遊戯王~デュエルキングを目指す少女の物語   作:魔法使い?

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第4話 『┌(┌ ^o^)┐』

「奴隷って何するんだ?」

「ひ、み、つ…!!」

 

 神埼さんの何かを考えるようなニヤニヤしている姿が怖い。

 

 

 景色は日没を表す夕焼けに変わったことで、ようやく長かった学園生活の一日が終わり下校の時刻だ。

 今日は試験が大半だったから授業は別にたいしたことはなかったものの、私にはある問題がおきていた。

 それは私に人生初の彼女が出来たことだ。

 弱みを握られデュエルに負けた私は美人プロデュエリストの神崎と手を繋ぎながら歩いている。

 顔を真っ赤にしながら私は懸命にこの場を乗り切ろうとしているが、歩いていると周りの視線がものすごく辛い。

 

「…。神崎さん…。僕、すごく恥ずかしいよ…」

「カップルなんだから手を繋ぐなんてあたりまえでしょ」

 

 落ち着いたテンションで私と向き合っている神崎さんは異常だ。っていうより、私はまだ認めてないぞ。

 私は見た目は男の格好をしていててもまだ女の恋心ってもんがあるんだから異性では好きにはなれないな。

 神埼さんは確かに美人だけど、別にそれ以上の感情はもてない。

 女の私から見れば、神崎さんはデュエルがとても強くて強気な性格かっこいい。それにあこがれる程度だ。

 

「だからってこんな目立つところで手を繋ぐなんてやだよ…」

 

 私は想いのままに告げる。それでも神崎さんは諦めるということは知らない。

 

「もうここまで来たんだから私達は友達以上の関係でしょ!」

「僕はまだ君のことは異性としてはまだ好きになってない。友達としては好きだけど…。これ以上学校で厄介なことになるのが嫌なんだ。それに、僕のクラスの人に見られたら面倒だし」

「学校で目立ちすぎていろいろと厄介なことがあるなら、こうやって手を繋げば他の雌猫ストーカーに諦めさせることができるのよ。私もあんたと付き合うことで気持ち悪いストーカーの魔の手からおびえることもなくなるしね」

「それでも大胆すぎるだろ!!これ」

 

 手を繋ぐのは恥ずかしいけどよく考えれば、確かに神崎さんと付き合うのは利点なことはあるかもしれない。

 私はこの学校に入学して1日目で目立ってしまったことにより、クラスの女子の王子様ポジションになってモテモテになってしまった。

 これにより、周囲の目が常に私のことを注目される状況が続くといつか私が女だっていうことがばれるかもしれない。

 だけど、私が超有名人の神崎さんと付き合ってしまえば、テレビでよくある「アイドルの恋愛による人気の低下」のように私のことを諦めさせてもらうことができるかも。

 彼氏っていうのはやっぱ抵抗あるけど、神崎さんは優しいし、面白いから友達としては好きなんだよね。なんていうか、私の学園生活充実してきたぞ!!

 

 

 

 

 

「お、お前ら……」

「宮城…。こ、これは誤解なんだよ。僕が神崎さんの言いなりになっているわけで…」

「じゃあ、何で手なんか繋いでいるんだよ!! お前は神崎のこと振ったはずなのに? これはどういうことだよ!!!」

「私たちってもう結婚前提で付きあっているんだよ。ねぇーー。ユウヤー」

 

 やっぱり手を繋ぐことは目立つからすぐにクラスの人に見つかっちゃったか。

 驚いた顔つきで私の最初の友達になってくれた宮城は私のことを見つめている。

 

「け、結婚ってまだ僕達高校生じゃないか……」

「冗談よ」

 

 嘘でも先のことまで考えていて怖いよ……。神崎さんの顔が本当に見えてしまって、私は思わず顔が赤くなってしまう。

 

「このリア充め……。奈々川……。お前…。女にまったく興味ないはお前は俺と同じようにずっと童貞だと信じていたのに…。俺のことを裏切ったな!!」

「………」

 

 リア充?童貞?…。私に何か怒りながら話しているけど意味わかんないや。

 でも、これで宮城が私のことを男だと信じてくれてるってことが発覚したな。

 でも、付き合っているってことが勘違いされるのはちょっと辛いけど。

 

「ユウヤは私のスレイプちゃんなのーーー。ねぇーーー」

 

