オーキドから旅をするように言われたグレーは今トキワの森に歩いていた。
「……」
「……」
グレーはフシギダネを手にしてから、沢山のポケモンと戦闘を繰り返していたお陰なのか、はたまたフシギダネが元から強いお陰なのかは分からないが順調に旅を進めていた。
だが、1つだけ原因なのはこのグレーの性格のせいか、グレーはフシギダネの名前を考えようとし、既に一時間ほど、トキワの森で無言のままフシギダネと歩いていた。
その異様な空気に他のトレーナーもグレーには一切近づこうとはしなかった。
「(これは不味い…何かフシギダネの名前を考えなければ…)」
フシギダネの方を見るが一向に思い浮かばないグレーは我慢の限界か少し近くの岩に座り込むのであった。
「なあ…フシギダネ。お前はいったいどんな名前で呼べばいい?」
グレーはフシギダネに問いかける。フシギダネはそれに首を傾けながら、別になんでも良いと言わんばかりに体でアピールをするが、それも虚しくグレーには伝わらない。
「…うーん。…じゃあこういうのはどうだ?フシギダネのフーってのは?」
「…」
グレーの答えに、フシギダネは無言のまま沈黙する。
「もしかして駄目か?」
フシギダネは首を横に振る。どうやら意外にも気に入ったらしく、フシギダネは少し満足そうに顔を緩める。
「あ、そういう感じで良いんだな名前を考えるのって」
一人納得したグレーは漸く楽になったのか、旅を進める。
森を抜けようとしたグレー達に声をかける一人の男が現れる。
「そこの少年、君はこの森を抜けるのかい?」
「オッサンだれ?」
「おっさ…俺はこう見えてもまだまだいけると思うんだが…まあ良い。この森を抜けるにしてもあの近くのマンキーを倒さなきゃいけないんだ」
「マンキー?」
そう言うとグレーは森の出口に立っているマンキーを目にする。
そのマンキーは全身傷だらけで額には十字傷がついている。
「なにあのマンキー…あいつだけ変に強そうなんだが…」
「そうなんだ。実はあのマンキーのせいで出口へ通れないんだ。先ほども何人か挑んだんだが、皆返り討ちでね…」
「へえ~…フー、どうする?名前も付けたとこだし一回あのマンキーと勝負するか?」
フーに問いかけるとやる気充分と言わんばかりに鼻息を出す。
それを見たグレーは笑みを浮かべマンキーの所へ向かう。
「マンキー!俺と勝負だ!」
「キー!」
声を荒らげるマンキーはフシギダネの方へ突進する。
それをフシギダネはかわすとつるのムチでマンキーの足を掴み上に投げる。
「フー、つるのムチでマンキーを叩き落とせ!」
フーはつるのムチでマンキーを叩き落とそうとマンキーにつるのムチを近付ける。
それを見たマンキーは逆にフーのつるのムチを掴み、投げる。
投げ飛ばされたフーは木に直撃する。
「な!?」
「(成る程…空中に飛ばし、身動きをできないようにしたところまでは良いがそこからの攻めが少し雑だな…今のところは無難にソーラービームをすれば良かったのだがな…)」
グレーの戦法を見ている男はそう思うと、大丈夫かと心配するが、平気とグレーは答える。
「普通につるのムチで相手するのじゃ駄目か…なら!フー!あまいかおりで周りを埋め尽くせ!」
フーのあまいかおりで周り全体を包み込む。
その匂いを嗅いだマンキーは少し行動が鈍る。それを見たグレーは欠かさずフーに新たに命令をする。
「いまだ!もう一度つるのムチでマンキーの足を掴んで上に投げろ!」
先ほどと同じようにフーはマンキーの足を掴み上に投げる。
それを見た男はグレーに質問する。
「おいおい。それじゃあさっきと同じじゃないのか?」
「いいや。ここからさ、フーつるのムチで左右の木を掴め!」
フーはつるのムチでグレーの言う通り木に掴むと、マンキーに狙いを定める。
「よしそのままつるのムチの勢いでとっしん!」
フーは左右ののつるのムチで木を離して飛ぶ。その勢いでとっしんを繰り出す。
その早さにほんの一瞬反応が遅れたマンキーは直撃する。
それを食らったマンキーは地面に倒れる。
「(さっきとは違い、まずあまいかおりでマンキーの反応を鈍らせ、つるのムチを掴ませないようにした後に、上空に上げて無防備になったところをとっしんの一撃…か)」
グレーを後ろから見た男はポケットに手を入れ、モンスターボールを取り出そうとする。
「(この少年…やはりあの時、ロケット団の工場から逃げ帰った少年だったか。少し危険か?今なら誰もいない…殺るなら今か?)」
「おつかれフー。ゆっくり休め…お前もなマンキー」
フーをモンスターボールに入れた後、マンキーを優しく撫でる。
それを見た男は不思議に思うのであった。
「少年?君は何でそのマンキーに止めをさない?今がチャンスではないのか?」
