遊戯王~デュエルキングを目指す少女の物語   作:魔法使い?

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主人公 奈々川ナナ


【挿絵表示】



第6話 『ペット』 

 奈々川ナナは私のことを男として好きになってくれた神崎ミカさんの家へと連れられる。

 場所は私達が通っている学校から歩いて10分程度の場所で、近くもなく遠くもない通勤の良さだった。

 

「どうよ」

「何これ……」

 

 家は巨大なシャンデリアに大きなリビングに壮大な数の部屋があるまるで金持ちの大豪邸。

 改めて高校生ながら、プロデュエリストをやっている神埼さんのすごさが伝わってくる。

 こんなところで今まで一人暮らしをやっていたんだろうか。

 そう思うと、今、私が握っている神崎さんの手が大人の感覚がする。

 

「神埼さんの家ってすごいなーーー。これって全部カード? すごいっ!!」

「ああ。それね。無限回収したいカードあるから集めてるの」

 

 そしてリビングに驚くものを発見した。

 パックをまとめ買いしたものの箱が大量に山積にされてある。これ、全部買った物なのか?

 お金の計算を考えると、お金がない私には考えられないほどの額だ。

 ほしいカードがあるなら、箱なんか買わないで、カードショップのシングルで買えばいいのに……。私と常識が全然違う。

 驚くものはこれだけではなかった。リビングにはさらに博物館のように、展示されているカードを発見した。

 

「おっ。すごい。カードがいっぱいあるーー」

「そんなの自慢するものではないよ。これ全てプロリーグで貰ったものだし」

「こんなカード見たことないよー」

 

 目の視覚に入りきらないほどに神崎さんの家のリビングにはおしゃれとして置物ショーケースのガラス一面に張られている。

 一般人には手を出せない高額カードである『破壊王ゼクセクス』『魔導神のオブジェ』『運命の女王エターニア』がずらりと並ぶ……。

 直に感想を言うと、デュエリストの憧れでもあるこれらのマッチキルモンスターの存在を見た私は、改めて生きてて良かったと考えさせられるほど感動的だった。

 さすがプロデュエリストの金銭感覚はすごいと褒めるべきか…。私と付き合っている神崎さんは凄い人物だったんだなと実感する。

 今の私と比べて、ただの学生だある私と付き合うって少々勿体ないんじゃないとマイナスイメージを考えてしまうけど、本人はこれで満足してるからいいのか?…

 

「そして! ここはあんたの部屋よ!!」

「うお~~~~」

 

 次に大きな階段を上って案内されていくとここが私の部屋だと神埼さんに言われた。部屋をのぞいてみると衝撃すぎて驚いて声が出た。

 この部屋には寮と比べて、男らしい汚い匂いも一切ないし、端っこに大きなベッドを置いていてもスペースがいっぱいある。

 大きな薄型の最新テレビに勉強しやすそうな机、ベッドには私好みの『マシュマロン』のぬいぐるみが置いてあって普通の女の子のお部屋だ。

 寮と比べて3倍以上のスペースだ。これを一人の部屋にしていいんだから驚きだ。

 

「こんな環境に住ませてもらっていいのかっ!!」

「いいわよ。別に。元々はここはペットを飼うために作った部屋だし……。」

「えっ、ペットっ…?」

「そうね。私達しかいないからこれから先、ずっと誰にも邪魔されないわね」

 

 神崎さんが強気で発言しているこの言葉がちょっと怖い。

 

「それと、忘れてはいないと思うけど、あんたは私のペットなんだからね! この家に住みたければ私の命令に逆らえないのよ」

 

 ちょうど、今いる場所から見える、庭にある空の犬小屋を見つけて嫌な感じがした。

 

「僕に酷いことしないよね……」

 

 神崎さんに、「ペット」とか「スレイプ」とか私に対して酷いことを言っていていたので、昨日の堀内先輩のように急に襲われてしまうのではないかと私は考えてしまう。

 あの子のことだから、誰にもいないことをいいことに、今すぐにでも「ペットなんだから私の足を舐めなさい」とか「あんたはここにいる間はペットなんだから返事はワンね」とか嫌なことをされそうだ。