 宮城をさらに挑発するかのように、神崎さんは私の顔にキスをするくらいの距離で綺麗な顔を近づけてきた。

 このいやらしい感じって怖いな。我ながら女の恐怖を改めて感じる瞬間だった。

 

「ねぇ。私のスレイプちゃん。こんな奴置いてさっと行きましょう」

 

 私が可哀想だなと思っている間に、神崎さんは手を引っぱってこの場を立ち去ろうとした。その時…。宮城はあることを言った…。

 

 

 

 

「お前ら……。レイプ……。レイプ…って…。まさか奈々川…。無理やり神埼を襲って彼女にしたのか……? だからこんな関係に?」

「ちょ、ちょっと僕はそんなことしないよ!!」

 

 レ、レイプって……。どうして宮城はこんな単語が出てくるのか…? まさか私が神埼さんと付き合っていることに嫉妬している?

 

「逆か。神崎が奈々川を逆レイプしたから洗脳されてしまって……。くそーっ!」

「馬鹿ね。私が変なことはしないわよ。そんな質問する前に、まずあなたはスレイプの意味を辞書で調べたほうがいいわ」

「ってことはやっぱ奈々川が神崎のことをレイプってことか!!」

「ぼ、僕がそんな酷いことなんかするわけないよ!!」

「ふふふふ。でもいつか……」

 

 変なことを言って場の空気をおかしくした宮城を見て神崎さんは笑う。

 女子が嫌がる汚い言葉を宮城に言われたのに、何だか神埼さんは嬉しそうだ。

 それに調子に乗ったのか盛り上がって神崎さんが最後に言った冗談が嘘に見えない。すごく怖かった。変態だよあの子は…。

  

 

 

「そういえば、奈々川。お前、寮どうするんだ? これから俺は寮に向かうんだが、お前も付いてくるか?」

 

 宮城が言ったように今日から寮生活が始まろうとしている。

 私の家がなくなった以上、これからの学園生活は卒業するまでの間、3年間寮で暮らすことになるだろう。

 寮に入ることで自分の部屋も食費も付いてくるわけだから、これを利用する手はないだろう。とっても安いので学費の節約にもなる。

 だからこの鞄にはパンパンに何時間も掛けて厳選した、私の私服などが入っているからもう準備はできているんだ。

 それに、生まれて初めての寮生活ってどんなものか知りたいしね。とっても楽しみだよ。

 

「もちろんこれから向かうよ」

「じゃあ決まりだな。あんな女と一緒に帰るのをやめてこっちこいよ。方向こっちだしな」

「うん!っ!」

 

 その言葉に反応し、私は神崎さんの手を咄嗟に離して宮城の方へと向かう。

 

「何っ? 彼女より友達優先ってわけ?」

「そんなんじゃないよ…。だってもうこんな時間だよ。明日の準備をこれからしないと……」

 

 宮城の方に行ったことで、さっきまで笑顔だった神埼さんの顔が怖い顔へと変わって言った。

 恋人繋ぎしていた手を勝手に離したことを怒っているみたいだ。

 

「いいのかなーーー? あんたの秘密ばらしちゃって?」

「なんだ? 奈々川の秘密って?」

「あわわわわ」

 

 変なことを言われそうな気がする。

 そう思った私は急いで神崎さんの口をふさごうとする。だが神崎さんは私の手を簡単にかわして、大声で

 

 

 

「奈々川ユウヤはさっきまで私のことをレ…イ」

 

 

 

 変なことを言われそうになったが、何とかぎりぎりのところで神崎さんの口をガードして、やめさせた。

 

「や、やっぱ奈々川は神埼のことレイプしたんだ。チクショーー…」

「だから違うって…!!」

 

 あああぁ。ガードしたはずだったのに、声が漏れていたせいで宮城に誤爆の嘘が……。

 面倒なことをさせてくれたな。神崎さんの奴……。あんな酷いことを言ったのに笑っているなんて。

 

 

 

 あれから数分。この場から立ち止まって何度も宮城に「変なことをやっていない」と言った。説得するのに大変時間がかかった。

 宮城を説得する間にも神崎さんは「胸に抱きついてきたんだよ」とか余計なことまで言って、余計に混乱をさせてきた。

 でも、必死に言ったことでなんとか誤解を解くことができた。羞恥心で死ぬかと思ったよ。

 

 今までは神崎さんによる嫌な話だったが、今度は宮城による私が一番興味がある寮の話になる。

 

「部屋割りどうなるかなー…?俺、奈々川と同じ部屋になれるといいなーーー」

「お、同じ部屋って…?」

「あれ?2人で1つの部屋ってこと知らなかったのか?」

 

 同じ部屋…?あれ?部屋は別々じゃなかったのか…。

 やばい…。初めて聞いたよ…。部屋が共同ってことはいろいろと不便じゃないか!!

