転生これくしょん~転これ~ 【一時休止中】   作:上新粉

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外した方がいい……のか?


援軍は未だ来ず

響が援軍を呼びに戻ってから既に五時間が経過しようとしていた。

必至の抵抗により、辛うじて大破者は出ていないものの一隻の姫を相手に白雪達は窮地に立たされていた。

 

「わ〜ん!那珂ちゃんもう限界だよぉー!」

 

「ふぇ……響ちゃん……」

 

「電さんっ、那珂さんっ!泣き言を言ってる暇があったら生きる為に足を動かして!」

 

「だから那珂さんはやめてってばぁ〜!」

 

挫けそうな二人に喝を飛ばす白雪だが、彼女自身も姫と相対出来るほどの練度がある訳でもなく状況は依然として芳しくない。

更に言えば鎮守府最高練度である龍田の雷撃すら有効打となっていない現状を看過見るに目の前の姫が高位個体である事は明白であり、その事実が白雪達の心を折ろうと重くのしかかる。

 

「(流石に遅いですね……何かあったのでしょうか)」

 

戻りが遅くとも響を信じて送り出した以上響に何かがあったなどと考えてはいない。

白雪が案じているのは鎮守府の事、そしてそれ以外の外的要因の事である。

そしてその不安は正しく鎮守府ではとある問題が発生していた。

 

 

 

 

時は四時間前にまで遡る。

 

 

 

 

 

最大戦速で帰投した俺は一直線に山本のいる執務室まで突っ走って行った。

 

「司令官!緊急事態だっ!」

 

「うぇいっ!何事!?」

 

「ひ、響?!」

 

「重巡棲姫が出た!すぐに援軍を頼みたい!!」

 

壊れんばかりに思い切り開かれた扉に驚きを隠せない山本と深雪だったが俺の言った事を直ぐに理解し、正気を取り戻した。

 

「重巡棲姫だって!?他のみんなはどうしたっ?」

 

「どうやらそいつは龍田をしつこく追い続けているらしい。鎮守府に引き連れる訳にも行かないから戦域にて交戦中だよっ」

 

「そうか……わかった直ぐに援軍を要請しよう。響は補給したら再出撃の準備を、援軍を戦域まで誘導してくれ」

 

「了解、補給に行ってくる」

 

そうして山本は直ぐに連絡を取り始めた。

俺は直ぐに出撃出来るよう工廠へ急いだ。

そこまでは順調だった、しかし……補給を終え執務室に戻った俺が耳にしたのは山本の怒鳴り声であった。

 

「うちの秘書艦が嘘を吐いてると仰るおつもりですかっ!!」

 

『そういう事ではない、撃破できぬのなら撤退をすればいいと言っているのだ』

 

「いましがた話したではありませんかっ!それが可能であればわざわざ大佐の手を煩わせたりなどは致しませんっ!!」

 

『その龍田がどうとかいう与太話が信じられる訳が無いだろう』

 

相手の提督にはどうやら信じて貰えていないらしい。

龍田の話を聞いた時にも思ったがどうやら海軍には頭の固い奴らばかりなのだろうか。

 

「……分かりました、信じて頂けないようですので他を当たらせて頂きます」

 

『そんな話を信じる奴がいるとは思えんがな』

 

「時間が惜しいので失礼致します……」

 

そうして山本は電話を切ると拳を思い切り机に叩き付けた。

 

「くそっ!どいつもこいつも石頭どもめっ!!」

 

「司令官……どうにかなるか分からないが私一人でも戻らせてくれ。出撃許可を」

 

「あ、あたしも行くぜっ!」

 

こうしている今も白雪達は戦っているんだ、なら例え援軍が来なかろうと早く助けにいかなきゃ。

 

「駄目だっ!そんな許可は出せない」

 

だが山本は出撃の許可は出さなかった。

 

「まだ他に宛はある、お前達が無理に出る必要は無い」

 

「誰も信じないのにどうやって援軍を頼むって言うんだ!」

 

「例え援軍が来なくても……いや、来ないならばこそ出させる訳には行かない!響、俺はお前を沈めさせたくはないんだ……」

 

「なっ…………っざけるなっ!仲間を見捨ててまで私にのうのうと生きろと言うつもりかいっ!!」

 

俺は怒りのあまり壁を殴りつけた。

壁に拳大の穴が空いてしまったが今はどうでもいい。

俺は山本からそんな言葉は決して聞きたくなかった。

頭では分かっている、あいつが一番大事にしているのは響だという事も。

だから()を希望が見えない戦場へ向かわせたくないと思うのは当然である事も。

だけど、だからこそ山本だけは仲間を見捨てて欲しくない!

