ではでは、本編どうぞ!
「羽琴公人さん、ようこそ死後の世界へ。私は、あなたに新たな道を案内する女神、エリス。この世界でのあなたの人生は終わったのです」
唐突にそんなことが告げられる。
突然の事で何がなんだか分からない。
俺は椅子に座り、また人生終了を告げてきた相手も椅子に座り向かい合わせになっている。
『女神』その言葉なくして何が言えようか。
目の前の少女は美しかった。年は俺と同じくらいだろうか。修道服のようなものを着ていて、その身をゆったりとした白い羽衣が包んでいる。ベールから覗く髪は長く、透き通るような白銀。肌など、触ったら壊れてしまうのではと思わされる。
少女は、いまだに状況がつかめない僕をただじっと見ていた。
......俺は、先ほどまでの記憶を思い出す。
休みがちな俺だが、何とか今日は学校に行けた。
「久しぶりの学校は疲れるな...とっとと帰ろ」
HRが終わり、俺は一目散に教室を出る。
校門を出て帰路につき、本を読みながら歩く。
そうして大通りに出て、横断歩道に差し掛かったが信号が点滅したので立ち止まる。
...はずが、走り出していた。
女子学生二人組が、横断歩道に向かって歩いていたからだ。それも赤の信号で。
二人は話に夢中になっているのか、信号に気づいていない。
同じ学校の生徒だ。だからどうした。
話したことがあるのか?いや、まったくない。顔すら見たことがない。
横から大型トラックが走ってきている。
いつもは考えてばかりで行動できないくせに、今は動けた。
前を走っている少女たちを突き飛ばす。
刹那、トラックが真横まで迫っていた。
......そこから記憶がない。
そのことを思い出し、一つだけ気がかりなことがあった。
「一ついいですか?」
「はい」
「...俺が突き飛ばした女の子たちは生きていますか?」
そう、せっかく助けに入ったのだから生きていてほしい。
...いや、生きていないと困るという、自分が救われないからという考えからくるものなのか。
そんな心境を知ってか知らずか、エリスと名乗った女神は俺を哀しげに見つめながら口を開いた。
「ええ、生きています。あなたが身を挺して助けたおかげです」
「良かった...」
何はともあれ、助けられたのならそれに越したことはない。
この人生、人を救えたのなら、それも二人も助けることができたのなら、少しは意味があったのかな...
そう感傷に浸っていると
「私からも一つ聞いていいですか?」
エリスが神妙な面持ちで僕に尋ねてきた。
「は、はい。どうぞ」
「こう聞くのは無遠慮とは分かっていますが...。なぜ、見ず知らずの方を助けたのですか?」
なぜだろう、振り返ると確かにそうだ。あの二人とは接点がまるでない。同じ学校と言っても何百人っている中の二人だ。だが、あの時動いたのはなぜか。だから思ったことを口に出した。
「...体が勝手に動いたんです。自分でも不思議ですけど。何か自分の人生に意味を見出したかったのかもしれませんね」
「...そうですか。いきなりすみません」
エリスは少し心配そうにしたが、やがて話し出した。
「では改めて、羽琴公人さん。私の名はエリス。日本において、若くして死んでしまった人を導く女神です。これからあなたには、二つの選択肢があります」
「二つの選択肢?」
「はい、一つは人間として生まれ変わって、新たな人生を歩むか。そしてもう一つは、天国のような所で永遠に暮らすか」
...なんだこの選択肢。
「天国ってどのようなところなんですか?」
「天国というのはですね、あなた方人間が想像しているような楽園のようなところではないのです。死んでしまったのなら食べ物は必要ありませんし、何か作ろうにもそもそも材料がありません。がっかりかもしれませんが、天国には何もないんです。そこにいるのはすでに死んだ先人たち。死んでいるのだから体はなく、彼らと永遠にお話をする以外ありません」
何もないか。それ天国というより地獄じゃん。
だけどそれもいいかもしれない...って、やっぱり嫌だな。
「そんな退屈なところ行きたくありませんよね。かと言って記憶を失って人間としてやり直すのも、そもそも記憶がないから存在自体が消えてしまうのと一緒ですからね。そこでいい話があるのです!」
「いい話?」
嬉々としているエリスにそう尋ねた。
するとエリスは、訝しむ僕に言った。
「公人さん......。ゲームは好きですか?」
エリスが、楽しげに説明を始める。
要約するとこうだった。
ここではない世界、つまり異世界に魔王がいる。
そして、魔王軍の侵攻により世界が危ないらしい。
また、その世界には魔法が使え、モンスターもいる。
それこそゲームの中のような世界が広がっているらしい。
「その世界で死んだ人びとは、魔王軍に殺されて死んでしまったのが大半なわけで。なのでその世界での生まれ変わりを怖がって拒否してしまうのです。そのため新しい命は生まれず、このままだと世界が滅んでしまうのです。そこで、ならば他の世界で死んでしまわれた方をそこに送り込むのはどうか、という話になってですね」
なるほど、まさに神業。
「それで送るのだったら、若くして死んでしまった未練のある方々を、肉体と記憶はそのままで送りましょうという事になったのです」
「すごく魅力的な提案なんですが、その世界ってモンスターとか魔王軍がいるわけですよね...。自慢じゃないですけど、俺運動神経は人並みですよ。すぐ死んじゃいそうなんですが...」
生き返ってさあこれからだというときに、初っ端初級モンスターに殺されましたでは笑えない。
「その点はご安心を。向こうの世界に行く際に、好きなものを1つだけ持っていける権利をあげているのです。強力な特殊能力や神器級の武器。とてつもない才能や技術。...いかがですか?あなたは異世界で人生をやり直せ、異世界の人にとっては即戦力になる人がやってくる。悪くないですよね?」
確かに悪くない。というよりすごくテンションが上がってくる。
ゲームの世界のようなところに行けるなんて、夢のような話だ。
「あれ、そういえば異世界語喋れないんですけどどうすれば...」
「それに関してもばっちりです。私たち神々の力によって、異世界に行く際にあなたの脳に負荷をかけて一瞬で習得できます。ですが、その...。う、運が悪いとですね、頭が、その、パーになるかもしれないのです」
...パー?