 女である私の着替え、風呂……など。たくさんの悩みを抱えている私にとっては地獄なものを、急に想像して振るえてしまう。

 

 

「はぁ…?私に喧嘩売ってるの?私のユウヤはあげないわよ!!」

「俺がお前と違って奈々川なんか狙うわけないだろ!! ホモじゃあるまいし」

「そうよねーー」

 

 私をあげるとかあげないなんてどうでもいい。

 すごく困るよ…。自分の部屋で安心して着替えができないってことになると、またトイレや誰もいない時間を狙って隠れて行動するしかないのかな?

 

「奈々川。思い出したのだが人数の関係で2年生と同じ部屋になる可能性もあるんだ」

「それがどうしたの?」

 

 宮城は今まで嫉妬していたはずの表情だったのに急に怖そうな表情に変わった。

 何かあるのだろうかと私は疑問に思った。別に2年生の先輩と一緒でも私にはあまり変わらない気がするんだが。

 

「さっき聞いたうわさだけどな。2年生の堀内チンジっていう先輩に気をつけろってさ」

「…。なんだそれ!?」

 

 変な名前の先輩だなと思ったが、どんなうわさ話かと軽い気持ちで私は受け流した。

 

「その堀内チンジさんはゲイらしいんだ。ノンケでもあると聞いたが……」

「ゲイ? ノンケ? 何それ?」

「夜中には夜のデュエルで気に入った男を腕力で物を言わせて掘りまくるらしい。これで今まで線の細い生徒がこの寮生活で何人も犠牲になっているらしいんだ」

 

 宮城が恐ろしい顔で話していたが掘るって何のことなんだか…。犠牲になって話してるから危ない人なのかと想像した。

 その堀内先輩って人は…。まさか人殺し……?

 

「それがどうかしたのかい?」

「奈々川は女っぽい顔だし、リアルファイト弱そうに見えるから掘られないように気をつけろよ。一応忠告したぜ」

 

 リアルファイト……? 何それ。

 

「すまないが掘るってどういう意味なの?」

「はぁ…。お前、男の癖にわからないのかよ。…。しょうがねぇなあ…。教えてやるよ。掘るっていうのはな!!」

 

 宮城は私に対して威張っているけど、そっちもさっきスレイプっていう単語の意味が分からなかったんだけどね。

 

 

 

 

「掘るっていうことはな!男のケツに男のチンコをぶっ刺すってことだよ!!」

 

 

 

 

「はっ……」

 

 私は顔を真っ赤にし、卑劣な言葉を言われて恥ずかしさのあまり、しばらく声がでなかった。

 女である私が「男が好きな奴に」こんなことをされるわけないだろうとこのときは自分に暗示していたのだけど。

 

「ぼ、ぼぼぼぼ。僕がそんな危険な人と一緒の部屋なんて確立的にありえないだろ…。変な話を話さないでくれよ」

 

 非現実的であることだと自分に言い聞かせていたが、その言葉は震えていた。

 

「お前まじでびびってんのな」

「びびってなんていない……。どうせ僕を馬鹿にするための嘘なんでしょ」

「俺はこれでもまじめに言っているんだぜ。あとで寮の担当の先生に自分の部屋から教えてもらえよ」

 

 これも神崎さんが宮城に嘘付いたときと同じように、これも冗談であってくれと思った。

 

「恐ろしい話を私のダーリンに話さないでよ!!こんな最低な奴と一緒の部屋になるわけないでしょ」

 

 少し同様してるけど、大丈夫だ。

 堀内先輩と同じ部屋にはなるはずがない。夜中に襲われてしまったら私が女だっていうことがばれてしまうからな。

 

「面白い話だったから話しただけだよ。奈々川、アナル処女を狙われないように気をつけろよ」

「そうよ。あんたのものはぜぇーーんぶ。私の物なんだからねっ。だから、他の奴に体なんか差し出したら承知しないから」

 