 そんなイメージを想像してしまう。

 

「ぺットって……」

「別に何もしないわよ。もしかして期待してんの?」

 

 って私ったら……。今、何、想像して……。

 

「良かった……。怖いことされるのかなーって思っちゃった……」

「私がそんなことするわけじゃん。もしかして期待してんの? 」

「期待なんかしてない……」

「嘘つけーー。一瞬だけそんな顔したよ。ユウヤ。へんたい」

「か、勘違いだよ……」

「あんたって本当に面白いわねーー。うふふ」

 

 私は自分で自爆して真っ赤になった顔を手で隠す。

 本当に、神埼さんは口がうますぎるよ……。私を苛めて快感を得て喜んでいるんだ……。

 

 

「本当に良かった……」

「っ……!!」

 

 安心したと思ったその時、急にベッドに押し倒して神崎さんは私の顔に近づけた。

 甘い果実の香水のいいにおいと共に女の子独特のやわらかさが体に直接当たってドキドキする。私と同じ異性なのに何なんだこの感じ…。

 

「ちょ、ちょっと……」

 

 ベットに押し倒された私はびっくりし、冷静を保てない。

 

「ユウヤが男子寮に行ったとき、本当に心配したのよ……。寝取られるかどうか。ずーっと心配だった……」

「………」

 

 私に抱きついている神埼さんの手は震えている。顔は見えないけど、何かに怯えているような気がした。

 

「あんたは私が生まれて初めて好きになった人なんだからね……。急にいなくなったり……、他の人に体を奪われてしまうなんて嫌だよ……」

 

 私には誰にも味方がいないと思っていたけど、心配されていたんだ…。

 こんないい性格の神埼さんに私と付き合ってもらっているんだから、私はそれに答えなければ釣り合いが持たない気がした。

 

「大丈夫だよ……。僕は急にいなくなったり、体なんか誰にも差し出すつもりはない」

「良かった……。ぐずっ…」

 

 泣いているのか……? 「ぐずっ」って声が聞こえたのが、あのいつも上から目線の神埼さんのことだから、気のせいだよね。

 いや、そう考えていたつもりだったが、神崎さんが私を抱いている手が急に力強くなったから、感情むき出しのようだ。

 神崎さんにも私と同様、女の子がかかえる弱いところもあるんだな。そう思うと神崎さんが急に可愛く見えてきた。

 私も神崎さんの彼氏として、抱いてやるべきなのか……。いや、いやいや、私は彼氏って認めたわけではない!!

 当たり前のつもりだけど、私は神崎さんにも体を差し出すつもりなんてない。

 

「ごくっ」

 

 私は唾を飲んで、右手で神崎さんの髪の毛を撫でる。あまった左手で神崎さんの腕を掴む。 

 この後、私は何をするべきなのか……。って変なことを考えていたけど…。駄目っ!私はまだ女の子なのよ!!

 

 

 と、そのとき、神崎さんの手は私の体から離れて、立ち上がった。

 泣いていた神崎さんの声がいつも通りのからかっているものへと変わった。

 

「ねぇねぇ。襲わないの?」 

「誰が襲うか!!」

 

 やっぱそうなるよね。

 

「そうよねーー。エッチなイベントはあんたが私のことを好きって言うまでおわずけのようね。まだ、あんたに私のこと好きって言ってないしね」

「別に…そんな気は一生ないと思うよ」

「何よーー!」

「それと出来ればそのエッチなイベントも遠慮してもらいたい…。興味ないから」

「あーーーー。もう! 女の子と一緒に住むのに異性としてみてないなんて」

「僕は君をそんな変態な目では見てないよ…。友達として見ているだけで…。君と話していると実際楽しいしな」

「ムカーーッ」

 

