するっていうのはわかった気がした。

 

「根性焼きでもしようかね」

「……?」

「焼印だよ。焼印」

「やきいん……?」

「そんなのもわからねえのかよ。この男、女。今から、お前のからだにタバコの吸い殻を当ててやるって話さ」

 

 タバコって未成年は吸っちゃだめで、高校生の一般の話題ではタバコなんて言葉は一切でないはずなのに。

 そうか、不良の間ではタバコは持っているんだ。

 焼印ってことは、たばこをつけたまま、私に当てられるってこと?

 

「おい。ヒロシ! タバコ用意しろよ」

「はいはい」

 

 ヒロシ君は言われるがまに、鬼塚さんのズボンからタバコの箱とライターを取り出して、タバコを1本鬼塚さんの口にくわえさせ、ライターをつけた。

 

「ぷはーー」

「げほげほ……」

 

 タバコを吸うと、私の顔に煙を吐かれた。

 不良がタバコを持っている恐怖でも、耐えがたいことなのに、煙の煙たさから私はむせて咳をする。

 

「さて、男女さんの制服を脱がして、こいつの体に焼印をいっぱいつけてやるよ」

「いや……」

 

 そういうと鬼塚さんの子分らしき人が2人ほど、私の体を無理やり起き上がりさせて、押さえつけられる。

 そして鬼塚さんは私の学ランを簡単にまずは脱がせる。そのあと、私のワイシャツに手をかけた。

 

「や、やだ……」

「もっと押さえつけろ」

「あっ……」

 

 必死に脱がされまいと抵抗をしたが、逃げようとしても、無駄だった。

 とうとう私のワイシャツははがれてしまう。

 

「ははは。こいつ体中に包帯巻いてるぜ。怪我でもしてんのか……」

「かぁ……」

 

 それは怪我なんかじゃない……。

 私が女だとばれないように男装する際に、毎日膨らんだ胸を潰す為に巻いているサラシだ。

 こんなところでそれを男の人に見せるなんて……。

 しかも、この人達これも脱がそうとしようとする。

 焼印をされる危機とはともかくこのままでは、私の胸がこいつらに見られてしまう。それだけは……。

 

「おもしろいことを考えちゃいました。こいつの傷跡にいっぱい焼印してくださいよ。鬼塚先輩」

「すっげー残酷なことを考えるなーヒロシ。まあ、やってやるよ」

 

 ヒロシさんが、よりひどいことを考えると鬼塚さんの大きな手で再び私のことを脱がそうとする。

 だが、私はこれ以上脱がされるのは、死んでも嫌だったので、最後の力を振り絞ってかなり抵抗した。

 

「がはっ」

「あっ」

 

 抵抗に必死なあまり、頭突きを鬼塚さんに私は食らわせてしまったのだ。

 鬼塚さんは、顔を押さえながら、痛みをこらえている。

 

「てめえええええ!!!」

「きゃぁああああああああ」

 

 鬼塚さんはそのことに切れてしまったのか、私の顔面を力いっぱいに殴られた。

 私は今まで、逃げれば何とかなるとか思っていたけど、この行動で目を覚ました。

 鼻から私は血を流している。これは鼻血ではなく流血……。

 

「てめえ、これ以上抵抗するとぶっ殺すぞ!!!」

 

 今の一撃でこれ以上私は力を出せないと理解した。抵抗したら、もっと私はひどい目にあうと、そう理解した。

 動けない私を前に、鬼塚さんにサラシをクルクルと少しずつ解き放たれていく。

 そして私の胸が見えるギリギリのところくらいで、サラシの巻きはとまった。

 

「こいつの肌すっげー綺麗だな。それに膨らんだおっぱいあんぞ。女……? いやそんなわけないか」

「こいつ双子のナナちゃんに似てるけど、それはないですよ先輩」

「そうだよなー。女だったら今頃こいつ犯してるわ。ひゃははははは」

 

 私は鬼塚さんにサラシの上から胸を両手で揉まれている。何度も何度も、その柔らかさで遊んでいるようにも思えた。

 女だと隠し続けるのは、これ以上は無理のような気がした。だって、怖くて私は動けないんだもん。

 

 

 

 これは何かの罰だったのかな……。

 男装をしていろんな人をだまして学校生活を通っているっていう罰。

 いつかばれると思っていたけど、1年もたたずにしてこんなにあっさり女だとばれてしまうなんてね。

 体中どこもかしこも痛いし、殴られるとか不良とかタバコとか女とばれるとかいろんな恐怖心で怖くて私は体が動けないや。

 もう私は死んだも当然。これから何をされようとも、私は受け入れるしかない。

 

 

 

『鬼塚ぁああああああああああああ!!!』

 

