今日は攻略がある。夜中の内に剣は売りさばいたとの連絡も聞いた。
キリトがボス部屋までの道で使ってる剣はアニールブレードではなかった。言ったとおりである。
お、ボス部屋に着いたか。前来た時も思ったけど扉がでかいんだよな。俺の何倍あんだろ?
キリトが人差し指を宙に動かし、武器を変えているのに、目をやりそのままディアベルの方に目を向ける。
「みんな‼ありがとう。たった今全パーティーが集まっ…え?」
ディアベルは前に出て話しながらニヤっとキリトの方に目を向けそのまま口を開け驚いた顔をしている。
当たり前だ。その先にはアニールブレードを手に持ち、退屈そうにこちらを眺めているキリトがいるのだから。
やっぱり仕組んだのはディアベルだったか。無関係者がそんなことで驚くはずがないし、キバオウ本人はキリトの剣に目さえ向けなかった。
しかし流石というかリア充。そんなのも時間にすれば一瞬だ。すぐに立ち直り話を戻す。
「えっと。俺から言うことは一つだけ。皆‼勝とうぜ‼」
ボスと戦うパーティーと雑魚を片付けるパーティーに分かれて戦闘をしているが特に問題は起きていない。俺はボス部屋の扉にもたれてひたすら雑魚にシングルショットを撃っている。撃退数は…人並みぐらいかな~
おっとそんなことを考えてる間にそろそろHPバーが一本になりそうだ。タルワールに代わるはずだが、まあ余裕だな。タルワールも大して強く…?
「あれ、タルワールか?」
スラリと伸びる細身の金属。日本人なら誰でも見たことのある形状。
刀だ。
「だめだ‼後ろに跳べ‼」
俺が気づくと同時にキリトが叫ぶ。その目線の先には
周りに下がらせ、一人でボスに突っ込んでいくディアベルがいた。まずい‼
俺は自慢の速さでボスの振り下ろす刀とディアベルの間に剣を挟み込ませる。一発は止めたものの二発目が刺さる。HPが半分ほど削れるが、ボスの体制が一瞬ぶれた。
よし。躱せる。
「早く逃げ…⁉」
俺は俺より少しボスの近くにいるディアベルに声をかけ、そちらを見て驚愕した。
目をつぶっていたのだ。諦めきった顔で座り込み何一つ逃げようとしていない。
俺は慌ててディアベルに向かい跳んだ。
しかし俺がかっこいいヒーローになれるわけもなくそのまま一緒に吹き飛ばされる。
横でポリゴンに変わるディアベルと一瞬で2桁まで下がったHPを見てとたん冷汗が出てくる。久しぶりに死を実感した。
ボスの最後の一撃が降る。
あ、これ死んだわ。
「小町すまん俺死んだわ。できれば俺のPCは中身を見ずにお風呂に投げてくれると助かる。」
目をつぶる。おそらく刀は俺の体に右から入り左に抜けていくだろう。
俺の右から刃が入り…ん?来ない?