 やっぱ面白いな神崎さんは。口では怒っているけど、今の神埼さんの顔は喜んでいる気がした。

 今までの私の女友達よりも一緒に話をしていて面白いし、何より一緒にいて癒される。

 そんな関係がずっと続くといいな。

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 

「私は手札から『裁きの龍』を3体特殊召喚!!」

「無理無理!!…。そんなの防ぎようがないよ…!!」

 

 長い髭が特徴的な全身真っ白な龍3体が神々のごとく、現われ、圧倒的なプレッシャーの中デュエルフィールドを覆う。

 超強力なこのカードの前では対抗手段もなく私のライフポイントは0となり一瞬で負けてしまった。

 でも、女の子といつも通りワイワイデュエルできて楽しかった。

 

「ユウヤ。弱いーー。全部負けてるじゃん」

 

 あれから、私は神崎さんとずっとデュエルをしていたけど、何度やっても勝てない。

 やっぱり神埼さんはプロデュエリストであって強い……。私はこれから神崎さんを倒すのが今後の学園生活の目標だろう。

 それに、強敵は神崎さんだけではないかもしれない。昨日の堀内先輩のように、まだ見ぬ強敵が隠れているかも知れない。

 もっと強くなりたい。

 

 

「「お風呂が沸きました」」

 

 

 どこの家庭でもある自動でお知らせしてくれるシステムの音声を聞くと、私と神埼さんはデュエルの片付けをする。

 

「あっ。風呂沸いたわね。昨日、お風呂入ってなかったんだっけ。先、お風呂入ってきなよ」

「いいのか? ありがとう」

 

 ホモ? って言われている堀内先輩と違って、お風呂の対応は丁寧嬉しい。でも、1つだけ気になることがある。

 

「お風呂は一人で入っていいんだよね?」

「あたり前でしょ。あんた、誰と入るつもりよ?」

「そうだよね。ありがとう」

「もしかして、私と入りたいの?」

「ば、馬鹿っ」

 

 冗談でも怖いよ……。調子に乗った神埼が急に現われ、私が女だとばれる最悪なパターン。

 これだけはぜったいに避けなければならないから。

 

「これからお風呂に入るけど、ぜーったい僕のこと覗くなよ」

「はいはい。あんたじゃあるまいし、覗かないわよ」

 

 なんか、ちょっとだけ怖いけど彼女を信じよう。

 

 

 

 

 1日ぶりのお風呂に興奮していた私は疲れた昨日の汗を取るようにシャワーを流した。

 そして私は予想以上にテンションが上がった! 神崎さんの家のお風呂はまるで露天風呂かと一瞬思うほど広かったし、何よりも外からの綺麗な景色が見える。

 この地域全体を私のものにしたと感じるほど征服した感じ。こんな絶景で癒しの時間を取れるなんてまるで天国みたい。

 

「ふぅ…」

 

 湯船にゆっくり浸かりながら今まで苦労した日常を忘れるくらいに気持ちいい。

 湯に浮かんでいる自分の大きな胸が、ここなら男を隠しているということを忘れて唯一女性の時間を味わえることになりそうだな。

 私の戸籍的には男だ。

 

 本当にこの生活を続けていいのか……。罪悪感を感じてしまう。

 神埼さんは私を馬鹿にすることがあるけど、裏ではとってもやさしい性格の女の子だった。

 私を信用してくれる唯一の人だから大切にしなければ。

 だからこそ、余計に考えてしまう。私が女だとばれたとき、彼女は一体どんな反応をするのだろうか。

 彼女は男の私が好きだから、今はああやって対応してくれている……。

 でも……。いつかそれがばれたとしまったら……。

 

 

 こんな考えでは駄目だ。マイナス思考で考えてしまったら駄目になってしまう。

 彼女は優しく私と接してくれている。だったら私もそれに答えなければならない。

 私は男の子として生まれ変わったんだから、もっと強い心で生きなければいけないと言い聞かせて。

 

 