 扉をめい一杯蹴り起こす音とともに、怒鳴り声が聞こえる。

 この声はどこかで聞き覚えがある声だった。それは高身長に私と同じ冥界学園高校の制服を着ている………。

 

「高校デュエル甲子園でデュエルする前に俺様の後輩をずいぶんと虐めてくれたようだな」

「カイザー……?」

 

 先輩のカイザーが助けに来てくれた……。これは夢なのか……。

 自分勝手で私のことをすごく気に入らないとか言っていたはずなのに、私のためにここに来てくれるなんてあり得る話なのか。

 

「なかざとぉお。どうしてここがわかったんだ?」

「てめえの最近、黒いうわさがあったんでな。甲子園の予選でデュエルする前に生徒を叩き潰すって話をな」

 

 鬼塚さんとカイザーは知り合いなのか……。

 すぐに暴力になるところからなんだか2人は似ているような気がするし、不良同士の昔からの付き合いなんだろうか。

 

「中里を潰せ!!」

 

 鬼塚さんが、自分の子分たちに言うと、6人の不良が一斉にカイザーに襲い掛かる。

 だが、しかしカイザーはそれを華麗にかわし続け、6人の不良を蹴る、殴るなどの暴力であっという間につぶした。

 カイザーは部活動では変な人とかずっと思っていたのに、この時だけはすごく頼もしかった。

 

「雑魚が何体も束になっても無駄なんだよ。雑魚が」

 

 残る不良は鬼塚さんとヒロシ君だけになった、この倉庫。

 カイザーの強さを鬼塚さんに見せつけてもそれでもなお、落ち着いた雰囲気で立っている。

 

「ほう、やっぱり中里は強いな。だが、そいつはどうかな…」

「ぐあぁああぁああああああああ」

 

 カイザーはいきなり地面に膝をついて急に倒れ始めた。

 背中から赤いのが大量に流れている……。これは血であるっていうのは誰でもわかるのは当然。

 

「てめぇ……」

「包丁ぶっ刺されてお前はこれからどうするか」

「いてぇええええ。俺様が一番のエースなのに、これじゃあデュエルできねえだろぉおお!!」

「さあ、 これで、中里はデュエルはできないなー。エースかっこ笑いなお前がいなくなって、冥界学園高校はさてどうする?」

 

 カイザーにやられていたはずの鬼塚さんの部下が、刃物をカイザーの横腹に刺して、そのまま刃物を抜いた。

 これが一番の目的だったのか……。私を潰すのが目的ではなくて、カイザーを潰すのが本当の狙い……。

 

「「鬼塚さん。今さっき、デュエル終わりました!!」」

 

 カイザーに続いて、倉庫からまた小柄で猫背で、茶髪にピアスの男が現れる。

 確かこの人って先鋒で部長と『終焉のカウントダウン』を使ってデュエルをした人。

 

「いやーー。鬼塚さんの命令苦労しましたよ。ずっとひたすら攻撃を抑制するカード発動しまくって遅延しましたからね。負け確なのに長考しまくって時間稼ぎしまくりましたから」

「ご苦労さん」

 

 負けるとわかって、時間稼ぎだって……。

 だから、私とカイザーを痛めつけるために今までデュエルを遅延して時間を作っていたんだと言われて納得する。

 

「でも、負けてしまったんですけど、これで大丈夫なんですか?」

「ああ、冥界学園の部長は強すぎるから絶対に勝てない相手だからそれでいい。だが、あとはここにいる雑魚だけだから。なあ中里と、ユウヤ君だっけか?」

 

 倒れている私達に雑魚と勝手に名づける鬼塚さん。

 私たちはとてつもなく強いと自信をもって言えるはずなのに、この状況では私達は強いデュエリストだとそうとは思えないだろう。

 

「極東高校2年生部長。鬼塚リュウイチロウ。馬鹿なお前らにわかりやすく、一言でいうとこの学校で一番強いって言えばわかりやすいか。次の中堅の対戦相手はこの俺だぁあ!! 次の対戦相手はだれだ?」

「この俺様カイザー様だ……」

「ははは、ここで死にかけてるおめえが次の相手かよ。デュエルができそうにもないほど無事じゃねえのに、笑えんな」

「てめえがやったんだろ糞やろう……」

「じゃあな。お前たちもこんなところで寝転んでないで、さっさと体育館に来いよ!! 待ってるからな……」

「待ちやがれぇえええ」

 

 鬼塚さんとヒロシ君は私とカイザーを置いて、この薄暗い倉庫から去って行った。

 扉を閉められたので残されたのは、真っ暗な視界と私とカイザーの2人だけ。

 これが極東高校の一番の狙いだったんだ。暴力とか、言葉巧みに使った裏切りの行動でデュエル前に絶望の崖っぷちに立たせられる。

 極東高校はデュエル強い高校って聞いたことは全くない。

 でもここまで何とか勝ち進んできたってことは、おそらく、私達にやってきたように今までも高校を潰してきたと思っても、不思議なことではない。

 