戦後まで生き残り数多くの戦友の最期を見届けてきた響の……場所を交代した直後に自分がいた場所で沈む電を見届ける事しか出来なかった彼女を愛するというのならっ!。

 

「俺だって仲間を見捨てたくはない!けど……俺はお前に沈んでこいなんて許可は出せない……」

 

「っ……君には失望したよ。軍法会議にでも何でも掛ければいい、私は行くよ」

 

「響っ!?待ってくれ!俺を置いて行かないでくれぇ!」

 

縋るように駆け寄る山本を振り払いドアノブに手を掛ける。

 

「司令官、私は沈みに行くつもりはない。仲間を助けに行くだけだ」

 

それだけ言い残すと俺は部屋を後にし港へと急いだ。

 

 

 

 

 

抜錨し再出撃を果たした所までは良かったのだが、皆を助ける方法がさっぱり見つかっていない。

一人でも行きたい所だが俺だってそれが無駄であることくらい理解している。

だからと言って仲間を見捨てて生き残るなんてごめんだ。

そう考えた時にふと龍田の顔が頭に過ぎった。

あいつは今までずっとこんな無力感に苛まれてきたのだろうか……。

 

「だったら、何とかしてやらないとなっ」

 

俺は気持ちを切り替え走り出す。

が、突如現れた駆逐イ級に出鼻をくじかれた。

 

「ったく、こっちは急いでんだ。さっさと沈めさせてもらうよ」

 

直ぐに魚雷を構えて狙いを定め、イ級目掛けて放とうとしたが……

 

「敵艦捕捉、全主砲薙ぎ払えっ!」

 

直後、そこに居たはずのイ級は砲弾の雨に飲まれ跡形も無く消え去った。

 

巨大な三連装砲を携え、堂々とした立ち姿で佇むポニーテールの彼女は嘗て日本の技術の粋を集めて建造された超々々弩級戦艦、大和型一番艦大和であった。

 

「や、大和さん?どうしてこんな所に」

 

この世界でいう大和と言えばその燃費や修復コストから運用される場面が限られる事が多く主に特別作戦時の切り札として待機している事が殆どだと資料には記されていた。

しかし、理由は直ぐに大和が応えてくれた。

 

「はい、私は今鎮守府正面海域にて戦意を向上させています」

 

なるほど、つまり1-1周回でのキラ付け中とのことらしい。

 

「そうだったのか、でも結果的に助かったよ。ありがとう大和さん」

 

俺は先を急ぐからと、大和に別れを告げようとしたが彼女は何か考え事をしているようだった。

どうかしたのか気になったがそれどころでは無いので改めて別れを告げ電達の元へ向おうとした瞬間、後ろから呼び止められた。

 

「響さん?この辺りで重巡棲姫の目撃情報はありませんでしたか?」

 

「なっ!?どうしてそれを!」

 

驚きを隠せない俺に対して大和は納得が行ったらしく落ち着いた様子で話してくれた。

 

「やっぱりそうでしたか。必死な訴えに対して提督がまともに取り合っていなかったので、私が戦意向上を口実に鎮守府正面海域で情報収集をしようと思っていたのですが丁度良かった。重巡棲姫の元までご案内頂けますか?」

 

「スパスィーバ……いや、ありがとう。」

 

「いえ、困った時はお互い様ですから。では行きましょう」

 

「……ありがとう。じゃあ行こうか」

 

そうだ、折角大和が助けに来てくれたんだ。

間に合わないなんて事があってたまるかっ!

あと少しだ……あと少し堪えててくれ皆。

 

 

 

 

 

 

 




いや、もう少しなはずなんだっ!夢の日常まで!
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