 私は風呂を出てタオルで濡れた体を拭く。

 そして着替える前にまずは、自分の胸を潰すためのコルセットをつけようとする。

 装着時間を長くするわけにはいかないから、短時間で済ませるものなんだが……。

 

「ない!! 着替えがない…!!」

 

 しまった……。神崎さんにばれてはいけないと考えた緊張のあまり、着替えを持ってくるのを忘れてしまった。

 ここで騒いだら、神崎さんに一瞬で気づかれてゲームオーバーだ。

 かといってこのままも駄目だし、だからってタオルを巻いてダッシュで2階に走るのもそうとうリスクがある。

 

 私が脱いだ制服は洗濯機の上に置いていたのだが、消えてなくなっていた。

 おそらく、神崎さんが親切にしわにならないように、どこかに持っていったという、親切な行為を取ったんだろうと思ったが、それは今の私にとって余計なことだった。

 脱いだものを見られないため、わざわざわかりづらい所に隠してあった女性用の下着しか、私の着替えるものはなかった。

 

「あっ。これは……」

 

 洗面所の近くに綺麗に畳んである何かを発見した。

 

 水色とピンクのラインが入った帽子、明らかに魔法少女を意識したであろう制服、それにピンクのスカートと青いブーツに先端が丸いステッキ。

 これって明らかにあれだ……。誰からどう見てもデュエルモンスターズで有名なあのモンスターの…。

 明らかに女物であるがしょうがない。この場から逃げるにはこれを着るしか私には逃げ場がない……。私は迷わずこれを……。

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 

「あっ」

「何やってんの? あんた?」

 

 

 すぐに着替えるために部屋に戻ろうとしたところ、私の部屋の隣の扉が開いていた。

 この扉を見ていたらちょうど、神崎さんが机の上で自分のデッキを弄っている姿を発見した。

 急いで胸元が空いたあるこのかっこうを急いで隠す。私は、この格好の恥ずかしさのあまり死ぬかと思った。

 

「あんたブラックマジシャンガールのコスプレしてる。ちょーうける。ぎゃはははは」

 

 今まで私が接して来た中で一番の笑いを神埼さんはしている。

 

 

「………」

「まさか、あんたのためにわざわざ買った女装のコスプレを着るとは思わなかったわ。風呂から出てそれをすぐに着るとは思わなかったわ」

 

 神崎さんの奴……。私が着ると思って罠のようにこれを仕掛けるように洗面所に置いていたんだ。

 私が神埼さんに付き合うきっかけとなった元、まだ忘れていなかったんだ。それに私は引っかかってしまったってわけなのか?

 

 私は沈黙してしまう。かつて私が小さい頃にはブラックマジシャンガールに憧れたことはあるが……。

 こんな痛々しい物を神崎さんは置いていった。私をこんなことにはめるなんて趣味悪いってもんじゃないよ。

 

 

 でも、私は流石にこの格好のままで神崎さんといるのは、恥ずかしいのですぐに、自分の部屋に向かおうとしたが、

 

「どこにいくのかなー? 変態さん!!」

「ぎくっ」

 

 私は神崎さんに胸を隠している腕を引っ張られた。もちろん胸を見られてしまう。

 まずいよ。胸も膨らんでいるこの状況。すぐにでも隠さなければいけない状況なのに……。早速、同居一日でばれてしまうのか…?

 

「あんた。やっぱ女装の素質あるわね。超かわいいわ」

「………」

 

 ジロジロとブラマジガールの制服を見える神埼さんに、無言でばれるなと私は祈り続ける。

 

「嫌々そうだけどあんたやる気あるじゃない。胸のところ入れたでしょ」

「そう、これっていつも胸膨らませているんだー。大変なんだよ」

 

 ごまかそうと私は必死になる。

 でも、神崎さんはばれたときから表情を一切変えていない。

 適当な嘘を言ったけど、どうやら女装していると思われているようで、ばれていないことに安心した。

 

「可愛いし、この晴れ姿をフィルムに抑えとくわね」

「やめろ!!」

 