「自分のことぐらい自分で守れよ。だったか。ハチ。」
なんとキリトが剣を受け止めている。まじかっこいい。キリトさんリスペクト。
てか前に俺が言ったことおぼえていたんだな。黒歴史確定じゃん。
「わ、悪い」
俺は一言いい後ろに下がるとそれと同時に周りの状況が見えてくる。後ろで大勢が騒いでいる。もうボスの前に立っているのはキリトとアスナしかいない。
「ディアベルが死んだか…」
そう呟いてみると心が急速に冷めていくのが感じる。こういう世界だ。人が死んでなんぼの世界だ。ディアベルも所詮今まで死んでいった人の1/2000でしかない。
体の震えが止まる。
そのまま小石でも投げるかのようにナイフを二本投げる。
直線に進みそのままボスの眼球を串刺しにした。
ボスに盲目がかかったのを確認し俺は地面を蹴る。それは驚きを見せるキリトの横を通り過ぎボスの首を掻き切った。
「キリトはスイッチ。俺は敵の動きをできるだけ封じる。アスナはそのまま攻撃だ‼」
「「分かった‼」」
俺は攻撃をしながらも、その俊敏でボスの利き手や目を刺して攻撃を封じる。途中で黒い巨体のおっさんも加わっていたがキリトが焚きつけたのか。まあ俺には関係なさそうだ。
そんなこんなでボスの体力はキリトが腹を切り裂いたことで尽き、その巨体はポリゴンへと変わった。
個人的には、LAが欲しかった。まぁそれで一人死んだわけだが。武器か防具か。または…
「何でや‼ 何でディアベルはんを見殺しにしたんや‼」
そんな考えにふけっていると後ろから罵声が聞こえる。
キバオウか。ディアベルの策に乗ってた馬鹿がよく言う。
「見殺し?」
横でキリトも呟いている。何で責められてるのかわからないような口ぶり。
「そうだろ‼あんたらはボスの使う技を知っていただろ。きっとベータテスターだ。だから技を知ってたんだ。知ってて黙ってたんだろ‼もし、もし言ってたらディアベルさんは死なずに済んだんだ‼ 他にもいるんだろ。出て来いよ‼ベータテスター。」
周りががやがやとざわめき出す。みんなが疑心暗鬼になっている。
どうせここにいるのはベータテスターばかりのくせに。
どうせこの世界もそんなものか。
「ハッ「お前らマジで馬鹿だったんだな。」
俺は口を開く。キリトと一瞬かぶった気がしたが知らん。
「そうだよな。出てきてやれよ。何人もいるだろ?刀スキルを使う敵と戦うことすら出来なかった雑魚ベータテスターさんよ。」
俺は俺のやり方で。卑屈に最低に陰湿に。
「ディアベルが死んだのは弱いくせに勝手に突っ込んだからだ。まったく無駄死にしてくれた。」
「俺達はベータテストの時に最も上まで攻略した。刀のソードスキルを知っていたのはそれだけの理由だ。」
「結局お前らは、弱いのを誤魔化して。置いて行かれたくない願望を晒し。大人数で強がってるだけの雑魚だ。」
「認めてもらいたいのか?でも残念。お前らは後ろに突っ立ってディアベルを見殺しにした。もうわかってんだろ。欺瞞ばっかの弱者さんよ。」
俺は一つ一つ区切りながらゆっくりといい終える。
「なんだよそれチーターだ‼」
「そうだベータテスターのチーターでビーターだ‼」
何がビーターだ。そんなダサい名前を人に付けてんじゃねえよ。
「何がビーターだよ。俺はただ人より情報を多く持ってただけの情報屋だ。ビーターなんかじゃねえ。情報屋のハチだ。この世界は情報戦だ。無駄口叩いてると…死ぬぞ。」
俺はそこで言い切り、ボス部屋の奥にある階段をのぼる。
誰かの足音が後ろから聞こえてくる。振り返るとそれは案の定キリトだった。
へぇーLAはマントか。
「黒いマントか。で、何か用か?」
「さっきはありがとう。それとアスナから伝言。『あなたのやり方、嫌いだわ』だそうだ。」
少し懐かしいセリフ。俺の居場所を壊した言葉。そんなことをこいつに言っても意味がないか。
「俺はこのやり方が大好きだ。それと不満は目の前で言え。って言っといてくれ。じゃあな。」
俺はそのまま後ろを向きアクティベートを完了させる。
こうして俺はキリトに別れを告げた。
この時から一層を攻略に導いたプレイヤーとして、
キリトはブラッキーとして尊敬され、
俺は目とかがやばいということで、グリムと呼ばれていた。
そういえば死神は英語でGrim Reaperとか言ったりもするんだった気がする。
ということで、
ブラッキー(キリト)
グリム(ハチ)
が人々に広まっていった。
ついでに言うと少数からはビーターと言われたりもする。