 言葉なんか出るわけない。

 悪ふざけなのか、ガチで本当に言っているのかわからないけど、私には2人の言葉のほうがセクハラに感じて恐怖だった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 私はあれから宮城と神崎さんと別れた。

 その後、自分の担当であった先生に聞いて、私が3年間暮らす寮を確認を取った。

 宮城が言っていたお尻を狙われるという怖い話でちょっとだけ恐怖心が残っていたけど、ありえないと私は何度も自分に言い聞かしていいた。

 堀内先輩が私の部屋と同じなはずないと自信持って自分の寮に移動し、私の部屋の扉をゆっくりと開けた。

 扉を開けると狭い部屋なのに、大きなスポーツ体系の男性が私を迎えていた。この人が私と3年間一緒の部屋ということになる。

 その男のは椅子に座りながら、ワイシャツとパンツ一枚になってボーイ何とかと書かれた小説を読んでいる。

 小説の表紙が男同士が抱き合っている物だったので、私はすぐに変な人だと察知した。

 

「…。やぁ。君がうわさの奈々川ユウヤ君かい?」

「そうですけど…」

 

 怖かったので弱い声で返事を返す。

 だってこの人の声はとても高くて、その大きな体に似合わないんだ。しかもワイシャツ姿から透き通って見える毛が怖い。

 

 

「私の名前は堀内チンジっていうんだよ。ま、これからずっと同じ部屋だからよろしくな!」

「ほ、ほりうち……」

 

 嘘でしょ……。宮城が警告していたのに早速、私と同じ部屋になってしまった。

 驚きを隠せなかった。悲鳴を上げたいと思ったが初対面の人にこんなことを言うのは不適切だ。

 この男が宮城が言っていた危険人物の堀内先輩だなんて…。

 堀内先輩はほぼ無言で動けない私を、上から下へと見えるように私の体をジロジロと見ている気がする。

 

「どうしたの? ハァハァ…。何だか、元気ないね?」

 

 なぜか、激しい動きをしていないのに堀内先輩は息切れをしている。

 私は無意識なうちに、警戒してしまう。今でも襲ってきそうな何かが……。

 

「入寮したてでわからないことがあると思うが、気軽に私に聞きたまえよ。ハァハァ…」

「いいえ…。何もありません……」

「たとえば、私の好きなタイプとか……。私の趣味とか……。何でもいいんだよ!!」

 

 とりあえずは下手にフラグを立てる会話をしては駄目だ。

 私はまったく先輩に興味を示さないように冷たい視線で送れば大丈夫なはず。そう甘く考えていた私は馬鹿だった。

 何も行動しなくても先輩は私に話を続ける。

 

「ちなみに私の好きなのは…」

 

 

 

 

「君みたいな可愛い男の子」

 

 

 

「ちっ…。会ってすぐに告っちまったぜ……。俺の馬鹿……」

「………」

 

 

 こ、怖い……。神崎さんに告白されたのが慣れてしまったのか、男子の告白なのに全く嬉しくもなんともない。

 むしろ怖いとしか思えない。先輩は額を赤く染めながら告白した。何かもういろいろと大変なことになってる。

 こんな最低な奴と3年間一緒の部屋なんて死んでも無理だよ…。逃げられるはずもないじゃないか。

 この3年間の間に、私はどうにかされそうだよ……。

 

「……」

「君のうわさは聞いているよ……。ハァハァ。すっごく可愛い男の子で、スポーツ万能でデュエルがとっても強いんだってね。もう好きになったよ」

「あはははは。男同士付き合うって面白いことを言うな。先輩は……」

「冗談ではない。私は本気だよ!!」

 

 私は「冗談を言う人だなー」っていう展開にしようとしているのに、先輩の目は嘘言っているように思えない。

 男が男の告白って何なんだよ。これって最近流行っているものなのか…?