 カメラを構えて私の恥ずかしい格好をお構いなしに写真を撮った。持っていなかったのにいつの間にか持ってたんだな…。

 新品っぽかったから、私がこうなることをわかってて準備していた気がした。

 

「これであんたは改めて私のペットちゃんってことを確信させたのよ。この写真をばら撒かれたくなかったら大人しく言うことを聞くのね! あんたがブラマジガールのコスプレしてたって学校に知れ渡ったらみんなショックだろうね」

「脅しのつもりか!!」

「うふふふふ。もちろんに冗談に決まってるでしょ…。これは私が没収。これは私が楽しませてもらうわ」

「………」

 

 もちろんいつも通りの冗談だろうけどこ、怖い。私のその写真一体どうするつもりなのか?

 

「あんたがブラマジガールのコスプレしてたから私も着替えたくなっちゃった」

「……はぁ?」

「ちょっと待っててね。私も着替えてくるから」

 

 嬉しそうにニヤニヤしながら神崎さんは出ていった。すぐに神崎さんは私に待ったと思わせないくらいにあっという間に戻ってきた。

 それも衣装を変えて私と同様にコスプレしたものに変わっていた。

 

 

「どうよ!! あんたとは反対のマハードのコスプレ。超似合うでしょ!!」

「う、うん…」

「あんた反応薄いわねーー」

 

 神崎さんは私と対象的になるようにブラックマジシャンのコスプレをしてきた。

 元々ルックスがとてもいいことから神埼さんのマハードの姿に私は一瞬だけキュンっと心が反応してしまう。

 まだ私には女の子心があったんだと確信したけど神崎さんは女だ。何で私は女の子の男装姿にかっこいいだとか感情を持ってしまったんだ?

 

「私とあなたは師匠の関係なのーー」

「えっ…?」

「あんたってほんと鈍感なのね。私のことをお師匠様と呼びなさいよ」

 

 意味がわからない。なんでこんなことにつき合わさせれるのか…。

 でも私と神埼さんの衣装の雰囲気に大きく流されてしまって話が進む。見た目の性別は違っても、それは男と女をあらわす物だったから。

 

 

「そんなわけで~。あんたにこれから面白いことをしてあげるから。覚悟しておきなさい。マ・ナ!」

「はっ!!」

 

 BMGのモチーフとした名前のマナと私の本名ナナと被っているところから私は赤面してしまう。

 これから何をするのか確認することができずに急に神埼さんに手を恋人繋ぎさせられて連れて行かれてしまった。

 コスプレをさせる神崎さんからこのまま変なことをされるのかと思ってしまうが、行き先は私が期待していたベッドの続きかと思ったが全く別の場所だった。

 

「じゃ、じゃーーん」

「す、すごーーーい!! 何これーー」

 

 神崎さんと私の2人暮らしなのに金持ちの家らしく部屋が無駄にいくつもある為こんな部屋が隠されているなんて知らなかった。

 扉を開けた世界には学校よりも大きなデュエルフィールドが置かれて、その中央にはよくわからないコンピューターがいくつも置かれている。

 

「私とあんたは師弟関係。だからデュエルの先輩の私がこれからあんたにデュエルの腕を強化させてあげる。感謝しなさいよ!!」

「ここで練習させてくれるの?」

「あんたは強くなりたいって言ってたでしょ。だからここで私が特訓させてあげるんだから」

「ありがとう神崎さん!!!」

 

 すごく嬉しかったのであざとらしく私は神崎さんが喜ぶように腕に抱きついた。

 バレテないなら、このままラブラブっぽくして、雰囲気に逃げる手を私は考え付いた行為だ。

 

「べ、べべべべ、別にあんたの為なんかじゃないんだから…。それより今はあんたは私の弟子でしょ。ブラマジとブラマジガールは恋人じゃないでしょ。あんたはマナ。私のほうはお師匠様って呼びなさいよ」

