資料を取りに山本の部屋の扉を開いた俺は…………そっと扉を閉じた。
「あれ?どうしたの響」
「入らないのです?」
「あ……いや」
言葉が出ずに固まっている俺を不思議に思った山本が再び扉を開け中に入ると、ひとり納得しながらがらがらと音を立てながら俺達に入る様に促した。
「し、失礼するよ」
「お邪魔するのです」
意を決して中へ入るもそこは先程と変わらず響の大小様々なイラストが壁や天井を覆ったままだった。
「いやぁ、すまんすまん。あれじゃ座る場所も無かったな」
「大丈夫です。電がお手伝いするのです」
いや、そうじゃない……って電ちゃんまさかのスルー!?
「いや……その、壁とか……」
「あ、そっち?それは俺の趣味だ」
「はわぁ、司令官さんは絵が上手なのです」
「あっはっは、そう来たかー」
「あれ?私変な事言いましたか?」
「……多分、描くんじゃなくて集めるのが趣味なんじゃないかな」
確かに俺も
いざ
「あったあった、こっちは世界史。んでこっちが深海棲艦と艦娘の詳細だな」
呆然とする俺を気にせず山本が引っ張り出してきたのは二冊の分厚い本だった。
「二冊……だけ?」
「ああそうだな、この二冊に殆ど書いてあるらしい」
A4サイズの辞典、二冊合わせて五千頁位。
この中に世界の過去の殆どが載ってるのか……あまり信じ難い話だが読んでみないことには分からないか。
「ありがとう司令官、早速執務室で読んでみるよ」
「あ、それはっ」
一刻も早くこの部屋から離れたい俺は山本の話も聞かずに本を抱きかかえてそそくさと部屋を出ようとするが……
「うっ……!」
何かにつっかかった俺は、鉄棒で逆上がりをしようとして途中で手を滑らせてしまった子供の様に背中を床に強く打ち付けてしまった。
「だ、大丈夫か?」
「いつつつ……大丈夫。だけどどうしたって言うんだい?」
俺の疑問に対して山本は少し困った様に答えた。
「それな、実は
「は……? 」
理解が追いつかない俺に山本は実演してみせた。
「ほら、俺らや外から持ち込んだ物は通るんだけど元々あったものはどうやっても通らないんだよ」
「え、なんで……」
「さあな?神様の考える事なんか俺には分からんよ」
なんという事だ、つまりこいつを読む為にはずっとこの部屋に居なければならないのか。
…………仕方ない、そこは我慢しよう……だがな。
俺は徐ろに壁へと近づき……二枚程引き剥がした。
「ちょおま?!響ストップッ!!」
山本の静止も聞かずベットの上に登り天井の一畳程のポスターも剥がす。
「それ綺麗に貼るの大変だったんだぞ!?」
「司令官……電もいるんだしこういう如何わしいのは無しだ。良いね?」
「いや、でも大事な所は隠れ……」
「い・い・ね?」
「……アッハイ」
俺は剥がしたポスターの両面テープを丁寧に剥がしてから纏めて丸め落ちていた輪ゴムで止めて山本へ返した。
「あ、あれ。返してくれんの?」
「まあ、人の趣味にどうこう言うつもりは無いさ。ただ、今度電にこういう物を見せようものなら容赦無く処分させて貰うよ?」
対象が
なんて考えながら俺が床に座り読み始めていると感極まった山本が唐突に
「響ぃ……なんていい子なんだぁぁっ!!」
「ちょっ、邪魔!」
人の腰に顔を埋めようとする山本を引き剥がしながら返さなければ良かったと俺ははやくも後悔していたのであった。
想像してください。
友人の部屋を開けたら自分の肖像画がところ狭しと……