 

「でも僕は……。もう彼女できたんだ。ごめんなさい……」

「………」

 

 堀内先輩から逃げる方法。

 私は認めていないけど、神崎さんのことを言えば諦めさせられるかな? と思ってこう言った。

 私に彼女がいたことに驚いて、堀内先輩は目をキョドっていたが、しばらくすると元に戻った。

 

「彼女がいても問題ないよ」

「はぁ?」

 

 あまり意味がなかった。

 

「彼女がいてもこれから私と3年間同じ部屋なんだよ」

「?」

「それって、どういう意味かわかる? 奈々川君。はぁはぁ。君の彼女よりもずっーーと一緒なんだよ。君の可愛い寝顔も毎日見放題。着替えも一緒で常にお互いの大事なところを見放題。これってもう彼氏だよね…。ハァハァ」

「うわああぁああああああああ」

「君の彼女よりも私のほうが好きになっちゃうね」

 

 そんなの無理だ……。何だよ。この寒気は……。男の人って怖い…。

 まだ神埼さんとの女同士の恋愛のほうがマシじゃないか……。

 

「君と私はこれから毎日毎日毎日毎日毎日毎日一緒に暮らすのだから仲良くしようじゃないか。ハァハァアァ。君のような可愛い男の子とこんな狭い部屋でお互いにクンクンしながら3年も暮らせるなんて…。まるで夢のようだよ」

 

 ガッチリとした体格とは裏腹に、女のようなゆっくりとしてしゃべりながら台詞を吐いた。

 しかも気持ち悪い言葉をしゃべっている。私、いろいろと人生詰んでる気がする。

 

 

「おっとその前に忘れるところだったよ。奈々川君。そろそろ1年のお風呂の時間になる頃だ。この続きは君が私のために体を暖めてからね! ハァハァ」

 

 お、お風呂……。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 堀内先輩からの恐怖から逃げるようにバッグを持って部屋を出た。急だったからこの後のことは何も考えていない。

 

 

 宮城のうわさ通りに堀内先輩は、早速私を襲おうとたくらんでいる感じがした。

 だって、男の人のあんな対応って今まで私は見たことがなかったから。

 あんなおかしい告白の仕方や、男を告白しようとする気持ち悪い台詞など、ありえない物だったから。

 まだ、神崎さんのほうがマシだったよ……。いや、まだ神埼さんに納得してないけど……。

 

 

 しかもお風呂の対策は考えていない。このまま私は裸になって男の子と一緒に入るわけにもいかないし……。

 

 

 この寮には男性しか集まっていない。女性寮は男が入って来れないようにここから反対の数キロ離れている場所にあるらしいんだ。

 だから、普段男として生活する私はここの男子風呂しか入る道しかないってことになる…。

 流石に着替えやトイレと違ってこれを回避する方法ってそう簡単にはないしな……。

 部屋に戻ろうと考えたが、堀内先輩の恐怖や、すれ違う人たちに変な人と言われないように私は近くまでやってきた。

 でも…。男の人と一緒に入るなんて死んでも無理だよ……。

 

「おっ…!奈々川じゃないか!お前も風呂に入りに来たのか?」

 

 ブリーフと『サイバー・ドラゴン』のタオルを持った男の人が、落ち込んでいる私の肩を叩く。

 私、本当に付いてないよ…。よりによってなんで宮城が来るんだよ。

 しかも宮城が現れた勢いで私は止まっていた足が動いているし…。確実に風呂に向かっている…。 

 

「聞いてなかったが、お前は誰と一緒の寮になった…? まさか堀内先輩ってわけないよな」

 

 宮城が冗談で言っていたつもりだったんだけど、実際はその通りなんだよな…。

 私は正直に話した。もちろん開始早々狙われているってことを伝えた。

 

「ハハハ。笑えるぜ。冗談に言ったつもりだったのに、本当に堀内先輩と一緒になるんだってな」

「……。僕、先生に訴えて来るよ。場合によっては警察かも……」

 

 私にはデュエルキングになるという夢があるのにこんな恐怖で夢を壊されたくない。

 それなのに何でこんなことで人生詰み掛かっているんだろう。やっぱり誰かに助けを呼ぶしかないのか。

 

「無駄だぜ。奈々川。男は女と違って訴えられるっていうのは滅多にないんだよ」

 

 宮城が言ったこの台詞…。ここに来て異性の不便を感じてしまうなんて…。私が今、女の格好をしていたら確実に訴えられたのに…。

 

「まあ、ケツを貫通されないように気をつけな。その柔らかそうな尻は彼女にささげるんだろ」

「神崎さんにもあげないよ!!」

 