「コスプレしている間、僕の名前をマナで通すつもりかっ!!」

 

 だが神崎さんはそれなりに私から抱きつかれる行為になれてないらしく、プライドが高いのかすぐに振り払った。

 気が強い子だけど私のことが本当に好きなんだね。ツンツンしていると思いきや一瞬でデレデレになるところが面白い。

 

「私とずっとデュエルするのは飽きないから別にかまわないけど…。でも同じ相手と戦うよりはこの機械を使って特訓よ。まずはそこのボタンを押してみなさい」

「これ…?」

 

 私はコンピューターの前に行き、赤のボタンを押す。すると画面の表示が変わり人の写真が映されたものになった。それもどこかで見たような有名人だった。

 

「そうよ。これは歴代デュエリストと戦える最新のシステム、S(シュミレーション)D(デュエル)S(システム)なの。やってみない?」

「すごいよ。これっ!!」

 

 興味深々にボタンを次々と押すとどんどんデュエリストの写真が変わっていく。

 海馬瀬人、丸藤亮、ジャックアトラスなどなど超有名なデュエリストばかりが登録されているこの機械。

 また、検索機能もついているらしくデュエリストの腕や名前から自分の実力と同じくらいの人物とも戦える機能もついている。

 

「でもこれって…?」

「別にお金なんかいくらでもあるからどうでもいいのよ。それよりもこれでデュエリストとしての実力が上がれば私はそれで嬉しいわ」

「ありがとう…」

「お礼なんてどうでもいいのよ。私はあんたが喜ぶ姿が見れるのが嬉しいんだから!!」

 

 金のことなんてどうでもいいって何て贅沢な考えなんだ。プロリーグで稼ぎまくっている神崎さんだからこそできる金持ちの考え方。

 それにしてもすごいなーー。時代は長いから私の知らない人物だっているけどこの機械ではいろんな顔がいてかなりの人物が登録されている。

 元々はデュエルで稼ぐ為には負けは全く許されないプロデュエリストの練習としてSDSが生み出されたらしい。

 今まで神埼さんは私の為にSDSを隠してたって強気で言っているけど私には全く嘘に見える。

 だってこんなに強いんだもの、これで必死にデュエルを研究していたんだね。

 何もしていないと思うけど彼女はかなりの努力家なところが私はかなり尊敬するよ。

 

「で、マナはどんな相手と戦うの?」

「僕は戦うべき相手はすでに決まっているよ」

 

 神崎さんの質問の答え、それは私は大体どんな相手と戦いたいかもう決まっているよ。だって…。

 

「不動遊星ねーー。ほとんど負けたことをさらしたこともない歴代最強とも呼ばれた相手かーー。あんたらしいわね」

 

 不動遊星。私と私のお兄ちゃんが憧れだった存在だ。私の目標であり私の人生を変えたこともある存在。

 だからこそ私はそれを超えてみせたい。不動遊星より強くなりたい。今の私の腕なら勝てるかわからないが……。

 いや、勝てるかどうかあやふやなんかじゃない。あの日から私は心が強くなったんだ。絶対に負けない!!

 

 

「あとはデュエルディスクを装備して画面に向かうようにすれば準備はオッケーだから」

「これでいいの?」

 

 やり方を知らない私にやさしく操作の説明をしてくれた。コスプレからか必要以上に体と体をスキンシップするのがちょっとだけ照れくさかった。でもこれで準備オッケーだ。

 その前にこの格好はかなり暑苦しいというよりもかなり恥ずかしいから今すぐでも脱いでしまいたいんだけど、今は師弟ごっこしているんだから神崎さんに怒られそうだ。しょうがない。

 

「デュエル開始よーーー!!」

 

 神崎さんが腕を前に突き刺しながら叫ぶタイミングと同時にスクリーン上に私のライフと対戦相手のライフが表示された。

 

 

 PLAYER (ナナ) LP4000 CPU (遊星) LP4000

 