「カイザー先輩と、さっきの鬼塚さんってどういう関係なんですか?」

「痛って……。なにって、厨房の時からの因縁のやつだよ。同じ不良仲間で昔からいろんなことをして暴れてきた」

「そういう仲なんだね」

「まあな、厨房の時からのダチだったけどさ、1年前の高校ん1年のときの俺様と鬼塚はぶつかることになったんだよ」

 

 私は不良の人間関係のことは全く詳しくはない。

 けど、不良とはいえ、今のカイザーのように意外にも優しい人物はいるんだ。

 初めて会ったときに堀内先輩に襲われたときに助けてくれたように。危ない不良とそうでもない不良の2組がいるってことはわかった。

 

「で、高校デュエル甲子園の最中にデュエルをしてあいつ、イカサマしやがったんだよ、負けそうになったからって、デッキからカードを関係ない所から引きやがったんだ。糞……」

 

 なんかこの話は聞いたことがあるような気がした。そうだ、部長が抽選会の前に私に話をしてくれたことと同じだ。

 

「それなのに、ジャッジは俺様がイカサマをしたっていいやがって、そして俺様の先輩にあたるやつも俺様のことを攻めやがった」

 

 その時は、カイザーがイカサマをしたって話になっていたはずだけど。

 

「で、俺様はその先輩に真実を話をしたらな、納得してくれたんだ。あいつらが悪いって。で、極東高校に真実を言ったら、ひどいくらいに先輩はぼこぼこにされちまって……。で、俺様が仇打ちに行ったら、大会出場停止を食らってしまった。で、あのぼこされた先輩は極東高校に半殺しにされた恐怖で学校やめちまったよ」

「部長からそのことは聞きました……。でも内容が違う……」

「あの糞部長……。嘘いいやがって……」

「でも、部活のときとか、青眼の白龍高校戦では不正してましたよね」

「部活のときは、わざとだよ。青眼の白龍高校戦んときは、部長をからかうために、デュエルの後に、入れたんだよ。俺様が公式戦で正々堂々イカサマするわけねえだろ」

 

 問題児だと思っていたカイザーは今日の私を助けに来てくれた行いから見て、決して悪いことをする不良ではないってことはわかった。

 だから、カイザーは本当はイカサマしてないってことがわかった。外見はちょっとあれだけど結構真面目な不良だっていうことがね。

 

「こんなところで道食ってねえでもういくぞ。奈々川……」

「でも待って……。カイザー。傷が……」

「めんどくせぇ。こんなの唾でもくっ付けば治るんだよ糞が」

 

 そんなはずはない……。血は止まる気配は全くなく、今にでも少しずつ流れている。

 救急車に運ばれて今にでも手当をするべきなのに、カイザーはそれも聞かずに、私の肩を拾って、立たせてくれた。

 本当はカイザーのほうを助けられる側なのに、私が助けられてどうすんだよと思ったけど、カイザーは辛い顔もしながらも必死に立っている。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 私とカイザーは互いに肩を支え合って、何とか体育館に戻ってきた。

 1回戦が終わってしばらくたったらしく、この後、次の試合の準備があるみたいで休憩が終わるギリギリのタイミングで来たらしい。

 何とか間に合った私は、応援席まで移動する。

 

「おせーよ奈々川。一体何があったんだよ!!」

 

 心配そうに待っていたらしい宮城が私に声を掛けてくれた。

 私は殴られて血が出た鼻はバンドエイドで手当てをしていたので、何とか自然にごまかせたみたい。

 

「中里。お前どうした……。異変が変だぞ?」

 

 問題はカイザーだった。顔色を苦しそうにして脇腹を押さえながら無理やり立っている姿は私は痛々しくて見ていられなかった。

 部長には心配されていたんだけど、カイザーはいつも通りに何もなさそうな、強気な姿勢で、

 

「ああ。ちょっとウンコ我慢してるだけだ。すぐにデュエル終わしてやる。ウンコ漏らすなんてかっこ悪いことできないからな」

 

 大丈夫なはずなんてない……。

 人は急激な多量の出血で、血圧が急激に低下し、ショック状態に陥り死亡することがあるってどっかの本で見たことがある。

 今にでも医者の救護が必要なのに、私の言うことをきかずに私の余っていた胸を潰すためのサラシで、応急処置をしただけ。

 

 カイザーは席で休むふぶりも見せずにすぐに、立ち上がってデュエルスペースまで移動した。

 そして因縁の相手である鬼塚さんの前へと現れる。

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