「やっぱりオッサンバカだろ?何で傷付いてるマンキーに止めをさす?俺は間違っても戦闘はしても殺しはしない。そんなの子供でも知ってる常識だぞ?」
「なるほど(所詮、この程度の男か…)」
男はそう言うと出口とは逆方向へ足を運ぶのであった。
「待てよ!オッサン名前は?」
「…サカキだ。覚えてくれると有り難いな“グレー”」
「っ!サカキ…覚えておくよ…次会う時までな…」
グレーはサカキの後ろ姿をじっと見つめていた。サカキが見えなくなるそのときまで…
「あの男が…サカキ…俺の記憶が正しかったら…あいつがロケット団の首領…」
グレーはただ見ることしか出来なかった。もし、あの時、何か変な行動をすれば確実に消されていたからだ。
◆◆◆◆
しばらく時間が経ちマンキーは立ち上がるとグレーのもとへと歩いてくる。
「お前…もしかして俺の仲間になりたいのか?」
マンキーは首を縦に振る。グレーは笑みを浮かべ、ポケットからモンスターボールを取り出す。
「一緒に旅したいんだろ?…来いよマンキー!」
マンキーは自分でモンスターボールの開閉スイッチを押してグレーを無視しながらモンスターボールの中に入る。
「こいつ…」
グレーは少しだけイラつきながらマンキーのいるモンスターボールを見つめる。
やはり、それだけでは足りないのか、開閉スイッチを押してマンキーを無理矢理外に出す。
「おい…何でさっき無視し…げふ!」
素直に出てきたと思ったマンキーはグレーの鳩尾にからてチョップをする。
見事に決まったグレーは膝をつき倒れこむ。
「この…野郎…」
マンキーはそっぽを向く。主の危険を感じたのか、フーがモンスターボールから無理矢理出てくる。
出てきたフーはマンキーを睨む。それを見たマンキーも睨み返す。
「お、お前ら喧嘩は…よせ…」
未だ痛みが引かないグレーは倒れながらマンキーとフーに注意を促す。
だが、グレーの言葉を引き金に二人は勝手に争うのであった。
◆◆◆◆
なんとか一悶着ついたグレー達はニビシティに着く。そこでポケモンセンターに一度寄ろうと考えたグレーは歩く。
ポケモンセンターの中に入り、フー達を預け一人休憩をグレーはしていた。
「さて…やはりポケモントレーナーってことはジムバッジ…いるのかな?…はぁ。めんどくさい」
一人ため息をついていたグレーはこれからの事を考えていると頭が痛くなりそうであった。
言動こそグレーは大人びているが、これでも一応9歳なのである。
見た目は少し目が鋭いが本人はさほど気にしてはいない。
「…それにしても、サカキ…か。今の俺じゃあ全然敵わないか。戦闘するにしてももっと力をつけなきゃいけないな」
自分の無力さを悔やむグレーは拳を握りながら悔しい思いをするしかなかった。
すぐそばに敵の首領がいたというのに、今の自分には到底敵わないという現実に打ちのめされながらグレーはこれからの事を考える。
「ジムバッジを取るのは後にするとして、今は力をつけるために色んな所に行くしかないな」
グレーはそう言いながら図鑑を取り出し、開く。
見つけた数26
つかまえた数19
「…はぁ。これ本当に全部集まるのか?」
グレーはポケモン図鑑が全然埋まらないことにため息をまたつく。
「あれ?お前、ポケモンも図鑑持ってんのか? 」
「あ?」
グレーは声の主の方へ振り向くと、そこには一人の少年がいた。
「あんただれ?」
「俺か?俺はレッド!ポケモントレーナーさ!そういう君は?」
「……グレー」
「へえ!じゃあ君があの!」
「あのって…あー、どうせオーキドのじいさんにでも話を聞いたんだろ?」
グレーの言う通りレッドはつい最近オーキドから連絡があり、グレーの事について話を聞かされていた。
レッドにはグレーを頼むようオーキドに言われているのである。
「あんたはいったい何してんだよこんなところで?」
「ああ…今はちょっと休憩みたいなもんさ。今からまたちょっと遠いところまで秘伝マシンを取りに行ってくるのさ」
「秘伝マシンねぇ…まあそれは別にどうでも良いや」
「…博士の言ってた通り随分冷め…クールな子だね」
「今冷めたって言おうとしたろ?」
「イッテナイヨ」
レッドはどうにかして誤魔化そうとするがあまりにもばればれの嘘にグレーは呆れて声もでないのであった。
そしてそうこうしているうちに、グレーのポケモン達は傷が癒えたようでモンスターボールを受け取りに行く。
「じゃあ俺は秘伝マシン取りに探しに行ってくるからまた今度ちゃんと話そうな」
「分かった」
グレーの一言返事を聞くとレッドはポケモンセンターから出ていくのであった。
「はぁ。賑やかな人だな。…それにしてもあの人…強いな…恐らく次会う頃にはもっと…」
グレーは少し羨ましそうにレッドを見るのであった。