「僕のターンドロー!! 僕は手札からモンスターを裏側守備表示でセットしてターンエンド!!」

 

 少々、慣れない機械を触ることはやりづらいが、いつもデュエルディスクでやるものと同じみたいで安心した。

 私はこのままターンを終える。

 

「ワタシノターン!!! スタンバイフェイズ、メインフェイズヲトバシテドローフェイズノショリニヨリデッキカラカードヲドロー」

 

 私の向き合っている機械は不動遊星と戦うといったものの、独自の片言言葉の機械声によりデュエルをしているって感じだ。

 少し聞きにくいところもあるが一つ一つフェイズ確認を取って丁寧にデュエルをしている。でも、機械とはいえいちいちフェイズ確認するのって見てて面倒。

 

「バトルフェイズニイドウ。『スピード・ウォリアー』デセットサレテイルモンスターニコウゲキ! コノカードガショウカンニセイコウシタターンハコウゲキリョクガバイニナル」

 

 スクリーンにはガスマスクをしたようなモンスター。

 元々は攻撃力が900しかないが、その効果により攻撃力を上げ、デッキの都合上低攻撃力ばかりの不動遊星のデュエルを支えてきたモンスターだ。それを間近で見れることがかなり嬉しい。

 

「破壊されたカードは『XX-セイバー ダークソウル』。その効果によりエンドフェイズにXセイバーを手札に加えることができるんだ!」

「ワタシハリバースカードヲニマイフセテターンエンド」

 

 簡単に戦闘で負けてしまったがただで破壊されたわけではない。私はターン終了時に『XX-セイバー フォルトロール』を手札に加えた。

 

「それにしてもすごいなーー。この機械。本当に不動遊星を再現されているよ。『スピード・ウォリアー』って超有名なカードじゃん!!」

「あったりまえでしょ!!」

 

 私が嬉しすぎてはしゃぎながらこの機械の話をすると神崎さんは腕を組みながら偉そうな態度を取る。

 まあ、それよりデュエルに集中だ。

 

 

ナナ

LP:4000

手札:6枚→7枚(XX-セイバー フォルトロール)

場 :モンスター

   なし

   魔法・罠

   なし

CPU

LP:4000

手札:3枚

場 :モンスター

   スピード・ウォリアー

   魔法・罠

   伏せ2枚

 

 

 

「僕のターン!!!」

 

 何時も通りに私は気分爽快にデッキからカードを1枚加える。

 お互いに場が硬直しているけど、別にピンチってほどでもないから気軽に考えられる。

 

「僕は手札から『X-セイバー ガラハド』を通常召喚!! バトルだよ」

 

 ここでは単体で出せる攻撃力が一番高いモンスターを選ぶ。仮面を被った戦士が『スピード・ウォリアー』に飛び掛る。

 

「『くず鉄のかかし』!!! アイテノコウゲキヲムコウニスル。ソシテコノカードハフィールドニセットサレル」

「何っ!!!」

 

 その効果によりモンスターの攻撃を守るかのように目の前にガラクタが装飾されているかかしが現れて攻撃を狭まれる。

 

「『くず鉄のかかし』。モンスターの1体の攻撃を無効にして再びセットされる厄介なカード。早く破壊しないと戦いづらくなるわよ」

「わかってるって神崎さん!!」

「だから私のことは師匠っていいなさいよ!!」

 

 師匠っていうのはやりずらいな……。コスプレしているとはいえ、いつも通りで神崎さんって呼びたいよ……。

 デュエルの後半になるほどこういった放置されているカードは残しておくと厄介だ。けれど今の私の手札には除去できるカードはない。

 

「守りを固める!! 僕はカードを2枚セットしてターンエンド!!」

 

 まだ、ライフは動く気配はない。ここは罠を使って、相手の隙を少しずつ探り、一気に攻めるべきだな。

 

 

「ワタシノターン。テフダカラ『調律』ヲハツドウ。コウカニヨリ、デッキカラ『クイック・シンクロン』ヲテフダニクワエル」

 