 もう嫌……。味方かと思っていた宮城ですら、私に対してセクハラしているように見える。

 どうして男の人は変態ばっかりなんだよ……。もう嫌だ。この学園生活……。

 

 

 話の途中だが、遂に青い男性をあらわすマークの場所に付いてしまった。

 

「……っ!!」

「どうした奈々川…?」

 

 宮城がお風呂場の扉を開けるとたくさんの人が見える。でも私は下を向いてこれ以上進めない。

 それをおかしいと思った宮城は、

 

「ああ。わかった。やっぱ奈々川って裸見られたくないんだ。いるんだよな。男でもこういう奴…」

「………」

「おいおい。まじかよーー」

 

 男の子同士でもそれは恥ずかしいんだ……。

 

「お前いいガタイしてんもんな。この胸い…」

 

 

「きゃああああああああーーーーーーーーーーーーー」

「いっでぇ……」

 

 

 私は凹ましているとはいえ、胸を触られた反射で宮城を殴っていた。

 もう嫌だ……。宮城も私の体を狙っているように感じた。この調子だと寮生活なんてできるはずもない。

 

 風呂も入れるわけがなかった。理由は言うまでもなく……。

 

 

◆◆◆

 

 

 

「お帰り。早く帰ってきたけど、ちゃんと私のために体を温めてきたのかい?」

 

 私はこのまま自分の寮に戻ってきた。

 堀内先輩が似合わないクマの絵柄のパジャマを着て、私を待ち望んでいたかのように歓迎していたけど、いつ襲われるかと考えると油断はできない。

 ここにも私の居場所というものはない。

 それにお風呂に入らなかったから、忙しい学校生活1日の溜まった私の体が汗臭くて変な感じがする。

 これからずっと私はお風呂に入れないのかと考えてしまうというマイナスなことしか考えられない。

 

「もう、今日は疲れたから僕は寝ることにするよ。おやすみ…」

 

 もう、やけくそになった僕は寝ることにした。

 この問題はとりあえず明日考えようと思って自分のベッドに登って目を閉じた。

 

 

 

 

 これから私のこの学園生活はどうなるのだろうかとずっと私は考える…。

 私がデュエルキングになるっていったから女を捨てて男になったのに、不便すぎてもう嫌だよ…。

 でも、大切な人との約束を守るために諦めてはいけないから、弱音を吐いてはいけない。

 お風呂の問題は、朝早く誰もいない時間に速やかに入ってすぐに終わらせれば大丈夫なはずさ。

 あと、彼女になった神崎さんと、今私と一緒の部屋の堀内さんに不意を付かれて女だってことをバレないように常に気をつけないと。

 こんな生活やっていけるのか…?

 

 

 

「もう眠りに着いたかい?奈々川君!?」

「!?」

 

 急に部屋を真っ暗にし始めて堀内先輩の声が聞こえた。周りが静かになったのを確認した先輩はありえない行動を起こした。

 それは、私の寝ているベッドの階段を上ってきたのだ。いきなりのことだったのでとっさの判断ができなかった私。

 先輩は動きが遅い私を熊が襲うかのように急に、私の口を押さえ付けた。

 

「んっ」

「はぁ…はぁ…。暴れても無駄だぞ。君との体格差を考えろよ。私は柔道で全国7位の実力がある。それに全国高校デュエル甲子園大会でも3位の成績を持っているんだよ」

 

 大声を出そうとしても口を封じられた私は声を出すことすら許されない。

 自分の強さでもある実績を口にしたことで、抵抗できないと感じた私は涙が溢れることしかできなかった。

 しかも私の上に馬乗り乗っかってさらに追い詰めようとした…。絶望と最悪なことがこれから起きることしか予想できない。

 

「心配するな。これから楽しいことが始まる…。はぁはぁ」

 

 ゴツイ体で思いっ切りグーの態勢で私を脅した。

 私の外見は男でも本当は女だから勝てるはずもない相手を見て怖いという感情しかない…。

 

「君が可愛いのがいけないんだよ。はぁはぁ。可愛いって罪だよなーー。本当に…」

「んんっ~~~」

 

 先輩が私のパジャマに手を掛けようとした。このままでは私が女だっていう最悪な結末になってしまう……。

 

 

「さぁ、夜のデュエルの始まりだ!!」

 

 電気を消された。暗闇が私の感情を恐怖にさせる。

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