「大丈夫なんですかそれ...」
「だ、大丈夫です!こう見えて私幸運の女神なので!ありったけ祝福します!」
「あ、ありがとうございます」
まあ、運は割といい方だからな。
と、エリスがカタログのようなものを差し出してきた。
「この中に、授けられる力が載っています。例えばそれは、伝説の武器。それは、天才的な才能。どんなものでも一つだけ、異世界に持っていく権利を与えましょう」
カタログを受け取ると、中を開いてみた。
...超いっぱいある。
これの中から一つ選べだなんて無理な気がしてきた。
《超魔力》《聖剣アロンダイト》《ドラゴン召喚》《結晶ドラゴンの杖》...
どれもこれも使ってみたいものばかりだ。
詳しく見てみると効果などが書いてあるが、ゲームなどを鑑みるにどれも規格外なものばかりだ。
確かに駆け出しの状態でこんな強い力があったらそうそう死にはしないだろう。
うーむ、これで異世界人生の命運を分けると言っても過言ではないからな...
「たくさん悩んでいただいて結構ですよ。私だって悩んじゃいますもん」
エリスは優しいな。よくよく考えれば、死んでいるのは俺だけじゃない。つまりまだこの案内待ちの人がいて、その人たちの相手をしなくてはならないはずだ。
「本当に悩みますね。それなら異世界にエリス様を連れていきますよ」
「そうですね。私も休憩はありますがずっと案内ばかりで、できることなら目一杯羽を伸ばしてみたいですね」
「そうしたら楽しそうですね」
エリスと雑談しながらも段々と持っていきたいものを絞っていく。
「そういえば、異世界に行ったらエリス様と会う事ってできるんですか?」
「私はここで案内をしているので基本会うことはできないですね。ただ...」
エリスがそう言いかけた時だった。
「承りました。それでは、今後のエリス様のお仕事はこのわたしが引き継ぎます」
頭上高くに魔法陣が出現し、白く輝く光と共に羽の生えた天使みたいな女性が現れた。
「羽琴公人さんの希望は、規定に則り受諾されました」
「「え!?」」
唖然とする俺と、そしてエリスの足元に青く光る魔法陣が現れた。
ん?俺はともかくエリスの足元にも現れたってことは...
「ど、どういうことですか?な、なぜ私の足元に魔法陣が?」
慌てだすエリス。
「エリス様。そういえば俺、エリス様を異世界に連れて行くって言ってました」
「た、確かに言いましたけど!あれは冗談というか...」
「まあエリス様と行けるのであれば全然、むしろ嬉しいくらいですけど」
エリスが照れ半分戸惑い半分な感じでもごもごしていると、さっき出てきた天使がエリスの方へ向き。
「行ってらっしゃいませエリス様。後の事はお任せを。そう悲観せずとも大丈夫ですよ。無事魔王を倒されましたら、こちらへ帰還するための迎えのものを送ります」
「で、ですが...。はあ、分かりました。もう私がどうこう言ったところで変わりそうにありませんね。そもそも天界規定により、持っていく『もの』の変更はできませんからね」
「羽琴公人さん。数多いる勇者候補の中から、あなたが魔王を打ち倒すことを祈っております。魔王を倒した暁には、神々からの贈り物として、どんな願いでも叶えてあげましょう」
「まじですか!」
なんでも!?なんでもって、なんでも!?
「うう、私のセリフ...」
エリスは、異世界行きを一応認めたものの、いきなり宣告されしょぼんとしていた。
「すみませんエリス様、ですがもう変えられないので前向きになりましょう!」
「公人さん、なぜあなたはこんなに落ち着いているんですか!?強力な武器でも卓越した才能でもなく、私ですよ!?」
「何言っているんですか、楽しくなりそうじゃないですか。俺、運は良いんで!」
「私だって運は良いですよ...。その前向きな気持ちを少し分けてほしいです...」
そうこう言っているうちに、徐々に魔法陣の輝きが増してきて眩しくなってきた。
「さあ、旅立ちなさい!」
厳かに天使が告げる中。
俺は、気落ちしているエリスと共に明るい光に包まれた......!
時を同じくして...
「散々馬鹿にしてた男に、一緒に連れていかれるってどんな気持ちだ?あんたは俺が持っていく‘‘者’’に指定されたんだ、女神ならその神パワーとかで、精々俺を楽させてくれよな!」
「いやあー!こんな男と異世界行きだなんて、いやああああああああ!」
「さあ、勇者よ!願わくば、数多の勇者候補の中から、あなたが魔王を打ち倒すことを祈っています。......さあ、旅立ちなさい!」
「わああああああーっ!私のセリフー!」
天使が厳かに告げる中。
少年は、泣き叫ぶ女神と共に明るい光に包まれた......!
いかがでしたか?
エリスを悩みながら書いていました...
次まではそうかからないつもりなので、頑張ります!
まだまだ駆け出しですが、これからよろしくお願いします!
感想やアドバイス待っています!