 コンピューターはデッキからシンクロンと名のつくカードをサーチできる『調律』の効果のもう1つの処理としてデッキの上からカードを墓地に送った。

 

「テフダノモンスターヲボチニオクリ『クイック・シンクロン』ヲトクシュショウカン。ソシテレベル2ノ『スピード・ウォーリア』ニレベル5ノ『クイック・シンクロン』ヲチューニング!!」

 

 不動遊星が得意なのは超高速の怒涛のシンクロ召喚だったな。

 それはコンピューターも扱い方は同じのようだ。シンクロ召喚の演出も見とれてしまっていたらあっという間に終わって別のモンスターが現れる。

 

「シンクロショウカン。『ジャンク・バーサーカー』!!!」

 

 現れたのは巨大な斧を持った殺人鬼のような目つきを持った鎧の戦士。

 これも伝説のデュエリスト不動遊星が使ったとか言われているが、私は彼のファンにも関わらず名前も知らず姿形も全く見たこともなかった。

 

「『ジャンク・シンクロン』ショウカン。コウカニヨリボチカラレベル2イカノモンスターヲ、コウカヲムコウニシテトクシュショウカンスル。『チューニング・サポーター』」

 

 今度は何度も不動遊星を支えてきた相棒というべきチューナーモンスター。

 『ジャンクロン』がワイヤーを引っ張るとその効果によって鍋の形をしたモンスターを呼び寄せる。このカードは『クイックロン』の効果でいつの間にか墓地に送られていたんだろう。

 

「『ジャンク・シンクロン』ト『チューニング・サポーター』ヲチューニング!! アラワレロ『アームズ・エイド』。サラニ『チューニング・サポーター』ガボチニオクラレタコトデデッキカラカードヲドロー」

 

 さすが不動遊星だ。『ジャンク・シンクロン』で効果が場にいる効果が無効になろうが、墓地に送られたときの効果は無効にならないなんてな。

 でも関心している場合じゃなかった。場には腕の形をした機械モンスターと斧のバーサーカーで私のフィールドが圧倒されている。

 

「『ジャンク・バーサーカー』ノコウカニヨリ、ワタシノボチノジャンクトナノツクモンスターヲジョガイシ、ジョガイシタモンスターノコウゲキリョクブンアイテノモンスター1タイノコウゲキリョクヲサゲル。『アームズ・エイド』ノコウカニヨリ、このカードハソウビマホウアツカイトシテ、ジブンノモンスターニソウビシテコウゲキリョクヲ1000アゲル」

「くっ!!」

 

 X-セイバー ガラハド 攻撃力1800→500

 ジャンク・バーサーカー 攻撃力2700→3700

 

 バーサーカーに大きな爪を装着しその凶暴な目つきにより私の『ガラハド』の攻撃力を下げる。これにて私のモンスターを向かい打つ攻撃態勢になった。

 

「『ジャンク・バーサーカー』、『X-セイバー ガラハド』ニコウゲキ!!」

「マナっ!! あんたわかってるわよね!! 『ガラハド』は相手モンスターに攻撃される時攻撃力が500ダウンする。これで攻撃力が0になってしまう。それに『アームズエイド』の効果で戦闘破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを受けるのよ。この攻撃通ったらあんたは負けるのよ!!」

 

 神埼さんがアドバイスをしてくれたが、私はそこんところもちろん考えている。

 私の場の『ガラハド』の攻撃力は0とはいえ、『アームズ・エイド』の効果は墓地に送ったモンスターの攻撃力を参照にするため1800のダメージを受けてしまう。

 これで合計5500のダメージだ。それにしてもコンピューターは頭がいいな。私を一撃で倒すコンボまで考えていたなんてね。

 

 

「大丈夫だよ。こんなにわくわくする戦いにまだ負けないから。トラップ発動! 『攻撃の無力化』! 攻撃を無効にしてバトルフェイズを強制終了!!」

「ふぅ……。危なかったわね」

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